【s**t kingz インタビュー】シットキングスがテレビと切り拓くダンス表現の"新境地"(後編)
近年、日本では空前の"ダンスブーム"が到来。アーティストのプロモーション活動として楽曲のパフォーマンスに特化した「ダンスプラクティス動画」が浸透しているほか、YouTubeやTikTok上での"踊ってみた"動画をきっかけに新たな流行が生まれる動きも見られます。テレビ業界でも同様に、コンテスト番組、オーディション番組、バラエティ番組内での完コピ企画など『ダンスコンテンツ』が人気を集めており、これまで触れてこなかった人々にとっても"ダンス"が身近なものになっています。
そのムーブメントの中心にいるのがダンスパフォーマンスグループs**t kingz(シットキングス、通称:シッキン)。Snow Man、大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)、Da-iCE、MAZZEL、King & Princeなど名だたるアーティストの楽曲の振付でも絶大な支持を誇る彼らは、アーティスト・s**t kingzとしての快進撃もまさに"踊る革命家"。全曲オリジナル楽曲で構成されたダンス映像アルバムのリリース、歌唱しないダンスアーティストとして「ミュージックステーション」(テレビ朝日系列)への出演、日本武道館での単独ダンス公演即日ソールドアウト・・・など、数々の"ダンサー史上初"を更新し続けています。
テレビ番組にも、時にアーティストや審査員といった出演者として、そして時には企画プロデュースの一員として・・・これまでにない立場でダンスコンテンツと深く関わっている4人。VR Digest+では、そんな唯一無二の存在として輝きを放つs**t kingzにインタビューを遂行。テレビでダンス表現の新境地を拓く4人に話を聞きました。後編では、s**t kingzの最新情報のほか、テレビでダンスの魅力を伝えるためにs**t kingzが考えていることを紹介します。
s**t kingz(シットキングス)
shoji、kazuki、NOPPO、Oguriの4人で構成されるダンスパフォーマンスグループ。アメリカ最大のダンスコンテスト「BODY ROCK」では2010年、2011年と二連覇を達成。世界各国からワークショップのオファーが殺到し、これまでに25カ国以上を訪問。4人で振付を担当した楽曲は500曲以上にのぼる。グループ結成以来、『お客さんが衝撃を受けるようなショーを作る』スタンスを貫いており、舞台公演の企画・演出・出演のほか、オリジナル楽曲のリリース、音楽フェスの主催など、ダンスを主役とした表現の可能性を追求している。
派手さやテクニック先行でなく、パーソナルな部分を知ることでダンスの見え方が変わる
―昨今、テレビ番組のダンスコンテンツが増えていますが、その動きを皆さんはどう見ていらっしゃるのでしょうか。
NOPPOコンテスト系の番組も観るのですが、出演者の皆さんのパフォーマンスを見てすごいなと思っています。めちゃくちゃレベルが高いし、生で直接見ているわけではないのに迫力が伝わってくるんですよね。しかもテレビという媒体のおかげで幅広い人たちにダンスが届いていてすごくいいな、と。ただ、テクニックに注目が集まって、パーソナル部分は見えづらいというか。コンテストなので「勝つためにはこれをやらなきゃ」、「振りを揃えなきゃ」となってしまうのはしょうがないのですが、ダンサーたちのパフォーマンスの背景ももっと知りたいなと思っています。
―というと?
NOPPO例えば、以前踊れるアーティストの方がコンペティションに参加して、それをジャッジするという番組を観ていたんですけど、その番組はすごく素敵だなと思って。踊る前に「僕はこういう考えがあるから、こう踊ります」と紹介してからパフォーマンスをする構成だったので、アーティストの方のダンスへの想いや、そのダンスがどんな作品なのかがしっかり伝わったんですよね。
ただ踊るだけじゃなくて、その人の考え方やバックボーンを踏まえて、「だからこういうダンスが好きなんです」という部分を知った上で見ると、見え方がまったく違うんです。「ただ沸かすために踊るんじゃなくて、こういう理由があってダンスをしているんだ」とか、「さっき言ってた頑張ったことってこの大技だったんだ」とか、一歩深掘りした視点で観られるというか。そういう部分を最初に届けてもらえるともっとよくなるのかなと思っています。
一同たしかに。
―しかも、テレビという媒体だからこそできることでもありそうですよね。生の舞台だとなかなか難しいという。
NOPPOそうなんですよね。「僕は振りいらないっす。全部フリースタイルでいくんで。それが僕のダンスです」と話しているアーティストの方を見て、「うわ、アツい!」と思ったり。そうやっていろんな考え方を知れると面白いし、「ダンスってこれでいいんだ」と新たな発見にも繋がると思うし。もっとそういう番組が増えてほしいですね。
shoji音楽番組とかだとトークがあるからね。披露する前に、「今回の曲はこういう曲で、こういう背景があって...」って話せるけど、ダンスは「それではどうぞ!」で踊って、終わったら「すごいですね、ここの技術が!」という形になっちゃうことが多いから。
NOPPO「◯◯大会で優勝した覇者です!」みたいなね(笑)。それだけだともったいないなって。
―背景の部分を見せることで、ダンスをやっている視聴者のマインドにもリーチできそうですよね。
NOPPOそう。ダンスをより愛せますよね。
Oguri僕もNOPPOと似たようなことを思っていて。ダンスが盛り上がって、浸透して、より身近な存在になりつつあるのはめちゃくちゃ素敵なことだし、そのおかげで自分たちもいろんな番組に出演させてもらえているなと思っているのですが、ダンスを一色だけで捉えられないようになるといいなというか。どうしてもすごさや派手さに着目していて、どの番組もダンスの届け方が似ている印象があるんですよね。
『ダンスの中の注目ポイント』を紹介したりする方が、ダンスを知らない人の目をより多く引くため、なのかな。だけど、「果たして本当にすごさや派手さがないと目を引けないのか」と。NOPPOが言ったように、すごさや派手さがなくてもダンスってこんなに素晴らしいものなんだよという部分を伝えられる方法はないかなと、常々思っています。
s**t kingzが考えるテレビでのダンス表現の可能性
―そういった細かな部分にも注目すると、皆さんのパフォーマンスをより楽しめるかもしれませんね。では最後に、ダンス×テレビの可能性についてお聞きします。ずばり、「テレビでダンスの魅力を最大限引き出して伝えるためにはどうしたらいいか?」s**t kingzのアイデアを教えてください!
一同おぉ~~(笑)
shoji僕はさっきNOPPOが言ったことが答えな気がする。その人のパーソナルな部分を引き出して、作品制作の裏側をちゃんと届けること。完成品はYouTubeでダンス動画を見ればいいですから。テレビは、もっと深いところを掘ったり、第三者目線で本人が気づかない部分を映したりできる媒体だと思うんです。本人が自覚していないような素敵なパーソナルな部分が見える切り口にすることで、面白いダンス番組ができるんじゃないかなと思います。
Oguri生身の人間が届けるときの見えない何かで感動するって、AIには絶対できないことじゃないですか。その見えない何かをとことん追求する番組をぜひ作ってほしいです。例えばAIと比較してみるとかね。AIが踊るとこうだけど、人間が踊るとこうなる、みたいな。
shoji今の技術ならできそうだよね!どっちがどう人に届くかみたいな検証は面白いかもしれない。
kazukiあとはスタッフさんもダンスに愛を持ってくださると嬉しいですよね。照明や映像、カメラというテクニカルな部分を操るのは人間なので、僕らダンサーと同じようにダンス愛がある方だとすごく準備を入念にしてくださったり、ダンスを邪魔しない素敵な演出を作ってくださったりするんです。めちゃくちゃ激しい振りのところで照明を激しくして、カメラを揺らして、特効バーン!...みたいな演出は、観る側からするとすべてが派手でどこを見たらいいのかわからないと思うんです。
でもダンス愛がある方は、「ここはダンスに任せるから照明は一歩引くよ」とか、「しっかりダンスを見せたいからカメラも静止させておくね」とか言ってくださることが多くて。テレビの中でもそういうスタッフさんがいる番組があって、その風潮が広まると嬉しいなと思っています。派手さを届けるのではなく、想いがこもったダンスを届ける。僕らもスタッフさんもそれを考えることで、いいダンスがさらに世の中に広まっていくんだろうなと思っています。
ファンと新しい関係性を作る全国ツアー「s**p」、日本武道館2days「LANDING」
―3カ月連続でリリースされた新曲もパフォーマンスするであろうライブハウスツアーとワークショップツアーが、8月末からスタートします。どのようなコンセプトになっているのでしょうか。
shojiツアータイトルの「s**p」というキーワードは、元々楽曲を作るときにOguriが出してくれたワードだったんです。ツアーに向けて曲を作ろうとなったときに、最初はミニアルバムを作ろうかという話も挙がっていて。じゃあ、どんなアルバムにするかという流れの中で、Oguriが「s**p」というワードを出してくれました。「friendship」や「relationship」など、人と人との関係性を表現する時に使われる言葉なので、それをキーワードにしたアルバムを作ったらどうだろう、と。それがみんなの中になんとなく残っていたんでしょうね。
約1年くらい全国の皆さんに会いに行く機会がなかったので、ツアーを通して改めて全国の皆さんと関係性を作るというコンセプトがいいねという話になりました。なおかつ、船旅のようなイメージでいろんな街に泊まって、いろんな人と出会って、新しい関係性を作っていくツアーにしたいという。そういう流れから、「s**p」というコンセプトが決まりました。それをもとにkazukiが内容を考えてくれています。
kazukiセットリストはコロコロ変わりながらも決まってきました!
―どんな内容になりそうですか?
kazuki去年は『s**t kingz Fes 2024 ももたろう』をやって、今年は舞台『See』をやって...と、どちらもストーリー仕立ての公演だったんですよね。なので、僕の中で「次のライブではもっと自由にのびのびできるものにしたい」という想いがありました。そこに「s**p」というワードが出てきて、人との関係値を表すいろんな言葉に使われるワードと考えると、自由度にもつながるのかな、と。それを中心に進めています。
NOPPO最初は、何色にも変わるという意味で「無色」みたいなワードも出ていたよね。自由度に関していろんなアイデアが出てくる中で「s**p」がいいよね、という話になりました。
kazukiテーマって難しいんですよね。決めすぎちゃうと幅が狭くなってしまう。でも、「◯◯シップ」というふわっとしたタイトルだったら、会場によって感じることが変わる可能性もありますし、それも「◯◯シップ」に収まると言えば収まる。それくらい自由度が欲しかったんです。
―いつも思うのですが、皆さんのアイデアの広げ方が秀逸すぎて......!
kazuki(ドヤ顔をしながら)そうかなぁ。
一同独り占めしようとしてる(笑)!
kazuki(小声で)「s**p」がOguriから出たワードというのはカットしておいてください。
Oguriやめて(笑)! でも、ここまでまとめるのにすごく時間がかかりますよ。
kazukiみんなから出てくるアイデアが全部いいんですけど、僕は「自由」を諦めたくなくて。でも、1本柱を立てないとなんでもないライブになりかねないじゃないですか。そういう意味でも、「s**p」は自由も担保できるし、軸として成立しているし、両方がハマった感覚がありました。
―お話を聞いて、よりツアーが楽しみになりました。ライブハウスツアー、ワークショップツアーは2023年にも行われていますが、ツアー中楽しみにしていることはありますか?
kazukishojiくんは食べ物でしょ?
shojiそうだねぇ(笑)。あとは、リアクションの違いじゃない? 盛り上がりに上下があるという意味ではなく、「声出せー!」と言った時にワーッと盛り上がるとか、逆にしっとり踊った後にすごく大きい拍手をしてくれたりとか、終始盛り上がりっぱなしとか。ツアーを回りながら、各地の色を感じられるのが面白いんですよね。
NOPPOそれはあるね。あとは、ステージからお客さんが見えるので、"お客さんに踊らされる"という感覚があるのも面白いです。男性が多いなと思ったら知らぬ間にオラオラ系になっていたり、女性が多かったら「モテにいこうかな」となったり(笑)。
shojiあはは(笑)。NOPPOを見ていたら、「あ、今日は男性のお客さんが多いんだ」ってわかるかもしれない!
―新たな楽しみ方ですね(笑)。
kazukiあとは、062(オムツ:s**t kingzのファンクラブ名)の皆さんの存在を感じられるのも楽しみかも。全国ツアーをやっていると、062の方々がハシゴしながら各地に来てくださるんですよ。その方々が会場の空気を引っ張ってくれている部分があって。そういう方が1人でもいると、会場の緊張感って一気になくなるじゃないですか。結果、すごくいいライブになるんです。それに助けられている部分はめちゃくちゃありますね。
shoji最初の一声って勇気いるもんね。
kazuki「誰が声出す?」みたいなね。062の方々ってぶっ飛んでいる人が多いんですよ(笑)。「フーッ!」と言ってくれる、緊張感を跳ね除けられるツワモノたちに本当に助けられています。
―まさにファンも一緒に作るステージ、と。そんなツアーの後には武道館公演が控えています。2度目の武道館に立つ心境はいかがでしょうか。
Oguri不思議な感覚です。前ほどの「うわぁ、ついに...!」という気持ちとは違い、前回すごくいいライブができたからこその「超えたい」という気持ちや、ドキドキはあります。しかも1発で出し切るのではなく、2日間クオリティを担保してやり続けることになるので、よりしっかりした土台を持って挑まないといけなくて。準備や作戦会議を入念にやっていこうと思っています。
shoji前回は「おめでとう!」という感じがあって、ダンサーが歌わずにワンマンで武道館に立っているというだけでメッセージ性があったと思うんです。でも2回目となると、それだけでは前回ほどの満足度にはならない。もちろん、2回も立たせていただくありがたさはすごく感じています。だからこそ、"初武道館"という感動がなくても、皆さんに「楽しい! 最高!」と思ってもらえるものを届けなくちゃという責任感とプレッシャーはあります。めちゃくちゃシンプルに楽しみだし、ワクワクするのですが、同時にいいものを届けたい熱がメンバー全員の中にある気はしていますね。
―ライブハウスツアーとの違いはどう表現されていく予定なのでしょうか。
shoji全然内容が違います(笑)!
kazukiセットリストも違いますし、コンセプトも違っていて。でも、なんとなく繋がる部分はあるんじゃないかな。
shoji「s**p」からの「LANDING」なので、「船旅をしてたどり着いた場所」なんですよね。いろんな所でいろんな人に出会って、僕たちもたくさんのことを吸収してステージに立つという。なので、両方見ていただけるとより楽しいと思います。
kazukiどっちも見ないと意味がわからない、ということはないですが、気持ちの面で「s**p」に来てもらってから「LANDING」を見たほうがグッと来るものが多くなると思います。
(取材・文:高橋梓)
■楽曲リリース情報
『Spinship feat. VivaOla』
『Biotope feat. Claquepot』
『Ignite feat. Doul』
配信中
■全国ツアー『s**t kingz Dance Live Tour 2025「s**p」』
8月23日(土)沖縄・ミュージックタウン音市場
9月6日(土)北海道・Zepp Sapporo
9月13日(土)愛知・Zepp Nagoya
9月22日(月)大阪・Zepp Namba
9月23日(火・祝)大阪・Zepp Namba
9月27日(土)福岡・Zepp Fukuoka
10月4日(土)宮城・仙台GIGS
10月9日(木)東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
10月10日(金)東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
10月12日(日)広島・BLUE LIVE 広島
■日本武道館公演『s**t kingz Dance Live 2025 in 日本武道館 「LANDING」』
日本武道館
10月31日(金)、11月1日(土)
■s**t kingz オフィシャルサイト
https://shitkingz.jp/mob/index.php?site=STKZ&ima=1246