テレビ接触ログデータを用いた15秒CMと30秒CMの効果検証

吉田 正寛
マーケティング事業推進局 企画開発部
吉田 正寛
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!

VR CUBICとは

2016_554_22-25_01.jpg

テレビとWebの接触実態をログ取得するパネルで両メディアの到達や重なり、テレビ接触者のサイト接触行動が把握できます。さらにパネルに対して、追加でアンケートを行うことが可能なデータソースです。

現在オンエアされているテレビCMは、大きく分けて15秒尺のものと30秒尺のものがあります。30秒CMの多くは、15秒尺のCMクリエイティブテイストのもので、15秒CMはスポットCM枠、30 秒CMはタイムCM枠という具合に出稿枠によってオンエアを切り分けるケースが多いのが現状です。

同じCMクリエイティブでも、15秒と30秒とでは効果が違うのか、今回はこの積年の課題にスポットを当て、ある1つのCM素材について、15秒CM/30秒CMの接触実態の違いがブランド関与(ブランド認知・興味関心・購入意向)にどのように影響するのかを「VR CUBIC」を用いて検証してみました。

効果差を検証する方法

今回のテーマである「1つのCM素材における15秒CMと30秒CMの効果差」は、私が広告効果検証の分析のオファーを受ける際によくあがるものです。広告効果検証はWeb調査などのアンケートを用いて分析することが多いですが、このテーマを対象者の記憶に頼るアンケート結果だけで評価するのは限界があるといえるでしょう。なぜなら、仮にアンケート対象者に、「あなたはこのCMを15秒のバージョンと30秒のバージョン、どちらを多く見ましたか?」という設問を投げかけたとしても、正確な回答は期待できないからです。こうした聴取方法では、分析の説明変数となる「CM接触の実態」の正確性に疑問の余地が残り、分析から正確な知見を引き出すことはできません。接触に関して正確なデータを得るためには対象者が実際にCMに接触したことを示す接触実態ログを併せて用いる必要があります。さらに、 接触実態ログを取得するそのパネルに対して広告効果指標となるKPI(例えばブランド認知や興味関心・購入意向といったブランド関与指標)を取得し、接触実態と掛け合わせることではじめて15秒CMと30秒CMの効果差を分析することができます。

ここでは、こうしたデータを用いて行った分析事例を紹介します。

分析対象CM

今回事例として取り上げるのは「サントリー ペプシストロング5.0GV」のCMです。このブランドを対象とした理由は、2016年上期の新商品であり、ブランド関与にこのタイミングのCM出稿の影響が出やすいであろうと考えられること、15秒CMと30秒CMの両方のバージョンが出稿されていたことの2点です。

CMは2種類オンエアされており、1つは俳優ジュード・ロウが記者たちに取り囲まれ、「ペプシストロング5.0GV」を訴求しつつ飲むもの、もう1つは同様のテイストに俳優小栗旬が加わり、別バージョンの「ペプシ桃太郎」のCMについて触れるというものです。30秒バージョンは15秒バージョンの長尺のものであり、いずれの素材も 内容や情報量が増大するのではなく、内容に余裕を持たせるようなテイストです。

この2バージョンを合わせた15秒/ 30秒CMの出稿割合は85%対15%で、これを踏まえて15秒接触者と30秒接触者の「 ペプシストロング5.0GV」に対する関与の違いを分析します。

分析の詳細

① 説明変数:CM接触実態の定義

「ペプシストロング5.0GV」のテレビCM接触ログを対象者ごとにデータ化しました。データ化の対象期間は2016/5/30~2016/8/5です。データ化した内容は、この期間中の15秒CM/30秒CMそれぞれの接触回数です。

15秒CM接触者と30秒CM接触者を定義するために、30秒CMの接触回数の接触全体に対する比率を対象者ごとに算出しました。「ペプシストロング5.0GV」の30秒CMの出稿比は前述の通り15%であるため、平均的な対象者の30秒CM接触回数の比率は15%となります。この比率を逸脱して30秒CMの接触回数比率が高いほど、30秒のCMにより接触しており、態度変容として30秒CMの影響が大きくなると考えることができます。今回は比率の大小の基準を50%と設定し、30秒CM接触回数が50%を超える場合を「30秒CM接触層」、逆に15秒CM接触回数が50%を超える場合を「15秒CM接触層」と定義しました。

「30秒接触層」「15秒接触層」定義と意味

30秒CM接触層

30秒CMの接触がペプシストロング5.0GV CM全体の接触の内50%を超える= 30秒CMによりあたっている

15秒CM接触層

15秒CMの接触がペプシストロング5.0GV CM全体の接触の内50%を超える= 15秒CMによりあたっている層

2016_554_22-25_02.jpg

目的変数:ブランド関与

2016/8/6から「ペプシストロング5.0GV」を含めた複数のブランドに関するアンケートを同じく「VR CUBIC」の対象者に対して実施しました。アンケートの内容は、各ブランドの「認知」「興味関心」「購入意向」を取得するものです。

分析の概要 分析素材 ペプシストロング5.0GV 分析対象期間 2016/5/30~2016/8/5 集計対象者  男女15 ~ 69才 3,533サンプル

効果差の結果

CMの接触状況 

「VR CUBIC」の分析結果から「ペプシストロング5.0GV」のCM接触者(15秒/30秒いずれかでも接触)は約84%であり、その大半である約81%は15秒CM接触層です。30秒接触層はわずか1.4%であり、15秒CMと30秒CMの接触回数が均等となる対象者は2%弱存在しました【図表1】。出稿の85%が15秒CMであるため、15秒接触層が大半となることは自然な結果であるといえます。

2016_554_22-25_03.jpg

15秒CM / 30秒CMの効果差

15秒CM接触層、30秒CM接触層別に「ペプシストロング5.0GV」への関与の違いをみた結果を【図表2】に示します。

2016_554_22-25_04.jpg

これをみると、「ペプシストロング5.0GV」の「認知」には両者に差がないことがわかります。この点から、ブランドを認知させる力という点では、15秒CMも30秒CMも同等の効果であることがうかがえます。

一方で、アンケート調査した「興味関心」「購入意向」に関しては、15秒CM接触層に比べて30秒CM接触層のほうがブランドへの興味関心や購入意向が高い結果となっています。この結果から、「ペプシストロング5.0GV」のCM出稿では、30秒CMを接触するほうがブランドへの興味や購入意向を喚起させやすいといえるでしょう。

効果差の考察

これらの結果を踏まえると、「ペプシストロング5.0GV」の例ではブランドの興味関心・購入意向喚起に30秒CMが寄与していたといえます。この理由を考えると、CMのテイストが15秒と30秒で同じであり情報量もほぼ等量であることから、訴求の違いによる興味関心・購入意向の効果差だとは考えにくいです。これはあくまで仮説ですが、内容や情報量が同じであっても長尺化することで記憶に留まりやすく、結果的にブランド関与に影響したと考えられます。15秒のオンエアの場合、視聴者が流れていることに気づいても、尺が短いためすぐ終了してしまいますが、30秒だとさらにその倍の時間CMが流れるため、アイキャッチしやすいという違いがあるのかもしれません。そう考えると、今回ブランド認知では効果差がみられませんでしたが、「ペプシストロング」という名称がよく認知されているため明確な差として現れなかっただけであり、例えば新ブランドの場合では認知レベルで影響があるのかもしれません。この点をより明確にするためには、追加アンケートとしてブランド関与とは別にCM認知状況も調査し、15 秒接触層/30秒接触層別に確認する必要があるといえるでしょう。

加えて、ここでは踏み込みませんでしたが、 CM接触の定義比率を変更して分析することでどの比率から効果差が現れるのかを分析することができます。出稿に対する実際の接触とブランドステータスとの関係性から、個別ケースでの30秒CMの出稿配分比検討につながる分析をすることも可能です。

今回の事例では、15秒CMよりも30秒CMに多く接触する方がブランドの興味関心や購入意向が高くなることがわかりました。ただ、CM素材が異なるとまた違った結果になることは他の分析の結果から確認されています。効果差の違いを生む要因のひとつとして、CMのクリエイティブ評価があげられると思います。ここで紹介した実態の分析に加えて、クリエイティブ評価の詳細も合わせて分析することで、30秒CMの出稿配分比だけでなく次期施策としてどのような点に留意すべきかがみえてきます。クリエイティブの分析に関しては、また別の機会に紹介 させていただきます。

今回紹介した分析にご興味を持たれましたら、当社営業担当までお問い合わせください。

この記事をシェアする
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!