来街者の"プロフィールマッチング"で考える最適な動線と街づくり

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生活者データ
#ACR/ex #マーケティング #ユーザープロフィール #位置情報
来街者の"プロフィールマッチング"で考える最適な動線と街づくり

スマートフォンの普及に伴い、人がいつどこに何人いるのか、人がどのように動いたかなどを数値化した「人流データ」が整備されています。「人流データ」を用いることで、人々の往来や滞留が詳細な場所ごとに可視化され、動線検討やオーバーツーリズムの解消など様々な場面で役立っています。さらに、昨今では位置情報に日常生活意識といったプロフィール情報も付与されるようになってきています。今回は、来街者プロフィールを使った都市計画観点の分析を具体例からご紹介します。

本記事で紹介しているサービス【ACR/ex】

■来街者プロフィールの可視化

位置情報取得技術が発展し、行動ログの詳細が取得されるようになっています。当社生活者データベース「ACR/ex」では、主要な街を対象とした特定1週間の利用実態(日記式での利用実測データ)を取得しております。これにより、街の利用実態データと日常生活意識やブランド、メディア、コンテンツとの関わりをシングルソースで分析(プロフィール分析)することで、来街者の人物像を可視化することが可能です。

一方で、そのように可視化された人物像をどのように読み解き、活用してよいかわからないというようなご意見もよく伺います。そこで当社は、複雑な人物像の読み込み・知見抽出手順を踏むことなくプロフィール集計から抽出された特徴的なプロフィールをもとに相性を表現する「プロフィールマッチング」という分析手法を開発しました。これを用いて、今回は街と街の相性をみてみます。

■人物像の相性を可視化する「プロフィールマッチング」

当社の特許分析技術「プロフィールマッチング」は、ある特定の2つの条件に該当する人物像がどの程度に通っているのかを数値化する仕組みです。
プロフィールマッチングで算出されるプロフィールマッチ度が高いほど、両者の人物像は共通点が多く、親和性も高くなります。そのため様々な相乗効果が期待できます。
例えば、プロフィールマッチングを用いた過去の研究では、コミュニケーションターゲットとのプロフィールマッチ度が高いテレビ番組にスポンサードCMを出稿するほうが、効果が高くなることが示されています。(タイムCM番組を"相性診断"で導き出す「プロフィールマッチング」

今回は各街の来街者でプロフィールマッチングを行い、街同士の親和性の高低から理想的な人流動線や街づくりの方向性を検討します。ここでは、四方を主要な街に囲まれる神田(東京都)と、その周辺の街との来街者プロフィールマッチ度から流入が期待できる動線を検討しました。
「ACR/ex」では各エリアの主要な街を対象に最近1か月間の利用有無(先述の利用実測データとは別項目)を調査しており、東京50km圏では75か所の街スポットを対象に平日と土日それぞれ利用経験の情報を保有しています。今回は、ビジネス目的に限らない利用を想定し、土日利用経験者でプロフィールマッチングを行いました。

以降で、プロフィールマッチングの分析手順を、2つに分けて紹介します。

■プロフィールマッチ度の算出方法

手順1:特徴プロフィール項目の抽出

神田来街者と、隣の街である秋葉原来街者のプロフィール分析から、それぞれの特徴プロフィール項目の抽出手順をご説明します。例として15項目の「ACR/ex」意識項目の分析から特徴プロフィール項目をピックアップしたイメージが図表1です。

特徴プロフィール項目のピックアップイメージ

比較対象である「男女12-69歳」に対して一定の割合以上にスコアが高い項目を特徴プロフィール項目と呼び、ここでは、1.2倍以上のスコアになった項目を特徴プロフィール項目として定義しています。特徴プロフィール項目は各来街者の特徴的な人物像と言えます。

手順2:プロフィールマッチ度

次に、神田来街者、秋葉原来街者の特徴プロフィール項目から、プロフィールマッチ度を算出します。両者の特徴プロフィール項目がどれだけ重複しているのかを確認し、これを基準とするほうの特徴プロフィール項目数で割ります。神田来街者を基準に秋葉原来街者とのプロフィールマッチ度を知りたい場合、神田来街者のもつ特徴プロフィール項目のうちどの程度秋葉原来街者の特徴プロフィール項目と重複するのかを確認することで算出できます。

プロフィールマッチ度の算出イメージ

算出の手順は図表2の通りです。神田来街者の特徴プロフィール項目数10項目に対し、神田来街者と秋葉原来街者で重複して特徴プロフィール項目に該当する項目は5項目になりました。この場合、神田来街者の秋葉原来街者に対するプロフィールマッチ度は、5÷10×100%=50%と計算できます。
※当社ではプロフィールマッチングの算出ロジックで特許を取得しています。

ここまで15項目のプロフィール分析を行った結果の例で算出方法をご紹介しました。実際の分析では日常生活意識や趣味等を中心とした1,218項目から特徴プロフィール項目を抽出しています。

■プロフィールマッチングでみる最適動線と街づくり

ここからは、1,218項目を用いた結果で、神田周辺の街とのプロフィールマッチ度みていきます。神田と周辺の街ごとに、プロフィール分析、プロフィールマッチングを行い、プロフィールマッチ度を算出した結果が図表3です。

神田とのプロフィールマッチ度

神田と周辺の各街とのプロフィールマッチ度をみると、南側の銀座・有楽町方面との相性が良いことがわかります。特に大手町は73%と高く、次いで有楽町(72%)、八重洲(71%)と続きます。土日の神田は、秋葉原方面よりもビジネス街との相性がよく、その先の有楽町へとつながる動線が最適で利用者との親和性が高いことが示されます。

一方で北側では、プロフィールマッチ度は相対的に低い結果です。算出例で使用した神田と秋葉原は徒歩でも移動できるほど近い距離にありますが、プロフィールマッチ度は49%でした。

さらに、神田周辺の街以外も含めたプロフィールマッチ度をランキング(図表4)で確認したところ、先ほどみた大手町・有楽町・八重洲を押さえて1位は六本木(77%)でした。他にも5位青山(71%)、6位恵比寿・代官山(70%)、8位西麻布・広尾(68%)、11位表参道(66%)といった、おしゃれな街とのプロフィールマッチ度が高い結果でした。

神田のプロフィールマッチ度ランキングベスト15

これらのプロフィールマッチングの結果から、神田の街の近距離動線としての北側よりも南側の可能性が明確になりました。これは、街のカラーを検討する際に北側秋葉原の「オタク文化」カラーよりも、南側のビジネス・ショッピングカラーを取り入れたほうが賑わう可能性を示唆します。

神田から南側動線は、マッチ度の高い大手町の先に皇居・二重橋・東京駅など歴史的建造物の多いフォトジェニックなエリアとつながります。神田もまた再開発も進む一方、古くからの街内や建物が残る街です。このカラーを採用し、神田の街をおしゃれな歴史ある建物で魅せる休日の訪問先訴求が有効でしょう。これらをうまく活用することで往来が盛んになるのではないでしょうか。

おしゃれ訴求は、中長距離の動線では青山・表参道・代官山・広尾エリアとの親和性の高さが参考になります。こうしたエリアに点在する個性豊かなファッションや飲食店舗を誘致することで、ウィンドウショッピングも含めて見て楽しめる街という要素を押し出すことができるでしょう。

休日の神田は、サラリーマンの酒場の街という一般的な印象とはすこし違った特徴があることが浮き彫りになりました。プロフィールマッチングを用いることで、こうした従来の分析では見えづらかった新たな可能性についての検討ができるようになります。

■人流ログデータ×プロフィール分析を実現

今回の分析は「ACR/ex」で調査している項目で行いました。昨今「ACR/ex」データは様々な外部データとデータフュージョンにより連携することができ、「ACR/ex」では捕捉しきれないデータも用いて詳細な分析をすることが可能となっています。今回のような人流データでは、unerry社の位置情報データと、Resolving LAB社視聴ログデータを媒介に連携することで、全国様々な街やスポットを訪れた方のプロフィールを詳細に描くことが可能となります。

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今回はプロフィールマッチングを用いて街同士の相性から都市計画を検討する分析活用事例をご紹介しました。プロフィールマッチングは、都市計画以外にも様々なテーマで活用いただけます。そのほかのテーマにおける利用・活用例は、また別に機会に紹介させていただきますのでぜひご期待ください。

【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex
・調査時期:2025年4月-6月
・対象地区:東京50㎞圏
・対象年齢:男女12-69歳 

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