「東京2025世界陸上」の視聴ジャーニーから視聴者の楽しみ方を学ぶ ~映像視聴の生活者研究シリーズ~
- この記事はこんな方にオススメ!
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- 映像コンテンツ視聴促進のための施策を検討している方
- 視聴者がどのように映像コンテンツを選び、楽しんでいるか興味がある方
- 視聴者と映像コンテンツのエンゲージメントを高めたいと考えている方
要旨
「東京2025世界陸上」の視聴者は熱く応援し、盛り上がっていたことが分かった。スポーツは結果が分からないからこそリアルタイム視聴の価値が高く、視聴中の楽しみを高める仕掛けが重要と考える。
東京2025世界陸上の視聴ジャーニーをBuzzビューーン!データから紐解く
ひと研究所では、テレビ番組などの映像コンテンツの「視聴前」「視聴中」「視聴後」で起きる行動やリアクションである<視聴ジャーニー>が、コンテンツの"視聴体験満足度"を高めるという視点で、生活者研究を進めています(図1)。今回は、最新の調査データおよびBuzzビューーン!データ分析を行い、「東京2025世界陸上」の<視聴ジャーニー>や、視聴者の楽しみ方を浮き彫りにしていきます。
視聴ジャーニーについての研究記事はこちら
https://www.videor.co.jp/digestplus/tag-kw-viewing-journey/
番組ジャンルごとの視聴ジャーニーの実態
ひと研究所では、2024年4月からクールごとに、その期間に放送されたテレビ番組を対象に実施した視聴ジャーニーに関する調査を実施(2025年1-3月を除く)。クールごとに特定の10番組を選定し、日常的な、個別番組における視聴ジャーニーの知見を蓄積しています。
【主に調査対象となる番組・コンテンツジャンル】
- アニメ
- ドラマ
- バラエティ(トーク、お笑い、クイズなどの娯楽)
- スポーツ(試合中継)
今回は、これまでの研究結果からスポーツに着目し、視聴ジャーニーの特徴を見ていきます(図2)。
スポーツは他のジャンルに比べると、視聴前・視聴中・視聴後いずれも「関連するテレビ番組・シリーズの番組を見た」「家族や友人などと会話の中で、話題にしたり盛り上がった」という人が多い傾向でした。
また、視聴前は「番組を視聴するために、生活上の準備」をしてワクワクして待機する様子が見られ、視聴中は身近な人とコミュニケーションを取りながら気持ちの盛り上がりを高め、視聴後は「SNSやウェブサイトに感想を書いたり」オンラインで余韻を楽しむという人も他ジャンルと比較して、多くいました。
スポーツの特徴として、腰を据えてしっかり視聴し、また関連番組もチェックして、周囲と楽しむ、ということが挙げられそうです。
「東京2025世界陸上」の<視聴ジャーニー>から多様な楽しみ方を確認
ここからは、スポーツの中でも、昨年9月に放送された「東京2025世界陸上」について、「Buzzビューーン!*1」を活用して、X(旧Twitter)のポスト(旧ツイート)から<視聴ジャーニー>を描き、視聴者の楽しみ方の実態を浮き彫りにしていきます。
*1 Buzzビューーン!とは
X(旧Twitter)でのBuzz【バズ】から、テレビ番組をはじめとするコンテンツの価値を視聴"質"の観点から示せるサービスです。
「Buzzビューーン!」
「東京2025世界陸上」に関する行動やリアクションにまつわるポスト内容を抽出し、「視聴前」「視聴中」「視聴後」の時点に分類し、<視聴ジャーニー>として整理しました(図3)
《視聴前》事前番組で、応援したい気持ちに
「東京2025世界陸上」の放送開始前から、アンバサダーや元選手など競技に精通した人が出演する事前番組が放送され、競技の面白さや裏側が語られました。こうした情報発信によって「応援したい」「楽しみ」という気持ちが喚起され、リアルタイム視聴へつながっている様子がうかがえます。
さらに当日、番組を楽しみにしている人は、食事や入浴などの生活行動を前倒しで済ませ、放送時間に合わせてスケジュールを調整するなど、リアルタイムで番組を見るための準備を行っていました。また、録画予約やガイドブックを購入して予習するなど、入念に事前準備をする人も見受けられました。
スポーツ番組の放送前には、視聴者に「この選手を応援したい」「この競技を見てみたい」と感じてもらうきっかけづくりが重要であることを示す、一つの事例と言えそうです。
《視聴中》応援で熱く共感しあう。熱い盛り上がりに参加して楽しむ。
「東京2025世界陸上」放送中は、選手への応援に夢中になっている人が多く見受けられました。その中で、視聴体験をさらに豊かにする2つの楽しみ方が確認できました。
1つ目の楽しみ方として、応援している人同士で感情を共有しあうことが挙げられます。新記録の瞬間に興奮したり、インタビューに感動したりするなど、パフォーマンスをみて高まった感情をXで投稿する人が多くいました。また、家族と一緒に視聴していた人も見受けられ、家族内でタイムリーに気持ちを共有して、オンラインオフライン問わず、みんなで共感して楽しんでいることがうかがえました。
2つ目の楽しみ方としては、関連情報への理解を深めることが挙げられます。選手や出身国を調べて知識を広げたり、競技ルールを確認して理解を深めたりする人が見受けられました。また、過去の記録を検索し、今回の結果との比較に驚くなど、知的好奇心を満たす行動も活発に行われていました。
これら2つのニーズが確認できたことから、番組や関連コンテンツに「応援する人同士の共感を高める材料と場」「より理解を深めるための仕組み」を用意しておくことが必要と考えます。
また、応援に夢中になる人だけでなく、番組の"お祭り感"に惹かれて盛り上がりに参加する人も確認できました。選手の登場ポーズをXで話題にしたり、アンバサダーなどの出演者を楽しんだりする様子がうかがえました。競技に詳しくない人にも番組を楽しんでもらうためには、競技外でもカジュアルな話題を提供するなどの仕組みが重要なポイントとなりそうです。スポーツ番組は幅広い層が視聴し楽しむコンテンツです。競技への興味度のグラデーションも存在します。どの層も楽しめるための仕組みづくりは欠かせません。
《視聴後》余韻を楽しみながら、新たな行動へ
放送終了後も視聴者の熱気は冷めず、エンディングや選手インタビュー、ハイライト映像を繰り返し再生し、何度も感動を味わう姿が見られました。また、SNSでは、出演者への"ロス"や家族と番組を楽しんだことへの"ロス"を投稿する声が目立ち、番組を通じて生まれた盛り上がりを惜しむ様子も確認しました。
さらに、選手のSNSをフォローして大会後も応援を続ける人や、番組に感化されてランニングや筋トレを始める人も登場。視聴体験が生活や趣味にまで影響を与えており、番組の視聴体験満足度の高さがうかがえます。
「東京2025世界陸上」の<視聴ジャーニー>からの学び
「東京2025世界陸上」の<視聴ジャーニー>から、スポーツ番組の<視聴ジャーニー>設計のポイントを図に整理しました(図4)。
今回は、「東京2025世界陸上」の<視聴ジャーニー>についてBuzzビューーン!でポスト分析を行いました。「東京2025世界陸上」には"お祭り感"があり、視聴者は熱く応援しながら楽しんでいたことが分かりました。陸上をはじめ、スポーツは、他ジャンルに比べて、リアルタイムで見る価値が高いコンテンツです。結果が分からないからこそ、その瞬間に立ち会いたい。場所を越えて、一緒に応援したい。シナリオのないドラマに心を動かされたい―そのような視聴体験が求められています。だからこそ、スポーツは他のジャンルの番組と比較して、視聴中の視聴ジャーニーを盛り上げることが大切だと考えています。今回の分析を通して、スポーツでは、視聴者のリアルタイムでの視聴をより楽しみたいという強いニーズに対して、その期待にどう応えていくかが重要であることが分かりました。
ひと研究所では、今後も、個別番組の視聴や行動・リアクションに関するデータの蓄積を続け、引き続き<視聴ジャーニー>に関する研究を発信していきます。
【調査データ概要】
ひと研究所 視聴ジャーニー クール調査「2024年4~6月」「2024年7~9月」「2024年10月~12月」「2025年4~6月」「2025年7~9月」
| 調査方法: | インターネット調査 |
| 調査対象: | 日本全国の15~69歳(中学生は除く) かつ 各調査対象期間に放送されたテレビ番組(特定10番組)について、いずれか視聴経験がある。 |
| 調査内容: | テレビ番組(特定10番組)のうち、視聴経験のある番組について、番組評価や視聴ジャーニーの実態を質問 |
| サンプル数: | 「2024年4~6月」 2,907名、 「2024年7~9月」 2,762名、 「2024年10月~12月」 2,896名 「2025年4~6月」2,228名 「2025年7~9月」2,428名 ※同一の回答者による複数番組への回答はそれぞれを1名とした延べ回答者数 |
| 調査期間: | 「2024年4~6月」 2024年8月2日(金)~3日(土) 「2024年7~9月」 2024年10月25日(金) 「2024年10月~12月」 2025年1月14日(火) 「2025年4~6月」2025年7月4日(金)~6日(日) 「2025年7~9月」2025年10月24日(金) |