US Media Hot News 大成功を収めたNBCの冬季五輪放映

VRDigest編集部
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本記事は2002年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 2月8日から約2週間にわたって開催された冬季五輪は、ご当地のユタ州ソルトレイクシティーはもちろん、アメリカ全土に明るい話題と活気を振りまきました。9月11日のテロ・ショックから5ヶ月余――。愛国心が高まっている折からか、国民の心をひとつにするスポーツの祭典に全米から惜しみないエールが届きました。巨額を投じて放映権を獲得していた米ネットワーク局のNBCにとって、テロ事件後の緊迫した情勢は大きな不安要因でしたが、大会を振り返り、予想以上の好結果に歓喜しています。開幕直後に批判が集中した生中継の少ない番組編成も、大会期間を通じて高い視聴率を維持したことで結果オーライといえましょう。スポンサーの反応も上々で、広告枠は順調に売れ、五輪中継は黒字を計上する大成功を収めました。

 今回の五輪は新たなテロ事件発生を防ぐため、異常な厳戒体制の下で開かれました。会場のあちらこちらでは迷彩服を着た米軍兵士が銃を持って護衛にあたり、物々しい雰囲気が漂いました。それでもテロのリスクが完全に消えたわけではなく、人々は一抹の不安を抱えながら開会の日を迎えました。

 開幕してみると、滑り出しから好調な米国勢の活躍に全米から喜びの声が上がりました。しかし、それとは裏腹に、NBCの五輪報道スタイルには不満の声が噴出しました。なぜなら、昼時間帯に人気競技の生中継を流さず、人気競技を含めて多くの競技を夜のプライムタイムで録画編集して放映することが多かったからです。いまや、インターネットで競技の結果をいち早く入手できる世の中です。すでに結果を知ってからでは、テレビで見る競技の面白さが半減してしまいます。録画を編集した映像では、"筋書きの無いドラマ"のはずのスポーツが恣意的な産物に見えてきます。今回、プライムタイムに放映された五輪番組の約割は録画でした。同じく録画が多いと批判された2000年のシドニー夏季五輪は

時差が大きかったというハンディキャップを負っていましたが、今回は最大で2時間の時差こそあれ、国内です。前回の経験を活かしていないことに、米紙などはこぞって痛烈な批判を浴びせました。

 非難されながらもNBCが録画に頼るスタイルを貫いたのには理由があります。米国ではスポーツ中継の放映権を巡ってネットワーク局が巨額を振りかざして猛烈に競い合っており、今大会にNBCが支払った放送権料は約5億4500万ドルでした。この費用を広告スポンサーからの収入で賄うため、視聴率を意識した報道にせざるを得ないというわけです。NBCは五輪番組を単なるスポーツイベントでなく「ポップカルチャーのスペクタクル(見世物)」と表現し、積極的に視聴者を獲得する作戦に出ました。広告主が特に求めている18歳から34歳までの年齢層を惹きつけようと、スピードとリスクをはらんだ競技の放映を多くしたり、人気ミュージシャンを呼んで競技以外の余興を充実させたりしました。

 高視聴率を記録するため、全国版コマーシャルを流さない五輪番組の幾つかは調査対象から外せることを利用して、人気の低い競技では地方版CMを挿入するといった工夫もしました。シドニー五輪放映ですこぶる悪評だった点もいくつか改善し、コメンテーターの出番を少なくしたり、選手のプロフィール紹介を短くしたりするように心掛けました。こうした方針を好感してか広告スポンサーは順調に集まり、プロフットボールの祭典「スーパーボウル」の開催とかち合ったにもかかわらず、ひとコマが30秒で60万ドルという高額の広告枠が7億2000万ドル分売れました。

 NBCの作戦は功を奏し、米国選手のメダル獲得ラッシュやフィギュア・スケート競技での談合スキャンダルが加勢したことで、プライムタイムでの全米世帯平均視聴率は、長野で開催された1998年大会を3%近く上回る19.2%を獲得しました。期間中の延べ視聴者は推定で約1億8400万人にのぼり、米国民の84%が五輪中継にチャンネルを合わせたことになります。また、プライムタイムに放映された五輪番組はすべてその時間帯の視聴率トップを記録。予想以上の好結果に広告収入はさらに増え、大会中2000万ドルを加えました。NBCは推定7500万ドルの収益を上げたと見られ、NBCの冬季五輪テレビ中継は成功に終わりました。

 テレビ番組のほか、NBCが作った五輪関連のウェブサイートも好評でした。サイトには試合結果はもちろんのこと、各国のメダル獲得数やその内訳、選手名といった情報などが満載され、内容は小刻みに更新されました。開会式当日のアクセス件数は100万人を上回り、シドニー五輪で記録した一日の最高アクセス件数をあっさり塗り替える盛況ぶりです。インターネット時代らしく、五輪会場には約5万1000キロメートルの光ファイバー網が敷設され、所々に設置された情報ターミナルではユーザーがサイトを開いて競技情報を得る姿が見られました。従来、五輪大会のIT技術を提供してきたIBMに代わり、今年はマイクロソフトや通信大手のAT&Tら15社が占ンソーシアムを結成して技術を支え、こうしたIT企業の協力・競演ぶりも注目に値する大会となりました。

 NBCは2008年に北京で開かれる夏季大会を含め、あと3回、米国で五輪を放映する権利を握っています。次回の開催地はオリンピック発祥の地アテネとあり、今から関係者の間で熱が入ります。時差を乗り越え、どういう形で五輪中継を楽しませてくれるのか今から楽しみです。

Video Research USA, Inc.

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