2人に1人が料理好き!?―男性30代の料理意識に迫る―
- この記事はこんな方にオススメ!
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- 新商品考案のための情報収集をしている方
- 競合企業とどう差別化を図っていくか、そのマーケティング戦略を考えるための情報を探している方
近年、SNSを中心に料理に関する投稿や動画が急速に広まり、短時間で作れるレシピや、調理音を活かしたASMRの動画などが人気を集めています。かつて料理には性別による役割分担のイメージが存在していましたが、近年ではそのような認識は変化し、男性も女性も料理をする機会が増えています。このような背景の中で、特に男性の料理に対する意識はどのように変化しているのでしょうか。本記事では、50年以上にわたり日本の生活者の意識動向を調査し続けている、ビデオリサーチの「ACR/ex」の過去10年分のデータをもとに、料理に対する"どんな意識が""どの男性層で"変化しているのかを深堀り、明らかにしていきます。
料理への関心が高まる男性30代
2024年と10年前(2014年)を比べると、各世代で料理への意識はどのように変化しているのでしょうか。
図1は、2014年と2024年における、男性の中で「料理を作るのが好き」と回答した人の割合を年代別に比較したものです。すべての年代で増加がみられ、料理に対する好意的な意識が広がっていることが分かります。
中でも男性30代は8ポイント増加と、最も大きな伸びを示しています。この世代はライフステージの変化も多く、人によっては家事や育児など仕事とプライベートの両立が本格化する時期であると考えられますが、どのように料理に親しんでいるのでしょうか。
料理のレパートリーを広げる料理好き男性30代の増加
ここからは、10年間で最も伸びていた、「料理好き」な男性30代に着目していきます。ACR/exの10年前の調査結果と比較して、特に上昇がみられた料理への意識をポイントに分けてご紹介します。
まず一つ目のポイントは、料理への意識として「新しい料理を作ることに関心がある」(+8pt)や「料理のレパートリーを広げる努力をしている」(+11pt)といった、主体的に料理に取り組む意識が高まっていることです(図2)。
そんな彼らが料理の作り方を知るために利用しているメディア(ACR/ex、2024年4‐6月調査)は、地上波民放テレビ(41.5%)が最も多く、次いでブログやSNSの書き込み(35.2%)、レシピサイトなど企業以外のWebサイト(28.8%)と続きます。
テレビだけでなく、SNSやWebサイトなどの選択的に情報を取り入れるメディアの利用率が高く、料理を積極的に探究する意識がうかがえます。
このような変化から考えると、料理は単なる日常の作業ではなく、関心をもって自ら進んで取り組むものになってきているのかもしれません。
料理にタイパを求めている?
料理が好きな男性30代の料理への意識の二つ目のポイントとして、「料理の手間を省くための工夫をしている」(+17pt)という意識の上昇が挙げられます(図3)。
タイパ(=タイムパフォーマンス)の意識が顕著に高まっており、効率性を重視した料理スタイルが浸透していることが分かります。
さらに、料理関連の商品への関心にも変化がみられます。2020年と2024年との比較となりますが、みずから銘柄(ブランド)を選んで購入している商品種類について示したグラフが図4です。
グラフを見ると、2020年には「キッチン家電」のブランド選定・購入に関わる料理好き男性30代は4割程度でしたが、2024年にはその割合が5割以上に拡大しています。他にも、「カレールウ」や「パスタソース」、「中華料理の素」などの、簡単に短い時間で料理することができる食品の購入に関心が高まっていることが分かります。
料理が好きな男性30代の間では、手間を省きながらも自分のこだわりで銘柄(ブランド)を選び、短時間で手軽に料理ができる商品への関心が高まっています。彼らにとって、「時短」と「こだわり」の両立が必要不可欠なのかもしれません。
料理好き男性30代ってどんな人?
ここまでは、10年間の料理好き男性30代の料理に対する意識の変化をみてきました。新しいレシピや調理法の情報を積極的に収集し、自分の料理のレパートリーを広げようとする姿勢が強まっていることや、忙しい日々の中でも、手間を省く工夫をするなど効率的な調理スタイルを追求する傾向がみられました。
本章では、そんな彼らがどのようなライフスタイルを送っているのか、平日と週末の暮らし方に着目してさらに深掘りしていきます。
料理好き男性30代の平日の起床在宅・睡眠・外出の時間量をACR/ex調査(2024年4-6月)でみると、男性30代全体と比較して1日あたりの在宅時間が平均3分長く、外出時間は7分短い傾向がみられました。
そこで、料理好き男性30代の平日の自宅内での行動を男性30代全体と比較したところ、仕事をしている時間が平均3分長いことがわかりました(図5)。男性30代全体と比べて、料理好き男性30代は在宅勤務がやや多いのかもしれません。
ちなみに、仕事に対する意識を見ると、男性30代全体と比較して料理好き男性30代は「成果主義・能力主義でキャリアアップしたい」(+4pt)、「自己実現のために仕事をする」(+5pt)などの項目のスコアが高く、仕事に対する意識の高さがみられました(図5)。
これらのことから、料理好き男性30代には、平日に在宅勤務を活用しながら、熱心に仕事に取り組んでいる人が多いことが予想できます。
次に、料理好き男性30代の土日の起床在宅・睡眠・外出の時間量をACR/ex調査(2024年4-6月)でみると、男性30代全体と比較して1日あたりの在宅時間が平均10分短く、外出時間は7分長いことがわかりました。彼らは週末の外出時間をどのように過ごしているのでしょうか。
料理好き男性30代が最近1年間で行ったレジャー・趣味活動をみると、「散歩」(+4pt)、「食べ歩き、グルメ探求」(+4pt)が男性30代全体よりも高いスコアを示しました(図6)。
さらにスポーツに関する意識では、「定期的にスポーツをしている」(+4pt)、「健康な体作りのためにスポーツをしている」(+4pt)といった項目が高く、アクティブな暮らしをしていることが分かりました。
週末は外出して、趣味やレジャー・スポーツに積極的に取り組んでいることが想像できます。
平日と休日のそれぞれの暮らしに着目してきましたが、料理好き男性30代は「熱心に仕事をしながら、余暇を楽しむアクティブな男性」が多いと考察できるのではないでしょうか。
おわりに
本記事では、ビデオリサーチのACR/exの過去10年のデータを用いて、「料理を作るのが好き」と回答した割合が大きく増加していた世代として男性30代を取り上げ、意識の変化を紐解いてきました。
料理好き男性30代の10年間の変化をみると、新しいレシピや調理法の情報を積極的に収集し、自分の料理のレパートリーを広げようとする姿勢が強まっていること、忙しい日々の中でも、料理を楽しむために手間を省く工夫をしていることが特徴としてみられました。
彼らは日々、仕事や趣味で忙しい中でも、こだわりと探求心をもってタイパを意識しながら、料理を楽しんでいると考えられます。
ACR/exでは、本記事で扱った内容以外にも、買い物意識など20万項目にもおよぶ膨大なデータベースから、意識の時系列変化を客観的に明らかにすることができます。
ご興味お持ちいただけましたら、お気軽に以下よりお申込みください。
【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex」
・調査時期:2024年4~6月/2020年4~6月/2014年4~6月(春調査回)
・対象地区:7地区(東京50Km圏+関西+名古屋+北部九州+札幌+仙台+広島)
・ターゲット:男性12~69歳/料理好き男性30代
・男性年代別サンプル数: