NOTTV時代に鬼怒川決壊時の親子救出映像で新聞協会賞受賞!「これからのニュースは、時間の枠を超えて新たな空間を作り届ける役割を担う」フジテレビ 清水俊宏さん vol.2
フジテレビ ニュースコンテンツ プロジェクトリーダー 清水 俊宏氏
-その後、『新報道2001』のディレクターを担当、2011年3月からは『スーパーニュース』の演出、『ニュースJAPAN』のプロデューサーを歴任されますが、今のようなデジタルメディアに関わるきっかけは何だったのでしょうか?
選挙特番や震災特番のプロデューサーをいくつかやらせてもらっているときに、当時の報道局長から『これからはデジタルをやるぞ』という話をもらったんです。2014年12月のことでした。しかも、2015年4月から開始したいと言われたので、準備期間は3カ月間しかない。僕自身はデジタルに詳しいわけではなかったのですが、それでも新しいことをやれるんだ、というワクワク感はすごく感じていました。
-そして2015年の4月に立ち上がったのがNOTTVに向けての「ホウドウキョク」の24時間のライブストリーミングというわけなんですね。
2時間番組や選挙特番の5〜6時間でも、ものすごく大変です。なのに、24時間365日放送が続くって、ものすごく長いんですよ。もう延々と作業が続くんです。ゲストのアテンドをしたり、台本を書いたり、次から次へと業務が途切れることなく続きます。スタッフが潤沢なわけではなかったので、僕も衣装係や諸雑務などもずっとやってました。役割が固定化されておらず、とにかく組織がフラットな感じで、新しいことが生まれていく空気を実感していましたね。
-NOTTV時代に、特に印象的だった出来事をお聞かせください
2015年9月、茨城県常総市で鬼怒川の堤防が増水で決壊した時の放送ですね。僕たちホウドウキョクは、V10スタジオという、地上波に比べると規模はずっと小さいものの、機能はコンパクトで充実したスタジオを持っていました。そこには、本社に伝送された報道素材をすべて確認できる仕組みを作ってあったのですが、その時に街が水に飲み込まれる衝撃的な映像が入ってきたんです。
報道のヘリが現地へ向かっていることは知っていたものの、鬼怒川流域のどこなのか、その正確な位置は分からない。地上波だったら人数も多いですし、その場所をヘリに確認をして、それから正しい字幕スーパーを入れてから放送するという判断になるでしょうが、その時の僕は、映像を見た瞬間に『一人でも多くの人に一秒でも早く伝えて、近くに人がいるのであれば逃げてもらわないと』と思い、すぐに中継映像を流したんです。
その時の字幕スーパーは【鬼怒川】としか出ていないんです。鬼怒川のどこなのか分からなかったから。関係ない流域の方々を怖がらせるという意見もありますが、それでも危険な流域の人たちには『逃げないと』と思ってもらえた。東日本大震災の取材をした中でも、いくら津波がくると言われても自分の目で見るまで信じなかった人がたくさんいたという話を本当によく聞きましたので、鬼怒川の時はそういった経験も踏まえて判断しました。
新聞協会賞を受賞した鬼怒川決壊での親子救出映像。同じ映像はその後地上波でも放送されたが、 映像をはじめて流したホウドウキョクと撮影チームが新聞協会賞を受賞。
-その生中継で新聞協会賞も受賞し、ホウドウキョクそのものは順風満帆と思いきや、NOTTVが終了となりました。この時、清水さんはどんなことを感じておられたのでしょうか?
NOTTVそのものがなくなることになり、『本当に24時間やるべきなのか』という命題にもう一度立ち返ることになりました。先ほどのような災害時などにはライブが大きな意味を持ちますが、平常時にダラダラと流しても、逆に見ない習慣をつけるだけなんですよね。さらには、5分で説明できるものを、次の映像が間に合っていないから15分しゃべらなきゃいけないこともあって、それはユーザーからすると時間の無駄ですし、ライブの本質ではありません。
〝テレビはライブが強い〟というのは、テレビマンたちが勝手に思い込んでいるだけで、今はLINE LIVEやFacebook ライブ、ペリスコープなど誰でもライブができる環境が整っています。だからこそ、ライブだけにこだわらず、僕たちテレビマンが今まで培ってきた動画を作るノウハウや記者としてのノウハウ、キャスティング能力などをフル活用して、新しい〝伝え方〟を模索するべきだと考えるようになりました。
-オンデマンド配信を強化して、総合的なニュースメディアとしてリニューアルをした2016年10月が一つのターニングポイントなったと考えていいでしょうか。
そうですね。やはり24時間という時間枠に沿って考えてしまうと、朝・昼・夕方・夜のニュースがあって、それを見逃した視聴者はもうリカバリーできないという、入社3年目の時に感じた課題から脱却できない。それをどうしても解決したくて。そこで、例えば昼の時間帯に流したニュースは、テキストや短い動画に再編集して見やすくした上で、あらためてWeb上でいつでも見られるようにしよう、ということになりました。取材して、原稿から映像までをつくれるテレビ局が、Webコンテンツをつくれないわけがないですから。