US Media Hot News ビジネス界に広がるP2P技術~米ナップスターが違法判決!

VRDigest編集部
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本記事は2002年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 米国では昨年あたりからP2P(ピアー・トウ・ピアー)サービスがビジネス界で急速に広がっています。P2Pと言えば違法判決を受けて営業停止に追い込まれた米ナップスターの音楽ファイル交換サービスが有名ですが、P2P自体に違法性はなく、今や、企業の知識を活用し、情報を効果的に流すことなどに応用されています。P2PのおかげでPCは受動的なツールから能動的ツールに変化しつつあり、従来のクライアント/サーバー(C/S)型モデルを覆す「次世代のインターネット・アプリケーション」ともてはやす声もあります。新興企業はもちろん、インテルやアップルコンピュータなど大企業も参入を急いでいる話題の市場です。

 P2Pは複数のPCをネットワークでつなぎ、デジタルコンテンツを格納・配信できるツールを提供する技術です。アプリケーションの頭脳部分とタスクを各PCに分散させるため、主流のC/S型より高速で高いコスト効果をあげられます。そもそも10年前に誕生した技術ですが、社会構造が組織の細分化と自立型の分散型社会へ移行する中で注目されはじめました。小さな組織を束ねた大企業では、従来のC/Sシステムで情報ネットワークを構築するのに多額の設備投資を要するため、高額なサーバーを必要としないP2Pシステムが脚光を浴びたのです。

 P2Pサービスは、大別すると分散コンピューティング、コラボレーション(協力)、ファイル交換、コンテンツ配信の4つに分類することが出来ます。

 分散コンピューティングは、インターネットに接続しているもののユーザーが利用を休止している状態のPCをネットワーク上で探し出し、余分なリソースを効率よく利用するビジネスモデルです。例えば、複雑な演算処理に一台のPCでは対応できないほど大量のメモリを必要としている時、同技術を使って休眠状態のPCを見つけ、それらのメモリを借りて演算に利用するといった具合です。米ユナイテッド・デバイス社がこの分野では先行し、医療機関や金融機関と契約して疾病治療法の発見や金融分析に役立っています。

 コラボレーションは、インターネットのユーザー同士で情報を共有してコミュニケーションを取り合うビジネスモデルで、米グループ・ネットワーク社が有名です。例えば、メールシステムの分野で主流のマイクロソフト社「アウトルック」が中央サーバー型であるのに対し、グループ社のサービスは個々のPCにストレージや処理機能を置く分散型です。ストレージサービスなどにかかる運営コストをユーザー側にもたせつつ、ファイルを共有することでサーバー型と同様の機能を提供します。ウェブを介した遠隔会議やプロジェクトに利用することもできます。

 ファイル交換はナップスターに代表されたサービスで、ビジネス界に転用すると企業内あるいは企業間での情報交換で実力を発揮し、情報の多重活用、費用対効果の向上を期待できます。同部門のソフトウエア開発では米ファースト・ピア一社が有名で、「プロフェッショナル・サーバント」といった製品を提供しています。米レッドマインド社はナレッジ・マネジメント分野のソフトウエア開発を手掛け、米証券会社のモルガン・スタンレーや米ダイムラー・クライスラーなどで採用されています。

 コンテンツ配信は動画や音楽をP2Pで送信するサービスです。ネットスケープのOBが設立した米コンテイキ社によると、同社が行なった動画配信の非公開実験では、画像の質がテレビ並みだった上、配信速度は従来の約10倍、コストは約3分の1という結果が出ました。すでにeベイのチャリティオークションやパームOSを搭載している携帯端末(PDA)が同サービスを採用しており、効果を実証しています。

 コスト面やコミュニケーションの向上、インターネット利用の限界を克服した点でビジネス界に暖かく迎えられたP2Pですが、問題も数多く抱えています。一つには信頼性です。常時、接続されているサーバーと異なり、個人のPCを複数利用した配信システムでは、どのユーザーがいつ電源を切ってしまうか分からず、不確定要素を抱えているようなものです。

 セキュリティ対策も万全とは言えません。認証サービスや厳しいアクセス制御など、P2P対応のセキュリティ・ソフトは多数開発されていますが、物理的モビリティ(移動性)という点では手薄です。ビジネス界でP2Pが普及するにつれ、技術の導入は卓上PCだけでなくノートPC、携帯電話といったモバイル機器にまで広がることが予想されますが、その場合、企業内の機密情報を載せたモバイル機器を置き忘れたりする事態に対応できる安全システムはまだ考案されていません。

 収益に結びつくサービスに成長していないという事実もあります。サービス内容の宣伝不足やナッブスター騒ぎで植え付けられたP2Pに対する悪いイメージが足かせになっているとの見方が多く、P2Pの名称変更や有名企業との提携加速を求める声が出ていますが、まだ具体的な動きはありません。ビジネス・ニーズによりよく対応して、分散しつつ中央から管理するハイブリッド型P2Pモデルが必要だとの意見も聞かれ、新サービスの開発が急がれます。

 米国ではP2Pの将来性を探る「P2Pコンファレンス」が2001年2月に初めて開催されました。以来、すでに3回を数えて参加者は回ごとに増え、問題解決の糸口や新しいビジネスチャンスに遭遇する場を提供しています。P2Pに対するビジネス界やIT界の期待は高まる一方で、近い将来、企業ネットワーキングやPCのビジネスモデルに大きな変革をもたらしそうです。

Video Research USA, Inc.

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