VRホームスキャン・データ分析事例(9)―テレビCM接触回数から見る新製品のテレビ広告効異研究事例―

VRDigest編集部
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本記事は1988年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

前回のプロモーション効果の事例研究に続いて、今回は新製品のテレビ広告効果についてのケースをとり上げる。

1.集計データによる分析例とその問題点

集計データを使っての新製品のテレビ広告効果分析は、このシリーズでも既に233号(1987年10・11月合併号)で紹介したが、その事例研究内容はおよそ次のようなものであった。

 ① 新発売後9週前後の新製品3ケース。

 ② 使用データは、週別集計データ。

 ③ 市場浸透率と購入率はGRPを使って推定可能であるが、新規購入率と反復購入率は、先に求めた市場浸透率や購入率の推定値から演算によって求めなければならない。

 ④ 市場浸透率(PEN)は、累積GRPの単回帰で推定される。回帰式は、

   図1.jpg

 ⑤ 購入率(PR)は当週GRPと前週市場浸透率の対数型重回帰で推定される。回帰式は、

     PRt=β0・GRPtβ1・PENβ2t-1

    (logPRt=logβ0+β1logGRPt+β2logPENt-1

 ⑥ 新規購入率(TP)と反復購入率(RP)はそれぞれ次の式で求められる。

     TPt=PENt-PENt-1

     RPt=PRt-TPt

しかし、このような推定も新発売後間もない期間ではほとんど問題はないが、推定期間を延長しようとすると、問題は複雑になりいろんな疑問が出てくる。先ず、同じGRPでも新発売直後と一定期間経過後では手応えが違ってくるのではないか。第2に、テレビ広告キャンペーンが途中で-時休止した場合この回帰モデルでは十分なのか。

そこで、事例研究に使った3商品のデータを20週以上に拡張して累積HS・GRPと市場浸透率の関係を図示してみた(図1)。この図を見る限りにおいては、先の第1の疑問「除々にGRP反応が鈍くなるのではないか」についての答はノーである。しかし、第2の疑問「広告のキャンペーンの一時休止の場合でも大丈夫か」は、ブランドBのケースを見れば一目瞭然であろう。10~19週目でGRPにはほとんど変化がないのに市場浸透率は依然伸びている。

つまり、この場合には市場浸透率は累積GRPだけでは説明されないという事である。

また、このブランドBのようなケースは、累積GRPによる市場浸透率回帰分析は単なる疑似相関を取り扱っているに過ぎないという批判を補強する事例であるようにも見える。いずれにしても、現時点においては集計データを使った新製品の売れ行き推定を長期(少なくとも20週程度)に行なえるタフなモデルを実証的には提示できるまでには至っていない。

データを使った分析よりも次節で紹介するような個票データによる分析が精密に行なえ、しかも単純に取扱えるメリットがあるようだ。

vol241_11.jpg

2.個票データによる分析例

次に、個票データを使った分析例を紹介させていただく。この事例は専門的な統計手法を使わず、調査データを分類・集計しただけのものであり、次のような仮説のもとに作業を進めた。テレビ広告の効果として購買或は商品選択が促進されるとすれば、①テレビCM接触回数の少ない世帯より多い世帯の方の購入率の方が高い、②商品を購入しなかった世帯より商品を購入した世帯でのテレビCM接触回数の方が多い。

この仮説のうち少なくとも①の仮説が満たされれば、その商品のテレビ広告効果の傍証となるであろうし、2つの仮説がともに満たされれば広告効果が確認されることになるのではないだろうか。

 図2は、一定期間のテレビCM捷触回数を集計特性としてそれぞれの特性区分別商品購入率を図示したものであ。この図の各ブランドともテレビCM接触回数区分のとり方は全く同一であり、各区分の区間(CM回数のまとめ)も等間隔である。(但し、最も回数の多い区分は上限なしで設定) この図を見ると、各ブランドとも大雑把に右上りのグラフになっており仮説①は満たしている。また、各ブランドともCM接触回数は「n+1~2n回」又は「2n+1~3n回」以上のグループでの購入率が目立って高くなっていることから、このケースではテレビ広告効果が現われる値は2n回あたりであろうかと想像される。

vol241_12.jpg

次に、図3は先の4ブランドそれぞれの購入世帯と非購入世帯での平均CM接触回数を図示したものである。購入世帯数の該当標本数を多くとる為に分析期間は若干拡張してあることをお断りしておく。図からも明らかな様に、各ブランドともに購入世帯でのCM接触回数が高くなっており、仮説②も満たしている。

vol241_13.jpg

今回の事例では、「新発売1~2カ月のテレビCMの接触回数は商品購入を促しており、その効果はCM接接触回数は商品購入を促しており、その効果はCM接触回数が2n回を超えるあたりからはっきりとしはじめる」ということが判った。次の研究課題は、一定期間内のCM接触回数がそれ以上増加しても購買に結びつかなくなる飽和点の探索ということになるのだろうが、果してどれだけ事例を集められるのかが先ず問題になりそうである。

                                 (消費者分析部 八木 滋)

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