テレビ番組のコミュニケーション価値を表現する"完視聴"の数値化
広告コミュニケーション領域で最近重視されている観点の1つに、「アテンション」があります。「アテンション」とは、広告にリーチするだけでなく、その反応(その広告をみて興味を持つなど)までを含む概念のことで、特にデジタル広告領域でアテンション獲得の可視化が進んでいます。今回は、テレビ番組におけるアテンション価値を、デジタル広告領域と同様のアプローチで数値化する検討、検証を行いました。その背景や実際の結果を交えてご紹介します。
本記事でご紹介「RL視聴ログ」
広告で注目される"アテンション"
広告コミュニケーション領域で「アテンション」が重視されている背景には、広告が効きづらくなっているという状況があると考えられます。図表1は「広告をよくみるほう」に肯定する人の割合の推移(弊社生活者データACR/exより)ですが、2014年から20%程度低下していることがわかります。こうした状況への対応として、リーチだけでなく、アテンション獲得につながる広告が重視されています。
テレビ番組のアテンション獲得価値を可視化する
デジタル広告領域ではアテンション獲得可視化が盛んで、動画広告を完視聴で評価、取引する動きもみられるようになっています。テレビでも同様のアプローチでアテンション価値を表現できないでしょうか?
テレビ番組の指標である「番組視聴率」はその番組の平均的なある1分の視聴者の量を示すことで、番組全体の価値や平均的な効果を表現するものです。そのため、「番組視聴率」からアテンション獲得ができるかを判断することは難しく、別のアプローチを試みる必要がありました。そこで、「番組視聴率」とは別に番組の完視聴を表現する「完視聴者率」を検討しました。
テレビ番組の「完視聴者率」は以下のように計算します。
番組を完全に最後まで視聴した人数÷1分以上番組視聴した人数×100
※上記算出ロジックは特許出願中
「完視聴者率」と「番組視聴率」の関係
今回は、「完視聴者率」と「番組視聴率」の関係を確認しました。関東地区の2025/2/3-3/2に放送があった20分以上の番組(各回個別)を対象に、「番組視聴率」は弊社のテレビ視聴率を用いました。また、「完視聴者率」は、ビデオリサーチ子会社のResolving LAB社のRL視聴ログを用いました。サンプル数が潤沢なことが特徴であるRL視聴ログから「完視聴者率」を算出することで、各エリアどの時間帯の番組でもサンプルの出現を気にせずに数値化することができます。
図表2は、横軸に「番組視聴率」、縦軸に「完視聴者率」として各回の番組をプロットして関係性を確認した結果です。これをみると、一部の番組視聴率の低い番組で完視聴者率が高い傾向(図表2左上)がみられましたが、おおむね両者に明確な相関関係がないことがわかります。この結果は、「完視聴者率」が「番組視聴率」とは別の独立した番組の価値を表現できることを示します。アテンション獲得価値を示す可視化指標として期待できそうです。
「完視聴者率」の活用シーン
番組視聴者の中で最後まで見た人が多い番組ほど、その番組でCMやプロモーション等のコミュニケーションを行った際にしっかり見てもらえる確率が高くなると考えられます。そのため、先述の「完視聴者率」が高い番組ほどアテンション獲得がしやすいといえるでしょう。
また「完視聴者率」は、アテンション獲得の期待度合を検討する以外にも図表3のような番組のコミュニケーションや現状を表現することができると考えています。
今後、ブランドリフトとの関係性や番組のコンディションへの影響など、「完視聴者率」が世の中の動きと同連動するのか、詳しい研究を計画しています。その成果はまたこの場でも共有いたしますので、テレビ番組の様々なコミュニケーション価値を表現する「完視聴者率」にぜひご期待ください。