US Media Hot News 暗礁に乗り上げた米国ブロードバンド革命

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 日本では現在、いよいよブロードバンド時代が到来すると盛んに言われていますが、いち早く事業に乗り出した米国では、計画が暗礁に乗り上げています。技術面の未熟さや高い使用料金に加え、米景気の減速で投資家が資金を引き揚げたのが大きな理由です。しかし一方で、将来を見越してブロードバンド対応を進める動きもあり、今後革命を起こす準備は着々と進んでいます。

 ブロードバンドとはインターネットに接続する回線を指す言葉で、従来に比べて大量のデータを高速で送受信できるのが特徴です。明確な定義はないものの1メガビット以上が目安だと言われており、14.4キロビットや28.8キロビットが主流だった一昔前に比べると、格段の進歩です。

 ブロードバンドのおかげで動画像や音声のやり取りがスムースになり、テレビ電話や楽曲のストリーミング視聴など、パソコンの用途が広がりました。ネット経由でアプリケーションをハード抜きにインストールすることも可能になり、ブロードバンドはパソコンの使い方も変えています。

 ブロードバンドの種類には、ケーブルテレビ(CATV)、DSL(デジタル加入者線)、光ファイバー、無線などがあります。CATVは電話やテレビ用に敷設されている回線で、米国では最も普及しているインフラです。DSLは既存の電話回線の容量を大きくしたもので、データの流れと方向に応じて様々な種類があります。光ファイバーは回線の材質を銅からファイバーに置き換えたもので、スピードはDSLの約160倍と他を圧倒しています。無線は地上に設置された基地局とユーザーを無線でつなぐ方式で、有線方式に必要な工事が出来ないエリアなどに利用されます。

 米国ではCATV経由のネット接続が主流ですが、昨年の今ごろはDSLサービスが鳴り物入りで騒がれていました。利用するたびにダイアルアップするCATVと違って常に回線を繋いでおけるため、アクセス速度が速く途中で落ちる心配も少ないことがネットユーザーたちの心をつかみました。しかし、ふたを空けてみるとサービスを受けられない地域が多く、サービス開通作業に半年以上待たされるなど不備だらけ。米景気の減速で利用料金の高いDSLは敬遠され始め、評価は次第に下がっていきました。

 ユーザー数が伸びないDSLを見切って投資家が資金を引き揚げるとベンチャー企業の資金はたちまち干上がり、米DSLプロバイダーのノースポイント・コミュニケーションズや同コバットなどが相次ぎ倒産・破産に追い込まれました。市場が寡占状態になったのをいいことに生き残ったテレコム大手がサービスを値上げしたため、ユーザー数の伸びは更に落ち込んでいます。

 しかし、DSLを横目にCATVが盛り返しているわけでもありません。連邦通信法で保護された地域電話会社がインフラ敷設を推し進めた結果、全米には網の目のようにCATV回線が敷かれています。そのうちブロードバンドに対応できるのは全体の約6割。ところが実際に回線を切り換えたのは1割に及びません。これは一説に、デジタルTVなどと比べてあまり大きな儲けを得られないブロードバンドをテレコム会社(主に中小のケーブルシステムオペレ一夕ー)が敬遠しているからだと見られていますが、それ以上にキラーコンテンツの不在が大きいようです。

 キラーコンテンツとは、器を使わせるための決め手となる中身。インターネットは家庭に浸透しましたが、まだまだ利用範囲はメール送受信や簡単な情報検索に限られており、従来の回線で十分です。ブロードバンドが必要だと思わせるには、それに見合った中身を提供することが大切で、音楽や映画配信が役目を担うと期待されていました。ところが、米音楽配信ベンチャー、ナッブスターの裁判に代表されるように著作権問題が絡んでしまい、望みは小さくなりました。

 光ファイバーも鳴かず飛ばずの状態です。景気減速でテレコム会社のサービス提供計画が狂い、現在サービスを利用できるのは財政の潤沢な都市部に限られています。皮肉なことにインフラ自体は米グローバル・クロッシングや米レベル3コミュニケーションズが世界中に構築した3700万キロの光ファイバー網がありますが、実際には半分以下しか利用されていません。気早に何年も先の分までインフラを構築し、巨額の借入金を抱えてしまったわけです。無線も携帯電話への対応がやっとでデータ通信にまで手が回らず、ブロードバンド革命の牽引力となるには力不足です。

 高速ネット革命の座礁はほかにも様々な影響を与えています。広告業界では、効果が疑問視されているバナー広告に代わって動画の広告を採用する動きが先送りになっています。高速ネットの利用でオンラインショッピングが2倍に増えると予想したEコマース企業も打撃を受けました。コンテンツ制作会社やネット接続業者にまで波紋は及び、倒産した企業の数は年初以来、未公開企業で数10社、破産申請した上場企業は6社以上にのぼり、過去2年間の失職者は約11万人を超えたとの予測されています。ブロードバンド構想のとん挫が引き起こした通信不況はドットコム不況を上回る規模だと言われ、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏は「向こう10年間のインターネット事業の弱点はブロードバンドだ」と吐露しました。

 しかし、ブロードバンド革命は失敗に終わったわけではありません。普及世帯はスローテンポながら着実に増えています。ここで必要なのは事業拡大の起爆剤でしょう。起爆剤となるのはテレビ電話やオンラインゲームに照準を移したキラーコンテンツの開発でしょうか。速やかな景気回復による資金流入でしょうか。いや、景気に左右されない健全な経営方針や自由競争によるサービス技術の向上や料金値下げが必要なのかもしれません。ゲイツ氏は「4年以内に利用者が約20%に達する」と予想しています。果たして予見は当たるのか――米国のブロードバンド革命はこれからです。

Video Research USA, Inc.

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