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テレビ
2023年02月13日

2022 FIFAワールドカップ テレビ視聴動向 2大会連続の決勝トーナメント進出を果たしたカタール大会、日本戦はどう見られた?

山根祥汰
首都圏ユニットリサーチアナリシスグループ
山根祥汰

2022 FIFAワールドカップ テレビ視聴動向 2大会連続の決勝トーナメント進出を果たしたカタール大会、日本戦はどう見られた?

【もくじ】

1. 平均個人視聴率は前大会と同程度、放送分数は大幅に減少
2. テレビ前の盛り上がりは、視聴環境×戦況
3. 今大会の視聴スタイルの特徴
4. 64.7%の人がワールドカップ関連番組をテレビで視聴
5. 日本戦を通しての視聴人数は7988.4万人
6. 終わりに

昨年の11月20日から約1カ月間カタールで開催された2022 FIFAワールドカップ。大会直前の親善試合で敗れ、不穏な流れの中で初戦のドイツ戦を迎えましたが、結果は日本が2-1の逆転勝利。続くコスタリカ戦で惜敗し、後がない状況になりましたが、3試合目のスペイン戦で逆転勝利を収め、グループリーグを首位で決勝トーナメントに駒を進めました。決勝トーナメントの初戦では、ベスト8進出に期待がかかりましたが、クロアチアにPK戦の末敗れ、悔しくも新たな景色は見られませんでした。

それでも、長友佑都選手の「ブラボー」や「三笘の1mm」などで大いに盛り上がり、三笘薫選手や堂安律選手を筆頭とする選手たちの強豪相手の活躍に、心を震わせました。その後、日本の敗退後も、大会は大いに盛り上がり、メッシ率いるアルゼンチンの36年ぶりの優勝で幕を閉じました。

本記事では、日本中がテレビやスマートデバイスなどのメディアの前で一つになった今大会を、当社の視聴データ(視聴率、視聴人数)を用い、日本戦がどう見られたのか、その熱狂の様子を分析しながら、振り返ります。

1.平均個人視聴率は前大会と同程度、放送分数は大幅に減少

今大会が行われたカタールとの時差は6時間あり、試合は日本の夜から深夜、早朝にかけて行われました。早い時間だと21~22時、多くは深夜の24時、28時からの放送となりました。このような状況の下、日本戦はどのように見られたのでしょうか。関東地区のデータを見ていきましょう(図表1)。

ワールドカップの大会平均個人視聴率(関東地区)と総放送分数

試合中継にハイライト番組等関連番組を含めた全番組平均個人視聴率では、民放計は4.7%とロシア大会、ブラジル大会を上回っています。一方でNHKでは3.1%でロシア大会、ブラジル大会より下回っています。時差、日本の戦績など大会によって様々な要因が考えられますが、今大会における日本戦が放送された局(NHKでの日本戦が1試合(ロシア大会は2試合)、民放計では3試合(ロシア大会では2試合))や、夜間以外の放送時間の割合が影響していると思われます。また、ワールドカップ関連番組の総放送時間は、NHKが約64時間、民放計は約75時間とそれぞれロシア大会、ブラジル大会よりも大幅に減少しました。

2.テレビ前の盛り上がりは、視聴環境×戦況

今大会の日本戦の視聴率は、前回のロシア大会、ブラジル大会の日本戦と比較するとやや低い傾向にあります。(図表2)

ワールドカップの日本戦の平均個人視聴率(関東地区)

2014年のブラジル大会では、時差が12〜13時間と最も視聴しづらい時間帯の放送であり、3試合中2試合が平日朝のキックオフとなりました。日本代表は1分2敗でグループリーグ敗退と悔しい結果となりましたが、一縷の望みをかけて臨んだ最終戦のコロンビア戦(キックオフ5:00〜)は、試合終盤が起床在宅率の高い時間帯だったこともあり、個人視聴率は20%を記録しました。

ロシア大会は、時差4〜7時間とブラジル大会と比べて比較的視聴しやすい時間帯の放送でした。日本代表の戦績は1勝1分1敗でグループリーグを突破し、2大会ぶりに決勝トーナメントへと駒を進め、注目を集めました。初戦のコロンビア戦以外は深夜から早朝にかけての試合となりましたが、初のベスト8進出をかけたベルギー戦(27:56~)では個人視聴率15.6%を記録。強豪ベルギー相手に接戦となった熱い試合に、日本国内も早朝から熱狂しました。

今大会の時差は6時間でした。初戦のドイツ戦22:00(放送は21:50〜)は、前半33分にPKで先制点を許しますが、後半に日本のカウンターが決まり逆転し、強豪相手に見事に勝利を収めます。ドイツ戦の個人視聴率は23.2%。24:00までの放送でしたが、ブラジル大会王者に勝利する姿に注目が集まりました。

2戦目のコスタリカ戦は過去2大会含め、最も視聴しやすい19時からの放送となりました。スコアレスの時間が続くと、後半36分に先制を許し、そのまま0-1で初の黒星。2試合目で決勝トーナメント進出を決めたいところでしたが、命運は南アフリカ大会(2010年)王者スペインとの勝負に委ねられました。コスタリカ戦の個人視聴率は30.6%。過去2大会含め、ロシア大会のコロンビア戦後半(31.7%)に次いで高い結果となりました。視聴しやすい時間帯であったことはもちろん、決勝トーナメント進出がかかった試合に多くの注目が集まったことも要因と言えそうです。

グループリーグ最終戦のスペイン戦は28:00(放送は27:40〜)からと、日本戦で最も視聴しづらい時間帯となりました。グループリーグ突破へ引き分け以上が絶対条件でしたが、試合開始早々に先制点を許し、前半は攻め込まれる場面も多く終了。しかし、後半では、途中出場の堂安律選手が高い位置でボールを奪い、そのまま豪快なミドルシュートを放ちスペインのゴールネットを揺らします。その3分後には堂安律選手のクロスを三笘薫選手がライン際で折り返し、田中碧選手が押し込み逆転に成功。1点を守り切った日本はドイツ戦に続きスペイン戦でも逆転勝利。2大会連続での決勝トーナメント進出を決めました。

スペイン戦の視聴率は前半の時間帯で8.6%、後半の時間帯で15.4%。放送開始が深夜のため、最初からの視聴ができなかった人も多くいましたが、時間の経過とともに視聴率は増加しています。朝が近づくにつれて自然とテレビを点けた人に加え、後半の逆転劇による視聴者の盛り上がりも、その理由と言えそうです。

そして、決勝トーナメントの初戦はクロアチア戦。ロシア大会準優勝国を相手に日本は初のベスト8を賭けて挑みました。前半戦終了間際にこぼれ球を前田大然選手が押し込み、今大会初の先制点を決めましたが、後半に入りクロアチアに同点ゴールを許すと、その後試合は動かず終了。日本のワールドカップでのPK戦は南アフリカ大会のパラグアイ戦ぶりでしたが、惜しくも敗北。ベスト8の舞台は次回大会へと持ち越されました。

クロアチア戦は24:00(放送は23:40〜)からとやや視聴しづらいスタート。さらに、PK戦までもつれたため、放送は深夜の26:50まで続きましたが、個人視聴率は20.1%でした。翌日は平日でしたが、両チーム一歩も譲らない展開に、視聴者をテレビから離しませんでした。

3.今大会の視聴スタイルの特徴

また、今大会は配信での視聴にも注目が集まりました。前回のロシア大会では在京民放5社(日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ)が運営する民放公式テレビポータル「TVer」やNHKの特設サイト・アプリでの全64試合の見逃し配信や一部試合のライブ配信が行われました。そして今大会はインターネットテレビ「ABEMA(アベマ)」が全64試合の無料生配信を実施。本田圭佑選手の解説などが大きな話題となりました。テレビだけでなく、スマートデバイスやパソコンで、地上波では放送されていない試合やハイライトなどを配信で楽しむ視聴スタイルが定着した大会ともいえそうです。

4.64.7%の人がワールドカップ関連番組をテレビで視聴

ここで、今大会の開幕から日本が惜しくも敗退するまでの期間、どれだけ多くの人がテレビでワールドカップの試合中継・関連番組を視聴したのかを確認していきます。(図表3)(ここでの視聴は試合中継・関連番組のそれぞれ放送時間の1/3以上の場合を指します)。

深夜・早朝の放送が多かったため11月22日時点では14.3%でしたが、日本戦初戦放送日である11月23日に35.2%と20pt以上増加。日本戦をきっかけにワールドカップ関連番組を視聴した人が大幅に増えたことが分かります。その後も日本戦のあった11月27日、12月1〜2日を中心に少しずつリーチが増加し、12月5日の最後の日本戦を経て、この期間にワールドカップ関連の番組を視聴した人は64.7%まで達します。サッカーの試合時間はハーフタイム含め100分を超える長時間となりますが、それでも64.7%が1/3以上の視聴となり、やはりスポーツの世界大会であるワールドカップとテレビの相性の良さは健在と言えるでしょう。

カタール大会 開幕戦(11/20)から決勝トーナメント(日本×クロアチア(12/5))までの個人累積リーチ推移(関東地区)

5.日本戦を通しての視聴人数は7988.4万人

最後に、今大会における日本戦4試合のテレビ生中継における日本全国での「自宅内テレビでのリアルタイム視聴者数」を確認してみます(図表4)。

カタール大会日本戦の全国推計到達数

日本戦において最も視聴人数の多かった試合は2戦目(11月27日)のコスタリカ戦で、6080.2万人が視聴。決勝トーナメント進出がかかる注目度の高さと視聴しやすい時間帯が合わさった結果と言えるでしょう。なお、4試合いずれかの試合を視聴した人の合計は7988.4万人でした。

6.終わりに

次の2026年ワールドカップはカナダ・メキシコ・アメリカの3カ国共同開催、出場国数も32カ国から48カ国にまで増加します。開催時期は過去大会と同様6-7月ですが、視聴率に影響のある時差は14-15時間と、ブラジル大会と同程度です。

今大会でもロシア大会に続き、テレビ以外の視聴の選択肢が生まれましたが、テレビを含むメディア環境は2026年までにどのように進化するのでしょうか。

ワールドカップは4年に1度の舞台。限られた出場枠を掴み取るために、選手たちは長い年月をかけ、努力し続けます。日本代表が次回大会も出場し、今大会のような、願わくばそれ以上の活躍が見られること、そして叶わなかった景色を見せてくれることを、大いに期待したいと思います。

※当記事は、VRダイジェスト(NO.582)の記事をもとに編集しています

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