「視聴者の生声から掴んだインサイト」第1回   "出演者の仲が良い"テレビ番組(「アメトーーク!」「ひよっこ」)が最近人気?

佐藤雅子(文責)&生声インサイトチーム
ソリューション局
佐藤雅子(文責)&生声インサイトチーム
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!

ー 当社から発信されるテレビ関連の情報というと、視聴率を始めとする「量的」なデータを思い浮かべる方が多いと思います。でも実は、社内にはグループインタビューやMROC、アンケートのフリーアンサーなどで得られた、膨大な量の"視聴者の生声(なまごえ)"も存在しています。そうした生声に数多く触れる中で、個々の番組の評価を超えて、"時代の気分""視聴者の欲求のトレンド"が見えてくる瞬間があります。

今回は、データで裏付けることが難しかったり、担当者の「肌感」でしかないでものも含めて、当社社員たちが、グループインタビュー(以下グルイン)を始めとする視聴者の「生の声」から掴んだ、視聴者に好まれる番組の傾向とその背景にあるものを座談会形式でお伝えします。

どんどん重要さを増す"出演者同士の仲の良さ"

♥:最近、番組関係のグルインをやっていると、番組の魅力点として、「出演者同士の仲が良い」という発言が、やたらと出ませんか?

◆:分かります! ここ数年位の傾向ですよね。「出ている人たちのチームワークがいい」とか「出演者みんなが和気藹々としている」とか、私もすごく良く聞きます。

♥:最初は、割と20代、30代位の若い人たちがよく言うような気がしてたんですけど、最近は50代、60代の人からも聞きますね。

♣:それと、言われるジャンルも広がってきていませんか?以前は、バラエティ番組についての発言が多かったけど、今はニュース番組や情報番組でも、その番組を選んでいる理由として「出演者同士が和気藹々としているから、気持ちよく見られる」とかって言われます。『ニュースZERO』なんかは前からそう言われていましたけど、最近は『あさチャン!』なんかも、キャスターさん達の仲の良さが魅力という発言を聞くことが増えました。

♠:でも、テレビの世界って、前から「仲がいい」のが当たり前じゃなかったですか?私、『伊東家の食卓』の、仲が良い感じの会話、すごく好きでしたけど。

◆:確かに和気藹々としてましたよね。ただ、『伊東家』の場合は、"仲が良いという番組上の設定"の力も大きかったんじゃないかと思うんですよ。それに対して、今言われているのは、設定や役柄に関係なく、出演者の人たちが収録以外の時間もプライベートでも仲良く、良い雰囲気でコミュニケーションできていそう、ということなんじゃないのかな。

♠:ああ、なるほど!でも、何でそうなってきたんでしょうね?

その背景にある社会の変化とは・・・

◆:やっぱり最近は、番組サイトや出演者のインスタとかツイッターで、楽しそうなオフショットがバンバン出るじゃないですか。視聴者がテレビに映っていない部分を目にすることが多くなっているので、"作られた番組"を額面通りに受け取って楽しむだけじゃなくて、"番組が作られているリアルな現場"まで含めて楽しむようになっているんだと思うんですよ。例えば『ひよっこ』で、登場人物達の仲の良さを物語として楽しみつつ、ミュージシャンの古市コータローさんが出演した時に、バンド活動もやってる出演者たちが自分の出番じゃないのに応援に駆けつけた、っていうトピックを目にすると番組への愛着がさらに増す、みたいな。

♥:そうだね。ネットの影響で、どんどん舞台裏が可視化されてきている影響は大きいよね。
あと、テレビの位置付けが変わってきて、「情報源」としてよりも、「その場の雰囲気作り」や「リラックス」「ストレス解消」みたいな、感情や情緒面に働きかけることへの期待が強くなっている、っていうことも影響しているんじゃないかな。MCR※のデータでも、地上波の民放テレビの特徴・効果として、「気分転換・ストレス解消になる」とか「家族の団らんに欠かせない」といった項目が大きく上昇しているよね。

♠:確かに。テレビに向かう視聴者のスタンスが、「癒やし」とか「緩和」の方に向かっているっていうことなのかな。

♣:あと、世の中も、厳しい上下関係とか、ヒエラルキーとかがどんどんなくなってきて、フラット化しているわけじゃないですか。まして、楽しむために見ているテレビの中で、出演者同士のヒエラルキーが透けて見えちゃうようなのは、嫌なんだと思います。

◆:ホントにそうだと思う。トーク番組でも、ひな壇トークの全盛期というのは、ひな壇芸人はいかに面白いことを言って他を喰うかの戦いで、大物芸人がMC=ジャッジとして君臨して、その戦いを評価する、という仕組みで笑いを生み出していた訳ですよね。でも、今は、「俺が、俺が」と出しゃばる感じや、いかに大物芸人に評価してもらうかという必死な感じが、ちょっと疲れちゃう、と思われているんじゃないのかな。

◆:出川さんみたいに、前は"ダメキャラ"的なポジションだった人が、すごく人気がでてきたのも同じ文脈なんでしょうね。

♥:あと、ウッチャンみたいに、自分はあまり前に出ようとせず、ニコニコと温かい雰囲気で、メンバーの良いところを引き出してあげるようなスタイルのMCがすごく支持されているのも、典型的な現象じゃない? 他にも、さまぁ~ずとか、所さんとか、緩いタイプのMCは押し並べて最近好感持たれてますよね。

♣:そういう意味で言うと、やっぱり『アメトーーク!』って、一つの大きな転換点だった気がします。それまでの弱肉強食のひな壇トークではうまく振る舞えていなかった、"お笑い界の弱者"の人たちのいいところを、うまーく引き出してたという意味で。『アメトーーク!』が始まってすぐの頃、色んなグルインで、『アメトーーク!』は、「仲の良いクラブ活動みたいに見える」とか「和気藹々としているのがいい」ってよく聞いたんですけど、そいういう文脈に置くと、より意味がハッキリしますね。必死さが滲むお笑いの戦いに疲れた人たちが、心地よく笑えたんだろうなと。

♠:全然別のジャンルですけど、スポーツでも同じことが言えないですかね?ここ何年か、フィギュアスケート人気がすごいですけど、もちろん魅力的で強い選手がたくさんいる、ということが大きいとは思うんですけど、トップクラスの選手同士が仲が良いということが、とても好意的に受け止められていた気がするんです。

◆:ああ、それはそうかもね。野球でも、昔は「清原軍団」みたいに「軍団」だったのが、今は「チーム・ダルビッシュ」とか。テレビでも、フラットで風通しのいい、心地良い関係を見たい、という気持ちがあるんだね。

♥:以前、大妻女子大学でジェンダー論を研究している田中東子先生から、産業構造がサービス業へとシフトしてくると、ビジネスにおいても"お客様の感情や気分"が重要になってくるので、それまで自分の技術や業績に集中していればよかった男性達も人の感情や気分といったものに敏感にならざるをえず、社会全体としても感情がより重視されるようになってくるんだ、というお話しを伺ったことがありました。大きくいうと、「出演者同士、仲が良いのが好き」という意識の背景にも、産業構造の変化が影響しているのかも。

♠:いきなり話でかっ。(笑)

♣:でもきっとそうですよね。視聴者の側も、家族お互いの感情に敏感になっているから、家族でいるときには和やかに楽しく過ごさせてくれるテレビ番組を求めているし、テレビ番組の中の人間関係も本当に気持ちのいい関係じゃないと見たくないと思っている、ということなんじゃないでしょうか。

♥:一方で、「和気藹々」を目指して番組を作っていくと、ともすると「予定調和」とか「当たり障りがない」といったデメリットが生まれてくる危険性もあるよね。テレビって、やっぱりどんどん新しいタイプの刺激を提供していかなければいけないメディアだと思うので、どうやって「予定調和」を打ち破る、ある種リスキーなファクターを盛り込んでいくか、しかも嫌な気分を残さずに、っていうところも今後の課題になってくる気がします。

※MCR(2014年からはMCR/ex):特定の1週間について、生活者の行動を「基本的な生活行動」「メディア接触」「買い物行動」の視点から、曜日別に時間軸に沿って捉えた調査。メディアに関する意識も捕捉している。

tv1.png

MCR及びMCR/ex 「地上波民放テレビの特徴・効果」
(個人全体(男女12~69才)2007年:東京30km圏、2017年:東京50km圏)



<<< 「生声インサイトチーム」メンバー >>>

VR_SatoMasako.jpg

ソリューション局 佐藤雅子

VR_Yoshiike.jpg

ソリューション局 マーケティングソリューション部 吉池 典子

VR_Komatsu_100.jpg

ソリューション局 マーケティングソリューション部 小松 結子

VR_Teramoto.jpg

ソリューション局 マーケティングソリューション部 寺本 花菜子

VR_Tei.jpg

ソリューション局 テレビ・メディアソリューション部 丁 慶明

VR_Kawashima.jpg

ソリューション局 テレビ・メディアソリューション部 川嶋 卓也

この記事をシェアする
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!