デジタルメディア教室(8)~PVR『TiVo & ReplayTV』~

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

■はじめに

最近日本でも、"追っかけ再生"とか、"タイムシフト機能"という謳い文句のテレビ番組録画機器が各メーカーから発売され始めました。テープを使用しない、ハードディスク型の便利な録画再生機器ですが、まだ値段が高く、一般の消費者には手が届かない高級AV商品のようです。しかし、来年春頃より、価格も大幅に下がり、手ごろな値段のハードディスク内蔵型テレビが発売されるという詰も出てきています。

 日本より一足早く、米国では、"PVR"という名称でEPGサービス付きのハードディスク・レコーダーが市場に出ております。PVRとは、パーソナル・ビデオ・レコーダーの略で、1998年暮れ頃から発売されています。このPVRを代表する2つのハードに、"TiVo(ティーボ)"と"ReplayTV(リプレイTV)"がありますが、日本でもかなり紹介されているのでご存じの方も多いかと思います。両者とも、テレビのポータル・サイトを目指している新しいセットトップボックスです。

ReplayTVは、「Replay Networks Serviceは、テレビのポータルになる」と宣言しており、一方、TiVoサイドは、「TiVoは、トロイの木馬PCである」と述べています。すなわち、両者の狙いは、ビデオ・サーバーを小型し、多くの家庭に設置することです。ケーブルや衛星放送業者が増えれば放送番組数も時間も増え、視聴者は番組情報検索が必要になると考え、このTiVoやRepayTVを普及させ、テレビポータルサイトを確立しようと思っています。

 今月のデジタルメディア教室は、これから普及が進むであろうPVR(TiVo & ReplayTV)について、その概要とPVRが与える視聴行動への影響についてご紹介したいと思います。

■PVRの特徴

 米国のPVR(パーソナル・ビデオ・レコーダー)の主な特徴は、以下の5つです。

(1)ハードディスクに長時間のテレビ番組録画が可能。

  現在、最大60時間録画できるものが市販されています。

(2)使いやすいインタラクティブなEPG(電子番組ガイド)サービス。

  毎日、電話回線を通じて最新のEPG情報を受けられます。(2週間先の番組情報が入手可能)

(3)放送中の番組を、"一時停止(ライブポーズ)"、"巻戻し"、"コマ送り再生"などができる。

  また、常時、30分前に遡って視聴中の番組を見ることができる。

(4)簡単録画操作。予約録画操作がとても簡単。

  テープを使用しないため、ボタンひとつで録画が可能。予約録画もEPGから簡単にできる。

(5)ハードディスク上に保存した番組をVTRテープにコピーすることができる。

  PVRとVTRデッキを接続すれば、ハードディスク上に録画した番組を、簡単にVTRテープにコピーすることができる。

TiVoとReplayTVの両者のハード特徴には特に大きな差はありませんが、ReplayTVには、30秒のスキップ・ボタンがあります。当初、このボタンはCMを飛ばす機能そのものであると、ネットワークサイドから強い反発を買いました。

両社とも、巻戻し、早送りのスピード・コントロールが可能で、操作中の画質もVTRよりもきれいです。ハードの価格は、発売された当時は1000ドル(約12万円)ほどしていましたが、徐々に値下がり、今年に入り大幅に値下がりしました。録画可能時間によって値段は異なりますが、「TiVoの場合、20時間モデルが199ドル(2万円強)、30時間モデルが299ドル(3万円強)、60時間モデルが599ドル(6万円強)と、日本で発売されているハードと比べるととても安い感じがします。

ReplayTVはTiVoよりも高い価格設定になっていますが、ReplayTVにはEPGサービスの料金が含まれている為、両者の価格にはあまり差はありません。(ややTiVoの方が安い程度)

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両者のビジネスモデルは、ハードやライセンスを提供するだけでなく、独自の番組ガイドなどに広告を入れることを想定しており、広告収入を重要な収入源として考えています。将来的には、テレビ番組ガイドのポータル・サイトを目指しています。

さて、次の表は、両社の企業に出資、もしくは戦略提携を結んでいる企業の一部です。

ReplayTV、TiVoの両方に、出資あるいは提携している企業もあります。いずれにせよ、大手メディア関連企業がこのPVRの市場の可能性や、普及時において将来の自分たちのビジネスに影響が及ぶことを想定し、出資しています。

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■TiVoの特徴

次に、ユニークなTiVoの特徴についてご紹介します。

・「Season Pass

  これは、毎週見たいお気に入りの番組があれば、番組予約の際にシーズン・パス予約(設定)をしておけば、毎週確実に自動録画してくれる機能です。これで、レギュラー視聴番組を見逃すことがなくなります。

・「TiVo's Suggestion

  これは、TiVoの学習機能で視聴者の番組噂好を分析し、その人の好みに合わせた推薦番組を録画しておいてくれる機能です。自分で見たいものを探さなくても、TiVoが自分の好みの番組を録画してくれる便利なサービスです。

・「TiVo Ipreview

  これは、番宣(番組宣伝)の際に、TiVo Previewのマークが画面左はじに表示されますので、その時に、その番組を見たいと思ったら、セレクト・ボタンを1回押すだけで、自動的にその番組を予約録画するというサービス機能です。予告編で気になる番組は、ボタンー発でチェック(録画)でき、後でゆっくり見ることができます。

■TiVoの評価と視聴に与える影響

TiVo利用者の評価は高く、特に"EPG(電子番組ガイド)サービス"を一番に上げる人が多いという調査結果が出ています。すでに多チャンネル化が進んでいる米国においても、視聴者はリモコンでチャンネルをフリッピングしながら見たい番組を検索している為、ワンボタンで使えるEPGガイドに強いベネフィットを感じています。利用者の中には、TiVoを使い始めてから、テレビ番組ガイド誌の契約を止めた人もいました。また、TiVoの特徴である"簡単録画機能"や、放送中の番組を一時停止できる"ライブ・ポーズ機能"、"早送りボタン"などの評価も高くなっています。

主婦からは、「VTRとは違い、テープが不要なのでセットの手間もかからないし、テープが部屋中に散らからなくてとてもよい。」という好評価の意見もあがっています。

 TiVo利用者のほとんどの人が、『これは人に奨めたいハードである』と答えており、多チャンネル時代においては、必要不可欠なツールのようです。

 4ヶ月間TiVoを利用した人にインタビューしたところ、「テレビを見る時間が増えた」、「以前よりテレビを見るのが面白くなった」という意見が多く見えました。また、「自分のスケジュールに合わせてテレビを見る」という、EPG利用によるタイムシフト視聴習慣が身に付いた人も現れました。タイムシフト視聴時に、CMをスキップする人は多く、これはリモコンで簡単にスキップできるという物理的な要因も奉りますが、見たい時に見たいものを見ているという積極的な視聴態度が、その行為を強めている側面もあるようです。

 整理しますと、PVRがテレビ視聴行動に与える影響としては、『タイムシフト視聴』、『CMスキップ行為』の2つです。PVRを利用すれば、簡単にタイムシフト視聴が可能になります。その結果、今までは、テレビ視聴が可能な時間枠の中から見たい番組を選ぶかたちでしたが、ユーザー・インターフェースのよいEPGを利用することで、好きな時に見たい番組を視聴できるようになります。たとえば、帰宅後にテレビをつけた時、その時にオンエアしていた番組だけではなく、TiVoが録画保存してある昼間放送されていた番組も、視聴番組の選択に入ることになります。すなわち、番組編成権がテレビ局から視聴者へシフトする現象を生み出す可能性を秘めていると言えます。これは、"タイムテーブル選択視聴"から、徐々に"コンテンツ選択視聴"に視聴習慣が変わることを意味しているものと思われます。

 また、テレビ局や広告業界の最大の関心事項は、CMスキップ行為ではないでしょうか。リアルタイム視聴では、CMザッピング程度でしたが、タイムシフト視聴が可能になると、その再生視聴時にCMがスキップされる可能性が高まります。また、リアルタイム・ポーズ・ボタンを多用することにより、オンエア番組との時間の遊びが生れる為、CMをスキップする可能性が増えることです。

 この間題については、PVRの普及と利用状況の研究を行ない、十分な検証を行なう必要性があると考えています。

■今後の動向

最後に、今後の米国のPVR動向について触れておきたいと思います。

 以下の3点が大きな流れになっています。

(1)録画可能時間のアップ

 現在、普及版モデルのものが30時間。最新型の最大容量のハードは最高60時間です。

 コストの問題もありますが、技術発展ともに、長時間録画モデルのものが登場してくるものと思われます。米国の業界の話では、最高100時間を目指して開発が進められているとのことです。

(2)ダブル・チューナーの搭載

 現在市販されているTiVo&ReplayTVでは、同じ時間帯に見たい番組が2つある場合、どちらかひとつしか録画ができません。その対応策として、ダブル・チューナー搭載のモデルが発売される予定です。(今年の春より、マイクロソフトとディレクTVが提携し、"Ultimate TV"という商品が発売された。これは、ダブルチューナー、35時間録画、Web TV 機能付きのものである。)

(3)各種セットトップボックスへの組み込み

  PVRが組み込まれたケーブルTVのセットトップボックスが登場、及びAOLTVのセットトップボックスに組み込まれる予定。

多チャンネル時代において、EPGサービスと蓄積機能のPVRは切り離せない関係のツールですが、PVR利用による視聴者の『タイムシフト視聴』、『CMスキップ行為』は、広告放送関連事業者にとっては頭の痛い問題ではないでしょうか。当社としては、海外の動向を含め、PVRによる視聴変化の研究を行なっていきたいと考えています。

              メディアマーケティング局 デジタルメディア部  小黒 直弘

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