「Meta Festival Japan 2025」多方面からみえたパーソナライゼーションの重要性【イベントレポート】

2025年5月27日(火)に開催されたFacebook Japan合同会社主催イベント「Meta Festival Japan 2025」のセッション、「Instagramで好きと欲しいをつなぐ: AI時代におけるマーケティングのパーソナライゼーション」に、当社ビジネスデザインユニット シニアフェローの吉田正寛が登壇いたしました。ここでは、そのセッションの様子をレポートいたします。
<登壇者>
ボストン・コンサルティング・グループ合同会社 パートナー 黒川 あやか氏
Meta日本法人Facebook Japan合同会社 クライアントパートナー 岩崎 譲二氏
Meta日本法人Facebook Japan合同会社 クライアントパートナー 稲垣 智文氏(モデレーター)
株式会社ビデオリサーチ ビジネスデザインユニット シニアフェロー 吉田 正寛
冒頭、モデレーターを務めるFacebook Japan合同会社(以下、Meta)の稲垣氏より、コミュニケーション領域の現状を解説。「AIの時代にメディアの環境が大きく変化する中、広告も単一メッセージをマスへ一方的に拡大送信するだけではなくなっている。生活者の満足度を高め、『個に語る、個が語る』ことを目的に、個々の生活者が欲する情報をフィルタリングし、広告主と生活者が双方向で情報を届けあう"コンシェルジュ"的存在に変貌している」と述べました。
このように広告コミュニケーションが変わってきている状況において、これからのマーケティングを考えるにあたって何が重要なのか、そのポイントを中心にディスカッションが展開します。
AI時代におけるメディアと生活者の「パーソナライゼーション」とは?
ボストン・コンサルティング・グループ合同会社(以下、BCG)の黒川氏は、パーソナライゼーションの市場規模が2兆ドルに上ることを指摘。パーソナライゼーションがコミュニケーションの質を担保するだけでなく、ビジネス展開の可能性の広さを持っていることについて言及します。メディア環境の変化により、「生活者はより共感できるコンテンツを求めるようになっている。単なるプロモーションにとどまらず、ストーリーテリングにより個人の心に響かせる『パーソナライズされた』体験が重要となる」と説明しました。
吉田からは、ビデオリサーチが保有する生活者データベース「ACR/ex」の時系列データを用い、生活者の情報に対する意識がどう変化しているか、その現状を解説。「生活者の広告感度は低下しているが、生活者の情報感度はむしろ上がっている。広告が効きづらい現状は情報飽和によるものではなく、生活者が求める情報を適切に提供できなくなっているから」だと指摘します。
Meta岩崎氏は、広告視聴態度のトレンドの変化から、広告を「能動的に見てもらえること」の重要性を強調。
"Instagramユーザーは広告を楽しんでいる割合が6割を超える"など、Instagram上でAIを用いてパーソナライズされたコンテンツをユーザーに提供した際に得られる具体的効果について言及しました。
AIを用いてパーソナライズすることで広告はその効果をさらに発揮し、その先の新たなビジネスチャンスにもつながるという、「パーソナライゼーション」の有用性が見えてきます。
生活者の自分ごと化を促すためのソーシャルメディアの役割は何か?
一方、ソーシャルメディアの役割はどうなっているのか。吉田はACR/exのデータを用いて、生活者の情報源としての、ソーシャルメディアの重要性が増している点を指摘します。「昨今ファン化・ロイヤルティ形成の側面で、ソーシャルメディアやオウンドメディアなどのコンテンツマーケ目線の活用が、広告主で進んでいる実態とも一致する」とコメント。さらに興味深い点として、「ブランド・サービスの『新情報を得る』情報源としても、ソーシャルメディアはフルファネルで大きく伸長している」と説明しました。
これに対してMeta岩崎氏は、ソーシャルメディアが世界最大の広告投資先となっている現状に触れ、顕在需要の獲得のみならず、需要喚起・新規獲得にも適したメディアであると述べます。その背景として岩崎氏が指摘したのは、「個人ごとの需要創出最大化に向けたAIによるモデル改良」でした。
AIを構築し進化させ続けることで、常に生活者の"今"にフィットした広告体験を提供する。パーソナライゼーションを継続することで、ユーザーにおけるコンテンツの価値・重要性が向上するというサイクルが垣間見られます。
AIとパーソナライゼーションの時代に広告主はどう対応するべきか?
コミュニケーション効果の向上に重要なパーソナライゼーションですが、その推進は簡単なことではありません。「難しさの背景にはデータや組織の課題がある」とBCG黒川氏。まず取り組むべきAI活用ポイントとして「見込まれる成果や施策拡大のポテンシャルが大きい、コンテンツ作成、SNSデータ活用(ソーシャルエンゲージメント、ソーシャルリスニングなど)」を挙げました。
加えて、メディアプランニングで重要になるのは予算の配分。この点について吉田は、ビデオリサーチの簡易出稿配分分析として特許を取得する「NASH」を用いて、食品カテゴリーにおけるパーソナライゼーションに割く最適な配分比を解説。「予算のおよそ1/4はパーソナライゼーションを行う施策に割くのが最適」と述べました。
パーソナライゼーションを広告主で実践するメニューとして、Meta岩崎氏は「価値共創プランニングプロセス」について解説。Instagramではプラットフォームインサイトをベースとしたキャンペーン、クリエイティブ、そしてメディアソリューションのプランニングが可能であり、広告事後には最適な計測ソリューションによる成果検証で、次回のキャンペーンプランにも活用できる新たなインサイトまで提供できることに触れました。
本セッションを通して、パーソナライゼーションはもはや概念ではなく、コミュニケーション上の仕組みとして始動している実態が明らかになりました。一方で、広告主サイドのパーソナライゼーション対応には組織的なハードルも存在。まずはデータに基づく最適な予算配分を参考に、既存のサービス導入からスモールスタートさせてみることがよさそうです。
最後にMeta稲垣氏から、本セッションのポイントをサマライズ。ユーザーにとって価値のある広告体験を提供するキーワードとして挙がる「パーソナライゼーション」。「Instagramで好きと欲しいをつなぐ」を掲げるInstagramは、「パーソナライズされた顧客体験を大規模に提供するフルファネルメディア」であると語りました。AI時代におけるマーケティングのパーソナライゼーションの重要性だけでなく、それが具現化された事例を垣間見ることができるセッションとなりました。