【前半】DARはデジタル広告の何を語るのか。

五十嵐 達氏
ビデオリサーチインタラクティブ 取締役副社長
五十嵐 達氏
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テレビCMとデジタル広告による効果を最大化するプランニングを行うためには、実態を捉えた効果測定に基づく共通指標が必要といわれて久しい状況です。デジタル広告のマルチデバイス、マルチプラットフォームでの視聴、媒体をまたいだ出稿など、広告接触・出稿の実態に合わせた測定が容易ではないという課題がある中、広告取引の透明性、ウォールドガーデンの問題を解決でき、またデジタルの指標でありながらテレビなど他メディアと相対的、総合的に評価ができるサービスとして、デジタル広告のリーチを計測できる「DAR」が登場しました。
前半で「DAR」の概略をレポートしながら、後半はビデオリサーチグループとニールセンデジタルが組むことで「DAR」を核としながらデジタル領域においてなにができるのか、なにを目指しているのかを両社の対談を通して紹介します。

2018年4月、テレビ広告業界ではテレビ放送が始まって以来の大きな変動がありました。関東地区のテレビスポットCMの取引指標が、これまでのリアルタイム視聴率での取引から、リアルタイム視聴に放送後7日間以内のCM再生視聴率(タイムシフト)を加えたいわゆる「P+C7」に変わった点、そして世帯視聴率での取引から個人全体(ALL)視聴率に変わったことです。これは、生活者のコンテンツ視聴の多様性など環境変化に対応したものといえます。
ところで米国では、2011年頃から広告主・広告会社・オンラインメディア/テクノロジーの3団体がジョイントし、「3MS(Making Measurement Make Sense)イニシアティブ」という取り組みを進めています。ここでの活動は、デジタルメディアの価値を他メディアと同様に正当に評価し、デジタル広告がブランディングに貢献できるための指標や枠組作りなどを議論、検討、推進していくものです。3MSイニシアティブの指針のひとつとして、デジタル広告の取引通貨に関して、インプレッションの総量ではなく、オーディエンスベースのインプレッションへの移行、すなわちデジタル広告におけるリーチ、フリークエンシー="GRP指標の導入"が掲げられています。他メディアの広告と同じように評価・管理できるリーチ指標に対する渇望が、その背景にはあります。米国ではテレビの多チャンネル化の進行が早く、デジタルを含めたメディア視聴のフラグメンテーション化と、それに対応する評価指標の整備が課題であったともいえるでしょう。
また、ビューアビリティ/アドフラウド/ブランドセーフティなど、現在においても脈々と連なるデジタル広告に求められる透明性に関する議論も、この頃から活発化しています。
このような土壌の中、「DAR(Digital Ad Ratings)」は生まれ、育まれてきました。

1 「UB(ユニークブラウザ)」から「UA(ユニークオーディエンス)」へ

「DAR」の登場以前、デジタル広告の到達を示す指標は、どのくらいの量がユーザーのデバイス上の画面に表示されたかを示す「インプレッション数」、あるいは「UB(ユニークブラウザ)数」でした。とはいえ、UBは問題を内包しています。デバイスごとのカウントだからです。例えば3,000万インプレッションの配信をしたとします。極端ですが、広告到達者全員が自宅のPC+職場のPC+スマートフォンで計3回接触したとすると、UBは「3,000万」であり、「≒3,000万人到達」と解釈される恐れがあります。「人」を起点とするのであれば、ユニークなオーディエンス数は「1,000万人」と表現されてしかるべきでしょう。つまり、リーチにして3倍の開きが出てくるのです。UBの結果をもとにマーケティング活動のシナリオを描くとすると、リスキーな結末が待っていることは想像に難くありません。

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2 「人」ベースでのリーチ計測、これこそが「DAR」最大の強み

そして「DAR」の登場です。「DAR」で特筆される点は、日本国内で約2,800万人といわれるFacebookユーザーを、ある意味、属性情報を持っている巨大な"パネル"として活用していることに他ありません。つまり、計測するデジタル広告のログをFacebookという巨大パネルにマッチングすることで、「人」ベースでのリーチ測定を実現しています。しかしながら、国内のインターネットユーザー数は1億人を超えています(総務省 平成29年版情報通信白書より)。これを補完するために「DAR」ではFacebookとのマッチングだけではなく、代表性のあるパネルデータとを融合し、拡大推計することで、精度の高い到達データ提供を可能にしています。
「DAR」は「人」ベースであるがゆえに、デバイス間の重複を除いた"デジタルトータル"でのリーチ計測・GRP算出を実現します。併せて、属性情報をもとに性×年齢ターゲットでのGRP(R&F)の算出もでき、冒頭に示したテレビCMとデジタル広告を横並びで、ALLやターゲット別に同じ到達指標で評価・管理することができる有益なソリューションです。特にデジタル広告の場合、ターゲティング配信もできるので、「DAR」を活用することで、実際に狙ったターゲットに届いたかを示すオンターゲット率も如実に把握できるようになります。

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3 プラットフォーマーを計測できる、これも「DAR」が到達指標のスタンダードたる所以

EUでのGDPR施行に基づき、GoogleやFacebookなどグローバルなプラットフォーマーを中心に、サードパーティによるリーチ計測は難しい環境に陥っています。そのような状況下で、「DAR」は米国のメディア測定サービスの認証機関MRCの厳しい審査を通り、測定ベンダーとして認定を受けているソリューションであり、主要プラットフォーマーも計測タグの受け入れ態勢が整っています(一部、非対応の広告メニューあり)。現時点では一部計測できない媒体もありますが、ブランディング広告のプランニングに必要な主要媒体はおおよそカバーしているものと認識しています。

4 「DAR」は、メディア間をフラットにする"共通言語"であり、"通信簿"

これまで述べてきたように、「DAR」でデジタル広告キャンペーンを計測することによって、リーチやフリークエンシー、GRPといった到達指標、オンターゲット率、広告費を組み合わせることでCPMやパーコストが確認できます。それは、テレビ広告の到達指標と比較できるものでもあります。つまり、「DAR」は、他のメディアの到達指標と同じテーブルで語れる"共通言語"であり、デジタル広告キャンペーンの成績がわかる"通信簿"といえるでしょう。
ただし、"通信簿"が配られても、次の"通信簿"に向けて何をすればいいのかは、それぞれが抱える課題として残ります。「DAR」の活用だけでも効率的な媒体選定、リーチ獲得効率の改善、フリークエンシーの最適化などのアクションは取れますが、加えて我々は、皆さまのデジタル広告キャンペーンのPDCAをサポートするために、「DAR」をハブに、新たなソリューション開発を目指していきます。

【後半】ニールセン×VRI対談 10年後、この提携が生んだ「DAR」は、 当たり前の指標になる はこちら

※本記事は2018年に発刊したVR Digest 8-9月号(vol.565)に掲載されたものです。

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