US Media Hot News "米国を包むワールドコム・ショック"ネットバブル崩壊に続くワールトドコム破綻

VRDigest編集部
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※本記事は2002年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 米長距離通信会社ワールドコムの倒産に端を発した"ワールドコム・ショック"が今、米国を包んでいます。資産総額1070億ドル(約13兆円)、負債総額410億ドル(約5兆円)という過去最大の規模もさることながら、決算を粉飾していたという事実が「またか」という思いを国中に与えました。世界経済が低迷しても独り勝ちを続けてきた米経済が虚偽に彩られていたことが露呈し、産業界をはじめ金融界、政界まで動揺しています。一連の不祥事は国の威信さえ傷つけかねず、ブッシュ大統領もこれらの対応に真剣に取り組んでいるところです。

 ワールドコムは4月に会長兼最高経営責任者(CEO)の役を解任されたバーナード・エバーズ氏が1983年に興した会社です。

それまでAT&T、MCI、スプリントが三つ巴の戦いを繰り広げていたテレコム市場に「格安な電話料金とインターネットの普及」をモットーに参入し、瞬く間に大型プレーヤーにのし上がりました。野心の強いエバーズ氏は初めから打倒AT&Tを目指して企業買収を繰り返し、98年には業界2位のMCIコミュニケーションを手中に収めて世間を驚かせました。

 当時、売り上げにしてワールドコムの2.5倍もあるMCIを買収できたのは、株式市場のおかげです。成長ぶりをアピールして高い株価を維持すれば、手元に資金がなくても株式交換による買収が可能です。ワールドコムはこの方法で75社以上を買収し、「規制緩和の旗手」などともてはやされてテレコム界の巨人へと成長していったのです。

 しかし、株価は企業業績だけで決まるものではありません。業界や経済全体の動向が影響します。ワールドコムも例外でなく、2000年3月ごろからIT景気に陰が差すと株価の低迷に悩まされました。「ドットコム・バブルの崩壊」とも呼ばれたこの景気失速は過剰投資が原因です。インターネット人気にあやかろうと新興企業が雨後の筍のように誕生し、期待先行で資金が大量に流れ込みました。しかし、お祭り騒ぎは長く続かず、米景気が冷え込むと投資家たちは容赦無く資金を引き揚げていきました。

 ネットバブルの崩壊に続いて2000年後半ごろからテレコム業界に訪れた不況もワールドコムの株価の足を引っ張りました。同業界では96年に成立した連邦通信委員会(FCC)のテレコム改正法を機に新興企業が50社余り現れました。この改正法は長距離通信や地域電話、ケーブル会社などの垣根を取り払って相互参入を認めたもので、自由競争の活性化が狙いでした。思惑通りにテレコム各社は競い合い、高速ネットワーク通信時代の到来を予測してインフラ敷設を急ぎました。ところが、蓋を空けるとユーザー数の伸びは鈍く、現在、新設インフラの稼働率はたった3%です。これではコストを回収できるはずがなく、新興勢力をはじめ、「光ファイバーの王者」と呼ばれた米グローバル・クロッシングまでもが倒産していきました。テレコム業界は網の目のような提携で一蓮托生の構造になっているため、影響は提携先や顧客、仕入先にまで・及び、ドミノ倒しのような現象が巻き起こりました。泡と消えた投資総額の2兆ドルはドットコム・バブル被害の2倍以上に膨らんだと見られています。

 年間成長率20%を予想していたテレコム各社はバブル崩壊で事業を見直し、今度はワイヤレス通信に起死回生をかけていますが、思い通りに進んでいない様子です。加入者は増えているのですが、その成長ペースは予想より遅く、他方、過当競争が昂じて通話料金の値崩れは止どまるところを知りません。音声以外のデータ通信を可能にした次世代(3G)携帯サービスも不調で、こうした事態を見兼ねてか、米国防総省は現在軍事目的で利用している周波数帯の一部を3G向け民生用に開放すると決定しました。2004年に入札を実施し、2008年から利用可能にする見込みです。

 今回のワールドコム騒動にも政府は積極的に関与しています。米証券取引委員会(SEC)が徹底的な調査に乗り出したのは勿論のこと、ブッシュ米大統領までが法律改正を含む不正取締りに動いています。特別目的会社を使った簿外取引などで決算を操作したエンロン、前CEOの自宅購入資金を会社の費用として計上していたタイコ・インターナショナルなど、不正会計処理が相次ぎ表面化しているだけに絶体絶命です。しかし、当のブッシュ大統領にも、経営者として企業を切り盛りした時代の疑惑がつきまとい、果たして改革が順調に進むかは未知数です。

 不正を働いた企業や経営者だけでなく、それを見過ごし、あるいは見抜けなかった会計事務所や監査法人、企業との癒着で公平な投資評価を怠ってきた証券会社アナリストなどにも不信感は広がっています。中でも「鶴の一声でテレコム業界を指揮する」とまで言われたソロモン・スミス・バーニー社のトップアナリスト、J・グラブマン氏の糾弾が今、世間を騒がしています。同氏が強く株式の買いを推奨したグローバル・クロッシングやウインスター、そして今回のワールドコムなどはいずれも-世を風靡する企業へと成長しましたが、やがて倒産という結末を迎えました。拝金主義が株式市場を増長させ、株価ばかり高くて実体の伴わない企業の虚像を独り歩きさせてしまったのです。

 ワールドコムは今後、傘下に収めたUUネットのネットサービス事業以外を売却する予定です。すでに米新興通信のIDTが個人向け長距離通信の買収を打診していますが、すべての資産売却はSECの厳しい監視下で行なわれることになります。当面の運転資金として20億ドル(約2400億円)のDIPファイナンス(破綻企業への融資)を受け、UUネット出身のシッジモア新CEOを筆頭に動き出しましたが、信頼を回復し、会社を立て直す道は困難を極めそうです。

                                 Video Research USA, Inc.

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