「オンデマンドネイティブ」の誕生とテレビ(下)~生活者と「映像コンテンツ」の"いま・これから" 第六回~

村田 玲子
ソリューション事業局 ひと研究所
村田 玲子
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!

前回(上)では、現在進行中の子どものテレビと動画サービスの関係について俯瞰してみてきました。今回は、より具体的に子どもたちの利用実態を掘り下げていきます。

「オンデマンドネイティブ」の誕生とテレビ(上)~生活者と「映像コンテンツ」の"いま・これから" 第五回~

目次
子どもの生活に定着する無料動画と有料動画
子どもの"MostView"と"FirstView"メディアは?
子どもの立場で、「テレビ」と「無料動画」「有料動画」の違いを考える
「オンデマンドネイティブ」にとってテレビはどのような存在になっていくか
テレビの相対化と再評価

 サマリー
 ・「無料動画」を高頻度で視聴する習慣のある層は、全体で3-4割超。
  一方「有料動画」は1~2割程度に留まる
 ・子どもが、平日土日全体で"最も見ている"のは「TV」。
  ただし平日帰宅後"一番初めに見る"のは「無料動画」
 ・「TV」、「無料動画」、「有料動画」いずれも「リビングでくつろいでいるとき」に見られている
 ・子どもが「夢中になって見ている」のは「無料動画」、「楽しめるものが多そう」なのは
  「有料動画」、「家族や友人で話題になる」のは「TV」

douga6.-.png

子どもの生活に定着する無料動画と有料動画

「無料動画」の利用頻度が、「ほぼ毎日」~「週に4-5日」の高頻度層は、未就学児・小学校低学年は全体で3割超、高学年では4割超となっています。日常的な視聴習慣がある層が既に3~4割を占めていました(図1)。さらに「全く見ない」を除いた利用者に絞ると高頻度層は5~6割を超えていることもわかりました。子どもたちにとって今、「無料動画」は明らかに身近なメディア/コンテンツになっているといえそうです。

【図1】子どもの無料動画配信利用頻度(※不明除く)

douga6-01.png

ビデオリサーチ ひと研究所「動画サービスの利用家庭実態調査」2019年1月より

一方、「有料動画」は、「ほぼ毎日」~「週4-5日」の高頻度層は、未就学児全体で約2割、小学校低学年・高学年では1割超に留まり、無料動画ほど浸透していないことがわかります(図2)。とはいえ、未就学児の利用者ベースでは、5割弱と無料動画に匹敵する値である点は見逃せません。

「無料動画」と「有料動画」の特徴の違いとして、「無料動画」は年代が高いほうが利用頻度が高まるのに対して、「有料動画」は未就学児が最も多いという傾向がみられます。視聴するコンテンツの違いによる影響に加えて、「有料動画」は現在乳幼児のいる世帯の利用率(第五回 上・図5参照)が最も高いことを考慮すると、未就学児以前(3才未満)からの視聴習慣による可能性もあるかもしれません。

【図2】子どもの有料動画配信利用頻度(※不明除く)

douga6-02.png

ビデオリサーチ ひと研究所「動画サービスの利用家庭実態調査」2019年1月より


子どもの"MostView"と"FirstView"メディアは?

ではここからは、メディアの接触時間が長い「小学校高学年」にフォーカスして、動画サービスの視聴行動を細かくみていきましょう。
「リアルタイムテレビ視聴」(表記「TV/RT」)、「タイムシフトテレビ視聴」(表記「TV/TS」)、「無料動画」、「有料動画」の4つのメディアが、平日/土日別に普段どの時間帯で見られているのかを表したのが(図3・4)です。

まず、平日では「TV/RT」が、午前は5時30分から立ち上がり7時台にピークを迎えます。この間では、他のメディアはほぼ視聴されていません。一方で午後では、15時ごろからは4メディアいずれも視聴行為率が立ち上がっており、午前中と比べ視聴対象の選択肢が多いことがわかります。

なかでも「無料動画」は15時30分から18時あたりで最も視聴されており、現在子どもたちが、帰宅後に最初に見るメディア="FirstView"メディアは「無料動画」となっていることが明らかになりました。その後「無料動画」は18時以降にいったん落ち込み、「TV/RT」が22時30分頃まで最もよく見られています。

食事や入浴をしたり、家族が帰宅する団らんの時間帯では、「TV/RT」が選ばれやすいことを表している一方で、同時間帯で「無料動画」、「TV/TS」、「有料動画」がいずれも2割前後視聴されており、現在では団らんの時間帯の子どもの視聴行動もまた分散化しているようです。

次に、土日をみると、朝の「TV/RT」の立ち上がり方がゆっくりで、山がなだらかになっています。子どもも大人と同様に休日朝は平日よりゆとりある時間を過ごしていることがわかります。
さて、「TV/RT」は午前6時以降~10時頃までは最もよく見られていますが、その後「無料動画」や「TV/TS」が高まります。家族での視聴が終わると同時に、他メディアに移っていると考えられます。なお午後では、正午を除いて、17時30分位まで同様に「無料動画」「有料動画」が「TV/RT」を上回っています。

一方、18時から「TV/RT」が大きく盛り上がり、19時のピークから21時頃まで大きな山となっている中、平日同様に「TV/TS」「有料動画」「無料動画」の多メディアでも2割前後の視聴がある実態が明らかになりました。

平日・休日いずれも一日を通して、一番見られている="MostView"は「TV/RT」となっていますが、時間帯によっては「無料動画」が上回る場合や、「TV/TS」や「有料動画」にも一定の視聴がみられます。つまり、無料動画や有料動画の視聴環境がある家庭では、映像コンテンツの視聴が選択的になっているといえます。

【図3】小学校高学年(小4~6)普段の平日視聴行為率
(無料または有料動画利用者ベース N=240)

douga6-03.png

ビデオリサーチ ひと研究所「動画サービスの利用家庭実態調査」2019年1月より

【図4】小学校高学年(小4~6)普段の土日視聴行為率
(無料または有料動画利用者ベース N=240)

douga6-04.png

ビデオリサーチ ひと研究所「動画サービスの利用家庭実態調査」2019年1月より

併せて、各メディア行動別に視聴シーンを比較すると、どのメディアも「リビングでくつろいでいるとき」が最も高く、次に「留守番」となっており、それぞれにそれほど大きな差がありません。いずれも "リビング"での寛ぎメディア・コンテンツとして、あるいは子どもたちの子守り機能としてのポジションを得たうえで、並存または競合している状況といえます。その上で「TV/RT」には、「食事をしながら」「支度をしながら」も高く、生活に馴染んだ緩やかな視聴行動がある点が特徴的です (図5)。

【図5】小学校高学年の形態別視聴シーン (利用者ベース)

douga6-05.png

ビデオリサーチ ひと研究所「動画サービスの利用家庭実態調査」2019年1月より

子どもの立場で、「テレビ」と「無料動画」「有料動画」の違いを考える

では、これら4つのメディア行動「TV/RT」、「TV/TS」、「無料動画」、「有料動画」で、子どもはどのようなコンテンツを見ているのでしょうか。
「無料動画」を除くと、「TV/RT」「TV/TS」「有料動画」いずれもが、「アニメ・特撮」を最もよく見ている点で共通しています。2位には違いがあり、「TV/RT」では「バラエティー」、「TV/TS」では「ドラマ」、「有料動画」では「映画」となっています。

対照的に「無料動画」では、「おもしろ動画」「ゲーム(実況含む)」「Youtuber等のチャンネル」「おもちゃ紹介」などがよく見られており、「TV」や「有料動画」とはコンテンツ面で住み分けられていることがわかります(図6)。

【図6】小学校高学年の形態別視聴コンテンツジャンル (利用者ベース)

douga6-06.png

ビデオリサーチ ひと研究所「動画サービスの利用家庭実態調査」2019年1月より

次に、子どもたちの視聴理由をみると、「友達と話題になっているもの」では、「TV」と「無料動画」が、「親と一緒にみられるもの」では「TV」と「有料動画」が並んでいます。「TV」は友達と親の両方ともシェアされており、共有性が優位だとわかります。とはいえ意外にも「有料動画」でも「友達と話題になっているもの」や、「無料動画」でも「親と一緒に見られるもの」で2割前後みられており、話題性や共有性も生まれているようです。なお「個人的な関心が強いもの」は、「無料動画」が頭ひとつ抜けた一方、「TV」がやや低めに留まっていました (図7)。

子どもの視聴時間の増減意識でも、「TV/RT」「TV/TS」の視聴時間は3割前後が減ったと感じている一方で、「無料動画」や「有料動画」は6割が増加したと感じていました。この状況を「TV」を主語に言い換えると、「TV」は、「無料動画」「有料動画」に「友達や親子のコミュニケーションツール」としての優位性を侵食され、子どもの関心も薄れ始めている厳しい状況にあるといえるかもしれません。あくまで視聴環境のある家庭のデータですが、言い換えれば、視聴環境さえあればこうした状況に進む可能性が高いのです(図8)。

【図7】小学校高学年の形態別視聴理由(利用者ベース)

douga6-07.png

ビデオリサーチ ひと研究所「動画サービスの利用家庭実態調査」2019年1月より

【図8】小学校高学年の各形態視聴時間の増減意識(利用者ベース)

douga6-08.png

ビデオリサーチ ひと研究所「動画サービスの利用家庭実態調査」2019年1月より

「オンデマンドネイティブ」にとってテレビはどのような存在になっていくか

ここまで「TV」「無料動画」「有料動画」を小学校高学年ユーザーで比較しながらでみてきました。「TV」以外の動画サービスが普及したことにより、「TV」は映像コンテンツメディアの絶対的な存在ではなく、相対化されている事実が明らかになりました。

再度「TV」を主語にすれば、視聴ボリュームはまだまだ大きいとはいえ、「未来の視聴者」である子どもの関心が低下している現状には対処が必要です。子どもにとって、あるいは、家族の団欒において「TV」の提供価値を今一度考えることに加え、子どもとの距離が近くなっている「無料動画」「有料動画」をプラットフォームとして活用していく視点も大切かもしれません。

高齢化で視聴者の中心年齢が上がっていく中で、子どもたち向けの番組は「TV」の中から少なくなってしまいました。加えて、メディア環境が変化し視聴の選択肢が広がる中、子どものときから「TV/TS」も含め、動画配信といったオンデマンド視聴が前提の視聴者「=オンデマンドネイティブ」が誕生しています。「未来の視聴者」においてTVの視聴原体験をどう創り出すか、長期的な視野に立ち再考する必要があるといえそうです。

テレビの相対化と再評価

では最後に、議論のきっかけとして次のデータをご紹介してこの回を終えたいと思います。子どもの保護者側からみた各サービスの捉え方をみると、「TV」は「親子で共通の話題ができる」や「家族で楽しい時間を過ごせる」「一緒に楽しめる番組が多い」「子どもに見せても安心感がある」といった部分で高評価となっています。一方「無料動画」は「子どもののめりこみが気になる」や「見せることに罪悪感を感じる」といったネガティブな評価も目立ちます(図9)。

リビングで子どもに限らず親も別なデバイスでコンテンツを見ている今だからこそ、一緒に時間を過ごすためのコミュニケーションツールとしての「TV」への期待が高くなっているかもしれません。また、(第5回 上・参照)の冒頭の観察調査の写真で紹介したように、「目に悪いから」大きなスクリーンで見るといった「テレビデバイス」の価値も案外無視できないものです。事実、近年子どもや若者の間で長時間のスマホ利用が影響した斜視が多発しているおそれも指摘されるようになってきました(※1)。

コンテンツ・デバイスの両面からテレビが相対化される今、再評価される面に光をあてながら、テレビの"いま・これから"について皆さんと考え、新しい視聴文化を創るお手伝いをしていきたいと思います。

【図9】小学校高学年の各サービス別保護者ベネフィット(利用者ベース)

douga6-09.png

ビデオリサーチ ひと研究所「動画サービスの利用家庭実態調査」2019年1月より

調査概要:ビデオリサーチ ひと研究所「動画サービスの利用家庭実態調査」
douga6.-gaiyou.png

(※1)朝日新聞2019.6.13 https://www.asahi.com/articles/ASM6C7GSCM6CULBJ00L.html

この記事をシェアする
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!