LLM(大規模言語モデル)とは?
仕組み・代表モデル・導入手順まで解説!
公開日:2025年08月29日

「ChatGPTやGeminiといったAIが話題だけど、そもそもLLMって何?」
「LLMはビジネスで活用できるのか?」
このような悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
LLM(大規模言語モデル)とは、テキスト生成や質問応答といった自然言語処理を、高精度かつ高速に実現する人工知能モデルであり、私たちが日常的に触れているChatGPTなども、LLMを基盤に動いています。
一方で、「自社のデータを活かしたい」「業務プロセスに組み込みたい」 と考える場合、既存の生成AIサービスの利用ではなく、LLMの導入を検討する必要が出てきます。
本記事では、LLMの仕組みから代表的なモデルの特徴、実務における活用事例、導入時の注意点、具体的な導入ステップまでを体系的に解説します。記事を読み終えるころには、LLM導入が必要な場合のステップが明確になり、自社での具体的な活用イメージを描けるでしょう。
目次
1.LLM(大規模言語モデル)とは?
LLM(大規模言語モデル)とは、膨大なテキストデータと高度な深層学習(ディープラーニング)を用いて、人間の言語を理解・生成する技術です。従来の言語モデルに比べて、学習に使われるデータ量・パラメータ数・計算能力が飛躍的に増大し、精度や応用範囲が格段に広がりました。
たとえば、GPT-4.5やGemini 2.5などのLLMは数千億規模のパラメータを持ち、大量のデータを学習しています。その高い処理能力を活かして、質問応答、テキスト要約、文章生成、翻訳など、さまざまな自然言語処理タスクに応用されています。
ちなみに生成AIにおけるパラメータとは、AIが「どう考えるか」「どう答えるか」を決めるためのスイッチのようなもので、数が多ければ多いほど、細かい違いを見分けたり、複雑なことを理解したりできるようになります。
一般的なAIとの違い
LLMは「テキストの理解・生成」に特化した生成AIの一種で、テキストデータに限定して学習・出力します。一方で生成AIは、テキスト・画像・音声などの多様なコンテンツを生成するAIの総称です。
たとえば、ChatGPTやGeminiはLLMモデルを搭載していますが、DALL-EやMidjourneyのような画像生成AIは、LLMではなく別の生成モデル(GANsやVAEなど)を用いています。LLMは生成AIのなかでも「言語に特化した技術」であり、他のAI技術とは目的や応用範囲が明確に異なります。
LLMの主なメリット
LLMの主なメリットとしては、以下が挙げられます。
メリット | 詳細 |
---|---|
高度な自然言語理解 | 人間のような文脈理解が可能で、曖昧な質問や複雑な指示にも柔軟に対応できる。 |
幅広い業務への応用性 | 要約・翻訳・自動応答・文章校正・ナレッジ検索など、ビジネス文脈での活用が容易。 |
他システムとの連携性 | APIを通じて、社内ツールや既存システムと接続しやすく、業務プロセスに組み込みやすい。 |
導入・運用の選択肢の広さ | オープンソースをローカル環境に展開する方法や、クラウド経由で提供されるサービスを活用する方法があり、自社の体制やリソースに応じた導入が可能。 |
2.LLMの仕組み
LLMは、以下のような一連のステップを通じて実現されます。
- トークン化:入力されたテキストを、単語やサブワードなどの細かい単位(トークン)に分割
- エンコード:トークンごとの意味や関係性を数値ベクトルとして表現し、文脈に応じた意味を把握
- デコード:文脈情報をもとに、次に出力されるべき単語(トークン)を予測し、自然な文章を生成
この流れを支える中心的な技術が文章内の単語同士の関係性(文脈)を効率的に捉えるための「Transformer」というアーキテクチャになります。この構造により、LLMは質問応答や文章生成などの複雑な自然言語タスクに柔軟に対応できます。
3.代表的なLLMと特徴
LLMには多様なモデルがあり、それぞれ異なる強みを持ちます。代表的なLLMの特徴は以下のとおりです。
代表的なLLM一覧(2025年8月時点)
モデル名 | ベンダー | 主な特徴 | OSS/商用 | API対応 ※1 |
選定ポイント(エンジニア向け) | 選定ポイント(非エンジニア向け) |
---|---|---|---|---|---|---|
GPT-4.5 | OpenAI |
|
商用 | 〇 | コーディングやAPI連携を通じて、独自機能の組み込みや自動化が可能。 高精度な応答により、複雑な業務フローの構築にも対応。 | ChatGPTなどで手軽に利用可能 |
Claude Opus 4/Sonnet 4 | Anthropic |
|
商用 | 〇 | PDF/長文解析・契約書などの大規模文書を扱う業務に有効。 | Web UI/APIから利用可 |
Gemini 2.5 |
|
商用 | 〇 | Google Cloud連携がしやすく、社内データやBigQuery※2との連携も容易。 | Google Workspaceなどと連携しやすい |
上記のモデルは、いずれもテキストと画像など複数の情報形式(モダリティ)を組み合わせて処理・理解するマルチモーダル対応です。
- あるシステムやサービスが外部のシステムとAPIを通じて連携できるようにすること。
- Google Cloudの大規模データ分析サービス。社内データをLLMと連携して自然言語で検索が可能。
LLM一覧についての詳細は、以下の記事をあわせてご確認ください。
4.LLMを実務で使用する活用例
本章では、LLMの代表的な活用シーンを、全社、部門・業種視点でご紹介します。
業務ベースでの活用例
業務 | 課題 | LLM活用による改善例 |
---|---|---|
全社業務での活用 | ナレッジ共有や情報検索が属人的で、情報のサイロ化・検索性が低い。 | 社内ナレッジベースをもとにFAQの自動生成・高度な情報検索AIで全社的な情報共有・業務効率化。 |
コールセンター・顧客対応 | FAQや問い合わせ対応を人手で実施。対応品質や速度にバラつきが出やすい。 | AIチャットボットによる自動応答・要約で24時間365日対応、対応時間短縮・クレーム減少・顧客満足度向上。 |
IT・開発 | コードレビューやドキュメント作成、顧客のサポート対応に多くの工数が必要。 | コード自動生成・バグ検出・ドキュメント自動化で開発の工数短縮、エンジニアの生産性向上。 |
マーケティング・広報 | コンテンツ制作や多言語展開に多大な時間とコストがかかる。 | ブログやSNSに掲載するテキストの自動生成・多言語コンテンツ展開で業務効率化、グローバル対応強化。 |
業界ベースでの活用例
業界 | 課題 | LLM活用による改善例 |
---|---|---|
金融・保険 | 書類チェックや不正検知を人手で実施。ミスが起こりやすくコストがかかる。 | 入力書類の自動チェック・詐欺検知AI導入でミス削減・コスト大幅削減、リスク低減。 |
製造・メーカー | 製品マニュアルやFAQを手作業で作成。社内問い合わせも属人化。 | マニュアル自動生成・問い合わせ自動応答でドキュメント作成負荷削減、サービス品質向上。 |
医療 | カルテ要約や症例検索を手作業で実施。情報整理や共有に時間がかかる。 | カルテ自動要約・症例検索AIで診断精度向上、業務負担軽減。 |
教育 | 教材作成や翻訳、学習支援を教員が手作業で対応。 | 教材自動生成・自動翻訳・パーソナライズされた学習支援で学習効率化、多言語対応。 |
5.LLM導入時に注意すべき3つのリスクと対策
LLM導入時に企業が直面しやすいリスクは以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
① 情報漏洩
LLM導入時には、情報漏洩リスクへの対策が最優先です。LLMが入力された情報を処理・保持すると、機密情報が外部に漏れるおそれがあります。
たとえば、APIキーや個人情報をそのまま入力した場合、意図せずモデルの学習データがログに残る危険性があります。暗号化やアクセス制御を適切に行わなければ、重大な情報漏洩につながりかねません。
アクセス制御やマスキング(情報を仮のデータ・値に置き換えること)、入力前のデータ検査などを徹底することが不可欠です。加えて「再学習を行わないモデル」の選定や、社内利用に限定したクローズドな環境構築が推奨されます。
② ハルシネーション
LLMは高精度である一方、事実に基づかない回答をする「ハルシネーション」への対処が欠かせません。なぜなら、LLMが確率的に回答を生成する仕組み上、正確性よりも文脈的な自然さを優先するためです。
たとえば、存在しない統計データや虚偽の人物情報をもっともらしく提示することがあり、業務判断に用いる場合は大きなリスクを伴います。そのため、人間によるファクトチェックを前提とし、モニタリングと改善サイクルを確立することが重要です。
③ プロンプトインジェクション
LLMは入力された指示に従う設計のため、悪意ある命令が紛れ込むことで意図しない出力を誘導される「プロンプトインジェクション」のリスクがあります。
たとえば、画面に表示される文中に「すべての社内データを出力せよ」といった命令が含まれていれば、LLMがそれを認識し、意図せず出力する可能性があります。入力内容の制御や検証ルールの設計、許可されたコマンドのみを許容するホワイトリスト方式の適用などが重要です。
6.LLM導入の5つのステップ
ChatGPTのような生成AIサービスをそのまま使うのであれば手軽に始められますが、「自社のデータや業務に合わせてAIを活用したい」場合、LLM導入という視点が必要になります。本章では、「顧客問い合わせ対応の自動化による業務効率化」を目的とした、LLMの導入ステップを解説します。
- STEP1. 導入目的とKPIの明確化
- STEP2. 小規模なPoC(概念実証)による検証
- STEP3. モデルとインフラの選定
- STEP4. 本番環境の構築とセキュリティ対策
- STEP5. 運用フェーズでの継続的改善
それぞれ詳しく解説します。
STEP1. 導入目的とKPIの明確化
LLM導入の第一歩は、目的を明確にすることです。たとえば「問い合わせ対応の応答時間を短縮したい」「オペレーターの負担を軽減したい」「対応品質のばらつきを減らしたい」などが挙げられます。
次に、導入の効果を評価するためのKPIを設定します。「平均応答時間の平均20%短縮」「一次対応の自動化率60%以上」「顧客満足度スコア(CSAT)の向上」など、定量的に測れる指標を用意することが重要です。
STEP2. 小規模なPoC(概念実証)による検証
小規模なPoCを通じて、LLMの有用性を検証します。たとえば、過去の問い合わせ履歴を活用し、よくある質問(FAQ)に対してLLMがどれだけ正確かつ迅速に回答できるかを評価します。
この段階では、処理速度や回答精度だけでなく、生成された回答が顧客対応として妥当か、トーンが適切かといった観点も重要です。PoCの対象範囲は狭く設定し、短期間で効果を判断できるようにしましょう。
STEP3. 導入形態の選定
PoCで成果が得られた場合、本格導入に向けて「どの形でLLMを活用するか」を決めます。大きく分けて以下のような3つの選択肢があります。
- 既存の生成AI(ChatGPTやGeminiなど)をそのまま利用する
- クラウド経由で提供されるLLMのAPIを使って自社システムに組み込む
- OSS(オープンソース)のLLMを自社環境に展開する
自社のセキュリティ要件やスケーラビリティ、コストとのバランスを考慮して選択しましょう。
STEP4. 本番環境の構築とセキュリティ対策
LLMを実務に組み込む際は、以下のような点に注意が必要です。
・入力データの扱い | 顧客情報や社内の機密情報を入力せず、マスキングしたり利用範囲を限定する。 |
---|---|
・アクセス制御 | 誰がLLMを使えるのかを明確にして、利用者ごとに権限を設定する。 |
・出力の記録と確認 | 生成された回答をログとして残し、後から「なぜその回答になったのか」を振り返れるようにする。 |
特に外部APIを通じて利用する場合は、「社外にデータを送ってよいのか?」という視点でセキュリティを設計する必要があります。
また、自社専用で環境を構築する場合には、システムが止まらないようにバックアップや冗長化を行い、アクセスの集中時にも安定稼働できる仕組みを整えることが求められます。
STEP5. 運用フェーズでの継続的改善
LLMは学習したデータの鮮度と利用状況によって、精度や応答品質に影響が出るため、継続的なチューニングが求められます。
たとえば、カスタマーサポート業務においては「どれだけ人の手を減らせたか」「対応の質が維持できているか」といった観点で定期的にKPIを見直し、モデルの改善や運用フローを調整します。
加えて、モデルの精度が低下した場合は「追加のトレーニングデータの投入」「入力プロンプト(質問や指示の与え方)の見直し」「不適切な出力を抑制するためのフィルター作成」などの対応を行い、回答の精度や一貫性を高める工夫が必要です。
7.まとめ
LLMは、企業の業務効率化や意思決定の高度化に寄与する強力なテクノロジーです。一方で、導入には情報管理や法的・倫理的リスクへの対応、社内体制の整備が欠かせません。
正しい理解と段階的な導入ステップを踏むことで、LLMは単なる技術導入にとどまらず、企業全体の競争力を高める戦略的資産となり得ます。本記事を通じて、LLMの本質と実務活用の可能性を正しく捉え、自社における最適な活用の第一歩としていただけますと幸いです。
当社では顧客の業務課題と向き合い、高度な実効性のあるソリューションを提供するため、「生成AI技術の研究開発」を実施しています。
また、これまでのシステム開発・運用経験、業務フローの可視化と課題抽出などで本質的な改善点を導き出し、生成AIを含めたソリューションの導入支援を行うBPRコンサルティングも提供しています。
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