大型音楽特番の"視聴ジャーニー"から視聴者の楽しみ方を学ぶ ~映像視聴の生活者研究シリーズ~

- この記事はこんな方にオススメ!
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- 映像コンテンツ視聴促進のための施策を検討している方
- 視聴者がどのように映像コンテンツを選び、楽しんでいるか興味がある方
- 視聴者と映像コンテンツのエンゲージメントを高めたいと考えている方
要旨
大型音楽特番の楽しみ方は多様化しており、事前の話題作りで気持ちが高まり、多角的に楽しめるコンテンツが揃っていることで視聴体験満足度も高まる可能性が見出せる。また、家族視聴による価値も重要といえる。
大型音楽特番の視聴ジャーニーをBuzzビューーン!データから紐解く
ひと研究所では、テレビ番組などの映像コンテンツの「視聴前」「視聴中」「視聴後」で起きる行動やリアクションである<視聴ジャーニー>が、コンテンツの"視聴体験満足度"を高めるという視点で、生活者研究を進めています(図1)。今回は、これから夏にかけて多くの音楽特番が放送される時期を前に、最新の調査データおよびBuzzビューーン!データ分析の結果から、大型音楽特番の<視聴ジャーニー>や、視聴者の楽しみ方を浮き彫りにしていきます。
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「視聴ジャーニー」記事一覧
視聴ジャーニーの実態(2024年10~12月クール調査分更新 最新データベースより)
まず、2024年4月~12月および2025年正月に放送されたテレビ番組を対象に実施した視聴ジャーニーに関する一連の調査の結果を紹介します。研究用に選定した特定10番組(今回は2025年の正月番組まで含めた年末年始特番を中心に選定)について、各番組の視聴者に視聴ジャーニーの実態を質問しています。これまで、2024年4月からクールごとに、3回の調査を実施しており、合算した延べ30番組についてのデータを確認します(今後も、各調査結果の累積した最新スコアを紹介していく予定です)。
具体的な視聴ジャーニー(個別行動・リアクション)の出現率は、前回までの調査結果と同様に、視聴前、視聴中、視聴後いずれをみても5割以上の人が何らかの行動・リアクションをしています(図2)。注目すべき点として、今回の調査では年末年始の特番を重点的に選定したことにより、視聴前と視聴中のTOP3に順位変動がありました。「会話の中で、話題にしたり盛り上がった」が、視聴前では4位→3位に、視聴中では4位→2位に上昇しました。視聴前から周囲の人と話題にしながら楽しみにしていた様子や、家族と一緒の視聴や友人との同時視聴で会話をしながら番組を楽しんだ様子が推察されます。単発の特別番組ということもあり、視聴前から"お祭りを楽しみたい""見逃したくない"という意識が垣間見えます。
中でも、視聴中の積極的な行動・リアクションが特番ジャンルの特徴と言えそうです(図3)。
特番ジャンルの内訳として「音楽番組」と「お笑い・バラエティ番組」が多く含まれているため、「ツッコミ」「声を出して笑う」や「一緒に歌ったり・踊ったり」という、視聴中に強めのリアクションを伴った"視聴体験"が生じていることが確認できます。
大型音楽特番の<視聴ジャーニー>から多様な楽しみ方を確認
ここからは、特定の年末大型音楽特番について、「Buzzビューーン!*1」を活用して、X(旧Twitter)のポスト(旧ツイート)から<視聴ジャーニー>を描き、視聴者の楽しみ方の実態を浮き彫りにしていきます。
*1 Buzzビューーン!とは
X(旧Twitter)でのBuzz【バズ】から、番組コンテンツの価値を視聴"質"の観点から示せるサービスです。
その大型音楽特番に関する行動やリアクションにまつわるポスト内容を抽出し、「視聴前」「視聴中」「視聴後」の時点に分類し、<視聴ジャーニー>として整理しました(図4)。
《視聴前》目当ての出演者に備え、事前準備はバッチリ
まずは、放送開始前から順次、出演者や演出内容に関する情報解禁が行われたことで、リアルタイム視聴や"見逃したくない"という気持ちの喚起がされていた様子がうかがえ、話題作りが上手く作用しているようです。リアルタイム視聴を決意した視聴者は、タイムテーブルをチェックし、他の番組・配信コンテンツの時間との重複を確認し、視聴プランを練ります。当日は、夕食やお風呂などの生活行動の方を調整し、放送時間に間に合わせます。録画予約と録画残容量の確認は、多くの人の間で行われていました。非常に意欲的な視聴態度であることが分かります。
《視聴中》同じ番組をマルチデバイスで。楽しみ方は多様化している
視聴前からテレビ前に待機していた視聴者も多く、"オープニングも見逃したくない"という意思が垣間見えます。ここでの注目ポイントは、複数のデバイスを用いて主放送や副音声、4K放送、録画、配信など、同一コンテンツを多角的に楽しむ人も多くみられた点です。その複数デバイスを同時に見たり、時には切り替えたりしながら、ある意味貪欲な視聴態度で多様な楽しみ方をしていることが確認されました。
また、Xのタイムラインを閲覧しながらコンテンツを楽しむことは元より、家族や友人と一緒に視聴(もしくは友人知人との同時視聴)していることにより、興奮や感想を即座に共有できることが、気持ちの盛り上がりを生み、楽しさを増幅している様子もうかがえました。
《視聴後》興奮冷めやらぬうちに、すぐに振り返り再生とSNSで余韻を長時間楽しむ
視聴後は興奮が冷めないうちからすぐに、振り返り再生を行う人も多く確認されました。目当ての出演者や注目シーンを繰り返し再生している様子がうかがえます。その他にも、放送終了してから感想を投稿する人も多く、SNSで余韻を長時間楽しんでいる様子も分かりました。
更に、家族で一緒に視聴をした人からは、この音楽特番によって、"家族のコミュニケーションが生まれたことに幸せ"を感じているポストも散見され、視聴者にとってテレビ番組がコンテンツ視聴以上の価値を生んでいることが確認できたことは重要だと考えます。
大型音楽特番の<視聴ジャーニー>からの学び
- ポイント
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- 出演者や演出内容の情報の事前公開によって視聴者の中で話題を膨らませる。また、関連番組や番宣番組などによる気持ちの高まりも作り出せるとよい。
- 音楽番組はノリが命。一緒に歌って踊って声を出してもらい、その興奮をすぐに誰かとシェアしてもらう。その為にも家族や友人と一緒に視聴をしてもらうことが重要。
- 長時間の番組の中で、好きなシーンを何回もリピート再生してもらうために、録画や配信の活用促進が必要。コアなファンだけでなく幅広い層には、ダイジェスト映像を他番組で放送し、配信へ誘導することも効果的。出来るだけ長く余韻を楽しんでもらう仕掛けとなる施策が有効。
今回は、年末の大型音楽特番の<視聴ジャーニー>についてBuzzビューーン!でポスト分析を行いました。その結果、視聴前から非常に強い視聴意欲が生じており、視聴中にはマルチデバイスで多角的・多様的な楽しみ方をしていることが分かりました。熱量の高い視聴者は、貪欲にコンテンツを楽しむニーズを持っており、そのニーズにいかに応えていくかが必要だということが分かりました。放送業界の人的リソース課題もある中ではありますが、「大型音楽特番が視聴者にもたらす価値」に期待が膨らみます。
ひと研究所では、今後も、個別番組の視聴や行動・リアクションに関するデータの蓄積を続け、引き続き<視聴ジャーニー>に関する研究を発信していきます。
【調査データ概要】
ひと研究所 視聴ジャーニー クール調査「2024年4~6月」「2024年7~9月」「2024年10月~12月」
調査方法:インターネット調査
調査対象:日本全国の15~69歳(中学生は除く) かつ 各調査対象期間に放送されたテレビ番組(特定10番組)について、いずれか視聴経験がある。
調査内容:テレビ番組(特定10番組)のうち、視聴経験のある番組について、番組評価や視聴ジャーニーの実態を質問
サンプル数:「2024年4~6月」 2,907名、「2024年7~9月」 2,762名、「2024年10月~12月」 2,896名
※同一の回答者による複数番組への回答はそれぞれを1名とした延べ回答者数
調査期間:「2024年4~6月」 2024年8月2日(金)~3日(土)、「2024年7~9月」 2024年10月25日(金)、「2024年10月~12月」 2025年1月14日(火)
※調査対象番組は2025年正月特番も含みます。