行動ログで可視化されたテレビ番組のコミュニケーション効果
行動ログを用いた効果検証
テレビの情報番組で、日々商業施設や飲食店の情報を取り扱っています。その放送でどれほど来店効果があるのか疑問に持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。こうした効果は昨今、行動ログデータを使って可視化できるようになりました。
今回は、秋田朝日放送株式会社にご協力いただき、商業施設・飲食店が番組内で紹介された際にどの程度、送客効果があるのかを行動ログデータを用いて可視化しました。
番組で紹介された際の来店効果!
2025年2月~3月に「サタナビっ!」(秋田朝日放送 毎週土曜9時30分~)で紹介された秋田県内の商業施設・飲食店を対象に分析を行いました。対象となる施設・飲食店は5店舗で、それぞれ8~9分ほどオンエア内で紹介されました。この時点の視聴者と非視聴者で放送後1か月間の店舗来店率を算出、5店舗で平均化し視聴者と非視聴者で比較しました。
テレビ視聴との来店・来場の関係を分析するlog-BLS(ログ・ブランドリフト)
今回の検証に用いた「log-BLS(ログ・ブランドリフト)」は、当社の子会社Resolving LABの視聴ログとunerry社の人流データ(Beacon Bank)を用いて、行動ログで効果を可視化する仕組みです。(図表1)
log-BLSの詳細はこちら:https://www.videor.co.jp/service/communication/effect-measurement8.html
これを用いて、視聴者、非視聴者が、オンエア後1か月間で店舗へどのくらい来店したのかを比較しました。
来店は促進されたか??
「サタナビっ!」当該オンエア視聴者と非視聴者の店舗来店率を確認すると、視聴者は非視聴者に対して164%、つまり約1.6倍当該の商業施設・飲食店に来店していたことがわかります。(図表2)
番組で紹介されることで確実に来店を誘引することが示されたと言えます。
来店が促進される決め手といえるもの
なぜテレビ番組で扱われた際にそれを見た視聴者は、非視聴者に比べてより来店したのか?テレビ番組のリーチ力・波及効果とも考えられますが、筆者の研究では別の視点も重要であることがみえています。
生活者が重視する情報入手経路として、過去から伸長するものを確認した筆者の研究では、昨今マーケティング領域で関心が高い「SNS」「企業のブランドサイト(オウンドメディア)」とならび、「テレビ番組」が伸長していることが確認されています(※1吉田,2025)。
これらの情報経路はいずれも、生活者である視聴者にコンテンツを提供する接点です。これらの接点を自分事として重視する生活者は、そこで得た情報も重視する結果、来店に繋がったと考えられます。
実際、今回対象にした「サタナビっ!」視聴者のプロフィールを、視聴ログを使って確認したところ、図表3のようにテレビ番組全般に対するポジティブな意識が確認されました。良質なコンテンツを提供するテレビ番組だからこそ、視聴者に高い効果が期待できるわけです。
今回は番組内で紹介された商業施設・飲食店への来店効果を検証した結果、明らかな効果が見られました。
テレビ番組という"コンテンツ"で紹介されることで、その番組に集う熱量の高いオーディエンスに効果的なアプローチが可能になります。今回の結果はこれを証明したものですが、こうした効果を前提にコミュニケーションを考えると、従来のテレビCMとはまた異なるアプローチも考えられそうです。ぜひみなさまのコミュニケーション戦略のご参考にしていただければ幸いです。
今後もテレビのもつパワーを多角的に検証・研究していきます。ぜひご期待ください。
<謝辞>
今回の検証・研究の遂行にあたり、秋田朝日放送株式会社編成業務局長佐々木悟氏に多大なご助言、ご協力いただきました。ここに感謝の意を表します。
<参考文献>
※1 吉田正寛(2025)「生活者の情報入手経路から探るコミュニケーションに今必要とされる要素」『日経広告研究所報』339号,pp.26-33
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