US Media Hot News 復活!米マイクロソフト帝国

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 米国では、マイクロソフトがかつての勢いを取り戻して"帝国"が復活したと騒がれています。PCに代わるハイテク機器が台頭する中、最近までマイクロソフトは時代遅れのPCソフトウエアメーカーになりつつありました。昨年は独占禁止法違反の裁判で叩かれてイメージもダウン。しかし、今年に入ると相次ぎ新製品を発表し、売り上げ成長ペースは20%台を回復すると予想されています。潤沢な資金を惜しみなく研究開発(R&D)に充て、今年のR&D予算は42億ドルと、ライバルのAOL、オラクル、サン・マイクロシステムズの3社合計の2倍を上回ります。人員削減が当たり前の世の中で8千人近い雇用を創出し、ハイテク不況をよそに躍進中です。

 5月末、マイクロソフトは「オフィス」シリーズの最新版「ⅩP」を発売しました。「98」に比べて信頼性が低く、アップグレードする魅力に欠けるという辛口の評価が多いものの、OS市場の約9割を占めるリーダーの地位は不動で、今後、主要な財源に成長するのは間違いなさそうです。10月には、「ウィンドウズ」の新シリーズ「ⅩP」が発売される予定です。「オフィス」と同様、ユーザーは暫く様子を見ると予想されますが、広く浸透するのは時間の問題でしょう。11月には、いよいよ話題のゲーム機「Ⅹボックス」の発売です。任天堂やソニーなど日本企業の牙城である家庭用ゲーム機市場にどこまで食い込めるか懐疑的な見方もありますが、ゲイツ会長が各地の産業展示会に足を運んで製品を紹介する力の入れようで、戦う構えは十分です。

 マイクロソフトが強く達しく蘇った背景には「ドットネット」戦略があります。昨年6月に明らかにしたこの戦略は、ソフトウエアをインターネットに統合することを目指すもので、「マイクロソフトがPC離れをし、インターネットというオープンな世界で競合することを決意した証し」と受け止められています。

 具体的には、パソコンや携帯電話などにマイクロソフトのソフトウエアを組み入れ、インターネットに接続して「いつでも、どこでもマイクロソフト」と呼べる環境を作り上げることです。このドットネット戦略の技術開発に充てた金額はざっと20億ドル。テレビに設置して利用するボックス型機器の「UltimateTV」を開発して今春から発売したほか、携帯電話用ソフトの「スティンガー」も開発済みです。UltimateTVはウェブ上をサーフしたり、テレビ番組との双方向通信を可能にする機器で、ビデオデッキのように番組録画もできます。スティンガーは年末までに英国やドイツの電話会社と共同でテストを開始する予定です。

 新製品ばかりでなく、これまで低迷していた既存品も、ドットネット戦略下で息を吹き返す可能性があります。携帯端末用ソフト「ポケットPC」は市場投入から数年経ちますが、シェアは1割前後に過ぎません。これをネット対応にすることで、約3年後にはシェアを4割近くまで拡大できると予想する声があります。

大企業向けのソフト販売事業もドットネット戦略をテコに成長しそうです。これまで販売、経理、在庫管理といったデータを一元処理するだけだったソフトにネット対応機能を加えることで、オンライン注文やオンライン販売が可能になりました。昨年末に発売された企業向けソフト「データセンター・サーバー」は好評で、米銀大手のJ・P・モルガンやチェイス・アンド・カンパニーが採用しています。ドットネット戦略を更に推し進めるための「へイルストーム」と呼ぶサービスもマイクロソフトの体力増強に役立ちそうです。PCや携帯電話など生活に溶け込んでいる様々な技術に互換性を持たせるサービスで、一般ユーザーと企業ユーザーの両方を取り込む狙いです。へイルストームの利点は、場所や時間、手段を選ばずともデータにアクセスできることで、例えば、パソコンに入力した電話番号といったデータを携帯電話や小型端末で取り寄せられるようになります。取り寄せる際には、同社の認証サービス「パスポート」が利用されるため、ユーザー自身が個人情報を管理でき、ネットプライバシーの問題解決に役立ちそうです。へイルストームが広く定着したら、マイクロソフトはサービスを有料に切り替える考えもあり、従来、広告収入に頼りがちだったウェブサービスの運営モデルが一変するかもしれません。

 ネットの世界で出遅れたマイクロソフトは着実な足取りで進み、「msnネットワーク」でインターネットに接続するユーザーは約5百万人、無料電子メールサービスの利用者は約3千万人に増えました。「ウェブ界を支配するつもりか」と懸念する声もありますが、ゲイツ会長は「1社で支配しきれないほど大きな世界だ」と一蹴しています。ただ、PC中心からウェブ中心へと軸足を移し、先行企業のIBMやサン・マイクロシステムズに並ぼうと、猛烈な勢いで追い上げているのは確かです。近い将来、手書き認識機能や音声認識機能をソフトに組み込む計画もあり、新しい構想を次々と描いて突き進んでいます。

ただし、マイクロソフトの行く手には難関もあります。独占禁止法がらみの訴訟問題はその一つです。企業分割命令は棄却されたものの、PCにウィンドウズをあらかじめ組み込む"抱き合わせ販売"は独占行為だとされました。しかし、マイクロソフトは「ⅩP」も同様の方法で売りこむと見られ、再び訴訟問題に発展するかもしれません。

ライバルの存在も大きな障害です。ウェブサービスやゲーム機市場に足を踏み入れたマイクロソフトにとって、敵はソフトメーカーだけではなくなりました。IBM、AT&T、任天堂それぞれの分野で先行している巨大企業が、急に活動的になったマイクロソフトを放っておくはずがありません。こうした難関をどう切り抜けて更に強く遥しく成長するのか...。暫くマイクロソフトから目が離せません。

Video Research USA, Inc.

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