US Media Hot News 起死回生をかけて動き出すヤフー

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 インターネット業界では今、ヤフーの動きに注目しています。すい星のごとく現れ、たった6年でオンライン・メディアの頂点に上り詰めたヤフーですが、ネットバブル崩壊の波に呑まれて揺らいでいます。ドットコム景気は未だ回復の兆しが見えませんが、ヤフーは新しいCEO(最高経営責任者)を迎え、起死回生をかけた再建策を準備しているところです。果たしてネット不況から抜け出して後続に手本を示せるのか。熱い視線を背に受けて、ヤフーがいま立ち上がろうとしています。

 ネット不況が始まったのは今から約1年前です。それまでベンチャー・キヤピタリストなどから集めた資金を湯水のように遣ってきたドットコムたちですが、投資家が資金を引き揚げるとたちまち勢いを失い、国内の景気失速を受けて企業が広告支出を渋ると、ますます状態を悪化させました。経営に行き詰まる同業者を見で慌てたヤフーは、今年に入って業務提携や新規サービスの投入を急いでいます。

 sl月にはIT専門家が集まってニュースや調査内容をやりとりできるサイトを開設しました。企業向けのポータル・ソフトウエアを刷新し、米マクドナルドや独バイエルなど大企業を顧客に獲得。続く3月には、ネット不況下で唯一活気付くオンライン旅行サービスを改善するため、業界最大手の米トラベロシティー・ドットコムと提携しました。4月には映像や音声をストリーミングできる「ヤフー・ブロードキャスト」の新バージョンを発表。このサイトで販売する広告はテレビやラジオと同様にスポット形式でコンテンツ配信中に挿入できるため、新規スポンサーの獲得を期待しています。米ソニー・ミュージック・エンターテインメントの合弁事業で、音楽配信サービスの「デュエット」に参画したり、金融情報サービス「ヤフー・ファイナンス・トラッカー」を始めるなど有料サービスも拡大。日本でヤフー・ジャパンが乗り出した高速ネット接続事業の「ヤフーBB」は、世界規模で推し進めている収入多元化の一環です。

 しかし、こうした取り組みにも拘わらず、4月に発表した1-3月の売上高は1億8020ドルで前年同期に比べて約42%落ち込みました。一株利益で見ると前年同期の10分の1です。株価は2000年1月に付けた最高値の237ドル50セントから急落しており、盛隆時代の勢いは微塵もありません。

 ヤフーでは、景気低迷と企業の広告費削減を業績不振の理由に挙げています。収入の90%を広告が占め、広告主の40%をドットコム企業に頼ってきたヤフーですから、打撃が大きいのは当然です。ただし、業界内には、「ヤフーはネット不況を乗り切るだけの体力やチャンスがあったのに、クーグル前CEOの判断ミスでこうした事態を招いた」という声が聞こえています。

 ヤフーに訪れたチャンスは2回あったと言われます。最初はAOLとタイム・ワーナーが合併した2000年1月頃です。巨大メディアの誕生を受け、ヤフーも他社を買収して大きくなろうという話が持ちあがりました。当時、株価は自社最高を記録しており、時期も最適。しかし、ヤフーは今しばらく自力に頼ることを選びました。次のチャンスは同年3月。当時はまだ新進気鋭のネット企業だったeベイを買収する話が浮上した時です。ところがeベイCEOの処遇などで折り合いがつかず交渉は破談。買収していれば2億ドル近い売上高を確保でき、収入を広告に依存する体質からも脱却できていたはずでした。

 独立独歩にこだわる姿勢を周囲から批判され出した頃、社内でも亀裂が生じ、2月には海外部門を中心に幹部10人が流出する事態が発生しました。ことの重大さに慌てた役員会ではクーグルCEOの更迭を決め、創業以来、ヤン氏とマレット氏の3人で築いてきた強力なトロイカ体制が崩れ、一つの時代が終わりました。

クーグル氏に代わって新しくCEOの座に就いたテリー・セメル氏は、映画配給の米ワーナー・ブラザーズを約20年率いてきたベテランです。トム・クルーズやクリント・イーストウッドを育て、「バットマン」や「マトリックス」などヒット作を飛ばした実力派で、豊かな国際経験とマーケティング能力を高く評価されています。

 セメル氏を筆頭に今後のヤフーがすべきことは、①広告事業の見直し、②経営陣の強化、③課金サービスの拡大、④企業向け事業の拡大の4つです。すでに取り組んできたことばかりですが、今まで以上のスピードと内容が求められています。広告は効果が疑問視されているバナー型に代わる形や課金方法の開発が先決です。経営陣は新しい人材の登用が必要でしょう。ハリウッド時代の人脈を引き入れると見られていますが、ヤフーの企業文化に馴染めるかは未知数です。課金サービスは着実に増えていますが、無料から有料に転じたオークション・サイトでは出品数が減るなど、料金の徴収は難航しています。有料でもユーザーを集めやすいのは映像や音楽の配信サービスですが、この分野を強化するにはインフラが整っていないのが現状です。企業向けサービスは、「ヤフー=一般消費者向け」のイメージを抜け出してどこまで企業に認知されるかが勝負どころ。課題は山積みです。

 今後も広告業界は暫く軟調が続き、ヤフーをはじめ困難な経営を強いられるネット企業が増えると予想されています。ただし、ヤフーは人材や技術といった資産面ではレベルが高いと、もっぱらの評判です。ヤフーに求められているのは、この淘汰の時代を乗り越えてドットコム企業の殻を打ち破り、AOL・タイムワーナーやウォルト・ディズニーに迫る有力メディア企業に成長することでしょう。セメル氏はヤフーの立ち直りを確信し、1800万ドルの個人資産を投じて改革に乗り出そうとしています。腕の見せ所はこれから―――ヤフーの動きが面白くなりそうです。

Video Research USA, Inc.

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