US Media Hot News 転機を迎えた米オンライン広告業界

VRDigest編集部
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本記事は2002年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 米国のオンライン広告業界が転機を迎えています。インターネット登場以来、拡大の一途をたどっていた市場は、2001年度に初めてマイナス成長となりました。米国内全体に広がる景気停滞ムードを背景に企業は広告支出を渋っており、なかでも効果の分かりづらいオンライン広告には消極的です。このトレンドを打ち破るため、最近では新しい広告手法が続々と登場し、業界団体は信頼の置ける効果測定基準を確立するためのガイドラインを設けました。こうした試みで業界の流れは変わるのか気になるところです。

 新しい広告手法の特徴は「より大きく、より派手に」です。これまでは、邪魔にならないようにとの配慮から、バナー広告のような形で画面の痕に広告を掲示する保守的なスタイルが主流でした。しかし、マーケティング予算を切り詰めている企業にとって重要なのは費用対効果です。そこで、「ポップアンダー」「ハイジャック」「乗っ取り」「自由形式」といった数々のスタイルが生まれました。

 ポップアンダー広告はウェブページの裏にかくれた広告で、ユーザーがページを閉じると現れます。これに対峠する「ポップアップ広告」では、サイトにアクセスした時に広告が流れるため、アクセスの中断を嫌って広告の窓を閉じてしまうユーザーが少なくありません。その点ポップアンダーなら用事が済んだ後に出るため広告に目を通す確率も大きく、実際、ほとんど無名だった米ワイヤレスカメラ・メーカーのⅩ10はこの方法でサイトへのアクセス件数を月間4位にまで増やしました。広告費用が表示回数1000回あたり5ドルと比較的安いことも魅力で、この手法は主流になりつつあります。

 ハイジャック広告は競合他社のサイトに現れて広告を表示する方法で、「待ち伏せ攻撃」とも呼ばれます。英語では、基本技術を提供する米ソフト会社のグーター・ドットコムにちなんで"Gatored"広告と呼ばれています。この手法では、例えば、花屋のサイトに配達の注文をしようと訪れたユーザーに、「ⅩⅩ社(ライバル社)では10ドル値引きしますよ」といった具合に持ちかけてユーザーを誘います。まるで店先で顧客を奪うような手法との評や不法行為だとする声もありますが、競争力は抜群です。

 ハイジャック広告をさらにエスカレートさせたのが乗っ取り広告です。ハイジャックと同じくグーター・ドットコムが取り組んでいる手法で、他社が載せている同じ大きさのバナー広告を見つけて自社の広告をかぶせてしまいます。ユーザーがページを動かしても広告は残るため、広告がすげ替えられたことに気付かない場合もあるそうです。ただし、こちらも倫理上や法律上の是非が問われています。

 同じ乗っ取りでも、画面いっぱいに広告を広げてサイトを覆いかぶせる手法もあります。すでに現れているバナー広告をカーソル操作で拡張するもので、広告の中身は変わらない上、サイト側が承知しているので前述の乗っ取りに対するような批判はありません。

 自由形式広告は米ソフト会社ユナイテッド・バーチセリティーズが開発した"shoshkeles"と呼ばれる技術を使って画像に動きを与えます。ある新聞社は購読キャンペーンとして、新聞を配りながら駆け回る配送トラックの画像をサイト上で展開しました。広告コストは1000人あたり25ドル~75ドルとバナー広告に比べて割高ですが、広告見たさにサイトを再び訪れるユーザーも多く好評です。さらに遊び感覚を高めたデジタルゲーム形式の広告も、口コミでフアンが広がるなど宣伝効果は大きいようです。

 新種の広告はどれも比較的効呆を上げているようですが、中には強引さが目立つものもあり、ユーザー離れの心配も出ています。こうした事態を防ぐため、1日に表示する広告の回数を制限するといった工夫もなされています。

 しかし、広告主は効果的な広告手法もさることながら、信頼できる測定基準の確立を望んでいます。それに応えたのが、業界団体であるインタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー(IAB)のガイドラインです。米オンライン業界では、年間70億ドル前後の広告売り上げのうち、1割強の支払いを巡ってスポンサー企業と広告製作側がもめるという統計があります。こうした論争を回避し、低迷する市場に活気を与えるため、米メディア大手のAOLタイムワーナーや米マイクロソフトネットワーク、ウォルト・ディズニー・インタラクティブなどサイト運営業者や広告配信の主要企業の協力を得て、IABは今回のガイドラインを策定しました。

 ガイドラインの概要は、広告表示回数(インプレッション)やウェブトラフィックの数え方推奨などです。現状では、スポンサー企業はインプレッションを広告配信時に数え、対する制作企業はサーバーから広告が出た時点で数えています。これでは何らかの理由で広告が画面に表示されない場合に誤差が生じ、料金の差につながります。このため、ガイドラインでは配信プロセスの最終地点近くで数えることを勧め、トラブル防止を狙っています。

 トラフィックの数え方では、従来の方法でいくとヤフーなど検索サービスが内容更新のために送り出すロボットまで数えていたため、実際の数値から2~10%の誤差を招いていました。帯域を節約するためにサーバー上などへページをため込む「キャッシング」というプロセスも数え方に影響するため、IABでは対処するよう勧めています。

 こうしたガイドラインに対し、いくつかの企業は早速賛同を表明しました。しかし、中にはシステムの変更やコード開発などに多大なコストや労力を要する場合もあり、どこまで支持者を得られるか不明です。強制力のないガイドラインにどう従わせるかも問題で、今後、業界の抱える課題は少なくありません。

Video Research USA, Inc.

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