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マーケット
2020年03月23日

「心×身体×考え方のクセ」から捉える、生活者インサイト

亀田 憲 
ひと研究所 所長
亀田 憲 

「心×身体×考え方のクセ」から捉える、生活者インサイト

人々の行動を促しているのは、言葉にならない「気持ち」や「思い」である----。気持センシングラボは、株式会社大広が中心となり、人々の声にならない声を身体から発生される反応データを利活用することで生活者理解を深めていくプロジェクトです。2018年8月にプロジェクトを発足させ、約1年と半年が経過しました。プロジェクトに参画している会社も6社となりました。(株式会社大広、SOOTH株式会社、株式会社ヒトクセ、株式会社ビデオリサーチ、株式会社SMN、エイベックス株式会社)
本プロジェクトでは、それぞれの知見やノウハウなどのリソースを相互活用し、脳波、視線、心拍、表情といった生体反応に向きあい、意味づけ・解釈を繰り返しながら、難易度の高い領域に対してチャレンジをし続けています。今回は、そのプロジェクトの取り組み事例としての実証実験の結果を一つお伝えします。
クライアントが直面する問題を当該プロジェクトメンバーの「知」を結集し、課題へと昇華させ、リソースを掛け合わせることで発見したことを、ビデオリサーチひと研究所の亀田と株式会社大広の山口氏がお伝えします。

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生体反応データによるマーケティングの課題意識の解決アプローチ

今回の実証実験において対象としたカテゴリーは、「金融領域」であり、我々のチームと関係性のある大手生命保険会社に協力をしていただきました。その理由として、すでにビジネスの実績があることに加えて、気持センシングラボが掲げるビジョンに共感いただけたことが大きな要因です。
生命保険会社のマーケティングチームは特にコミュニケーション領域で顧客との好意的な関係性強化のために手腕を振るっており、優先順位の高いタッチポイントがweb領域です。あらゆる顧客の認知・理解促進、好意形成といった要素を高める施策にリソースを割いています。チームの姿勢は「データ主義」を徹底しており、あらゆる仮説をデータに基づき検証するという一見すると地道にも見えますが、最も堅実なアプローチで追求しています。そんな中、マーケティングのチームリーダーは、まだ検証ができていない点があり、もどかしさを感じていました。それが、「顧客に提供する商品・サービスは"魅力的"なものとして届いているのか?」という問いです。Web上で数多くのトライ&エラーを重ね、結果として成功に導いてきた自負心もありながら、発信した情報は顧客の目にしっかりと留まり、興味や理解を促し、納得感を得て行動喚起されているのかを把握・分析することの必要性を感じていました。
そこで、数ある生体データの中から、視線データを活用した実証実験を提案させていただきました。Web広告において集客装置となるランディングページ(以下LP)の構成要素を顧客の視線データを利活用することで、評価する手法となります。以下、具体的な調査手法と考察を展開していきます。

「ひとセグ(セグメント)」×「生体反応」でクリエイティブの進化に挑戦

研究・調査にあたって、「生体反応」を用いることに加えて、性年代別ではない「考え方のクセ」によるセグメント「ひとセグ」も活用してターゲット設定と分析をしました。「考え方のクセ」のタイプは全部で6種類あり、選択する商品や届きやすいメッセージ・表現が異なってきます。
この「ひとセグ」と「生体反応」を組み合わせることで、生活者の「気持ち」を捉えたLPの制作を試みました。


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ターゲットセグメントは「雑学ロジカル」

実証実験をすべきターゲット(対象者)の条件を決めるために、インターネットによるプレリサーチを行いました。選定基準は対象商材である保険との相性です。
相性を把握する設問として、将来設計への真剣度を示す「生活費・介護費用など切実な不安を抱えている」や「株式や投資信託を積極的に検討し、老後資産の形成に意欲的」を使用しました。その回答割合が高いセグメントは、雑学ロジカルであり、出現率は約16%と市場ボリュームも見込めるため、雑学ロジカルを実証実験のターゲットといたしました。
なお、雑学ロジカルの「考え方のクセ」は、機能や性能などのスペック情報が大好きで、何事も徹底的に情報収集し、" 意味のある"ものや" 理屈に合う"ものを選択。そして、物事を理性的に捉え、商品に対するうんちくや情報を欲する、という特徴があります。


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視線調査では、調査対象者は視線の計測機能のある眼鏡型デバイスをかけ、前述の雑学ロジカルの「考え方のクセ」を考慮して制作されたLPをスマートフォンで閲覧しました。
視線がどこに注がれているのか、その滞在する長さはどの位なのかを計測。さらに、視線計測後は、アンケートでLPのどこに興味を示したかを聴取することで、「生体反応」とアスキングによる「気持ち」の両面で、クリエイティブ評価をしました。

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雑学ロジカルの「考え方のクセ」を考慮したLPページの制作

雑学ロジカルの「考え方のクセ」を考慮したLPは次の5つのブロックに分かれ、ブロック別で興味度を聴取しました。
具体的にはLPは、「①メインコピー」で目をひきつけ、「②カスタマーボイス」の事例により自分ゴト化を促すことで商品情報の興味度を上げます。その後、「③商品情報」で図や表を活用しながら保険の必要性や商品特徴を紹介し、「④企業情報」で企業の特徴を文字情報でしっかりと説明をして、最後に、「⑤よくある質問」で契約への不安を払拭させる、というストーリー構成となっています。

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視線と興味度の両方の測定からわかる生活者インサイト

では、想定したストーリー通りに視線や気持ちは動いたのでしょうか。LPのブロック別の視線の滞在時間と興味度について分析をしました。
滞在時間では、「②カスタマーボイス」と「③商品情報」が高く、LPの中心コンテンツがしっかりと読まれていて、クリエイティブが機能していたことがわかります。ただし、「③企業情報」については、滞在時間が短く改善が必要です。改善策としては、雑学ロジカルの「考え方のクセ」を考慮して、データや図を活用した表現に変更することが考えられます。
興味度についても、「③商品情報」が高く、データや図を使った説明が「考え方のクセ」を捉えた結果、興味を喚起できたといえます。
ここで注目すべきは、「②カスタマーボイス」は興味度が低いにも関わらず、滞在時間は長い点です。この2つの指標は連動した反応になっていません。
その理由は、「②カスタマーボイス」にはデータ・図、うんちくなどが乏しいため、雑学ロジカルが自覚できるほどの興味喚起につながっていないが、他者の事例は気になる情報なのでしっかりと読まれた、もしくは、無自覚ではあるが興味は持たれた、と推察できます。さらに、続く「③商品情報」の興味度が全ブロックの中で最大となっています。
これらの分析により、「②カスタマーボイス」の情報がしっかり読まれて保険が自分ゴト化されたため「③商品情報」への興味度を押し上げることができ、それは「②カスタマーボイス」はLP内で声にならないフックという役割を果たしている、と判断されました。
仮に興味度だけの分析・判断であれば、その値が低い「②カスタマーボイス」は改善もしくは削除を検討することになります。しかし、視線も合わせて計測することで、生活者の声にならないインサイトやLP内での役割が浮き彫りになり、価値のあるコンテンツと判断することができます。


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「心×身体×考え方のクセ」で生活者を理解する

このように、「生体反応」だけでも「気持ち(アスキング)」だけでもなく2つのデータとセグメント(「考え方のクセ」)を組み合わせることで、「心」と「体」の両面で生活者インサイトを捉えたクリエイティブの開発が可能となります。
今後は、これらの知見やノウハウをデジタル広告のクリエイティブ制作や配信などにも応用していき、活用の幅を広げていく予定です。

調査概要

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