視聴率分析手法のご紹介(4)ドラマ「東京ラブシネマ」から「スマスマ」へチャンネル切替など流入・流出視聴率データの見方

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※本記事は2003年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 今月は、視聴率分析の中で最も難解でありながら最も有用な手法のひとつ「流入・流出」についてご紹介いたします。「流入・流出」は、他の分析手法と異なりそれ自身に時系列的概念を内在させており、視聴者が時間の経過とともにどの様にテレビを視聴したのかということを明らかにすることができます。つまり、

  「前の時間帯の各局視聴者がどれだけ見に来てくれたのか(流入)」

  「次の時間帯の各局へどれくらいの視聴者が出て行ったのか(流出)」

  「前週の視聴者がどれくらい今週も見てくれたのか(継続)」

  「番組内各コーナー別にみて、どれくらいの人が続けて見てくれたのか(継続)。あるいは裏局を見に行ってしまったのか(流出)」

などを明らかにすることが出来るのです。編成あるいは番組のコーナー割り(番組の放送フォーマット)の考察にご活用頂けます。

 【図1】は、2003年6月9日のフジテレビ月曜21時放送「東京ラブ・シネマ」から22時放送「SMAP×SMAP」への「流入・流出」を行ったものです(「流入・流出グラフ」、特性は世帯、視略条件は1/3継続)。この結果をみると、「SMAP×SMAP」へは前枠の「東京ラブ・シネマ」から13.2のうちの8.8(=66.7%)の世帯が見に来てくれた(継続)、日本テレビ「スーパーテレビ」そしてテレビ朝日「TVタックル」からはそれぞれ5.2、5.0の世帯が見に来てくれた(流入)ということが分かります。そして、「東京ラブ・シネマ」からはテレビ朝日「ニュースステーション」へ2.5の世帯が見に行った(流出)ということも分かります。しかがって、フジテレビ月曜21時・22時に関しては多くの視聴者が継続視聴しており、編成的に視聴者を囲い込めている=編成が上手くいっているといえます。

【図1】「東京ラブ・シネマ」から「SMAP×SMAP」への流入・流出(2003年6月9日)

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◆データの見方

 この様に、編成面についての考察が可能という非常に面白い分析手法ですが、【図1】のデータの読み方に多少苦労した方もいらっしやるかもしれませんので、この「流入・流出グラフ」そして「流入・流出表」の見方を整理してみたいと思います。

 【図2】は、ビデオリサーチのネットワーク情報サービスシステム「iNEX」において「流入・流出」分析をした結果です。この「流入・流出表」と「流入・流出グラフ」の2種類がアウトプットとして出力されます。ここでの集計は、【図1】と同じで2003年6月9日のフジテレビ月曜21時放送「東京ラブ・シネマ」から22時放送「SMAP×SMAP」への「流入・流出」を行ったものです。

 集計結果は大きく4つに分けることが出来ます。

  A;最初の時間帯(時点1)を見た人の割合

  B;後の時間帯(時点2)を見た人の割合

  C;最初の時間帯(時点1)と後の時間帯(時点2)の流入・流出状況

  D;最初の時間帯(時点1)と後の時間帯(時点2)で同じ局を続けて見た人の割合

ここでの場合、Aは21:00~21:53(時点1)の各局を1/3以上(視聴条件)見た人の割合となり、例えばフジテレビだと「13.2」となります(N=599サンプル敷金体)。Bも同様に22:00~22:53(時点2)の各局を1/3以上(視聴条件)見た人の割合となります。Cは時点1と時点2の流入・流出状況を表したものですが、数字自体は時点1と時点2の重複視聴割合と同様です。例えば①は21:00~21:53(時点1)に日本テレビを視聴し次の時間帯22:00~22:53(時点2)にフジテレビを視聴した人の割合、つまり日本テレビ「スーパーテレビ」からフジテレビ「SMAP×SMAP」に流入したあるいは流出した人の割合となりますが、これは両番組を共に見た人の割合つまり重複視瀬清恰に他なりません。 Dは自局継続率で、放送局ごとにどれくらいの視聴者が続けてその局の番組を見たのかというものを計る指標です。他の指標とは若干計算方法異なり、ここでいうAとCで算出された数値を元に計算します。例えばフジテレビの場合、Aにあたる「東京ラブ・シネマ」の視聴者の割合は「13.2」、Cにあたる、続けて「SMAP×SMAP」を見た人の割合は「8.8」。したがってフジテレビの自局継続率はAに対するCの割合で「8.8」÷「13.2」×「100」=「66.7」%となります。

【図2】「流入・流出表」「流入・流出グラフ」の見方

A;21:00~21:53(時点1)の各局を1/3以上見た人の割合。N=599(サンプル数)。

B;22:00~22:53(時点2)の各局を1/3以上見た人の割合。N=599(サンプル数)。

C;21:00~21:53(時点1)と22:00~22:5(時点2)の流入・流出状況。N=599(サンプル数)。

<流入> ①21:00~21:53(時点1)に日本テレビ、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを共に1/3以上見た人の割合

<流入> ②21:00~21:53(時点1)にTBS、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを共に1/3以上見た人の割合

<流入> ③21:00~21:53(時点1)にテレビ朝日、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを共に1/3以上見た人の割合

<流入> ④21:00~21:53(時点1)にテレビ東京、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを共に1/3以上見た人の割合

<流入> ⑤21:00~21:53(時点1)にNHK総合、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを共に1/3以上見た人の割合

<流入> ⑥21:00~21:53(時点1)にNHK教育、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを共に1/3以上見た人の割合

<流入> ⑦21:00~21:53(時点1)にテレビを1/3未満、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを共に1/3以上見た人の割合

<流入> ⑧21:00~21:53(時点1)にフジテレビ、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを1/3以上見た人の割合

<継続> ⑨21:00~21:53(時点1)にフジテレビ、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを続けて1/3以上見た人の割合

<流出> ⑩21:00~21:53(時点1)にフジテレビ、22:00~22:53(時点2)に日本テレビを共に1/3以上見た人の割合

<流出> ⑪21:00~21:53(時点1)にフジテレビ、22:00~22:53(時点2)にTBSを共に1/3以上見た人の割合

<流出> ⑫21:00~21:53(時点1)にフジテレビ、22:00~22:53(時点2)にテレビ朝日を共に1/3以上見た人の割合

<流出> ⑬21:00~21:53(時点1)にフジテレビ、22:00~22:53(時点2)にテレビ東京を共に1/3以上見た人の割合

<流出> ⑭21:00~21:53(時点1)にフジテレビ、22:00~22:53(時点2)にNHK総合を共に1/3以上見た人の割合

<流出> ⑮21:00~21:53(時点1)にフジテレビ、22:00~22:53(時点2)にNHK教育を共に1/3以上見た人の割合

<流出> ⑯21:00~21:53(時点1)にフジテレビ、22:00~22:53(時点2)にその他の局を共に1/3以上見た人の割合

<流出> ⑰21:00~21:53(時点1)にフジテレビを1/3以上、22:00~22:53(時点2)にテレビを1/3未満見た人の割合

D;21:00~21:53(時点1)と22:00~22:5(時点2)共に同じ局を続けてみた人の割合。続けて見た人の割合÷時点1を見た人の割合×100(%)

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◆3つの注意点

 実はこの「流入・流出」、最初にも述べましたが視聴率特別分析の中で最も難解な分析のひとつです。その理由は、上記データの見方で示したように算出された結果が複雑でデータを読むのに知識と経験が必要ということもありますが、さらにデータの読み込みを複雑にする"3つの注意点"が存在します。

 以下、その注意点を1つずつ述べていきたいと思います。

(1)「流入・流出」における裏番組

 【図3】は今回集計で取り上げている「東京ラブ・シネマ」から「SMAP×SMAP」への「流入・流出」ですが、「流入・流出グラフ」や「流入・流出表」に記載されている各局の番組名はその時間帯に放送された主な番組であり、実際の集計は時間枠(ここでは21:00~21:53(時点1)や22:00~22:53(時点2))に基づいて集計された結果です。つまり、NHK総合の21:00~21:53(時点1)では「NHKニュース9」と「麻婆豆腐の女房」の2番組、日本テレビの22:00~22:53(時点2)では「スーパーテレビ」「オススメッ」「伝説のマダム」の3番組の放送が含まれているということになります。

【図3】「流入・流出」における裏番組

       ※裏番組は、番組単位ではなく時間枠として集計される

        <流入・流出グラフ(表示上の裏番組)>

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(2)「流入・流出 における世帯内複数TV稼働

 ビデオリサーチで行っている視聴率調査は、世帯内に複数のTVがあればその複数台のTVの視聴記録を調査します。したがって【図4】に示したように、同一時間帯に複数のTVが稼傲していた場合にはその両方が視聴したと記録されるので、実際のチャンネルの動きとは異なる、あくまでも世帯を単位とした視聴の動きが「流入・流出」として集計されます。したがって1つの世帯がいくつもの流入・流出パターンに該当するということが起こります。

【図4】「流入・流出」における世帯内複数TV稼働

※世帯内に複数のTVがある場合、複数台のTV視聴の組み合わせで流入・流出が算出されるため、ふき数の流入・流出パターンに該当する世帯が出てくる。集計時の特性で「世帯」を選択した時は注意。

   <ある世帯の時点1と時点2の視聴状況>

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したがってこの世帯は、

  ④21:00~21:53(時点1)にテレビ東京、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを共に1/3以上見た世帯

  ⑨21:00~21:53(時点1)にフジテレビ、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを続けて1/3以上見た世帯

のいずれにも該当することとなる。

※実際に2003年6月9日の21:00・-21:53(時点1)と22:00~22:53(時点2)でこの様な複数局視聴に該当する"世帯"をカウントすると、

 時点1;有効サンプル数599世帯中90世帯(15.0%)

 時点2;有効サンプル数599世帯中95世帯(15.9%)

であった。

(3)「流入・流出」における視聴判定1/3以上

「流入・流出」において視聴判定を1/3以上と設定すると、(2)「流入・流出」における世帯内複数TV稼働と同じ問題、現象が起こります。これは、視聴判定が1/3以上(実際には1/2以上)だとその時間帯に複数の局を視聴したという人(世帯)が出現してしまうためです。ひとりの人(1つの世帯)がいくつもの流入・流出パターンに該当するということが起こります。

【図5】「流入暮流出」における視聴判定1/3以上

※視聴判定を1/3以上とした場合、複数の局を視聴したとする世帯or人が表れ、複数の流入・流出パターンに該当する世帯or人が出てくる。集計時の特性に関わらず注意。

   <ある視聴世帯or者の時点1と時点2の視聴状況>

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したがってこの世帯or人は

① 21:00~21:53(時点1)に 日本テレビ、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを共に1/3以上見た世帯or人

② 21:00~21:53(時点1)に TBS 、22:00~22:53(時点2)にフジテレビを共に1/3以上見た世帯or人

のいずれにも該当することとなる。

※実際に2003年6月9日の21:00~21:53(時点1)と22:00~22:53(時点2)でこの様な複数局視聴に該当する"人"をカウントすると、

 時点1;有効サンプル数1710人中43人(2.5%)

 時点2;有効サンプル数1710人中57人(3.3%)

であった。

 「流入・流出」の結果を読み込んでいると、「流入」の値と「流出」の値が合わないという問題に直面することが多々ありますが、これは主に上記(2)(3)の現象によるものです。

「流入・流出」を胡即患者(世帯)の動きを探るものですが、同じ人(世帯)がいくつものパターンに属することがあるため、全体の中でのシェアとして視聴者(世帯)の動きを見るのではなく、他局との相対比較としてどれくらいの流入・流出量であったかという視点で結果を読み取らなければなりません。

 この他にも、視聴判定以下の視聴分数しか見なかった人は全て「OFF」と判定されてしまうため細かくチャンネルを替えるような浮動視聴者の動きは捉え辛い、あるいは視聴率が低い番組の「流入・流出」結果は非常に数値が小さくなるためデータを読み辛いなどの注意点もあげられます。

◆最後に...

 「流入・流出」は、視聴率分析の中でも最もお問い合わせの多い分析手法のひとつです。それは、上記注意点のように、視聴率調査の仕組みや「流入・流出」分析の経験が十分でないと知り得ないような"データを読むコツ"が数多く存在するためだと思われます。視聴者の動きを一度に一覧して捉えてしまおうという贅沢かつ欲張りな分析手法であるがため仕方ないことかもしれませんが、他のものと異なり編成や番組のコーナー割りにも活用できる非常に有用な分析手法であり、是非広く皆さまにご活用いただければと思い、今回ご紹介をさせていただきました。

 今後も「視聴率」をより多岐にご活用頂くために"データを読むコツ"をまとめ、皆さまのお役に立てるよう努力して参りたいと思います。

(メディアリサーチ事業局 テレビ調査部 長島英樹)

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