【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】「ゴジラ-1.0」と「君たちはどう生きるか」がアメリカで好調。その本当の理由は?

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【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】「ゴジラ-1.0」と「君たちはどう生きるか」がアメリカで好調。その本当の理由は?

「ゴジラ-1.0」と「君たちはどう生きるか」の北米興行が大成功を収めた。執筆時点において「ゴジラ-1.0」は約5200万ドル、日本映画の実写作品として「子猫物語」(約1329万ドル)をゆうに超え、歴代1位の新記録を樹立した(注:数字はいずれもBox Office Mojoを参照)。

「君たちはどう生きるか」は約4322万ドルで、「崖の上のポニョ」(約1570万ドル)、「千と千尋の神隠し」(約1520万ドル)を抜き宮崎駿監督作、また、ジブリ作品として1位となっている。

ちなみに、北米興行における日本のアニメ作品の歴代1位は「劇場版 ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」(約8574万ドル)、2位は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」(約4950万ドル)と、テレビアニメの映画版が強い。

「ゴジラ-1.0」と「君たちはどう生きるか」の2作品がアメリカでヒットしたことを受け、「日本映画が世界を席捲!」とか「韓国を追撃!和製コンテンツの底力」といった煽情的な記事を書くこともできそうだが、この現象は大谷翔平選手などの活躍が日本の野球界のレベルの高さを証明したときとは違うと感じている。

山崎貴監督、宮崎駿監督という個の才能に依存していることに加えて、アメリカの映画興行界では現在、異常事態が起きているからだ。

2023年の北米総興収は約89億ドルに達し、前年の約73.6億ドルから20.8%増加。だが、コロナ前の2019年の約113億ドルにはまだ到達できていない。

公開本数が戻ってきているのに数字が追いつかないのは、ヒットが確実視されていた人気シリーズが軒並み不調だからだ。ハリウッドの大作映画といえば2億ドルの製作費が投じられることも珍しくない。

そこに宣伝費が加わり、興行収入を劇場と分け合うことになるため、黒字化のためにはざっくり製作費の3倍の興収をあげなくてはいけないと言われている。

しかし、シリーズ5作目の「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」の北米興収約1億7448万ドルを筆頭に、シリーズ7作目の「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」(約1億7213万ドル)、シリーズ7作目の「トランスフォーマー/ビースト覚醒」(約1億5706万ドル)、シリーズ10作目の「ワイルド・スピード/ファイヤーブースト」(約1億4612万ドル)といずれも期待外れに終わっている。

かつてはドル箱だったスーパーヒーロー映画もこのトレンドと無縁ではない。

「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」(約3億8154万ドル)と、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3」(約3億5899万ドル)は期待通りのヒットとなったものの、「アントマン&ワスプ:クアントマニア」は約2億1450万ドル、「ザ・フラッシュ」(約1億813万ドル)や「マーベルズ」(約8450万ドル)に至っては目も当てられない状態だ。

どうしてこんな事態になってしまったのか? スーパーヒーロー疲れや、動画配信の充実による映画館離れなど、映画会社の重役や専門家たちは議論を交わしている。

だが、ファッションドールを題材にした「バービー」が2023年のナンバーワンヒット(約6億3623万ドル)となり、伝記ドラマである「オッペンハイマー」が年間5位(約3億2710万ドル)に食い込んだところをみるかぎり、観客の嗜好が変化し、新しいタイプの映画に関心が高まっていることは明らかだ。

そんな中で、「ゴジラ-1.0」と「君たちはどう生きるか」が全米で封切られた。特筆すべきは、その公開規模だ。「ゴジラ-1.0」は2600館、「君たちはどう生きるか」2300館で公開されている。

通常であれば、アメリカでは注目映画が次々と封切られるため、外国映画が確保できるのはせいぜい数百館だ。

だが、ハリウッドが躓き、全米映画館がコンテンツ不足に陥っていた。だからこそ日本映画を大々的にリリースできたのだ。

<了>

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