機械学習とは?
仕組みと応用事例、運用上のリスク管理をわかりやすく解説
公開日:2025年12月1日

「機械学習ってよく聞くけど、何ができるのか、どう使えば自社の業務に役立つのか分からない」
「AIやディープラーニングとどう違うのか」
こうした疑問を抱く方は少なくないでしょう。
機械学習とは、データのパターンをコンピューターが学習し、予測・分類などのタスクに応用する技術です。ビジネスの意思決定を支援する仕組みとして、需要予測や品質管理、信用リスク評価など幅広い分野で応用されています。
機械学習はデータ活用に欠かせない技術ではありますが、業務プロセスに組み込む場合はデータの品質や管理など、さまざまなリスクへの考慮が必要です。
本記事では、機械学習の定義やビジネスでの活用事例を紹介します。導入時のリスクやその対策といった、実務への活用に向けたポイントも説明しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.機械学習とは
機械学習とは、コンピューターがデータから「モデル」を作成し、パターンを学習して、自動で予測や分類を行う仕組みです。「モデル」は箱のようなもので、データを入力すると結果を返します。
機械学習は、人間では見つけにくいデータ内の関係性を発見できるため、意思決定を支援する仕組みとしてビジネスで幅広く活用されています。
なぜ今、機械学習が注目されているのか
機械学習が注目されるようになった背景として、「データの増加」と「計算能力の向上」の2点が挙げられます。
データの増加(ビッグデータ)
スマートフォンやIoT機器の普及により取得できるデータの種類・量が増加しました。
例えば、スマートフォンは位置情報や利用履歴、IoT機器は電力使用量のデータや温度設定などが挙げられます。
このようなデータをネットワークを通してリアルタイムで収集することが可能となり、以前に比べて機械学習による予測・分類の精度が大幅に向上しました。
計算能力の向上
画像処理装置のGPUをはじめ、高速かつ並列な計算処理を得意とするハードウェアが登場し、複雑で大規模な計算を短時間で実行可能になりました。これにより、機械学習のプログラムを現実的な時間で運用できるようになりました。
AI・ディープラーニングとの違い
「AI(人工知能)」とは、人間の考え方や判断を模倣する技術の総称です。
「機械学習」は、たくさんのデータから規則や傾向を自動で学ぶ仕組みを作るための技術で、AIの一種です。そして、機械学習を実現するための手法(アルゴリズム)の一つに、「ディープラーニング(深層学習)」があります。
つまり、AIという大きな枠の中に機械学習があり、機械学習の一部にディープラーニングがあります。機械学習とAI・ディープラーニングの違いについて、詳細は以下の記事をご確認ください。
2.機械学習が活躍する3つの場面
ビジネスで機械学習を活用するには、まず機械学習がどんな場面に強いのかを理解する必要があります。ここでは、機械学習が成果を発揮しやすい代表的な3つの用途を紹介します。
用途①:数値予測
蓄積したデータから未来の数値を予測して、経営判断といった意思決定を支援します。
たとえば、過去の販売データを学習して、次の期間の売上や需要を推定できます。その結果、在庫量や仕入れ時期を適切に調整でき、欠品や過剰在庫の予防も可能になります。
従来の「勘」や「経験」のような人の暗黙知に頼っていた判断をデータで補完できます。
用途②:データ分類
与えられた学習データから分類ルールを自動で定義し、未知のデータを分類できます。メールを「迷惑」か「通常」に振り分ける処理は、分類の一例です。
ビジネスでは、熟練者の判断ノウハウの自動化や、緊急度に応じた問い合わせ内容の自動振り分けなどに活用されています。これまで人が行っていた判断を自動化することで、作業時間や人件費などの人的コストを削減できます。
用途③:パターン発見
データに仮説が無い状態から、仮説を発見する用途です。大量のデータに対し、さまざまな切り口で可視化や変換を行い、人間が気づかない相関関係を発見します。
たとえば、スーパーの購買データを分析し、「お酒を買う人」に共通する購買傾向を特定します。顧客層の再定義や、新しい販売戦略に活用できるでしょう。
3.3つのアプローチで理解する機械学習の仕組み
機械学習は目的やデータの性質に応じて、3つのアプローチに分けられます。
各アプローチの特徴と活用例を見てみましょう。
①教師あり学習
教師あり学習は、最もポピュラーな学習方法で、データにつけたラベルによって「正しい答え」を教えながら学ばせます。ラベルとは、カテゴリーや日付など、「これは何のデータであるか」を教えるための情報です。
正解がある課題や仮説が立てやすい課題に向いており、売上予測やメールの自動分類などでよく使われます。人が答えを示す必要があるため、学習データの準備に手間がかかりますが、結果を確認しやすいのが大きな利点です。
【教師あり学習の例】
- 過去の営業データをもとに、類似商品を購入する可能性が高い顧客を予測する。
- 製造ラインの不良品を写真データから自動で判定する。
②教師なし学習
教師なし学習は、データにラベルを付けずに、データそのものが持つ構造や隠れた関連性を「発見」する方法です。
代表例は、似た特徴を持つデータをまとめる「クラスタリング」や、要素を整理して次元を減らす「次元削減」です。データから「何が起きているか」を発見するのに向いています。
【教師なし学習の例】
- 社内システムの操作ログから通常と異なる操作を検知し、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクを早期に把握する。
- 商品の売れ筋や季節傾向を自動でクラスタリングし、在庫管理や販売戦略に活かす。
③強化学習
強化学習は「試して学ぶ」方法です。コンピューターが試行錯誤を繰り返し、最も良い成果が得られる最適な行動を自律的に学習します。環境の変化に応じて最適な行動を選べる点が、強化学習の大きな特徴です。
【強化学習の例】
- 自動運転車が安全走行を繰り返し学習する。
- AIが囲碁や将棋の戦略を自ら習得する。
4.機械学習の代表的なタスク
機械学習では、目的に応じたタスクの設定が必要です。タスクとは、機械学習が解決すべき課題の種類を指し、前章で紹介した学習アプローチと深く関係しています。ここでは、代表的な6つのタスクを紹介します。
分類タスク
入力データとそれに対するラベルからパターンを学習させ、未知のデータを特定のクラスに分類します。メールのスパム判定、画像に写っている物体の認識などに利用されます。
回帰タスク
入力データと対応する連続した数値からパターンを学習し、未知のデータに対する数値を予測します。住宅価格の推定、将来の小売店の売上予測などに利用されます。
クラスタリング
ラベルのないデータから、データ同士の類似性に基づき、隠れたグループを自動で作成します。マーケティングにおける相関分析、顧客セグメンテーションなどに利用されます。
次元削減
多くの要素を含むデータを、重要な情報を保ちながら整理して、扱いやすい形にまとめます。たとえば、数十種類の情報を含む顧客データを似た傾向でまとめ、影響の大きい特徴だけを抽出して、グラフや分析モデルに活用しやすい形にするといった補助的な役割で利用されます。
レコメンデーション
ユーザーの行動をもとに「次に好みそうなもの」を提案します。たとえば、ECサイトで「この商品を買った人は、こちらも購入しています」と表示される仕組みに応用されています。
最適化
数多くの選択肢の中から「最も良い答え」を見つけます。たとえば、倉庫ロボットや配送車が「限られたコストの範囲内で、最短時間で荷物を運ぶルート」を見つける仕組みで使われます。
5.機械学習の代表的なアルゴリズム
機械学習は、学習用データを用意し、プログラムを書いてアルゴリズムを実行する必要があります。実行には、主にPythonという豊富なライブラリにより高いカスタマイズ性を持つプログラミング言語が使われます。
本章では、機械学習の実装で用いられる代表的なアルゴリズムと特徴・用途を紹介します。
代表的なアルゴリズムの整理
| アプローチ | アルゴリズム名 | 主に使われるPythonライブラリ | 特徴と注意点 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 教師あり学習 | 線形回帰 | scikit-learn、pandas |
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| ロジスティック回帰 |
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| 決定木 |
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| ランダムフォレスト |
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| ニューラルネットワーク (NN) | TensorFlow、PyTorch |
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| 教師なし学習 | K-Means法 | scikit-learn、pandas |
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| 主成分分析 (PCA) |
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| 強化学習 | Q学習/DQN (Deep Q-Network) | TensorFlow、PyTorch |
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6. 機械学習のビジネス活用事例
ビジネスの現場で成果を上げている機械学習の活用事例について紹介します。
ビジネス全般に共通する活用事例
| 業務用途 | 具体的な活用ケース |
|---|---|
| 需要予測・在庫最適化 | 過去の販売データ、天候、販促情報から、商品の需要数を予測し、適切な発注数を決定する。 |
| 顧客離脱(チャーン)予測 | サイト利用頻度や問い合わせ履歴から、サービスを解約する可能性が高い顧客を特定し、先手を打って引き留める施策を行う。 |
| 問い合わせの自動振り分け | 顧客からのメールやチャットの内容を分類し、緊急度や担当部署を自動で振り分けて、対応時間を短縮する。 |
| 文章の要約・分類 | 大量の議事録やニュース記事を読み込ませ、重要な部分を抽出して自動で要約したり、テーマごとに分類したりする。 |
業界別の活用事例
●医療・ヘルスケア分野での活用事例
| 業務用途 | 具体的な活用ケース |
|---|---|
| 診断支援・画像解析 | CTやMRI画像、内視鏡画像を解析し、腫瘍(しゅよう)や病変の有無を高速かつ高精度で検出する。 |
| 創薬・ゲノム解析 | ゲノムデータや過去の臨床データから、特定の病気に対して有効な化合物の候補を予測し、新薬開発の期間を短縮する。 |
●製造業・インフラ業での活用事例
| 業務用途 | 具体的な活用ケース |
|---|---|
| 品質管理・不良品検知 | 製造ラインで撮影された製品画像や外観検査データを解析し、人間が見逃しやすい小さな傷や欠陥を自動で識別する。 |
| 予知保全 | 工場の機器に取り付けたセンサーから、振動や温度データを収集・分析し、故障が発生する前に異常な兆候を検知する。 |
●金融・保険分野での活用事例
| 業務用途 | 具体的な活用ケース |
|---|---|
| 信用リスク評価 | ローン申請者の属性や取引履歴を分析し、融資をしても返済が滞らない確率を算出して、審査の精度を上げる。 |
| 保険の不正請求検知 | 過去の請求パターンを学習し、通常のパターンから外れた疑わしい保険金請求を早期に発見し、調査対象としてフラグ付けする。 |
7. 機械学習の導入成功の鍵は「データのメンテナンス」
機械学習を導入したくても、さまざまなリスクに阻まれ、挫折してしまうケースは少なくありません。本節では、企業が直面しやすいリスクと、リスクを回避するデータメンテナンスのポイントを解説します。
ケース1:前処理不足による誤学習
記録漏れや誤情報、バイアスを含んだデータを機械学習に用いると、モデルが誤ったパターンを学び、信頼できない結果を出すおそれがあります。特に、性別や人種の偏り(バイアス)が含まれていた場合、モデルがその偏見を学習して、不公平な判断を下すリスクも考えられるでしょう。
【対応策】
記録漏れの補完や外れ値の除去を行います。これらの前処理に自動化ツールを用いれば、人的負担も抑えられます。
ツール例
- Microsoft Fabric Data Factory
- Google Cloud Dataflow
ケース2:更新の遅れによる精度低下
環境や顧客行動は常に変化します。古いデータを利用し続けると、モデルが現実と乖離し、実際のデータに対する予測精度の低下を招くでしょう。これを「モデルの陳腐化」と呼びます。
【対応策】
「MLOps」の仕組みが有効です。MLOpsは、モデルの予測結果や入力データを監視し、精度が下がったタイミングで再学習を行います。
ツール例
- Azure Machine Learning モニタリング(Microsoft)
- Vertex AI Model Monitoring (Google Cloud)
ケース3:倫理リスクと法規制への対応
個人情報や機密情報を扱う場合、倫理的な配慮と法規制の順守は欠かせません。個人を特定できるデータを不用意に使うと、プライバシーの侵害につながる可能性もあります。
【対応策】
データから個人を特定できないように匿名化の処理を施し、アクセス権の制限によって必要な人員以外がデータを利用できないようにします。また、データ加工のルール整備とデータの不正アクセスを防止する仕組みの構築も重要です。
ツール例
- Microsoft Fabric Data Governance
- Dataplex Universal Catalog(Google Cloud)
8. まとめ
機械学習は、データのパターンをコンピューターに学習させてさまざまなタスクを解決し、意思決定を支援する仕組みです。正しい知識を持って活用すれば、ECのレコメンデーションや製造業の予知保全など、業務課題を解決できる強力なツールとなります。
機械学習をビジネスに導入するための第一歩は、機械学習のアプローチやタスク、アルゴリズムを理解することです。また、実際の導入においては、成功事例を参考にしつつ、データの品質管理をはじめとしたリスクとその解決策を把握しておきましょう。
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