デジタルメディア教室(7)~次世代携帯電話~

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 NTTドコモの次世代携帯電話サービス「FOMA(フォーマ)」の試験運用が、5月30日から東京23区及び横浜・川崎両市の一部で始まりました。当初はこの日程で本格サービスが開始される予定でしたが、4月末に延期が発表され、本格運用は10月に先送りとなりました。この延期の知らせは国内外に少なからず衝撃を与えましたが、このサービスの始まりが世界に先駆けた新しい試みであることに違いはありません。

 この次世代携帯電話は、「IMT-2000」と呼ばれています。IMTはInternational Mobile Telecommunicationsの略で、2000は2,000MHzの周波数を用いること、及び2000年のサービス開始を目標としたところからきていると言われています。これは、現在の第2世代までの携帯電話では果たせなかった高速伝送や国際ローミングに対応していくため、ITU(International Telecommunication Union:国際電気通信連合)によって進められてきた国際標準規格です。80年代のアナログ方式(FDMA:周波数分割多元接続)、93年からの現行デジタル方式(TDMA:時間分割多元接続)に代わり、この第3世代携帯電話の技術的なベースとなっているのは、CDMA(符号分割多元接続)方式です。この「CDMA」という言葉は、各メディアを通して、今やあらゆる年代の人々に浸透してきていると思いますが、ここで簡単にこの方式の説明をしてみたいと思います。

 まず第1世代のFDMAは周波数を細かく区切って、1ユーザーが1チャンネル(周波数帯)を利用するものでした。これは携帯電話利用者が少ない時代には問題ありませんが、周波数のチャンネルには限りがあるので、利用者の増大に対応できるものではありません。そこで登場したのが第2世代のTDMAです。TDMAは、一つのチャンネルを一定時間ごとのスロットに分割して、複数ユーザーが順番に使用するようになっています。現在多くの国でこの方式が使われていますが、携帯電話ユーザーの爆発的な増加に伴って、昨今注目されてきたのがCDMA方式です。このCDMA方式では、「スペクトラム拡散」という方法によって、1チャンネルの周波数帯の幅をTDMAやFDMAよりも広くし、複数の人の信号を同じ周波数の電波で送ります。同じ周波数を使用するといっても、CDMAではデジタル信号に「拡散符号」という、いわば鍵のようなものを付けて送るので、他の符号をもった信号と一緒になることはなく、同じ種類の符号を持った受け手にしか、その音声信号は取り出せないようになっています。

 さてCDMAといっても、前述のITUによって認められた方式は5つあります。そのうち日本で採用されるのは、NTTドコモや丁フォンが採用した「W-CDMA方式」(日欧方式)と、KDDIグループで採用される「cdma2000方式」(米国方式)の2つです。国際標準規格とはいえ、自分の持っている携帯電話と異なった方式が採用されている国では、国際ローミングはできない、ということになります。

 このような国際標準規格に基づいて開発された次世代携帯電話ですが、実際に私達ユーザーにとってどんなベネフィットがあるのかという点については、実感を帯びた形として伝わってきていないように思われます。先行するNTTドコモのFOMAでは、最大384kbpsという、現行携帯電話の約40倍の通信速度により、テレビ電話や高速データ通信、マルチアクセス(通話中にパケット通信が可能)、映像配信などのサービスが提示されていますが、技術革新の度合いを測る物差しを持たない私達一般のユーザーにとってみれば、さほど大きなメリットを感じないように思います。また、先の本格運用の延期に加え、6月中旬には、通信不良による試験端末の交換といったニュースも飛び出しました。このように技術的に不安定な部分が残されているという印象が、全般的にややネガティブな反応を醸成する一要因となっているかもしれません。

 将来的にはモバイルテレビやテレビ会議、遠隔医療、高度ナビゲーションシステムといったサービスなども構想にあがっています。このような構想は携帯電話以外のあらゆるデバイスの発展系として語られることが多くなっていますが、一般ユーザーにしてみれば、どんなデバイスであれ、提供されるコンテンツにメリットを感じるかどうか、それに対して使いやすいインターフェイスが実現されているかどうかが、一番重要なポイントといえるでしょう。

 導入スケジュールとしては、前述のNTTドコモが今年の10月から本格サービスを始める予定であるのに対し、KDDIは今秋、Jフォンでは2002年6月からのサービス開始を予定しています。しかし、競売方式によって周波数帯の取得に法外な費用を費やしたヨーロッパを初め、海外各社のサービス開始時期は、現在までのところはっきりしていません。これにはNTTドコモに覇権を握らせまいとする欧州勢の思惑も絡んでいると言われています。

これまで移動体通信分野において、日本は牽引役ともいえる展開をしてきましたが、間近に迫った次世代携帯電話時代において、引き続き先頭集団を走っていくことができるのでしょうか。

何がディファクトスタンダードとなり、どんな企業が勝ち残っていくのか、その答えがでるのはもう少し先のことかもしれません。

                 メディアマーケティング局 デジタルメディア部 安増理恵子

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