期間内に何人に見られたのか?何回見られたのか?<リーチ&フリークエンシー>

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#テレビ #視聴実態 #視聴率 #視聴率基本の『キ』
期間内に何人に見られたのか?何回見られたのか?<リーチ&フリークエンシー>

テレビ番組には、多くの人に見られている番組もあれば、一部の人の間で人気となっている番組もあります。また、「放送されるたび、毎回見る番組」もあれば「時々見る番組」「1度だけ見る番組」など、視聴のされ方も異なります。

視聴率データでは、「番組や時間帯が、期間内にどれくらいの人に見られたのか」「どの放送回で視聴者が増えたのか」「視聴者が何回見たのか」を分析することも可能です。
「番組を見た」とする基準を設け、それを1度でもクリアしたことを表す「到達(リーチ)」、期間内にクリアした回数を表す「視聴回数(フリークエンシー)」、主にこの指標を用いて視聴の実態を確認します。

「視聴率基本の『キ』~分析実践編~」シリーズでは、視聴率のさまざまな分析方法と活用例を紹介しています。

今回はシリーズ第3弾として、視聴率データを計測・提供する株式会社ビデオリサーチで日々視聴率の分析に携わる現役社員が『リーチ&フリークエンシー』(視聴率集計システム【iNEX3】では『R&F』と表示)について解説します。

また、このシリーズで紹介する分析メニューは一部を除き、ビデオリサーチが提供する視聴率集計システム【iNEX3】で集計が可能です。

記事の中でご紹介しているサービスはこちら【視聴率】

なお、「視聴率」についての基本解説は、【視聴率基本のキ】シリーズに掲載していますのでこちらも合わせてご覧ください。

1.「リーチ&フリークエンシー」はどんな指標か?どのシーンで使うのか?

「リーチ&フリークエンシー」は先述の通り、ある番組や時間帯が、期間を通してどれだけの人に1度でも視聴されたかを表す『累積到達率(リーチ)』、その視聴者が何回視聴したのかを表す『視聴回数(フリークエンシー)』を確認できるものです。

また、『累積到達率』の他に『到達率』という似た指標があります。『到達率』も同じくリーチと呼びますが、定義はそれぞれ異なります。違いは以下です。

●累積到達率
⇒ある期間内(例えば1クールの間)に対象の番組や時間帯を1度でも見た人がどれくらいいるかを調べる際に使う指標。

●到達率
⇒放送1回ごとに、見た人がどれくらいいるかを調べるときに使う指標。期間内で、どの放送回に視聴者が多かったか調べるときはこちらを使います。

視聴者の多さを表す指標と言えば、『視聴率』も思い浮かびますが、『視聴率』は視聴者の数とその視聴時間の長さを加味した視聴の量を表し、『累積到達率』や『到達率』といったリーチは視聴者の数を表します。

なお、視聴の長さや視聴の量については以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

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番組制作や編成において重要な「拡がりと深さ」・「視聴分数分布」について、分析事例を用いて解説。データを活用することで、視聴率の変動の要因や、改編の成果を把握できます。

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『視聴回数』は、2章で詳しく解説しますが、『平均視聴回数』と『視聴回数分布』の二つを確認することで、「その番組は繰り返し見られやすいのか」「視聴者には何度も見る人/1度だけ見る人」など、どのような見方をする人が多いのかが分かります。

1-1.どのシーンで使うのか?

このメニューは、例えば以下のようなシーンでよく使われます。

●新番組が放送開始した場合
⇒放送開始からこれまでにどれくらいの人に視聴されたか?

●大規模なスポーツ大会が開催された場合
⇒大会期間全体を通して試合中継はどれくらいの人に視聴されたか?

他にも、番組の視聴率が低下または上昇と変化した場合、前の時期に比べてリーチが変化しているのか、平均視聴回数が変化しているのかの分析にも使います。

そもそも番組を見る人が増減したのか(リーチの変化)、見る人は変わらないが頻度が増減したのか(フリークエンシーの変化)を確認し、同じ時間帯に他局で放送される裏番組と比較したり、視聴者層を性年代別にみたりすることで、より深く番組の視聴状況を知ることが可能です。

状況が分かれば、到達(リーチ)に対する施策/視聴回数(フリークエンシー)に対する施策のどちらに注力すればよいか、どの性年代を意識すればよいかなど、具体的な判断材料にもなります。

例えば、フリークエンシーは維持しているのにリーチが低下した場合は、視聴の回数は維持できているが、視聴者は減っているという事になります。この事から、見ている人には関心ある番組であり続けている一方で、関心が薄れた人も出たことが考えられます。

このケースの場合、フリークエンシーは維持しているので、リーチに対する施策が必要です。具体的には、「番組内容を変更し新たな視聴者を目指すより、先に今の内容を知らない未視聴者への告知強化を行うのはどうだろうか?」というような判断ができます。

1-2.視聴判定とは?どのように見た人を「番組を見た」としてカウントするか?

これまで紹介した分析をするには、「番組を見た」とする基準を分析者が設定し、「見た」人と「見ていない」人に分けたデータを用いる必要があります。その「見た」とする基準を「視聴判定」と呼びます。

例えば、放送分数が60分番組の場合、60分間フルで見た人もいれば、チャンネルを変更し複数の番組を見た人、1分だけ見た人などもいて、視聴のされ方はさまざまです。

1分でも見たら「見た」とすることもできますし、60分間フルで見た場合を「見た」と設定することも可能です。

通常、番組などを分析する場合は「放送分数の1/3以上」の視聴判定を使う場合が多いです。また少しでも番組を見た人を知りたい場合は、視聴判定を「1分以上」とする場合もあります。放送が何時間もある番組では1/3以上も見る人が少なく、分析に耐えないかもしれません。その場合は基準の緩和も分析者が考えることになります。

このように、何を知りたいか、どのような見方の人で分析したいかによって、基準を設定しますが、「視聴判定」によって、累積到達率(リーチ)や視聴回数(フリークエンシー)は変わるので注意が必要です。

なお、「視聴判定」はこの分析実践編シリーズで紹介している、『流入流出』『重複視聴』『視聴者の組み合わせ』でも利用します。

2.データの見方と分析例

図1は『リーチ&フリークエンシー』分析のアウトプットの一つ、「ある番組の放送回ごとの累積到達率」を表す「リーチ推移グラフ」のイメージです。今回は、1章で紹介した「視聴判定」を「1/3以上」としました。

つまり、各放送回で、視聴分数が放送時間の1/3以上であった人を「番組を見た」としてカウントしています。このリーチ推移グラフは、放送を重ねるにつれ、その放送回で初めて視聴判定基準をクリアした視聴者が加わる様子を示すものです。

この例では、どの放送回でも視聴者が増えていき、全10回の『累積到達率(リーチ)』(1度でも見た人の割合)は25.7%に達したことが分かります。グラフのオレンジ部分は、その放送回でどれくらい新たな視聴者が増えたのかを表しており、どの放送回がよりリーチを伸ばしたかも確認できます。

図1 累積到達率(リーチ推移グラフ)

図2は、これも『リーチ&フリークエンシー』分析の結果を示す、「R&F表」のアウトプットイメージです。①~⑧の表頭の項目について順に紹介します。

図2 R&F表

①『累積到達率』
先の図1のグラフ、各放送回での棒グラフ(青+オレンジ)頂点部分に該当します。1回~その放送回までを含み、1度でも見た人の割合の推移が確認できます。最後の10回放送時の結果から、期間を通しての番組累積到達率(リーチ)が25.7%と分かります。

②『平均視聴回数』
その放送回までを含み1度でも見た人の中の、平均視聴回数です。推移でみると放送を重ねるにつれ増えるケースが大半ですが、新規の視聴者が多い回では、平均が下がる場合もある数値です。この番組の平均視聴回数(フリークエンシー)は2.0回でした。

③『到達率』
放送回ごとの見た人の割合です。過去回でカウント済みも新規も問わず、見た人になります。この番組では、最初に放送されたスペシャル回で到達率が8.0%と高く、他の回よりも多くの人がこの回を見ていました。

④『延べ到達率』
その放送回までを含む『到達率』(上記の③)合計です。視聴回数も加味して累計でどのくらい見た人がいるのかを示します。

⑤『ユニーク到達率』
期間を通して、その放送回だけを見た人の割合です。その放送回のおかげで増加できたリーチ分を表しており、Web広告用語でのユニークリーチとは全く意味が異なるので、ご注意ください。

⑥『平均視聴率』
いつもご覧の視聴率。「視聴判定」は関係ありません。

⑦『回数分布』
見た回数が0回の人、1回の人、2回の人、と分けてカウントして割合(分布)にしたものです。この番組では、見た人の中では、1度だけ見た人が13.8%ともっとも多いことが分かります。数表上は紛らわしくなりますが、放送1回目を見た人の割合は8.0%(上記③の到達率)で、回数分布の1回13.8%は、いずれかの放送回の中で1度だけ見た人の割合を表しています。

⑧『n回以上到達率』
1回以上見た人の割合、2回以上見た人の割合、と視聴回数条件を上回った人の割合です。1回以上の割合25.7%は、期間全体の累積到達率と同じになります。この番組では、平均視聴回数の2.0回以上を見た人は11.9%で、視聴者の半数近くは平均回数以上を見た人と分かります。

2-1.番組の分析例

ここからは、実際の『リーチ&フリークエンシー』分析の例を紹介します。今回は、同じ曜日・時間帯に放送されているレギュラー番組(バラエティA~D)のそれぞれ放送10回分の結果を比較します。(※「視聴判定」は「放送分数の1/3以上」として分析)

図3 同時間帯レギュラー番組のReach&Frequency分析

図3をみると、同じ曜日・時間帯のバラエティ番組でも見られ方が異なることが分かります。具体的には、『累積到達率(リーチ)』をみると、「バラエティA」が4番組の中でもっとも高い結果でした。

一方で、『平均視聴回数(フリークエンシー)』では、「バラエティA」よりも「バラエティB」が上回っています。このことから、「バラエティA」は見る人は多いが、放送回によって、見たり見なかったりが発生しやすい番組だということが分かります。「バラエティB」は見る人は少し限られるが、何度も視聴するファンが多そうな番組だということが分かります。

このような番組が並ぶ中で、さらに視聴率を伸ばすための施策を考えると、「バラエティA」は繰り返し見られるような連続性のある内容を放送する、「バラエティB」はファン見込み者が試しに見てみたくなる告知の工夫をする、などが検討の選択肢にあがるのではないでしょうか。

「バラエティC・D」では、見たり見なかったりがある「バラエティA」視聴者を、新規の視聴者に加えられるかもしれません。「バラエティA」視聴者の好みを研究することも考えられます。

3.まとめ

今回は、『リーチ&フリークエンシー』分析について、分析事例を交えて紹介しました。
この分析では、今回紹介したような、同時間帯の番組の見られ方を明らかにしたり、ドラマなど同ジャンルの番組間で、「どの番組がもっとも多くの視聴者を得ているか」「どの番組が視聴回数が多い=コアなファンが多いのか」も分析できます。また、オリンピックやワールドカップなどのスポーツビッグイベントで「どのくらいの人がテレビ中継を見たのか」を知りたい時や、同じクールで開始した新番組同士で「どの番組が早い段階で視聴者拡大できているか(自分は遅れていないだろうか)」の比較チェックなどにもお使いいただけます。

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【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「視聴率
・調査時期:常時(発行形態 日報/週報)
・対象地区:全国32地区

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