デジタルメディア教室(19)~カスタマイズサ-ビスとエージェントサービス~ISPサイトのトップページ・アクセス数との比較etc.

VRDigest編集部
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本記事は2002年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 メディアのデジタル化が進む中、例えばブロードバンドでの動画配信、サーバー型放送、モバイル向け放送など、生活者のコンテンツライフを大きく変化させるかもしれないサービスのアイデアはいろいろと聞かれます。

 それらの目指す方向性を生活者の享受できるメリットとして要約すると、「いつでも、どこでも、好みのコンテンツを、好みの方法で視聴(利用)出来る」ということになると思われますが、それはそれでコンテンツや情報の"氾濫"があって、生活者サイドでは混乱が生じる可能性も指摘できます。

 そのようなコンテンツや情報の氾濫に対するサービス開発のアプローチとして「カスタマイズ」と「エージェント」という分野があるかもしれません。

 あくまで筆者の区分ですが、「カスタマイズ」と「エージェント」の違いは、前者がユーザーの能動的な情報選択を支援する仕組みで、後者がその能動的な情報選択の手間を機械的に代行する仕組みと考えるとよいのではないでしょうか。

 デジタルメディアの世界で「カスタマイズサービス」の例では、Yahoo!のMy Yahoo!が挙げられると思います。

 My Yahoo!では、ジャンル分けされたニュース、地域別の天気予報、任意の地域情報、個別銘柄の株式情報などの用意されたメニューから自分の関心のあるものを選び、それらを効率よく収集出来る自分専用のページを作ることが出来ます。似たようなサービスは、他の検索サイトやISPなどでも提供されていますので、実際に利用している方もいらっしゃることでしょう。

 個人的には、使ってみるとそれなりに便利なサービスであると思うのですが、一般にはあまり利用されてはいないようです。

 My Yahoo!の例でみると、ビデオリサーチネットコムのインターネット視聴率調査(ホームパネル)によれば、6月17日(月)~23日(日)までの1週間に、Yahoo!のドメイン下にあるいずれかのサイトにアクセスした接角賭率(リーチ)は62.8%(期間中ドメインレベルでトップ)、そのカスタマイズサービスであるMy Yahoo!サブドメインの接触者率(リーチ)は2.7%(Yahoo!ドメイン接触者換算でも4%)でしかありません。他のISPサイトの場合でもトップページのアクセス数に比べて、カスタマイズサービスの利用は微々たるもののようです。

 上記の結果には、IDを取るのが面倒とか、わざわざ特定のサイトをカスタマイズするまでもなく情報収集出来るとか、好みの情報やツールがないなど、様々な「利用しない理由」は考えられえますが、Yahoo!の媒体パワーをもってしても、ユーザーの能動的な情報選択を支援する「カスタマイズサービス」を、身近なものとして定着させるのは容易でないようです。

 では「エージェントサービス」の場合はどうでしょうか。

国内でのエージェントサービスの具体的な事例はあいにく聞きませんが、米国でPVR事業を行っているTiVoは、録画を含めた番組の視聴履歴からユーザーの番組嗜好を判断し、「サゼッション」の番組リストを提示する機能があり、「エージェントサービス」の代表例と言っていいかもしれません。

 ここでの「エージェントサービス」の「カスタマイズサービス」との決定的な違いは、ユーザーが番組噂好を予め自己申告するのではなく、実際の番組視聴行動(=機器利用)を通じて、本人も自覚していないような番組嗜好を自動的に判別し、番組を推奨できる可能性がある、ということだと思います。

 このサービスを日本に置き換えた場合、漠然とよぎる懸念としては、家族の趣味・噂好がそれぞれ反映される居間のテレビでもその機能がうまく働くのだろうか?、それを回避するために視聴率のピープルメータのように、視聴者ボタンでも押させなければならないのだろうか?といったことはすぐに思いあたります。仮にそうであるとするならば、現象面としてはカスタマイズサービスと大差ないと言っていいかもしれません。

 今回取り上げたのは少ないケーススタディではありますが、カスタマイズサービスの場合には、ユーザー自身が情報選択を行う「動機の所在」に加え、ハードやソフトの操作に関する情報リテラシーが要求されると考えられます。

一方、エージェントサービスは、理念上、上記のような障壁(動機の自覚・わずらわしさ)を取り除こうとするアプローチであり、それ自体はユーザーへのアピール力があると考えられますが、利用してみないことには具体的な効用を体感しがたい部分で、特別なハード(デバイス)を購入させるようなアプローチは難しくなると考えられます。

 そのような難しさは指摘できますが、今後の多メディア・多チャンネル環境を前提にすれば、カスタマイズサービスも、エージェントサービスも、やはりそれぞれにサービスとしての可能性は否定できないと考えられます。

 その成否の鍵は、ハード(デバイス)の競争の側面もありますが、最終的にはそれぞれのサービスに誘導できるような"ユーザーインターフェース"の理念と出来映えになるように思います。

                    (デジタル戦略室 デジタルメディア部 石松 俊之)

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