北海道・沖縄発!ローカルコンテンツの底力~埋もれさせないための挑戦~【VR FORUM 2025】

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#AI #VR FORUM #デジタル #ローカル局
北海道・沖縄発!ローカルコンテンツの底力~埋もれさせないための挑戦~【VR FORUM 2025】

[登壇者](右から)
沖縄テレビ放送株式会社 編成制作局 編成部 部長
野波 宏次氏

北海道テレビ放送株式会社 社長室 部長
阿久津 友紀氏

株式会社ビデオリサーチ ビジネスデザインユニット 新規ビジネス開発グループ プランナー
伊藤 美鈴

地域の魅力を、もっと遠くへ、もっと広く。北海道テレビ・沖縄テレビの担当者に、限られた予算や人手という壁を乗り越えながら挑む発信の工夫、「ローカルコンテンツバンク」の取り組みやAI活用から見えてきた今後の期待や課題を、ビデオリサーチとともに語っていただきます。

ウェブでのコンテンツ配信に注力

セッションの冒頭では、2局に対し、日々の番組制作や放送を大前提としたうえで、それ以外に力を入れている取り組みについて聞きました。

沖縄テレビでは、公式YouTubeチャンネルでの配信に加え、2021年12月にウェブメディア「OKITIVE」を立ち上げました。「OKITIVE」では、番組と連動した記事以外にも、地域の最新ニュース、生活・経済情報、グルメ、観光スポット、エンタメ、コラムなど、オリジナルの記事を多数配信。例えば、沖縄移住者のコラムは爆発的なPV数を獲得し、プロバスケットボールチーム「琉球ゴールデンキングス」に関する記事もコンスタントに高いPV数を記録しているなど、「OKITIVE」のポテンシャルを感じていると野波氏。さらに、移住をテーマとした番組を制作し、九州エリア系列局で放送した事例を挙げ、番組制作にも活かされる相乗効果についても述べました。

また、「OKITIVE」は、SNS展開を強化してアクセス経路の拡充を図っています。「現在は県民に加えて、県外の沖縄好きの方もメインターゲットにして、PV数を伸ばしている」と、野波氏は伝えました。

OKITIVE(オキティブ)のご紹介

続いて、阿久津氏が北海道テレビの取り組みを紹介。同社は、「ALL ON ONE PLATFORM」という戦略のもと、自社開発したコンテンツ配信、グッズ販売、イベント配信、自社アプリ、ウェブメディアの「SODANE」まで、全てが1つのプラットフォーム上にあり、1つのIDで利用できるシステムを組んで、マルチモール展開をしています。地上波だけでなく、地上波のリーチを活かしながら、SNSでもシェアをして、どんどん記事を読んでもらいたいという思いがあるそうです。

「SODANE」では、同社社員によるコンテンツも配信。テレビの番組内では放送できなかった内容などを伝えて、PV数を大きく伸ばしています。阿久津氏は、ピンクリボン活動に参加し、乳がんの取材に取り組んできた自身が手掛けるコンテンツについて紹介。自身が6年前に乳がんに罹患した際、手術の映像をYouTubeで配信したところ、瞬く間に50万PVを獲得。そこから派生した「SODANE」の記事も平均10万PV以上を獲得し、全国から反響があったそうです。

「SODANE」の記事は、スマートニュースやYahoo!に取り上げられ、そこで注目を集めて、自社コンテンツのPVの増加につながったほか、記事が出版につながった事例も紹介しました。北海道で放送して終わりではなく、ネット環境で全国各地いろいろな人とつながり、エコシステムが回ることを実感していると阿久津氏は述べました。

ALL ON ONE PLATFORM

コンテンツを海外に向けて発信する

続いて、海外の人にコンテンツを見てもらう工夫について紹介。沖縄テレビは、沖縄からハワイへの移民125周年を記念する式典をハワイで取材し、特別番組として放送予定(※2025年10月9日時点)です。放送後は、海外からも視聴できるよう英語翻訳と字幕を付けて配信する計画を説明しました。さらに、ハワイのローカルテレビ局へ販売することも計画しているとのこと。その他、同社の長寿番組『郷土劇場』をYouTubeで配信したところ、英語の翻訳を入れると、海外から5%のアクセスがあったと、野波氏は報告しました。

また、国内外からたくさんの人が訪れる「那覇空港」と「OKITIVE」とでコラボし、「OKITIVE」で紹介したグルメ、おでかけ情報を空港内の飲食店で取り上げる取り組みについても述べました。

阿久津氏は、北海道テレビの番組『LOVE HOKKAIDO』について、ベトナム企業とYouTubeのショート動画を作る取り組みを始めていると伝えました。番組の素材を渡し、ベトナム企業が、ベトナムの視聴者の興味を引きそうな部分を編集して、スーパーをかけて戻します。 しかし、「広尾町」を「疲労」と捉えるなど、翻訳に課題があるといいます。日本語への対応を考えつつ、この取り組みを通して海外から北海道への送客につなげたいと語りました。

各局のコンテンツをためて、ととのえる「ローカルコンテンツバンク」

続いて、他社との連携について、阿久津氏がコアメンバーである「ローカルコンテンツバンク」(以下、LCB)について説明。LCBとは「コンテンツをためる、ととのえる」をコンセプトに、全国のローカル局が自社で制作した素材を集め、AIによるメタデータ付与サポートシステム(メタサポ)で整理・蓄積し、各社がその素材を活用できる仕組み。これによるさまざまなプラットフォームでの展開や、地域を越えた情報発信を目指し、2024年12月から2025年3月まで実証実験を行いました。
実験では、各局が毎日制作・放送している短めの情報を集積。TVerやSPOOXといったプラットフォームに、週替わりでテーマを決めて、北海道、東北から九州、沖縄まで、各局のコンテンツを1つにまとめて "メザシ"(串刺しにしたという意味合い)にして配信しました。
この実証実験においては「視聴データの測定や分析」「仮想の動画配信プラットフォーム環境を作った検証」などで、ビデオリサーチも協力していることを伊藤から紹介。例えば"メザシの串"という共通の特徴の設定には、ビデオリサーチのEmolyzerを活用し、各コンテンツが想起させる感情(イメージ)を予測。その共通要素を"串"として配信実験に適用しています。
阿久津氏からは「癒される」「情緒ある」といったテーマ設定をし、該当するコンテンツを集めて"メザシ"にしたところ、非常にPV数が伸びたとの報告がありました。

Local Contents Bankのコンセプト~コンテンツをためる、ととのえる~

LCBの取り組みを通して、視聴データから得られた知見について伊藤が問いかけると、「北海道や東北の街ネタを一番多くご覧になっているのは関東の方であったこと。地域の方ももちろん見ているが、地域を跨いだ視聴もあることがわかった」と阿久津氏。ローカルの情報は、地元の方はもちろん、地元以外の方にも求められているということがデータで確認できたと答えました。

新しいチャレンジとAI活用、DX化

コンテンツ編集・制作ではAI活用やDX化も進んでおり、LCBでは、先述のメタサポでの活用が行われています。阿久津氏は、それ以外の課題感として、タグ付けの際に「屈斜路湖」のような地名のタグがうまく機能しない例を挙げ、日本語に特化されたAIがあるとよいという思いを述べました。

沖縄テレビでは、番組連動の記事を作るときに、AI編集支援サービスを導入しはじめていて、従来2時間程度かかっていた作業が30分に短縮できたといいます。さらに、新たな取り組みとして、テレビ放送やウェブメディアによる発信に加え、来店促進などその先の行動を後押しするためのアプリ開発にも着手しており、来春のリリースを予定していると野波氏が説明しました。

安全で信頼できる魅力あるコンテンツを広く発信したい

最後にローカルコンテンツの今後の課題と展望について語りました。野波氏は、多言語化への対応という課題をクリアしながら、沖縄の魅力あるソフトを、放送、ウェブ、LCBを活用しながら全国や世界に発信して、沖縄のファンを獲得し、ローカル局の存在価値を高めたいと述べました。

阿久津氏は、ローカル局の役割は、安全で信頼できる情報を、必要なときに必要な人に届けることが大事だと強調。安全と信頼が担保された情報番組の素材を放送だけでなく、ネット空間にも置いていくことが必要といいます。その一助にLCBがなることを期待していると述べました。

「ローカル局が連携しながら地域の魅力をより広く正しく発信していく時代がきている」と伊藤。ビデオリサーチとしても、視聴データの測定や分析や、コンテンツに正しいメタ情報を付与していくことで、ローカル局をはじめとする皆さまの取り組みをサポートしてきたいと語り、セッションを締めくくりました。

沖縄テレビ放送株式会社 編成制作局 編成部 部長 野波 宏次氏・北海道テレビ放送株式会社 社長室 部長
阿久津 友紀氏・株式会社ビデオリサーチ ビジネスデザインユニット 新規ビジネス開発グループ プランナー 伊藤 美鈴

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