US Media Hot News メディア界の新星~米ジェムスター

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

米国のメディア業界では最近、ベンチャー企業のジェムスター・TVガイド・インターナショナルが注目されています。雑誌やテレビなど多様なメディアを通じて番組案内サービスを提供する会社で、最近では"オンライン版・番組案内"とも呼べるウェブサイト情報サービスを始めて話題を呼びました。今やテレビのチャンネル数は400にも500にも増えようとしており、番組の内容や放映時間を紹介するサービスの必要性が大きくなっています。インターネット上でも情報は氾濫しており、いつ、どのサイトで、どんな情報を流しているかを知りたいとのニーズが高まっています。時流をとらえたユニークなサービスを売り物に、ジェムスターは躍進中です。

 ジェムスターは①インタラクティブ媒体部門、②技術・ライセンス部門、③番組案内サービス部門、④初期ビジネス部門の4つの事業部門から成り立っています。インタラクティブ媒体部門は最もホットな分野で、電子書籍(E-Book)やオンライン番組ガイドといった新サービスを軸に急成長しています。技術・ライセンス部門は研究・開発や特許の申請・保護、ライセンス供与を行う部門で、ビデオ機器システム「VCRプラス(Gコード)」関連が主な業務です。この特許技術は一般機器メーカーに広く供与されており、ジェムスターの経済基盤を支える柱の一つとなっています。番組案内サービス部門はオンライン媒体以外のガイドサービスを総括し、雑誌、テレビ版のサービスを指揮。2000年春に買収したTVガイド社の業務がベースで、技術・ライセンス部門と並んで売上高の大きい部門です。初期ビジネス部門は採算性よりも将来性に投資する部門で、言わば、ビジネスの卵を育てる場所です。

 先ごろ発表して話題を呼んだオンラインサービスの「ウェブガイド」は、「TVガイド」のホームページ(www.tvguide.com)上でリアルタイムのイベント情報を流しています。画面上に各イベントのタイトルと概要をロールアップ形式で表示し、ユーザーはクリック操作ひとつで興味のあるイベントのサイトに行くことができます。検索機能も備え、音楽やスポーツ、映画といったカテゴリーや、日にちや時間を条件に情報を探すことも可能です。始まったばかりのサービスですが、すでに300万人以上のユーザーを獲得し、出足はまずまず好調です。

 このオンライン版ガイドサービスの成功には、98年に買収したTVガイド社の知名度が一役買っています。TVガイドはもともと小冊子の形で売り出したテレビ番組案内で、置いていないスーパーやコンビニは無いと言われるほど普及しており、全米に推定約1億人の購読者がいます。ケーブル局で始めたテレビ版の案内サービスも好評で、視聴世帯数は推計5千万世帯。知名度に加えて、テレビ版サービスと同じロールアップ形式を採用したことも貢献したと見られ、評判は上々です。

 ジェムスターはそもそも、技術特許を供与する会社としてスタートしました。最高経営責任者(CEO)のヘンリー・ユエン氏が友人と開発したビデオ録画システム「VCRプラス(Gコード)」が、その技術です。80年代後半当時、テレビ番組を録画するには面倒な操作が必要でした。その操作を一切省き、簡単な番号を入力するだけに変えたのがVCRプラスです。新聞の番組欄を見ると各欄の隅に小さく記載されている数字がその番号で、今でこそ当たり前になりましたが、当時は画期的なシステムとして大ヒットしました。

 次にユエン氏は、VCRプラスで得たライセンス料を元手にビジネスを拡張し、番組ガイド事業に進出しています。ノウハウを持たない分野で成功する為に米ビデオガイドや米スターサイトを次々に買収し、めきめきと力をつけました。破竹の勢いで成長するジェムスターにメディア界の大御所と呼ばれるルパート・マードック氏とジョン・マローン氏が目を付け、98年、当時業界最大手だったTVガイドによる敵対買収を工作しましたが、ユエン氏はこれを巧みにかわしたばかりか、逆にTVガイドを手中に収め、一躍メディア界のスターとなりました。

 ユエン氏は香港からアメリカへ移住してきた中国系移民で、フィルム映画制作を趣味にしていた父親のもと、テレビやビデオといったメディアに慣れ親しんで育ちました。しかし、大学院で数学の博士号を取得し、リサーチ科学者としてキャリアを積みながら高校で教鞭をとっていたユエン氏はメディアやビジネスの世界から遠い存在でした。そんなユエン氏に転機をもたらしたのが自らのVCRプラスの発明であり、現在に至っています。

 ただ、ユエン氏の成功は単なる偶然ではありません。ユエン氏は特許という武器を有効に使ってビジネスを大きくしてきました。弁護士の父親のもと、数学を専攻する傍らで法律も学んだユエン氏ならではのなせる業です。現在ジェムスターが保有する特許はオーディオ・ビジュアル関連の技術を中心に、米国内で160以上、海外に190以上あります。認可を待っている知的所有権は国内に300以上、海外で800以上数え、今後も増える見込みです。

 順風満帆に見えるジェムスターですが、もちろん、問題も抱えています。ケーブル版のガイド事業を取り巻く競争激化はその-つです。ケーブル運営のコックスやチャーターなど4社は、ジェムスターの急成長に慌てて共同戦線を張り、対抗サービスを立ち上げました。ジェムスターの強みである特許にしても、時にはマイナスに働きます。「特許テロリスト」の異名を持つユエン氏が頻繁に訴訟を起こすあまり、株価の不安要因になるからです。ジェムスターのサービスに対応できるハードウエアが普及していないことも悩みの種です。こうした課題を乗り越えて、ガイドサービスの幅をどれだけ広げられるかジェムスターの本当の成功はこれからのようです。

Video Research USA, lnc.

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