デジタルメディア教室(22)~マスメディアとターゲットメディアのメリット&デメリット~

VRDigest編集部
VRDigest編集部
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!

※本記事は2002年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 地上波デジタル放送の放送開始を2003年12月に控え、放送業界がにわかに慌ただしくなってきました。この新しい放送の登場は1960年のカラー放送開始や1987年の衛星放送開始のような、テレビ史に残るいくつかの変革に並ぶ大きな出来事のひとつといえます。

おそらく多くの関係者が、新しい放送形態について期待と不安の入り混じった気持ちを抱いていることでしょう。

 この地上波デジタル放送にみられるように、新しい放送の形が次々と出現している中で従来の「テレビ」では考えられなかった様々な機能が実現しつつあります。一般に「タイムシフト」「インタラクティブ」「モバイル」「多チャンネル」などのワーディングで語られているそれらの新幾能は、「より的確なターゲットに」「より深い」到達を可能にするものとして期待されています。しかし従来のマスメディアの概念と相対するこのような特徴を、私たちはどのように受け止めればよいのでしょうか。

 そもそもマスメディアとは、情報を「一般に、広く大量に伝達する」ための媒体です。15世紀の活版印刷技術の発明に始まる活字メディアからラジオ、テレビにいたるまで、全てのメディアはこの目的ため、この特性がゆえに利用され重宝がられてきたといえましょう。またラジオ以降の放送メディアでは、瞬時に伝達が可能な「同報性」機能が加わると共に「大量に」の部分でも大幅にマス性を増大させました。

 しかし様々なマスメディアが混在する今日においては、テレビのように強力なマスメディアがある一方でよりターゲットが細分化されたメディアも存在しています。あらゆる年代や噂好者に的を絞って編集される雑誌や、一定の情報に特化した新聞、または若年層や高齢層に強いラジオなどがそれにあたります。マスメディアでありながら、このようにターゲットを限定したメディア(以下、ここではターゲットメディアとします)が存在するのは、一つには「マスメディアの持つマス性は他メディアとの相対関係の中で成り立っている」ことによると思いますが、一方で「個人到達が可能な媒体ほどターゲットメディアとなり得やすい」とも言えるでしょう。つまり「テレビの台頭によってラジオは相対的に聴取者を減らした」が、同時に「トランジスタの発明による小型化実現によって、ラジオはいつでもどこでも個人が好きな番組を聴けるようになり、聴取者が細分化した」とも言えるわけです。

 ではここでマスメディアとターゲットメディアの特徴について整理してみましょう。

 当然ながら到達の量レヾイの大きさ)が違いますムマスメディアの主目的は情報の大量投下にあるので、到達のパイが大きくなればなるほどメリットも増大します。しかしこれは同時に"不必要なターゲットへの無駄な情報投下"の危険性をはらんでいるともいえますし、まただからこそ(不必要な大量投下の中から)予想外のターゲットを発掘できる可能性があるといえるでしょう。一方で、ターゲットメディアはパイの大きさと引き換えに、まさに情報を伝達したいターゲットに投下することを可能にしています。更に趣味噂好性の高い情報メディアであれば、提供される情報に関する接触者の関与度がかなり高いことが期待できるとともに、情報への接触態度がより積極的である可能性も考えられます。

 また情報の内容については、より広い按角賭を想定したマスメディアよりも趣味噂好性の高い情報を提供するターゲットメディアの方が、より深く詳しい情報を提供することが可能です。しかしこれも広く一般向けに情報を集約、編集した情報という意味においては、マスメディアの「浅く広い」情報に価値の高さを見出すことができます。

■表1.マスメディアとターゲットメディアの特徴

vol412_17.jpg

 このようにマスメディアとターゲットメディアは、いずれもメリットとデメリットが表裏一体となった特徴を持っているといえます。したがって「ターゲットの的確性」や「より深い到達性」を生み出す新しいメディアの登蓼や新しい技術の開発も、あくまでメディア利用の選択性を高める一手段にすぎず、決して既存のマスメディアの価値を下げるものではありません。

 従来メディアは価値ある情報をより多くの人に届けたいという意味においてマス性を指向してきたと思われます。しかしその目的が達成されるにつれ、メディアの価値は情報そのものから広告(媒体としての価値)へと変化してきました。(もちろん情報そのものの価値がなくなったわけではありませんが、少なくとも広告媒体としての価値が大きくクローズアップされてきたことは確かです。)しかし新たなメディアや技術が登場しつつある昨今、「より適切なターゲットに」「より深い到達」が可能なメディアの新規性に注目するあまり、既存のマスメディアが持つそのマス性を否定する風潮が生まれてはいないでしょうか。

 そもそもマスメディアは、そのマス性ゆえに巨大なパワーを持っています。テレビを中心に様々なメディアの変貌が予測される今こそ、私たちはもう一度マスメディアの持つ力を見直すべきなのかもしれません。

(デジタル戦略室デジタルメディア部  安増 理恵子)

この記事をシェアする
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!