テレビのモバイル視聴の可能性を探る~デジタルメディア総合調査からの考察~

VRDigest編集部
VRDigest編集部
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!

本記事は2002年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 テレビをとりまく環境が大きく変わろうとしています。「タイムシフト」「インタラクティブ」「多チャンネル」「ブロードバンド」etc...。このようないくつかのキーワードと共に、来るべきデジタル時代のテレビ視聴に想定されるものとして「モバイル」があげられます。これは文字通り各種携帯端末を受信機器として、「いつでも」「どこでも」テレビを視聴できるということですが、「モバイル視聴」は単なる可能性の領域を越えて、既に世の中の現実の動きとして進み出しています

 まず2003年に始まる予定になっている地上波デジタル放送では、各局が持つ6メガの帯域-13セグメントのうち、1セグメントを利用して「移動体向けの放送」を行おうという検討がなされています。また既存の放送局以外でも、大手家電メーカーが中心となって衛星を使った「モバイル放送」という移動体向けの新しい放送サービスを始める計画をたてています。

 このような世の中の動きを後目に、「人は外出時にまで、小さな端末でテレビを見たいと思っているのだろうか?」と素朴な疑問を抱く人も少なくないと思います。ここでは当社が今年1月に発刊した「デジタルメディア給合調査」のデータを利用して、この疑問に迫っていきたいと思います。

 一般にモバイル端末と呼ばれるものは、「携帯電話・PHS」「ポータブルオーディオ」「PDA」「携帯PC」「カーナビ」など様々あり、その用途も多岐に渡っています。 しかし、ここではあくまで「携帯端末によるテレビ放送の受信」に限定して論をすすめていきたいと思います。

ふだんの移動行動

 テレビのモバイル視聴を考えていくにあたり、そもそも人がふだんどの程度移動しているのか、ということが問題になってきます。

【ふだんの交通機関の利用】

vol405_01.jpg

※上記交通手段を「ふだん利用する」と答えた割合

※( )内は1日当たりの平均利用時間

 電車やバスなどの公共交通機関を「ふだん利用する」のは、全国で50%、1都3県の首都圏では70%となっています。同様に乗用車をふだん利用するのは全国で76%、首都圏で70%となっています。通勤圏の広さや交通網の整備具合、あるいは人口などの違いにより、全国と首都圏ではふだん利用される交通手段にかなり差があるようです。また、公共交通機関の利用では、1日あたりの平均利用時間にも差がでており、全国では49分、首都圏で60分となっています。

移動中のメディア接触

 では移動中に人は何をしているのでしょうかもまた何をしたいと思っているのでしょうか。

【電車内でのメディア接触・欲求】

vol405_02.jpg

 電車内で「現在している」行動として多くあがっているのは、「外を見る」(47%)、「睡眠」(38%)、「考えごと」(33%)などで、メディアに接触するというよりも、単に"ぼーっとしている"といった様子です。積極的に何かやっているものとしては「読書」(28%)「雑誌(を読む)」(22%)などがあり、中吊りなどの「広告を見る」という行動も23%あがっています。

 その中で「できればしたい」行動としては、「読書」(29%)、「睡眠」(26%)、「CD・MD等(を聴く)」「雑誌(を読む)」(20%)などがあがっており、今現在やっていること(=ほとんど何もしていない)より多少メディア接触に近づいているものの、いずれも今現在やろうと思えばできることが並んでいます。

 さて問題のテレビですが、「現在している」という回答はほとんどありませんが、「できればしたい」という人は15%います。

【自動車内でのメディア接触・欲求】

vol405_03.jpg

 自動車内で「現在していること」は、「CD・MD等(を聴く)」(45%)、「ラジオ(を聴く)」(43%)などの音声メディアが中心になっており、車というビークルの特性上当然ともいえる結果となっています。また「人と話す(39%)や「外を見る」(32%)も高くなっています。

 「できればしたいこと」でも、「CD・MD等(を聴く)」(31%)、「ラジオ(を聴く)」(22%)などの音声メディアへの接触ニーズは高くなっています。しかし全般的に、電車での移動中に比べて「できればしたい」行動が少なくなっているのは、前述した車の特性が影響しているといえそうです。その中で「テレビ」を見たいとするのは、電車内でのニーズより若干高い17%となっています。

モバイル端末への接触

では次に、テレビのモバイノ雌蔽の受信端末陰補である各デバイスの利用状況を見ていきましょう

【利用時間量】

vol405_04.jpg

 まず、携帯電話をふだん利用しているのは57%で、1日あたりの利用時間は10分未満というのが最も多くなっています。PDAについては15%が「ふだん利用する」としていますが、週に1度以上利用しているのは全体の1%程度、弊社の他調査でも「携帯情輔幾器」という名目での所有が6%程度となっていることから、実際の利用者はもう少し少ないものとみられます。PDAの利用時間も、1日あたり10分未満が圧倒的となっています。

vol405_05.jpg

 携帯テレビの所有は10%となっていますムこれは専用のテレビ受信端末もさることながら、最近増えてきたポータブルのカーナビが含まれているものと考えられます。そのカーナビの所有は17%で、うち9割弱が、何らかの形でふだんカーナビを利用しています。機能別の利用頻度をみると、必要時の利用を含めて「ふだん利用している」のは、「ルート検索」(97%)がトップですが、「ほぼ毎回利用」と「ときどき利用」の合計スコアでは、「テレビ放送受信」(49%)がレレート検索」(37%)を凌いでいます。カーナビの主機能はもちろんレレート検索」ですが、毎回知らない道を走行するわけではないので、これは当然の結果といえるでしょう。とはいえ、カーナビによるテレビ放送受信が、既にある程度の頻度で行われているということは、筆者にとって新しい発見でした。

モバイル視聴ニーズ

 最後にモバイル視聴の具体的な魅力度についてみていきます。

【モバイル視聴の魅力度】

vol405_06.jpg

「携帯電話やPDAなどでテレビが見られるようになる」に「非常に魅力を感じる」としたのは14%、「やや魅力を感じる」としたのは21%で、合計35%の人が魅力を感じています。このうち、「費用をかけても利用したい」としたのは6%です。また、「移動中の空いた時間に、見逃したテレビ番組などが携帯端末で)視聴できる」というように、具体的な利用シーンを提示すると、合計で46%の魅力度となり、費用拠出も10%の人が是としています。

テレビのモバイル視聴の可能性

 さて、以上述べてきた数字をどのように解釈すれば良いのでしょうか,

 筆者としては、移動中のテレビ視聴意向15~17%と、モバイル視聴ニーズ携帯端末でテレビが見られるようになる)のトップ1(非常に魅力を感じる)14%という二つの近しい数字をふまえて、最大で15%程度のニーズがありそうだと考えています。しかしどんなデバイスでもすぐに利用が進むということではなく、現状普及の低いPDAや、普及はあっても画面サイズの小ささが気になる携帯電話に比べ、現在既にテレビ視聴の習慣がついているカーナビからエントリーしていくのが、最もあり得そうなストーリーではないかと考えています。

 「15%のニーズは少し多すぎるのではないか」という意見も多いかと思います。しかし携帯電話の普及以前、「外出先でまで誰かに呼び出されたくない」と考えていた人々は相当数いたのではないでしょうか。また携帯以前のポケットベルについても、ビジネス以外の用途を想定した人が当初どの程度いたでしょうか。しかし、いずれも程度の差こそあれ、個人所有商品として広く普及していったことは言うまでもありません。

 「必要は発明の母」と言いますが、現在のように多くのモノが氾濫する世の中にあっては、もはや「必要は造られるもの」と言えるでしょう。携帯電話におけるメールの送受信がそこかしこで行われるようになったのも、そこに必要があったからではなく、新たなコミュニケーション行動を喚起させるような仕掛けがうまく機能したからだと考えられます。

テレビのモバイル視聴が今後私達の生活行動に入り込んでくるかどうか、それはひとえに、そのためのデバイスやパッケージ、メニュー等々をどう作り込んでいくのか、あるいは長時間使用に堪えられるバッテリーを開発していけるか、という企業側の努力にかかっているのではないでしょうか。

            

(メディアマーケティング局 デジタルメディア部 安増理恵子)

デジタルメディア総合調査概要

【調査地域】 全国

【標本抽出法】 RDD

【調査対象者】 満12~69才男女個人

【調査方法】 事前説得による郵送留置調査法

【サンプル数】 指令2400S 有効2011S

【調査実施期間】2001年8月20日~9月6

【調査内容】 テレビを中心とした各メディアへの接触状況、メディア環境、支出、生活意識など

この記事をシェアする
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!