女性ティーン層のテレビ視聴の実像とアプローチのヒント 〜Screens × ビデオリサーチ × マイナビ共同調査より

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#ひと研究所 #ターゲット戦略 #テレビ #女性 #視聴実態
女性ティーン層のテレビ視聴の実像とアプローチのヒント 〜Screens × ビデオリサーチ × マイナビ共同調査より

はじめに

ビデオリサーチひと研究所では、「ティーン層 × テレビコンテンツ エンゲージメントを高めるためのポイントを探る」をテーマにScreens、マイナビと共に調査を実施し、その結果などを分析する座談会を3社で開催しました。そこでは、女性ティーン層におけるテレビ視聴の実像と、テレビメディアとしての新たなアプローチのヒントを議論しました。本稿ではこの座談会より、ビデオリサーチひと研究所の渡辺による共同調査の分析結果をご紹介します。

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※プロジェクトの趣旨については下記をご覧ください。
"若年層のテレビ離れ"その実態を探る〜Screens × ビデオリサーチ × マイナビ 共同調査・研究レポート【前編】
10代女子がテレビコンテンツを見る上で必要な要素は「推し」と「きゅん」〜人気ドラマをもとにポイントを解析〜

今回分かったポイント
●女性ティーン層において、テレビ視聴とネット動画視聴は必ずしも相反する関係にあるわけではなく、テレビをよく見る人ほどネット動画もよく見るという関係が見られた。

●女性ティーン層がテレビ番組を見る際には、自分たちの様々なニーズに合わせ、テレビ視聴やスマホでの見逃し配信の視聴などを、うまく使い分けている様子がうかがえた。
● 女性ティーン層にもっとテレビ番組を見てもらうために注目すべきキーワードは、「推し」「繰り返し視聴」「家族との共視聴」「おすすめ」の4つ。

女性ティーン層の半数は「スマホ経由」でテレビ番組を視聴

ティーン層におけるテレビ番組(ドラマ、バラエティ)の視聴環境調査では、約50%が「スマホ経由」であることがわかりました。(図表1)
利用アプリ(サービス)はTVer、YouTubeなど様々ですが、ネット配信や動画サイト経由でのテレビ番組視聴は、もはや少数の特殊な行動ではありません。

図表1
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テレビをよく見る人は見逃し配信で「テレビをもっと楽しむ」

テレビと見逃し配信(キャッチアップ、以下CUと表記)それぞれの視聴頻度の関係を見てみましょう。(図表2)
見逃し配信の利用頻度が高い人は、全体と比べ、テレビ視聴の頻度も高い傾向にあります。少なくとも、CUの利用がテレビの視聴の減少にはつながっていません。

図表2
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一方、テレビ視聴頻度が上がると、CUの利用率(週1日以上利用率)が上がる傾向もみられました。(図表3)

図表3
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これらのデータからは、TVerなどの見逃し配信サービスが、テレビ番組を楽しむための便利なツール・サービスとして利用されていることがうかがえ、「普段テレビをよく視聴するからこそ、CUも積極利用している」という仮説を立てることができます。具体的なCUの活用実態については、この後詳しく述べることにします。

テレビをあまり見ない人が持つ「視聴に没頭したい」というニーズ

テレビの視聴頻度が低い人は、代わりにYouTubeの視聴頻度が高いのではないか──。そう思われる方も多いのではないでしょうか。しかし、テレビとYouTube、それぞれの視聴頻度の関係は、この説を否定する結果となりました。(図表4)

「テレビの視聴頻度が低い=YouTube頻度が高い」という関係は現れず、むしろ逆に「テレビ視聴頻度が低い=YouTube視聴頻度も低い」という関係になっていることがわかります。「テレビをあまり見ない人は、そもそも映像媒体への興味関心自体が低い」と考えると、ある意味順当な結果と言えるでしょう。少なくとも女性ティーン層について、「テレビの視聴機会が圧倒的にYouTubeに奪われている」わけではなさそうです。

図表4
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その一方で、「YouTubeの利用頻度が少ない人のほうが、頻度の高い人に比べて1利用日あたりの視聴時間が長い」という特徴も見られました。(図表5)

図表5
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サンプル数が少ないため、あくまで参考値ですが、CUについてもテレビ視聴頻度の低い人のほうが、1利用日あたりの視聴時間が長い傾向となっています。ここから推察されるのは、「日常的に映像コンテンツをよく見ているわけではないが、自分の好きなコンテンツについては、集中してまとめて視聴する」という習慣の存在です。

テレビを毎日見ているわけではないが、好きなものについては映像コンテンツできっちり見たい──。ティーン層の間でYouTubeやCUは、そのための有効なツールとして活用されているようです。これを裏付けるように、テレビをあまり頻繁に見ない人のほうが、ややニッチな傾向・好みが分かれる傾向のジャンル(外国のドラマや恋愛リアリティ、アニメなど)の視聴割合が全体と比べて高く出ています。

女性ティーン層へのアプローチで重視したい「4つのポイント」

ここからは、女性ティーン層へどのようにテレビ番組を届けたらよいか、そのアプローチに向けたポイントを探っていきたいと思います。具体的なケースとして、ティーン層にもヒットしたドラマ『恋はつづくよどこまでも(恋つづ)』(TBS系列 2020年1〜3月放送)についての調査結果を引用します。

※『恋はつづくよどこまでも』への注目については、詳しくは下記をご覧ください。
TVerアワードW受賞のドラマ『恋つづ』と女性ティーン層の視聴実態の関連性〜Screens × ビデオリサーチ × マイナビ 共同調査・研究レポート【中編】
ドラマ『恋つづ』を支持した女性ティーン層への4つのアプローチ方法〜Screens × ビデオリサーチ × マイナビ 共同調査・研究レポート【後編】

今回の調査回答者のうち、約56%に『恋つづ』視聴経験がありました。CUのヘビーユーザーにおいても「ネット動画などのみで視聴した」割合が非常に高く出ており、見逃し配信でもよく見られていたことがうかがえます。(図表6)

図表6
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ポイント1: 「『推し』の出演」が視聴を左右する

まず浮かび上がってきたのは、テレビ視聴動機としての「推し(熱烈なファン対象)」の存在です。

テレビ視聴全般について言えば、「推しの人物・キャラクター」がテレビ視聴のきっかけになる割合が50%以上と高く目立ちます。一方、テレビの視聴頻度が少ない人ほど、この"推しがきっかけ"のスコアは目立って低下します。テレビ視聴の動機として、「『推し』がテレビに出ていること」は非常に重要な要素となっているのです。(図表7)

図表7
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『恋つづ』を視聴したきっかけを調査すると、「番宣きっかけ(50%)」に次いで「好きな出演者がいる」(=『推し』が出演している)という回答が3割弱を占めており、また「出演者によるSNS告知」も大きな役割を果たしていることがわかります。(図表8)
いまや女性ティーン層にとって、「『推し』が出ているか否か」は、テレビ番組の視聴を決める重要な判断基準なのです。

図表8
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ポイント2: エピソード・シーン単位の「繰り返し視聴」というニーズ

テレビ視聴全般において高いスコアを記録したのが、「ドラマの同じ話を何度も繰り返して見る」「同じシーンだけ繰り返し見る」という行動です。(図表9)

図表9
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『恋つづ』の場合も例外ではなく、繰り返し視聴をしているのが目立ちます。週4日以上CUを利用するヘビーユーザーでは「同じ話を何度も繰り返し見た」という割合がさらに高くなっており、「CU=繰り返し視聴ツール」として有効活用されていることが推察されます。(図表10)

図表10
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同様に繰り返し視聴という文脈で考えると、テレビ番組全般において「すでに放送済みの内容の動画がいつでも見られる」というニーズが高い点にも注目です。(図表11)
これは、放送済みの内容の動画をいつでも見られるアーカイブ配信が、ドラマを中心とした「同じ話やシーンを繰り返し見たい」というニーズへの強力な武器となりうることを意味します。

図表11
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ポイント3: 家族との共視聴:「一緒に見る」「別に見る」は両立する

テレビ番組を視聴する際の行動として、「家族と一緒に見る」も繰り返し視聴と同じ程度に目立ちます。(図表12)
「テレビ=自宅のリビングにあるもの」という概念で考えると、まずは「家族と一緒に見る機会が多いもの」ということもうなずけます。

その一方で、 CUを週4日以上利用するヘビーユーザーはこのスコアが低くなっている点にも注目です。家族との共視聴ができない環境であったり、家族と見たい番組が異なるという状況の人、あるいは一人で見たいという人は、CUを活用してリビング以外の場所でテレビ番組を見ていることが推察されます。

図表12
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これらの結果は、『恋つづ』にも同様にみられました。(図表13)
ティーンに人気の恋愛ドラマであっても、母親や姉妹といった家族と視聴する機会がそれなりにあったということ、それと同時に家族と一緒に見たくない人がCUを活用しながら自室などで一人で見ていたことが推察されます。

図表13
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ポイント4: テレビをあまり見ない人に有効な「おすすめ」

テレビ番組をより見たくなる・見やすくなるための要素として、SNSや友人からの「おすすめ」が挙がっている点にも注目です。(図表14)
特にCUを積極利用している層において、SNSから自分向けに「おすすめ」されることへのニーズが高くなっています。SNSなどで「おすすめ」を目にし、そのままCUでのテレビ番組視聴につながるという流れを想像できます。

テレビをあまり見ない層においても「おすすめ」が相対的に高いスコアを記録している点も見逃せません。視聴頻度の高い低いに関わらず、「おすすめ」は、テレビ番組の視聴きっかけとして大いに有効であることがわかります。

図表14
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まとめ

今回の調査結果からは、女性ティーン層がテレビ番組を見る際、自分たちの様々なニーズに合わせ、テレビ視聴やスマホでのCU視聴などを使い分けている実態が明らかとなりました。同時に、女性ティーン層のテレビ番組の視聴行動を考えるキーワードとして、「推し」「繰り返し視聴」「家族との共視聴」「おすすめ」の4つが浮かび上がってきました。

引き続き、さまざまな実態把握や検証が必要ではありますが、テレビ番組をもっと若年層に届けるための施策を考えるうえで、今回の結果が有効な視座を得るヒントとなれば光栄です。

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【調査概要】
調査目的:
女性ティーン層のテレビや動画視聴の実態を把握し、テレビ番組の視聴促進のヒントとなる知見を得る
全国の13〜19歳女性300人に調査(インターネット調査)
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調査企画:Screens、ビデオリサーチ、マイナビ
実査機関:マイナビ
調査時期:2020年12月21日(月)〜2021年1月4日(月)

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