【ラジオレコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO】心の拠り所になる番組を~BSN新潟放送『近藤丈靖の独占ごきげんアワー』近藤丈靖さん~

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【ラジオレコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO】心の拠り所になる番組を~BSN新潟放送『近藤丈靖の独占ごきげんアワー』近藤丈靖さん~

ラジオ レコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO  第87回


今回はBSN新潟放送のアナウンサー、近藤丈靖さんに注目しました。

BSNラジオで近藤さんがパーソナリティを務める3時間半のワイド番組『近藤丈靖の独占ごきげんアワー』(月曜〜木曜 9時〜12時30分)は2025年春で19年目に入りました。

『独占ごきげんアワー』は、新潟を一層楽しむ企画、手間をかけたバラエティ企画、楽しいおしゃべりなどで構成する番組です。番組のイベントは毎回大盛況です。

一方、近藤さんをよく知る人からは「愛すべき変人」とも呼ばれています。どこか謎な面も漂っていて、近藤さんに魅了されて聴き続けている人も多いです。今回は、近藤丈靖さんの魅力に迫りました。

●近藤丈靖・プロフィール

1971年、新潟生まれ。1994年、BSN新潟放送に入社。
『BSNニュースワイド』のキャスターなどを経て、2004年にBSNラジオ『キンラジ』のメインパーソナリティに。新潟弁を紹介する「今すぐ使える新潟弁」のコーナーが人気となり、2005年の日本民間放送連盟賞(ラジオ生ワイド部門)優秀賞を受賞。『近藤丈靖の独占ごきげんアワー』は2007年に始まりました。

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▲『近藤丈靖の独占ごきげんアワー』パートナーと
(パートナーは左から表佳世、水島知子、伊勢みずほ、三浦萌)

演劇からアナウンサーへ

近藤さんは学生時代は演劇に没頭しており、大学を卒業したあとも芝居の世界で食べていけたら、と思っていました。アナウンサーの仕事に就けば声の表現力を生かせるかもしれない、との思いから、地元の放送局を受験。晴れてBSN新潟放送に入社しました。

やきそば 演劇に興味があってアナウンサーを目指したのは、少し変わった動機ですね。当時はプロ野球やプロレス中継などの実況に憧れてアナウンサーを目指した人も多かったと思いますが。

近藤アナ そうかもしれません。ただ、私は演技力も生かせそうなナレーションに興味があったんです。

やきそば 初めてのレギュラー番組は何でしたか?

近藤アナ 『ぽっぷん王国ミュージックスタジアム』(ニッポン放送)の金曜日に放送していたBSN制作版や、『石塚かおり※1 のお昼はいただきごっくんNOW』の石塚かおりさんのパートナーでした。

※1 新潟市生まれ。1987年、BSN新潟放送に入社。以後『石塚かおりの午後の楽園』『ゴゴラク!』『新潟発そこが知りたい』『情熱にいがた』などを担当。現在は朝ワイド『石塚かおりのBrand new day』(月曜〜金曜 6時50分〜9時)、『サロンdeかおり』(土曜 17時〜17時29分)、ポッドキャスト番組『イシヅカタケヤス』を担当。

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▲石塚かおりさん(左)と近藤丈靖さん

やきそば 石塚さんと近藤さんはお付き合いが長くて、おふたりで話しているポッドキャスト番組『イシヅカタケヤス』(金曜日更新)も人気ですが、石塚さんはどんな方ですか?

近藤アナ 日頃から明るくて太陽のような人。ラジオの雰囲気のままです(笑)。マイクの前だけで楽しそうにしているわけではなく、普段からあのノリです。特にインタビューの時のゲストとの接し方は尊敬します。

番組に出演した方に「また会いたい」と思ってもらえるようなインタビューなんです。「あなたにお会いしたかったです!」という熱烈歓迎の想いが素直にゲストに伝わるから、良いインタビューになっているんだと思います。

やきそば 確かに、私が実際にお会いした時も、熱いほどの歓迎ムードがありました。

近藤アナ かおりさんの明るい性格は天性ですよ。会いたい気持ちが強く出すぎると、相手が引いてしまう危険性がありますが、かおりさんの熱い歓迎は心地よいものなんでしょう。

嬉しかった、FAXメッセージ

やきそば テレビはいかがですか?

近藤アナ 入社2年目からは朝の情報番組『おはようクジラ』(TBS系列)の新潟県内の中継を担当していました。今で言えば『THE TIME,』の中継企画にあたります。同じ頃に活躍したアナウンサーは、RCC中国放送の横山雄二さんやtbc東北放送の石川太郎さんほか、たくさんいらっしゃいます。

やきそば 余談ですが、横山さんが『ONE-J』(TBSラジオ)※2 に出演された週(3月16日・23日)の前の2週が近藤さんの担当回だったんです。横山さんがご自身のラジオ番組『平成ラヂオバラエティ ごぜん様さま』(RCCラジオ)で『ONE-J』を聴いたという話をしていて、近藤さんのことを"近藤くん"と呼んでいたのが新鮮でした。

近藤アナ そうなんですか(笑)。横山さんは大先輩です。『おはようクジラ』の頃はいろいろな先輩方の中継を「あんなふうに上手にできたらいいな」と思いながら観ていました。私は入社2年目で、なかなかうまくいかなくて悩んでいました。

当時は司会の渡辺正行さんや全国のアナウンサーが集まる機会がありました。渡辺さんはすごくかわいがってくれていましたが、皆の前で「近藤くんの中継は、どうやったらもっと良くなるんだろうね?」と言うほど。それほど私は未熟でした。

やきそば そうだったんですか。

近藤アナ 当時は中継の内容がうまくいくと渡辺さんが感想を書いてFAXで送ってくださったんです。私が担当を始めて半年後に初めてメッセージをいただいた時は「これでやっと、一人前に毛が生えたぐらいにはなれたかもしれない」と嬉しかったのを覚えています。

※2 日曜8時から10時まで、TBSラジオから全国ネットで生放送。メインパーソナリティは本仮屋ユイカ。パートナーはネット局のアナウンサーが2週交代で担当する。近藤アナは3月2日・9日放送でスタジオに出演して大きな反響を呼んだ。

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▲『おはようクジラ』中継時代のひとコマ

無鉄砲だった20代

やきそば 『おはようクジラ』からおよそ30年が経ちますが、若手のアナウンサーの姿をみていて、ご自身の入社当時を思い出すことはありますか?

近藤アナ あります。ただ、私は本当に出来が悪かったんですよ。そのわりにアナウンサーの仕事の怖さを分かっていなくて無鉄砲でした。

やきそば 近藤さんは思い切って前に出ていくタイプでしたか? それとも様子を見ながら出ていくタイプでしたか?

近藤アナ まわりの様子をみながら、誰からも注意されなかったらどんどんやっていくタイプでした。今思えば、伸び伸びとやらせてもらいましたね。

ただ、本来の性格は、控えめで、あまり前に出るタイプではありません。積極的に飲み会を開いて、みんなを引っ張っていく性格でもありません。誘われたら付いていくくらいです。

やきそば よく聞かれる質問だと思いますが、ラジオとテレビとの仕事の違いはなんでしょう?

近藤アナ ラジオは聴いている人との距離感が近くて、リスナーの皆さんの人生に寄り添っている気がします。それに、話したことをきちんと聴いてくださっている人が多いことも実感します。

一方、テレビの中継は、多くの場合、時間的に段取りをこなすのが精一杯で余裕がありません。プライベートなことを話す時間もほぼありません。

そのなかで、話題の人や場所にスポットをあてながら、いかに楽しくやるかに徹することが大事です。それは昔も今も感じています。もちろん、ラジオとテレビのどちらが良くて、どちらが悪いということではありません。

"愛すべき変人"の謎

やきそば 近藤さんは「愛すべき変人」と呼ばれていますが、それはなぜでしょう?

近藤アナ 私もよく分からないんですよ。私自身はいたってまともだと思うんですけど(笑)、石塚かおりさんにもよく言われます。ラジオでは隙があれば好きなことをやろうとするから、"変人"の部分が見えてしまっているのかもしれません。でも、本当に自分は普通の人間だと思ってるんですよ(笑)。

やきそば 真面目そうな近藤さんの雰囲気が、急におもしろおかしく変わるコーナーがあるので、『独占ごきげんアワー』を初めて聴いた人は「変わった人が喋ってる」と思うかもしれませんね(笑)。ただ、近藤さんの「楽しいことにかける情熱」はものすごいものを感じます。

なかでも「新潟弁でナイスデイ」※3 のコーナーや、以前行っていた「近藤サウンドエフェクト」※4 を例にとっても、近藤さんの奥底にある「絶対に楽しい放送にしたい」という「意地」を感じます。

近藤アナ ありがとうございます。実をいうとコーナーを始めた当初から反響が良かったコーナーと、少し経ってから反響があったものがあります。企画の提案も、私が面白いと思って始めたコーナーもあれば、ディレクターが提案したコーナーもあります。

※3 近藤アナが講師となり、パートナーの三浦萌アナウンサーとリスナーに新潟市とその周辺の方言を紹介する。

※4「サウンドエフェクト」はテレビやラジオ、映画などで使われる効果音のこと。「近藤サウンドエフェクト」は番組独自の効果音を生み出すコーナーで「雨が降る音」「落ち葉を踏む音」「電車の走行音」などの音を身近なものを使って再現することに挑戦した。

「とりあえずやってみよう」の精神で

近藤アナ 「新潟弁でナイスデイ」は、もともと新潟弁を紹介する企画「今すぐ使える新潟弁」というタイトルの企画からきていて、『独占ごきげんアワー』が始まる前に担当していた『キンラジ』で始めました。私が企画したコーナーで、開始当初から大きな反響がありました。

初めて制作したCD「今すぐ使える新潟弁」はシリーズ化されて、県内はもちろん、県外でもたくさんの方に購入していただきました。

やきそば すごいですね!

近藤アナ 水曜に放送している「新潟弁カヴァーズ」※5 のコーナーは私が考えた企画です。

始めた当初は反響があまりなかったのですが、いつしかジワジワと話題になりまして、地元出身の歌手、中澤卓也くんが、自身のステージで、私が「新潟弁カヴァーズ」でアレンジした歌詞で歌ってくれたこともあって、看板コーナーのひとつになっていきました。

「水曜そっきょショー」※6 や、以前放送していた「近藤サウンドエフェクト」はスタッフが考えたもので、いずれも企画を聞いた時は私自身ピンとこなかったけど、やってみたら反響がすごく大きかったです。

以前は、コーナーを始める際には、私が自信を持ってお送りしないとダメだと思ってきましたが、現在はスタッフの提案に対してできるだけ「ノー」と言わず、とりあえずやってみようという考えになりました。自分の感覚は"絶対"ではありませんし、ウケが悪かったらやめればいいので。

やきそば その考えは大事ですよね。企画を考えるディレクターも「近藤さんだから一緒にやりたい」と思うのかもしれませんね。

それに近藤さんが先輩として「ここまではやっても大丈夫」と引っ張っていくことで、「イケメン四銃士」※7 をはじめとする後輩のアナウンサーも、自由でやりやすい雰囲気になるのではないか、と推測しています。

近藤アナ 自分が楽しむことが基本ですからね。もしも私が変わったことをやることで後輩が自由にできるのなら、それはそれでいいかもしれません。

※5 名曲の歌詞を近藤アナが新潟弁にアレンジして歌うコーナー。

※6 その日の放送に届いたメッセージからスタッフが一枚を選び、スタジオで紹介。その内容を原作としてパートナーの水島知子と一緒に即興でドラマにする。

※7 2019年夏にアナウンサー4人で結成されたユニット。結成当初のメンバーは工藤淳之介、麦島侑、黒崎貴之、前野智郎の4人(黒崎アナは活動休止中)。もともとラジオのイベントに向けて結成されたが、予想以上の人気を呼んで活動を継続中。木曜21時から『イケメン四銃士のそれいけ!アナウンサー』も放送している。

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▲イケメン四銃士とのひとコマ

パートナーと一緒に楽しむ

やきそば 近藤さんは各曜日パートナーの特徴をうまく捉えていますよね。(月曜:三浦萌、火曜:伊勢みずほ、水曜:水島知子、木曜:表佳世)

近藤アナ ありがとうございます。例えば水曜日の水島知子さんはヨガのインストラクターのほか、子ども会の会長でもあるということを番組でもこれでもかというくらい過剰なまでによく話題にしています。リスナーの皆さんと一緒に楽しめたらと思っています。

やきそば  "恒例"になっていて、笑ってしまいます。

やきそば また『独占ごきげんアワー』といえば、たまに独特なテーマで募る時がありますよね。そこも特徴のひとつで、最近で言えば「手を繋いだ想い出」(4月8日・15日放送)も面白かったです。

近藤アナ とても良いエピソードが多くて、この時はひとつのテーマを初めて2週(2回)連続で募集しました。

やきそば 以前募っていた「これをするとちょっと不良」も雰囲気こそ違いますが、同世代としては「そうそう!」と思いながら聴いていました。

サイレントリスナー(聴いているが、メッセージは送らない人)の皆さんが、メールのテーマやスタジオの皆さんの話に引っかかって、「初めてお便りします」と言って、とても面白い内容のメールがきた時は面白いですよね。

近藤アナ そうなんです。やっぱり振り幅は大事です。

結婚報告で肩の荷がおりる

やきそば 話は変わりますが、以前『四畳半スタジオ』(月曜〜木曜 14時〜18時)のパーソナリティの遠藤麻理さんとの対談(遠藤麻理『ラジオを止めるな!』新潟日報事業社刊 に掲載)で、遠藤さんが「近藤さんが結婚したのが意外だった」と驚いていらっしゃっていたのも印象的でした。

入籍された2015年当時、近藤さんはまわりの方から「結婚しそうにない」と思われていたんでしょうか。

近藤アナ 40歳になっても結婚しませんでしたから、本当に結婚する気はあるんだろうかとか、そもそも異性に興味がないのでは、と思っていた人も多かったと思います。リスナーの皆さんからも心配されていたほどです。

やきそば 婚約したことは放送で発表されましたか?

近藤アナ それこそ『独占ごきげんアワー』で報告しました。すると同世代の独身の男性の皆さんから「裏切られた」とか「近藤さんも独身だったから、俺もやってこれたんだ」というメールが届きました(笑)。

プライベートなことなので報告しようかどうか迷ったんですが、番組でよく話のネタになっていたので、隠しているのも失礼だと思い、思い切って報告しました。すると肩の荷がおりて、今までよりも素のまま話せるようになりました。

余談ですが、デートは苦手だったので、できれば交際期間が短いまま結婚したいほどでした。デートしているうちに「別れてくれ」と言われると思ったので(笑)。

なんでもお手本にすること

やきそば 近藤さんは憧れのアナウンサーはいらっしゃいますか?

近藤アナ ニュースの原稿の読み方が好きなのは元NHKアナウンサーの石澤典夫さん。耳にスッと入ってくる読み方をお手本にしました。アナウンス技術を向上させるためには、まねをすることが大事です。

ただ、うまい人のまねをするのも大事ですが、ナレーションやコマーシャルにおいては声色や口調を全く変えて喋るのも表現のひとつです。

ドラマや映画の役者のセリフまわしも、会社の上司や学生時代の担任の先生の語り口など、取り入れればナレーションやラジオドラマなどで生きてきます。身の回りにいる、あらゆる人の喋り方が教材なんです。

やきそば いろいろな人の話し方を意識しているから「想像して楽しい番組」ができるんでしょうね。

近藤アナ ラジオのコマーシャルでも演技をする部分がありますから、その場合はリアリティが大事になります。例えば、街にいるおじさまの喋り方もひとつの例です。ニュースを読む場合は滑舌が良いほうがいいですが、日常会話ではそればかりではないので、基礎がきちんとできた上で、いろいろとずらしていくことも大事です。

日常の出来事を大切にすること

やきそば 20年近く番組を続けていて、考え方が変わった点はありますか?

近藤アナ いろいろありますが、ひとつは番組で話す内容に対する考え方です。私はどちらかといえばインドアな性格のため、若い頃は積極的に話題の場所を訪れたり、イベントに参加したりして番組で話したほうがいいと思っていました。

もちろんそれも大事ですが、長年番組を続けるなかで、リスナーの皆さんは、むしろ、日常生活のなかにある些細な話題、例えばラーメン店でスープが服に飛び散らないようエプロンを使用するかしないかなど、そうした話が共感を呼んで喜ばれる傾向があることも分かってきました。

自分の身近な日常をいかに面白く話すかが、楽しい番組につながると考えるようになりました。

およそ20年続けられるありがたさ

やきそば アナウンサーとして活躍した方が、年齢を重ねるにつれて管理職になっている人も多くて、いつしかラジオから離れていくのが寂しいです。

人気番組を作ってきた人も離れることがあるなかで、近藤さんから同世代のアナウンサーの皆さんにメッセージをいただけたらと思っています。

近藤アナ ありがとうございます。こうした内容でお話をする機会も、おそらく初めてです(笑)。ただ、帯番組の仕事と管理職の仕事を両方とも全力投球で取り組むのは、仕事量の多さからして不可能だと思います。

全国的傾向として、管理職業務と両立させるため、出演の曜日を減らして番組を続けるというケースが多いような気がします。私も管理職ではあるのですが、部長代理という肩書きです。

部長がちゃんといて、管理職業務の多くをやってくれていますし、会社もスタッフも理解があるので、出番の曜日も減ることなく、自由に泳がせていただいています。

ニーズがある限りはやらせていただきたいと思っていますが、万が一、番組の評判が下がったとして、それでも出続けようとするのは見苦しいので「皆さんが嫌になったら後輩に番組を譲るから」とスタッフに言ったことがあります。引き際は大事ですから。

やきそば 近藤さんは体調を崩したこともありまして、リスナーの皆さんもとても心配していました。『独占ごきげんアワー』を19年も続けられるのはとても幸せですね。

近藤アナ 本当にそう思います。ありがとうございます。

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▲『独占ごきげんアワー』公開生放送にて。長岡市出身の中澤卓也さんと

世代は違ってもお互いを面白がること

やきそば では、近藤さんから、放送の現場で頑張っている20〜30代にもメッセージをお願いします。

近藤アナ 今は時代の過渡期を感じます。先日、番組で森進一さんの「おふくろさん」の話をしたら、月曜パートナーの三浦萌さんが「おふくろさん」を知らなかったんです。2000年生まれなので知らなくても当然ですが、ショッキングでした(笑)。

30歳も歳が離れていると、自分にとって当たり前のことが、相手にはそうではないことがよくあります。だからこそ「普通は知っているはず」と決めつけずに、「自分の感覚は今の時代と合っているのかな?」と自分自身に問いかけるようにしています。

やきそば お気持ち、とてもよく分かります。

近藤アナ 長く同じ仕事を続けていると、自分なりの信念も育ってきます。だから、自分の考えに自信を持つことは悪いことじゃないと思うんです。それと同時に、今の時代にも通じるかどうかを意識して話すようにしています。

20、30代で頑張っている皆さんには「今、皆さんが信じていることを、大事にして進んでほしい。たとえ先輩に何か言われたとしても、自分の信念を信じてチャレンジしてほしい」と伝えたいです。

人間の役割はどこへ

やきそば 最近は、若い人が数年で転職することも多くなっていますよね。

近藤アナ そうですよね。それ自体が悪いことだとは思いません。ただ、長く続けてきたからこそ見える景色もあります。経験をしてきたから学べることもあります。

やきそば 世代が違うからこそ、自分の知らない話が聞けるといった感じで、お互いに面白がれる風潮が理想ですよね。相手の話の内容にもよりますが「キャリアの長い人の話なんて、聞いても意味がない」と決めつけてしまったら、もったいないと思うんです。

近藤アナ 良い形のコミュニケーションは大事です。確かに先輩の話が時代錯誤かもしれない。しかし、学びの多い話かもしれないんです。一つの道を長く歩んできた人には、その人だからこそ言える事がある。それは、ネットやAIからは教えてもらえない。かけがえのないものだと思うんです。

ラジオを通じてコミュニケーションをとり続ける意味

やきそば となると、番組を通じて生身の人間とコミュニケーションがとれるラジオは、やはり独特のメディアですね。先ほど「ラジオはリスナーとの距離感が近い」という話がありましたが、放送で紹介しないことを前提としたお便りは届きますか?

近藤アナ 頂戴します。書くことで少しでも心が晴れたら嬉しいです。「書くだけでも気持ちが少し楽になる」と、番組に出演してくださっている心理学者の碓井真史先生もおっしゃっていました。皆さんの心の拠り所のひとつに『独占ごきげんアワー』があるといいなと思います。

やきそば 素敵ですね!

近藤アナ 番組が始まってから4~5年が経った頃、ある若い奥様が公開放送に観覧に来てくれました。

その方は流産を経験したばかりで、放送が終わったあと、涙を浮かべながら私のところに来て「自分の辛い気持ちを誰にも打ち明けられなくて、唯一、『独占ごきげんアワー』が自分の思いを受け止めてくれる心の拠り所だった」と言ってくれたんです。

この出会いをきっかけに、ラジオには楽しい内容だけではなく、リスナーの辛い気持ちを受け止める役割もあることに気づかされました。

ラジオパーソナリティとして楽しませるだけではなく、心の奥深くにある苦しみや悲しみを理解して、少しでもその気持ちを軽くしてあげることが大切だと感じ始めました。

時には立ち直れないほど辛い人に「少し待って!」と声をかけることができるかもしれません。ラジオを通じた出会いがある幸せを思いながら、番組を続けています。

やきそば やっぱり、信頼関係ですよねぇ〜。

近藤アナ そうなんですよ。信頼関係といえば、3月に『ONE-J』のスタジオに出演して思ったのですが、本仮屋ユイカさんも長くパーソナリティを務めてほしいと心から思っています。私が言うのも恐縮ですが、長く続けるからこそリスナーとの関係に深みが出てくると思いますし。

やきそば それはありますね。本仮屋さんも真面目で温かいですし。

近藤アナ 日々、メッセージを読んでいると、メールをよくくださる方のなかで、普段は明るい内容で書いてくる方が、元気がなさそうな内容のことを書いてくることがあって、心配になります。

やきそば ずっと交流を続けたいと思う方がラジオ番組を続けているのは、幸せなことですよね。

近藤アナ そこまでの密な関係になるまでには時間がかかります。番組を長く続けると、それだけの価値が生まれるということです。

やきそば 『独占ごきげんアワー』が末長く続くことをお祈りしております。

<了>

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