データと専門家が示すテレビ視聴の変化2000→2024|放送100年、生活者はいま何を見ている?

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データと専門家が示すテレビ視聴の変化2000→2024|放送100年、生活者はいま何を見ている?

2025年は、1925年3月22日ラジオ放送の開始から100年を迎える、いわゆる「放送100年」にあたる年です。ラジオ放送に続き、1953年2月1日にテレビ放送も開始されました。
テレビにおいては、テレビの普及、カラー放送や衛星放送のスタート、ビデオデッキ やテレビゲームなどテレビ画面を利用する機器の登場、そして近年のデジタル化など、生活者の視聴行動やスタイルは変化を続けてきました。
特に、インターネットが進化してからは、テレビ放送の視聴だけでなく、動画配信の視聴なども普及しています。

本記事では、全国32地区ある地上波の各エリアで24時間365日、テレビの視聴率調査を行っているビデオリサーチが、メディア環境や生活者の変動が特に顕著である2000年から2024年にフォーカスして、テレビ放送のジャンルごとの放送量の変化や、テレビをはじめとするメディアの接触時間量の変化、そしてテレビを取り巻く生活者の変化についてデータをもとに解説します。

本記事で紹介しているサービス【MCR/ex】

データから見る、テレビにおけるジャンルごとの放送量の変化(2000年~2024年・関東地区)

まず、テレビにおいてどのような番組が放送されてきたのか、テレビにおけるジャンルごとの放送量のデータを用いて、2000年から2024年の変化をみていきます。

【図1】「6-24時」(全日帯)のテレビ番組ジャンルごとの放送延べ分数の割合(ビデオリサーチ調べ・2000年~2024年・関東地区)

【図1】「6-24時」(全日帯)のテレビ番組ジャンルごとの放送延べ分数の割合(ビデオリサーチ調べ・2000年~2024年・関東地区)

ほぼ一日を表す「6-24時」(全日帯)では、テレビ番組ジャンルとして、朝や昼の情報番組などに代表される「教育・教養・実用」の放送時間が全期間を通じて最も高いシェアを占めており、全体の3分の1程度です。「バラエティ」は2000年時点では16.7%でしたが少しずつ増え、2017年以降は20%を超えて2024年には22.3%となっています。
同様に、ストレートニュースなどが含まれる「報道」も微増傾向であり、2000年の17.0%から2024年は20.8%と最高値となっています。

一方、「ドラマ」は、2000年から2014年までは12%程でしたが、2015年を機に以降10%未満に減少しています。以前は昼に定期的に放送される"昼ドラ"やドラマの再放送、加えて長尺の2時間モノのドラマが定期的に放送されていましたが、年々数が減少したことが影響していると考えられます。ただ、近年はTVerなど配信でのドラマ視聴も一般的になったこともあり、深夜帯に30分など短尺のドラマ枠が増設されることも多く、2022年以降はわずかですがシェアが増えてきている傾向もみられます。

データから見る、テレビをはじめメディアの接触時間量の変化(2000年~2024年・関東地区)

次に、生活者がテレビをはじめどのようなメディアに接触(視聴や利用など)しているのか、メディアの接触時間量のデータ(ビデオリサーチの「MCR/ex」)を用いて、2000年から2024年の変化をみていきます。

【図2】自宅内におけるテレビ、ネットなど各メディアの1日の接触時間(分)(ビデオリサーチ調べ「MCR/ex」・2000年~2024年・関東地区・男女12~69歳・週平均)

【図2】自宅内におけるテレビ、ネットなど各メディアの1日の接触時間(分)(ビデオリサーチ調べ「MCR/ex」・2000年~2024年・関東地区・男女12~69歳・週平均)

2000年から2024年の間で、生活者のメディア接触時間に最も大きな変化が見られたのは「インターネット」でした。

「インターネット(PC・スマホ・タブレット・携帯)」の接触時間は、2000年時点では1日に8分とわずかでしたが、年々急激に時間量を伸ばし、iPhoneが日本で発売開始された2008年には40分台に、スマートフォンの普及もあり、2017年には64分(1.1時間)と1時間を超えました。コロナ禍を迎えた2020年には外出自粛の影響もあり、最大値の121分(2時間)に到達し、2024年も117分と、コロナ禍で急速に増えた接触時間はコロナ禍を経ても2時間程を維持しています。

「インターネット」に次いで変化が大きいメディアは「テレビ」です。
リアルタイムの視聴が対象となっている「テレビ」の接触時間は、2000年から2023年まで最も接触時間の多いメディアでしたが、2024年は「116分」で「インターネット」と同程度の接触時間となりました。

2000年から2010年のテレビの接触時間は、1日に200分前後(3.3時間前後)でしたが、2013年から2019年にかけて少しずつ減少しています。2020年はコロナ禍による外出自粛の影響もあり、テレビ接触時間は増加したものの、2021年以降は減少に転じ、2024年は1日に116分(1.9時間)と、2000年と比べて6割程の時間量になっています。

リアルタイムでの「テレビ」の接触時間の変化は、インターネットや配信、デバイスの進化および普及による"視聴の多様化"が背景にあると考えられます。

視聴の多様化の一つとして、テレビ番組の「録画再生」視聴が挙げられます。
「録画再生」の接触時間は、2000年時点では1日に6分でしたが、大容量HDDレコーダーの普及により2007年に2倍の12分に、それ以降も2014年の30分をピークに増えています。録画再生が簡単にできるようになり、リアルタイムでのテレビ視聴に少なからず影響を与えたと考えられます。
ただ、「録画再生」も、2017年頃からは微減傾向で、2024年時点では23分となっています。これは、TVerなどの放送局由来の見逃し配信や、YouTubeなどの動画配信の普及も影響していると考えられます。

見逃し配信や動画配信の普及とともに近年の新しい視聴形態として増えてきているのが、インターネット結線がなされたテレビモニター、いわゆる"コネクテッドTV(CTV)"の視聴です。MCR/exでは2018年から「CTV」の調査も行っており、CTV自体の利用者も多くはなかったであろう2018年時点での「CTV」の接触時間は1日に2分でしたが、年々増えており、2024年は17分という結果です。

急激に増加したインターネット利用による変化は、「ラジオ」や「新聞」、「雑誌」の接触時間減少にも影響していますが、もともと接触時間が最も多かった「テレビ」では特にその影響が顕著だと言えます。

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テレビを取り巻く生活者の変化を専門家はどう見ているか

最後に、視聴者のライフスタイルや価値観の変化がテレビ視聴にどのような影響を与えているのかを考察します。株式会社ビデオリサーチ所属の、ひと研究所所長の渡辺庸人、メディアデザイン研究所所長の奥律哉が、生活者のメディア接触行動研究の専門家として、テレビが果たす役割や生活者のニーズがどのように変わってきたのかを紹介します。

株式会社ビデオリサーチ

  • 渡辺 庸人
    渡辺 庸人ソリューションユニット フェロー/ひと研究所 所長
    2009年、ビデオリサーチ入社。主に広告会社や広告主の調査企画・分析に従事する傍ら、若者研究や幸福研究などに携わり、2017年よりひと研究所に参画し研究発信・セミナー登壇などを行う。2024年より現職。現在は生活行動とメディア利用の関係を中心に研究中。修士(社会学)、専門社会調査士。​
    2009年、ビデオリサーチ入社。主に広告会社や広告主の調査企画・分析に従事する傍ら、若者研究や幸福研究などに携わり、2017年よりひと研究所に参画し研究発信・セミナー登壇などを行う。2024年より現職。現在は生活行動とメディア利用の関係を中心に研究中。修士(社会学)、専門社会調査士。​
  • 奥 律哉
    奥 律哉奥 律哉メディアデザイン研究所 所長
    1982年、電通入社。ラジオ・テレビ局、メディアマーケティング局、MC プランニング局などを経て、電通総研フェロー、電通メディアイノベーションラボ統括責任者を歴任。2024年6月末、電通を退社。ビデオリサーチにてメディアデザイン研究所 所長を務める。主に情報通信関連分野について、ビジネス、オーディエンス、テクノロジーの3つの視点から、メディアに関わる企業のコンサルティングに従事。総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」構成員。NPO法人/放送批評懇談会 出版編集委員会委員。
    1982年、電通入社。ラジオ・テレビ局、メディアマーケティング局、MC プランニング局などを経て、電通総研フェロー、電通メディアイノベーションラボ統括責任者を歴任。2024年6月末、電通を退社。ビデオリサーチにてメディアデザイン研究所 所長を務める。主に情報通信関連分野について、ビジネス、オーディエンス、テクノロジーの3つの視点から、メディアに関わる企業のコンサルティングに従事。総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」構成員。NPO法人/放送批評懇談会 出版編集委員会委員。

メディア主体の生活から"生活の中のメディア"へ変化

生活者の生活行動とメディア接触行動の特徴の読み解きを行うなかで、特徴的な変化はテレビ視聴が多い生活者が減少していることです。要因として、テレビをリアルタイムで専念視聴していた人が他のメディアに接触することが増えて行動が分散されたこと、共働き夫婦や働き続けるシニア の増加により家にいる時間が減少したことの2つが挙げられます。

テレビ視聴以外に外出時間も減少しており、その分はネット利用も増加する一方で、睡眠、在宅での仕事時間が増加しています。アフターコロナになり生活行動が元に戻ってきている側面もありますが、さまざまな行動に生活時間が再分配されている中で、"選ぶメディア"も変化しているといえます。

渡辺は、「リアルタイムのテレビ視聴が生活行動に与える影響力が低下している」と指摘します。これに対し奥は、「以前はテレビ番組に合わせて生活を調整していたが、今はライブ、アーカイブ、キャッチアップなど多様な視聴手段があり、好きなタイミングで視聴できる」と述べ、テレビ視聴が"生活の中の一部"へと変化したことを示唆しています。その結果、寝て・起きて・外出という生活の三行動の中に、テレビ視聴を含めたメディア行動が分散し、"生活の中のメディア行動"へ変化したことが明らかになりました。

生活者にとって重要なのは"自分に合うか"

以前に比べ"自分の興味関心"の狭い範囲にフォーカスされやすくなり、趣味嗜好が多様化したことは、メディア接触行動全般に影響が出ているようです。渡辺は、この背景を「SNSをベースに、狭い興味の範囲でもそれが好きなもの同士でコミュニケーションが取れるようになった影響が大きいと思われる。職場や学校などのある種の"パブリック"な興味関心以外の"プライベート"の領域が広がっているのではないか」と考えています。これにより、メディアに関わらず「見たいものを見るためには時間を使う」目的視聴は増える一方、「何となく見る」という行動は以前に比べ減っていると渡辺はみています。

番組ジャンルの中で「ドラマ」は、「見逃し配信」での目的視聴も多いと渡辺は語ります。
「ドラマは放送だけでなく配信コンテンツとして見られることも多い。配信は個人の都合が良い時間に見られる。短尺のドラマはスキマ時間や、ながら時間を埋めるニーズとマッチしている」

また、生活の中でコンテンツとの関わり方が変化してきている予兆として、朝のメディア行動が挙げられます。朝の時間のテレビには時計代わりの役割がありましたが、朝にドラマやアニメの動画をタイマー代わりにする若者の行動が一部確認されています。
奥は、「在宅勤務や外出自粛による家の中での自由時間の増加と、インターネット動画やCTVなどのさまざまなサービスの拡大がほぼ同時に起こったことで、メディアはより人々の生活と好みに合わせて、選ばれるようになった」と分析します。

今後のテレビのカギは"コンテンツ力"と"最速性"

今後について、「テレビと動画配信はコンテンツのすみ分けが起きてくる」と渡辺はみています。「ニュースや社会的関心ごと、災害情報など"社会性"、スポーツをはじめ何が起こるか分からない瞬間が見られる"リアルタイム性"、それに伴う"体験性"が重要なコンテンツは引き続きテレビで視聴される」と考えています。

コロナ禍の影響や動画配信サービスの浸透によって生活者の行動パターンは再構成されるなか、「生活に必要なもの」として日常生活にコンテンツが組み込まれることの重要性が高まっていること、またドラマや映画においても"コンテンツ力"に加えて"最速"が価値になる傾向がみられることを挙げ、「今後はリアルタイム視聴の新しい価値を見出すことが必要。その価値に気づけたなら、その次の変化が起こる可能性はある」と渡辺は語ります。

奥は、視聴シーンに注目し、「テレビ、CTV、スマートフォンの視聴のされ方は異なる。スマートフォンにはそれに合わせた"モード"のテレビコンテンツを用意するなど、デバイスごとのモードに合わせたコンテンツが必要。例えば、高齢者でも若者的行動をとることもあるし、一個人で複数のSNSアカウントを所有するなど、一人の人でも複数人いるような"マルチモード"が一般的であり、その受け皿をテレビ側が作ることで生活者がデバイスやコンテンツ間を行ったり来たりできるのが理想」と言います。

生活行動と価値観の理解が未来を拓く

テレビの今後を考えるうえで、渡辺は、テレビという"箱"の中での視聴者の取り合いを考える以前に、テレビモニターの視聴の外側にある生活行動との関係を見ることが重要だと言います。

それを受けて、奥は、2020年からのインターネット動画の浸透とコロナ禍により、「10年くらいの間に起こるべき変化がたった3年程度で進んだ」と語ります。今後もこの勢いが続くかは未知数としながらも、どの業界でも想定外と言われる変化が起きている状況を思えば、変わっていっても不思議ではないとしています。
「今後もメディア行動は分散の傾向にあり、時代ごとの背景の中で各世代の基礎的なメディア行動が形成され、人々の生活の仕組みや潮流がどこに向かっているかを捉え、その先でコンテンツビジネスや広告ビジネスが待ち構えていく必要がある。そのためには変わっていくものとして"生活行動"を、変わらないものとして"価値観"を常に押さえておくべき」とコメントしています。

いかがでしたでしょうか。今回は2000年~2024年を取り上げましたが、それ以前にもテレビ放送の長い歴史においてさまざまな進化と変化がありました。本記事を通じて、テレビと生活者の変遷を振り返り、改めて「放送100年」の壮大な歴史を感じていただけるきっかけとなれば幸いです。

本記事で紹介しているサービス【MCR/ex】

【本記事で紹介したサービス】※図2
・サービス名:ビデオリサーチ「MCR/ex
・対象地区:関東地区(東京50km圏)
・対象者:男女12~69歳・各年約4,700サンプル調査
※2000年~2013年は、東京30km圏・男女10~69歳・各年約2,000サンプル調査。
※2014年に調査手法(標本抽出方法および回答方法)を変更。

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