US Media Hot News 米教育現場でのeラーニング動向

VRDigest編集部
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本記事は2002年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

インターネット先進国の米国では、ネット利用が教育現場にも浸透しています。幼稚園の頃にパソコンに慣れ親しみ、小学生ともなれば宿題にインターネットを利用し、高校生は進学先の情報をネットで検索するといった具合です。大学ではオンライン・コースを開設していることが当たり前になってきています。企業や行政の支援のもとに教育ツール、あるいは教育インフラとして定着したインターネットはベンチャーキャピタルなどの資金を得て、いっそう未来の学校教育に貢献しそうです。

 米国では、小学校上級生ともなるとインターネットを使って宿題を済ませるのが当たり前になっています。例えば、アフガニスタン情勢の緊迫が騒がれていたころ、あるクラスでは「アフガニスタンについて調べなさい」といった課題が出ました。以前ですと学校や市の図書館へ出向いて調べものをしたものですが、今どきの小学生はクラブ活動やお稽古事と東奔西走の大忙しです。自宅のパソコンからインターネットで調べられるとなれば子供はもちろん、送迎に明け暮れる親も大助かりとあって、今では図書館よりもインターネットに依存する生徒が圧倒的です。

 ところで、このeラーニングの定着はパソコン(PC)の普及なしに語れません。このPC普及を促したのは、米アップル・コンピュータなどの民間企業です。アップルは1979年から教育機関への支援に取り組み、「教育寄付金」の名の下にパソコンを学校などへ寄贈してきました。教育市場の開拓という産業的見地からも成功し、同社はPCビジネスの草創期に教育分野で巨大な市場シェアを掌握しました。市場の潜在規模に着目したデル・コンピューターやマイクロソフトがあとに続き、IBMも2年前にインターネット教育事業を新設しました。現在はデルがアップルに代わって首位の座に収まり、首位奪回を目指すアップルや他社が激しい競争を繰り広げています。

 地方自治体の取り組みもネット環境の整備に役立ちました。全米で最もネット教育が進んでいると言われているサウスダコタ州では、州内の学校生徒3.5人につき1台の割合でPCが置かれています。州知事が音頭を取って教育機関のハイテク化を推進し、一昨年、4年の歳月をかけた情報インフラ「デジタル・ダコタ・ネットワーク」が完成しました。このネットワークは公立・私立学校や図書館など400以上の施設を結び、情報の双方向通信に役立っています。サウスダコタ州のように過疎地域の多い場所では遠く離れた学校へ通うのが困難な生徒もいるため、生徒を教室に集めず、テレビやPCを利用して自宅にいる生徒に講義する「遠隔授業」が有用です。全米には遠隔授業に参加している生徒が100万人以上いると見られます。地理的な制約を受けないため、多彩な科目を開講できたり優秀な教師を確保できるとあり、過疎地域以外でも広がりつつあるようです。

 教育機関そのものがネット推進に積極的だったこともeラーニングの前進に一役買いました。全米公立学校のネット接続状況は、94年に35%だったのが現在ではほぼ100%です。サウスダコタ州で教職員を対象にネット利用講習を開いたところ、全体の約半数が受講しました。幼稚園ではPCに触れる機会をカリキュラムに取り入れ、小学校では意図的にインターネットを使わせるような宿題を出しています。自然とネット操作を身につけた子供たちは中学・高校と進んでも日常のあらゆる場面でネットを駆使できるようになっていきます。

 大学レベルではオンライン開講が珍しくなく、全米で推定7割前後の大学が実施しています。オハイオ州のデイトン大学はこの秋の入学志望者からネット経由でしか願書を受け付けないことに決めました。同大学に先駆けてウエストバージニア州の大学が願書の徹底オンライン化に踏み切っており、全米で2番目の動きです。中にはeラーニングを収益事業として捉え、株式公開を検討している大学もあると噂されるほどです。

 米国には教育現場の未来図を熱っぽく語る人々が多数います。マイクロソフトのB・ゲイツ氏もその一人で、私有財団から全米の学校へオンライン化推進のために寄付をしています。同氏の描く未来図は、生徒一人一人が携帯型のPCを持ち、超高速のワイヤレスネットワークであらゆる場所から画像や音声にアクセスできる姿です。教室には巨大スクリーンを設置して生徒のPCから取り出した画面や教師が教育関連サイトで見つけた資料などを映し出して使います。PCを覗けば子供の学習状況が一目瞭然で、親は授業内容と自分の職業の接点を見つけて教師に連絡し、教師と生徒、親の3者が連携して教育に取り組めるようになると期待しています。

 マイクロソフトのお膝元、シアトル州から選出されたマリア・ケントウェル上院議員はネットの持つ双方向性が教育現場で役立つと説いています。双方向であれば個々の生徒に合わせて授業を進められるため落ちこぼれを作ることがなく、決まった時間に決まった科目を習う授業のスタイルから、生徒が好きな時間に好きな教科にアクセスできるスタイルに変わると予想します。教育は教室の枠を超えてグローバルになり、果ては、世界の異文化を理解する上で役立つと期待しています。

 しかしeラーニングは問題点も抱えています。インフラとしてインターネットを利用する場合、個人のペースに合った寸受業を受けられる反面、生徒同士で励まし合うことができません。セキュリティ面の徹底が困難で、虚偽の学位を発行した大学が現れました。教育ツールとして利用する場合は、インターネットでカンニングや無駄なサーフィングが増えたとの声があります。情報源をインターネットに頼るあまり、生きた教育が失われつつあるといった批判も聞こえてきます。オンライン教育の分野は期待も課題も大きいのが現状です。

Video Research USA, Inc.

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