US Media Hot News 米国で加速~テロ防止テクノロジーの導入~

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

世界を震撼させた忌まわしいテロ事件から2ヶ月が経ちました。株式市場や多くのビジネスは通常通りの姿に戻りつつありますが、廃嘘と化した貿易センター周辺はいまでも攻撃のむごさを物語っています。後続テロの噂や炭症菌騒ぎも広がり、テロの恐怖は日常レベルにまで蔓延しています。

テロ事件は多くの産業に影響を与えています。最も大きな打撃を受けたのは旅行業界でしょう。出張や観光の手控えムードが強く、多くのホテルや観光地のレストランでは閑古鳥が鳴いていると聞きます。航空業界が見積もる被害金額は約120億ドルと深刻で、大型の人員削減に踏み切る動きは茶飯事です。

IT産業においては、テロ直後にPC販売が落ち込んだりネット広告が激減したりしました。今後もオンライン旅行販売の分野では低迷が続きそうですが、通信サービスやデータストレージ部門は今回露呈したインフラの脆弱さを補うため、むしろ非常時の特需という恩恵を受けそうです。

テロによる直接の影響とは別に、産業界ではテロ防止の技術開発が急がれています。すでに存在する技術が殆どですが、人権保護などの見地から導入は一部に限られてきました。ところが、こうしたご時世では広く一般に導入しようとの動きがあり、有効活用できる形への転換が求められています。

最も期待されているのは、集積されたデータから情報を引き出すデータ・マイニングです。今回の事件を例に取ると、テロリストは航空券を購入したり銀行口座から現金を引き出したり、いろいろな足跡を残しました。こうした足跡をたどってテロ行為を未然に防ぐのがデータ・マイニングの目的です。具体的には、クレジットカードやインターネット接続プロトコル(ISP)に残るデータを一元化し、各種機関の所有するファイルとリンクさせるというものです。現在、米連邦捜査局(FBI)のテロリスト名簿を米移民局(INS)のファイルにリンクする動きがありますが、米オラクルのエリソン会長らの呼び掛けで民間企業のデータも加えて広範囲なデータベースを作ろうという試みもあります。Kマートのような小売企業では、税務局が保有する納税者データの約100倍に匹敵する量の情報を蓄えています。これを有効利用すれば、テロ疑惑の濃い動きをいち早く察知してFBIやINSへ通告できるだろうというわけです。

人物認識装置も導入を検討されている技術のひとつです。空港やショッピングセンター、スポーツスタジアムといった大衆の集まる場所に設置して、警備員などが見落としがちな部分にまで目を光らせることが出来ます。装置には、テロリストや犯罪歴のある要注意人物の顔がデータ登録されており、モニターに映った人物をひとりひとり照合・判別することができます。

 情報の発信場所を突き止めるグローバル・ポジショニング・サテライト(GPS)システムも有効だと見られています。サテライト(人工衛星)を使ってユーザーの居所を探り当てる技術で、もともとは米国防省が軍事目的に開発しました。これまでは自動車や携帯電話に内蔵してナビゲーション機能に応用してきた程度ですが、今後はGPSを通じて集めたデータから疑わしい行為を割り出し、発信地を突き止めるのに利用しようと提案されています。

 多機能カードを用いた国民ID(身分証明)カードを携帯する案も浮上しています。ブッシュ米大統領は人権問題の見地からこの案を即座に却下しましたが、テロの恐怖から再検討を求める声が上がっています。このカードは生年月日や目の色といった人物プロファイルから犯罪歴や指紋といったセンシティブな情報まで搭載でき、必要な時に必要な場所で提示を求めて瞬時にカード保有者の人物チェックを済ませることが出来ます。

 こうした数々の技術は今のところ単独での開発・導入が進められていますが、いずれもデジタル技術ですから、将来は一つにまとめて巨大な複合システムを作り上げることも可能です。ただし、一体化による相乗効果を期待できる反面、大きな危険もはらんでいます。

 情報の集中は権力の巨大化を招く恐れがあります。プライバシー保護の問題も持ち上がっています。先月初めに米上下両院を通過した対テロ法案は非常時だからこそ可決されましたが、テロ攻撃がなければリベラル派議員や市民団体による頑固な反対に遭っていたことでしょう。この法案は政府による情報傍受の制限を大幅に緩める内容で、裁判所命令なしに電子メールを傍受できる権限をFBIに与えたり、警察による電話の盗聴は捜査令状のみで認可されたり、一回の電子捜査に充てる監視期間を90日から120日に延長したりといった項目を織り込んでいます。米国民は今、何よりも身の安全を望んでおり、プライバシーの問題や政府介入の弊害は二の次です。ただ、再び安心して暮らせる世の中に戻った時、こうした法案や技術がどれだけ許されるかは疑わしく、何年か後には内容の見直しが必要とされそうです。

 しかし、技術の導入や法案制定では対応しきれないテロ攻撃の脅威も浮上しています。コンピューターシステムに入り込んで情報を操作したり、テロ目的で情報を盗用する「サイバーテロ」です。戦争になると真っ先に狙われるのは工場や石油精製所、公共の交通機関だと言われていますが、最近、こうした設備はインターネットを通じて制御されています。操作に使われるコンピューターは単純な基本ソフト(OS)を搭載した小型マシンが多く、容易に侵入してデータにアクセスできます。サイバーテロは攻撃が表面化しにくいため発見に時間がかかり、侵入者が経路を隠せるため追跡も困難です。サイバーテロの防止策を考案し、日常生活のインフラを守ることが目下の緊急課題となりそうです。

Video Research USA, lnc.

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