US Media Hot News どうなるネット音楽配信サービス

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

~ポストナップスターの動き~

米国では、インターネット上で音楽ファイルを自由にダウンロードしたり交換できる米ナップスターのサービスに待ったがかかって以来、ネット音楽配信の分野で足踏み状態が続いています。そんな中、近々、大手レコード会社の呼びかけで結成された2つの新しい事業体がサービスを開始します。(10月以降開始予定)。参画企業にはヤフーやマイクロソフト、AOL・タイムワーナーといったメディア界の大物が名を連ね、期待が膨らみます。しかし、有料のためユーザーに広く受け容れられるか疑問の上、規制面での問題もあり、不安を抱えてのスタートとなりそうです。

スタートを予定しているのはミュージックネット(MN)」と「プレスプレイ(PP)」の2社です。

MNを所有するのは米AOL・タイムワーナー傘下の音楽レーベル、ワーナー・ミュージック・グループや独ベルテルスマン傘下のBMGエンターテインメント、英EMIなどです。米ネット配信技術開発のリアルネットワークスや新生ナップスターもサービス配信面で協力しています。MNはB2B(ビジネス対ビジネス)が基本で、音楽ファイルを小売店へ納入する卸会社のような役目を果たします。つまり、いったん商品を納入した後は契約先に責任を移管し、料金設定や配信技術の選択を任せています。

一方、PPは仏ビベンディ・ユニバーサルのユニバーサル・ミュージック・グループと米ソニー・ミュージック・エンターテインメントによる共同事業で、ヤフーやマイクロソフト、MP3・ドットコムなどと配信契約を結んでいます。こちらはB2C(ビジネス対消費者)が基本で、PP自体がサービス会社の働きをします。例えるなら、航空会社が旅行代理店を通じて航空券を売るようなもので、PPが価格や流通経路をコントロールしてユーザーの利用件数に応じて手数料を受け取る仕組みです。

 ネット上の音楽配信サービスはここ1、2年で普及ペースを速め、2010年には音楽市場の約2割に相当する40億ドル規模に膨らむとの予測があります。市場拡大に貢献したのは皮肉にもナップスターだと言われます。それだけに、ナップスター無き彼の市場成長を疑問視する声も出ており、業界の前途は多難そうです。

 そもそも、ナップスターは全面的に消費者側に立ったサービスでしたが、レコード会社の目的は利益を上げることにあります。料金設定は未定ですが課金制になるのは確実な上、CDやレコードの売り上げを守るために当面は楽曲を携帯プレーヤーにダウンロードしたりCDに焼き付けることを禁止します。利益が絡むと版権や著作権といった複雑な問題が起き、MNではエアロスミスやリッキー・マーチンを聴けず、PPではブリトニー・スピアーズやマドンナが聴けないといった事態が起こります。

 規制面での問題もあります。2社の市場シェアは合計で約85%に達するため、米司法省と欧州連合が独占禁止法違反の疑いで調査中です。楽曲の著作権を所有する作曲家などが利益の分配を求めて裁判を起こす可能性もあり、事実、会社側が敗訴したケースが先日出たばかりです。

こうした問題解決のため、様々な提案が提出されました。ひとつは著作権管理当局に曲利用の料金を設定してもらおうというものです。インターネットをテレビやラジオと同様の立派なメディア媒体と見なして、楽曲を流した場合の使用料をきちんと課すという考えです。

今夏、米議会に出された著作権法に関する法案も解決策の候補です。「音楽オンライン競争法」と名付けられた法案はレコード会社による楽曲ライセンスの平等供与、ネット配信サービスでの楽曲コピー及び視聴認可、作曲家などへの円滑な使用料支払いを柱としています。音楽制作や配信に拘わる各立場の対立を除き、市場を活性化させる狙いです。

映画業界を見習って、作品を多重活用すればいいとの声もあります。映画はひとたび制作されると、まず映画館で上映され、次にホームビデオの形で流通します。その後、ペイバービュー(自宅のテレビを通じて料金別払いで視聴する形態)で登場してから有料ケーブル局に渡り、最後にネットワーク局で放映されます。これをレコード業界に当てはめ、例えばラジオやMTV(音楽専門番組局)で楽曲を流した後にCDやカセットテープを店舗販売し、その後、ネット上のダウンロードを認めます。ただし、この時点では1曲ずつ課金するサービスにとどめ、暫く時間を置いてから、定額を支払うと何曲でもダウンロードできるサイトに流します。最後は、カタログ販売などの形で大幅に値引きしたCDを売り、複数の流通形態を経て幅広い消費者に届く、というものです。こうすれば、インターネットはレコード会社にとって販路のひとつになり、ネットサービスに協力的な姿勢を見せるだろうと考えるものです。

 しかし、いずれにしてもナップスターの人気を越えるサービスは出現しないでしょう。ナップスターは1年足らずで約30億人のユーザーを獲得したと推定されています。一方、MNやPPといった課金制サービスが獲得できるのは、今後3年間の合計でも、せいぜい8億人だろうとの予想です。ネット配信サービスがひとたび利益を追求するビジネスになってしまった以上、採算性を度外視してまでナップスターのようなユーザー主体の条件を打ち出すわけにはいきません。しかし、そこにユーザーは潜在します。ポスト・ナップスターの穴埋めをするには、ユーザーが納得して代価を支払える質の高いサービスが必要でしょう。そのためには、レコード会社やサービス配信会社、著作権保有者などが譲歩し合い、一丸となって業界を盛り上げることが、今、求められています。

Video Research USA, lnc

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