たくさんあるテレビ視聴データ、どう活用する【VR FORUM 2025】

最終更新日:
メディア
#CM #VR FORUM #テレビ局 #データ活用 #メディアプランニング
たくさんあるテレビ視聴データ、どう活用する【VR FORUM 2025】

[登壇者](右から)
読売テレビ放送株式会社
経営戦略局 兼 コンテンツ戦略局 松田 裕貴氏

株式会社ビデオリサーチ
ビジネスデザインユニット 視聴データビジネスグループ
兼 Resolving LAB株式会社 データプランナー 重光 ゆみ

近年、多種多様な形式で取得されているテレビの視聴データ。効果的な出稿や番組制作のためにこれらを役立てる方法とは?読売テレビでグループ全体のデータ戦略を推進している松田氏をお迎えし、企業や放送局の課題解決のヒントとなるテレビ視聴データの活用方法を、事例とともに語り合いました。

たくさんあるテレビ視聴データ。その種類と特長は?

セッションは、ビデオリサーチ子会社のResolving LAB株式会社(以下「RL」)でテレビ視聴ログデータをベースとするビジネス開発に携わる重光の「なぜ、テレビデータを活用した方が良いのか?」という問いかけから始まりました。その問いかけの背景として、テレビの現場では、次のような課題や要望が実際に聞かれると紹介されました。

〇放送局からの声(重光)
・番組制作時の企画、編成方針を「自身の感覚や経験則だけで判断する」ことへの不安
・「裏付けとなるようなデータがあったらいいのに」という声

〇企業からの広告出稿における声(松田氏)
・番宣CMには実際どれくらい効果があるのか?
・どのテレビ広告枠(時間帯や番組)に出稿したら効果が上がるか調べたい
・テレビ広告もデジタルのようにターゲティングしたい

こうした課題の解決に寄与するのが、さまざまなテレビ視聴データの分析・活用です。まずは重光がテレビ視聴データの種類について紹介しました。

ビデオリサーチが提供する視聴率は、個人視聴率(テレビの前にどの属性の人がいるか)が分かり、代表性もあって、その地域で何%の人が視聴しているか証明できるものです。松田氏が扱う放送局ログは、各局の放送が届く全域からネット回線を通じて集まっており、対象となるテレビの数が多くあります。メーカーログは、自社メーカーのテレビで視聴していれば、放送局もエリアも問わない、やはり多くのテレビから集まるデータです。 RLではこのメーカーログを複数のメーカーから購入し、個人単位の視聴に分離し、全国で1,183万台、個人数にして3,340万人分を超える膨大なデータを整備しています。

たくさんあるテレビ視聴データ!

局ログの特徴として大きいのは、「視聴率(個人全体)」との強い相関だと松田氏。「放送局である以上、データ分析を経て施策を実施した結果、視聴率に還元されないと意味がないと考えている」と話し、視聴率と強い相関があるからこそ、局ログを使って視聴者の細かい動きを把握することに意味が出てくると説明します。他に次のような特徴も見られるといいます。

・全メーカーから取得している全数データで、視聴者の実態を表すのに適している。
・幅広い地域を網羅しているため地域性を可視化でき、広告主が興味を持つ地域で対象のコンテンツがどれだけ見られているかなどの説明が可能。
・リアルタイム性が高く、生放送番組や野球中継の現場で視聴状況がわかる。(読売テレビでは「1分前の状態」を可視化している)

番組の状況で変わる「番宣CM」の効果を、データ分析で可視化する

ここからは、冒頭で挙げた両者に届いている声(課題)を、視聴データを活用して解決した事例をみていきます。最初の事例は、番組宣伝(以下「番宣」)CMの適切な量や放送タイミングの相談に対する、読売テレビのデータ活用事例です。松田氏は、対象コンテンツの状況によって当然対策は異なる、として「長寿バラエティ番組」と「ゴールデンプライム(以下GP)帯の新作連続ドラマ」の番宣効果を、局ログを活用して分析した結果を比較し解説しました。

番宣CMの効果って?どれだけ放送すればいいの? 約58%の本編視聴者は番宣CMに接触していない
番宣CMの効果って?どれだけ放送すればいいの? 約90%の本編視聴者は番線CMに接触している

長寿バラエティ番組の視聴者の場合、番宣CMを一回も視聴せずに本編を見ている人は58%。一方GP帯の連続ドラマは、第1話の視聴者のうち約9割が番宣CMを一回以上視聴しています。新作ドラマは、番組名も放送タイミングも認知が取れていないため、番宣CMも多く流した中での結果です。

さらにフリークエンシー(番宣CMに何回接触すれば本編を視聴するか)を調べると、長寿バラエティ番組の場合、5~6回までは接触するほど本編を見る確率が上がっていき以降はそれほど変化がない状況に。そのため、一人の視聴者に番宣CMを5回程視聴してもらえる機会をどう最大化するかを逆算して考えると、最適なプランニングが見えてくるといいます。

対してGP帯の新作連続ドラマは、25回程度まで効果が上がっていきます。「こうした分析を前提に効果的な時間帯や本数、クリエイティブの種類を深掘りしていくことで、最適な番宣CMの流し方や作り方が見えてくる」と松田氏は言及しました。

続いて重光が、「『番組C』の視聴率が上がらないので放送の並びを変えたい」という編成に関する事例を報告しました。RLの保有データを用いて、各番組の視聴者プロフィールの重複具合から算出される「マッチ度」を分析しました。その結果、番組Cは隣接する番組とのマッチ度が低い一方、番組Eとは84.2%と非常に高いことが判明。そこで、番組Cと番組Dの放送順を入れ替えることで、視聴者にとってより自然な流れとなる編成を提案したといいます。

前後の流れが悪いみたい。番組の並びを変えるといいのかな?

視聴者のプロフィールを分析することで、"番組に合う広告主"が見えてくる

次のトピックでは、広告、セールスの場面の課題に向けた事例が紹介されました。対象の番組に合う広告主を知りたいと相談を受けた際、RLのデータで視聴者の細かなプロフィールを可視化したと重光はいいます。

この番組に合ったクライアントって?

例として挙げられた読売テレビのバラエティ番組『見取り図の間取り図ミステリー』の視聴者では、一戸建て住宅を持っている層であるほか「テレビ広告が効く」「国内旅行がしたい(人々)」といったプロフィールが分かりました。重光は「このように視聴者を豊富なプロフィールで表現することで、皆様のセールスや分析に使っていただけます」と、その有用性を伝えました。

他方、読売テレビは在阪5局でタッグを組み「在阪視聴データ利活用推進会議」を立ち上げ。RLとは異なるアプローチで、関西エリアの視聴者実態を把握し、広告価値を維持向上させていくための共同データ利用に取り組んでいるといいます。

その中で読売テレビは、「視聴傾向に応じたTVのクラスタリング分析」に取り組んでいます。例えば、民放5局の野球中継を全て視聴している人を「野球視聴ヘビー層」としてクラスタリング。次に「野球視聴ヘビー層」が、野球以外で見ている番組を分析すると、「野球好きが集まる他の番組」が見えてくるといいます。松田氏は、「これが実現できれば、放送局を横断した広告効果測定が実現できるようになると考えています。テレビ広告がデジタル広告に対抗するためには絶対に必要な取り組みです」と力を込めました。

視聴傾向(趣味趣向)による視聴者理解って?

また、松田氏は「局ログ」のマネタイズ事例として、CMのView数に対する課金を実現した「CONNECTED VIEW AE」(電通と協業し 2021年から提供開始)を紹介。「従来のGRPにとらわれない発想を持つことで、局ログには放送収入を維持、向上させていく可能性があると考えている」と述べました。

視聴データの活用研究は「ほんの第一歩」。今後も幅を広げ、さらなるテレビの価値向上を!

松田氏からはさらに、視聴データを活用して奈良先端科学技術大学院大学と共同研究を行った結果、TVCMが「検索」のアクションにつながると発見された事例について紹介がありました。

CM放送後の視聴者の検索行動への影響について調べたところ、あるアルコール飲料では、CM放送がない場合と比べた結果、放送する回数が増えるにつれて検索量が増え、3回で14.5%上昇したことが判明。一方でインターネット保険のCMでは、あまり検索行動の変化は見られなかったといいます。同氏は「テレビCMは購買行動への影響は弱いといわれますが、低単価商品に限っては検索行動にもつながりやすいことが分かった」と伝えました。

CM視聴後に視聴者は行動するのか

また、「リーチが取れる視聴者数はGP帯(20~21時)が多いが、TV1台あたりの検索率は深夜や朝帯の方が圧倒的に高いことが示されている」と話し、KPIが「認知獲得」ではなく、「自社サイトへの誘因」などの広告主にとっては、深夜や朝帯に出稿した方が効率よい可能性があると示唆しました。

重光も「テレビの宣伝効果を可視化したい」という相談に対し、自社の視聴ログデータと、unerry社が提供する位置情報データを活用したソリューションにより、テレビ番組を視聴した人の実際の来場率を可視化した取り組みを紹介。読売テレビの夕方の情報番組内にある生中継コーナー、「推しコレ」で扱ったKITTE大阪の1周年祭りに対して、未視聴者の来場者数と比べたところ、視聴者が2.7倍も多かったことを報告しました。これに対し松田氏は、「結果を見るまでは本当にテレビの番組に効果があるのか、行動にどれだけつながるか、感覚でしか分かっていませんでした。数値に出たことで安心もしましたし、テレビの効果を実感できた」と述べました。

テレビ放送で扱った効果を可視化したい

最後に2人は今後の展望についてコメント。松田氏は「広告主企業を含め社外では、データに基づいて物事を判断する『データドリブン』な考え方が主流になっています。 まずは、社内のデータリテラシーを向上させながら、データ活用が利益につながることをしっかり示していきたい」と意気込みを語りました。

重光は、前日セッションがあった、Amazonが「Prime Video広告」などを通じてフルファネルのデータを持っている例、および海外でも同様の取り組みが始まっていることにふれ、「本日ご紹介したデータ活用によるセールスの進化事例は、ほんの第一歩です。今後は、データ活用の幅をさらに広げて、テレビの価値を一層高めていくお手伝いもしていきたい」と伝え、セッションを締めくくりました。

右から 読売テレビ放送株式会社 経営戦略局 兼 コンテンツ戦略局 松田 裕貴氏 株式会社ビデオリサーチ ビジネスデザインユニット 視聴データビジネスグループ 兼 Resolving LAB株式会社 データプランナー 重光 ゆみ

全19セッション分のレポート公開中!こちらから

サービス一覧