世界中で感染拡大「新型コロナウイルス」による環境変化は、テレビ視聴にどのように影響する?

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世界中で感染拡大「新型コロナウイルス」による環境変化は、テレビ視聴にどのように影響する?

〈「新型コロナウイルス」の猛威〉

2020年の1月中旬から日本でも感染が確認されはじめ、今もなお外出の自粛要請やオリンピックの延期など、我々の暮らしに大きな影響を与えています。国内の感染者数は1万5,000人を超え、世界では370万人以上の感染者が確認されており(5月7日午前10時時点)、その数字はこうして記事を書いている間も増え続けています。
家にいる時間が増えたことによって、人々のテレビの視聴状況は変わったのでしょうか。
今までの日常生活とは異なり、異常事態であった期間のテレビ視聴を振り返ってみます。

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〈「新型コロナウイルス」とテレビの視聴量の関係〉

「新型コロナウイルス」の流行によりテレビの視聴量が増えたのかどうかを探るため、関東の昨年11月〜今年の4月の平日の6-24時のHUT(総世帯視聴率)を比較しました(図1)。日本で初めて感染が確認された1月から4月にかけて数字が段々と上昇していることが分かります。これはPUT(総個人視聴率)でも同じことが言えます(図2)。

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また、地区によって違いがあるかどうかを見るため、感染者の多い地区と少ない地区でのHUTの伸び率を昨年同時期で比較してみました(図3)。すると、感染者数が多い地区ではHUTの伸び率が高く、感染者数が少ない地区ではHUTの伸び率が比較的低い傾向があることが分かりました。一方で秋田地区のように感染者数が少なくても比較的HUTの伸び率が高い地区もあるため、地区の特性も考慮しないといけないのかもしれません。

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〈「新型コロナウイルス」による国民の生活の変化とテレビ視聴量の関係〉

前述の図1・2をもう少し細かく見ていくと、3月からHUTが2ポイント以上上昇しています。要因の1つとして考えられるのは、全国の小中高等学校の臨時休校という異例の事態。2月27日総理大臣官邸で新型コロナウイルスの対策本部が開かれ、子どもたちへの感染拡大防止策として3月2日から春休みに入るまでの期間で全国の小中高等学校、特別支援学校の臨時休校の要請が出されました。臨時休校が始まってから春休みまでの「今年の3月(平日)」と「2019年の同時期」で、男女4-12才と男女13-19才の個人視聴率を比較すると、「今年の3月」の方が上回っており、子どもたちのテレビ視聴量が増えていました。また、比較対象を「2019年の春休み」に変えてみると大きな差はなく、臨時休校中の子どものテレビの視聴量は、通常の春休みと同じくらいでした。一方で、以下図4のように「今年の3月」のHUTを「2019年の春休み」と比べると「今年の3月」の方が高くなっていることがわかります。

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3月と通常の春休みで、子どものテレビ視聴量は変わらないのにHUTが上がっている要因としては、大人の平日のテレビ視聴量の増加が挙げられます。3月はイベント等の自粛要請も始まり、「新型コロナウイルス」に対する国民の意識が日々高まっていった時期に当たります。4月のHUTが高いのは言わずもがな、感染者数が増加し続け「緊急事態宣言」が発令されたことが背景にあると考えられます。

このような状況の中ではやはり「テレビを見る人が増える」ということはわかりましたが、どのような番組が見られているのでしょうか(図5)。

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世帯のGRP(延べ視聴率)を番組ジャンル別に1月〜4月の1日平均で、1月のスコアを100として翌月以降の増減を見てみました。報道のスコアはやはり「緊急事態宣言」が発令されたこともあり、4月に上がっています。また、音楽は2月に一気に上がり、その後も少しずつスコアが上がっています。映画は2月・3月では落ち込みを見せたものの、緊急事態宣言が発令された4月には大きく上昇しています。アニメは臨時休校が決まった3月には大きく上昇しましたが、4月には少し落ち込んでいます。こうしてみると、報道という大事な情報を届ける番組以外にも、家にいなければならない期間が長くなっている自粛期間中の人々の関心ジャンルがうかがえます。

〈テレビへの期待〉

「新型コロナウイルス」による環境変化とテレビの視聴は大きく関係していることが分かりました。また、いつ事態が収束するのか目途が立たない状況の中で、家から出られない人々にとってテレビは非常に重要な存在であり、あらためてその価値を示すチャンスとも言えます。暗いニュースばかりで気が滅入る...といった声も耳にしますが、情報を届けることはもちろんのこと、今回のようにテレビを見てもらえる機会が増えた際に臨機応変に対応し、より価値ある情報・コンテンツを届けていくメディアとして今後のテレビに期待したいです。

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