大阪・関西万博を"来場者タイプ別"に分析!年代別・来場回数別の満足度&人気パビリオンランキング
- この記事はこんな方にオススメ!
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- 大阪・関西万博がどう楽しまれたのか知りたい方
- 大阪・関西万博の満足度や人気パビリオンを年代別に知りたい方
- 大阪・関西万博のヘビー来場者が魅力を感じたポイントを知りたい方
日本で開催される大規模な国際博覧会としては、2005年の「愛・地球博」以来、20年ぶり3回目となった「大阪・関西万博」。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、世界158の国・地域と7つの国際機関が参加しました。来場者は、国内・海外のパビリオンや、日々開催されるイベント等を通じて、未来の技術や社会システムを体験し、多様な文化との交流を楽しむことができ、会期中の総来場者数は約2,901万7900人(内、一般来場者は約2,557万8900人)※に達しました。
※出典:日本国際博覧会協会発表/日本経済新聞「大阪万博の一般来場者2557万人に会期全体で、閉幕日は20万7800人」2025年10月14日掲載
さらに、万博閉幕後も、「アフター万博」として、会場外オフィシャルストアが混雑したり、公式キャラクター「ミャクミャク」が登場するイベントが話題になったりするなど、万博の余韻を楽しむ動きが続いています。
先日公開した記事「大阪・関西万博をデータで深掘り!来場率や満足度、人気パビリオンを徹底分析」では、万博の基本的な評価や、関東・関西の地区別比較を中心にお伝えしました。今回は、2025年7月に関東(東京50km圏)・関西の2地区の万博来場経験者を対象に実施した調査の結果から(ビデオリサーチ生活者総合調査データ「ACR/ex」)、年代別の傾向や、来場回数の多い"ヘビー来場者"にフォーカスを当てながら、より深く分析します。
年代別では20代で86.9%!年代別&来場回数別の満足度は?
まず、大阪・関西万博の満足度をみてみます(図1)。万博来場者全体(男女12~69歳)の満足度は80.4%でした。年代別では、20代から60代までいずれも8割前後と、幅広い世代が楽しめる万博だったことがわかります。特に、最も高かったのは20代で、86.9%と非常に高い満足度でした。
続いて、来場回数別に満足度をみてみます。図2からわかるように、来場回数が多いほど満足度が高くなっており、3~4回来場者、5回以上来場者の満足度はいずれも9割を上回っています。一方、1回来場者の満足度も72.2%と高く、万博は一度訪れるだけでも多くの人にとって満足できるものでした。
万博へ行くきっかけとなったメディアは?
では、どの情報源やメディアが万博来訪のきっかけとなったのでしょうか。表3に上位項目を示しています。
1位は、「地上波テレビ放送」。関西圏を中心に夕方の情報番組などで、人気パビリオンやイベントの紹介、来場者の声など、万博内の様子が連日取り上げられたことが来訪のきっかけになったと考えられます。
2位は、「家族や友人、知人との会話・口コミ」。実際に万博を訪れた人の感想を身近な人から聞くことによって、来訪意欲が高まったと考えられます。
3位以下には、「公式のインターネットサイト・アプリ」、「YouTube」、「X(旧Twitter)」と、ネットメディアが並びました。そこで、ネットメディアのなかで、どの情報源が来訪のきっかけになったのかを年代別にみてみます(図4)。
20代・30代のトップは「X(旧Twitter)」。万博を実際に訪れた人による感想や写真が多数投稿されたほか、パビリオン予約、会場内の休憩所や穴場スポットなど、公式のメディアからは発信されないような情報も入手できました。開催期間中には、パビリオン巡りを目的とした非公式マップが大きな話題になり、デザインシステム(デザインの設計図、ガイドライン)の一部が「こみゃく」という愛称で人気を集めるなど、SNSならではの盛り上がりも見られました。
また、「Instagram」も、20代・30代でスコアが高くなっていました。
一方、40代以上でトップになったのは「公式のインターネットサイト・アプリ」。会場マップや、パビリオン・イベントなどの豊富な情報を来訪前に確認でき、会場内でもアプリで必要な情報を手軽に入手できました。
特定の年代で特に利用されたネットメディアがあった一方で、「YouTube」は、特定の年代に偏ることなく利用されていました。おすすめのパビリオンやグルメの情報などが映像で発信されたことで、万博の魅力がより深く伝わったと考えられます。
人気パビリオンランキングを年代別に紹介!
大阪・関西万博には、世界158の国・地域と7つの国際機関による「海外パビリオン」、8人のプロデューサーが主導する「シグネチャーパビリオン」、自治体や企業などが展開する10以上の「国内パビリオン」が出展しました。ここからは、万博来場者から高い関心を集めた人気パビリオンのランキングを紹介し、年代別の特徴を深掘りします。
まず、万博来場者全体(男女12~69歳)のランキングです(図5)。
1位は、「大阪ヘルスケアパビリオン」。25年後の自分(アバター)と一緒にミライのヘルスケアや都市生活を体験できる「リボーン体験」、360度シアターの没入空間で楽しめる「XD HALL モンスターハンター ブリッジ」、1970年大阪万博(日本万国博覧会)で展示された「人間洗濯機」が復活した「ミライ人間洗濯機」、iPS細胞から作られた「心筋シート」、3Dバイオプリントの「培養肉」などが人気でした。
2位は、「アメリカ パビリオン」。マスコットキャラクター「Spark(スパーク)」とともに、テクノロジー、宇宙開発、教育、文化、起業家精神の5ジャンルから、アメリカや宇宙の姿を体験できるパビリオンでした。特に、NASAロケット打ち上げの疑似体験や、1970年大阪万博で話題を集めた「月の石」の展示が注目されました。
3位は、「イタリア・バチカン館」。日本初公開の「ファルネーゼのアトラス」、ミケランジェロ「キリストの復活」、カラヴァッジョ「キリストの埋葬」、レオナルド・ダ・ヴィンチ「アトランティックコード」など、世界の至宝を間近で鑑賞でき、新しいアート作品が次々と追加展示されたことが話題になりました。予約なしで入館可能であったものの、待ち時間は7時間以上に及び、高い人気でした。
民間パビリオンでは、「住友館」が6位にランクイン。ランタンを手に「UNKNOWN FOREST」を巡り、森に住む動物や、普段は声を聞くことのできない生き物たちとの出会いを楽しむインタラクティブな体験ができました。開幕直後から体験の魅力が評判となり、予約困難なパビリオンでした。
シグネチャーパビリオンでは、落合陽一プロデュース「null²」が7位にランクイン。鏡に囲まれた空間で、デジタル世界に生まれ変わった自分自身と対話するという、未知の体験ができました。鏡面膜に覆われ、伸縮しながら"ヌルヌル"と変形する外観や、三波春夫の音声をAIで再現した「さようならヌルの森よ」という歌が話題になるなど、入館者以外からも注目を集めました。
続いて、年代別に人気を集めたパビリオンの特徴をみてみます。表6では年代別のパビリオンランキング、表7では万博来場者全体(男女12~69歳)のスコアとの差分の大きいパビリオンランキングを示しています。来場者全体スコアとの差分をみることで、ほかの年代と比べて各年代で"特に人気を集めたパビリオン"がわかります。
まず、年代別の関心度1位をみると、20代~40代では「大阪ヘルスケアパビリオン」(万博来場者全体1位)、50代・60代では「イタリア・バチカン館」(万博来場者全体3位)と、世代によって異なる結果となりました。
他の年代と比べ、20代で特に人気を集めたのは、「トルクメニスタン パビリオン」。カラフルな装飾と巨大なスクリーンの外観、入口に掲げられた大統領の巨大な肖像画はSNSで話題になりました。館内では、日本からの渡航は難しいトルクメニスタンの風景、伝統、文化、暮らし、料理などを体験できました。
30代・40代では、他の年代と比べ、親子で参加しやすいパビリオンが特に人気を集めました。エネルギーに関する体験展示をゲーム感覚で楽しめる「電力館 可能性のタマゴたち」、結晶(デバイス)を手に、立体音響と空間映像に包まれた未知の知覚体験ができる「パナソニックグループパビリオン「ノモの国」」、XRゴーグルを装着しておばけの世界を体験する「ガスパビリオン おばけワンダーランド」、隠れミャクミャクのいる未来都市の巨大ジオラマの展示がある「飯田グループ×大阪公立大学共同出展館」と、親子で楽しめる体験型パビリオンが人気を集めました。
50代では、映像や空間を通して、ガンダムシリーズで描かれる宇宙での暮らしや科学技術などの世界観を体感できる「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」や、「ハイジと共に、テクノロジーの頂へ」をキャッチフレーズとしてアルプス文化と最先端技術を体験できる「スイス パビリオン」の人気が、他の年代と比べ特徴的でした。
万博ヘビー来場者を分析!魅力ポイント&特に人気のパビリオンは?
次に、万博ヘビー来場者(※)に注目し、魅力ポイントや、万博来場者全体と比べて特に人気を集めたパビリオンをみてみます。
※調査時期(7月時点)に1回以上来場済みで、来場回数(予定含む)が5回以上の来場者
表8は、ヘビー来場者が魅力に感じたポイントの上位項目を示しています。
ヘビー来場者のうち7割以上の人が感じた魅力ポイント1位は、「万博会場全体の雰囲気・景観」。それぞれ独自のデザインやコンセプトを持つ、万博でしか見られない建設物が集まり、会場全体に展開されるサウンドスケープや、会場随所で行われるイベントやパフォーマンス、会場内全域で楽しめる光と音とテクノロジーの織りなすスペクタクルショー「One World, One Planet.」など、五感で万博を楽しめる点が魅力を感じるポイントでした。5位には「会場内の建設・都市デザイン」がランクインしており、パビリオンのほか、休憩所・トイレなどの特徴的な建築物のデザインや、「空飛ぶクルマ」、自動運転のEVバス、「静けさの森」やウォータープラザなど万博ならではの空間が魅力を高めました。
2位は、「大屋根リング」。会場デザインの理念「多様でありながら、ひとつ」を表すシンボルで、大屋根リングの中に世界各国のパビリオンが集結しました。会期中は、自分の年齢と同じ大屋根リングの柱番号(01~116)で記念撮影することが流行しました。また、屋上は歩いて一周することができ、会場内の景色を眺めたり、水上ショー「アオと夜の虹のパレード」や花火、ブルーインパルスの飛行を見たりするなど、大屋根リングは多くの来場者にとって記憶に残る存在となりました。
3位は、「世界の文化・国際交流の展示・体験」。世界各国の展示や体験をパビリオン内で楽しんだり、日々開催されるナショナルデー・スペシャルデーなどのイベントに参加したりすることで、多様な文化との交流ができました。パビリオンの外ではイベントやショーなどが実施されることもあり、インドネシア パビリオンでは、「予約なしですぐ入れる」との呼び込みが「ヨヤクナシダンサーズ」として人気を集めることもありました。7位には「世界各国のフード・スイーツ」がランクインしており、館内のレストランやフードトラックなどで世界各国のグルメを楽しむことができました。
4位は、万博公式キャラクター「ミャクミャク」。ミャクミャクと記念撮影のできる「ミャクミャクハウス」や、「ミャクミャク ぬいぐるみくじ」も人気を集めました。万博会期中にミャクミャクの人気は上昇し、閉幕日のドローンショーではミャクミャクの姿が夜空に登場するというサプライズ演出が行われ、会場内は歓声に包まれ、感動し涙する人もいたようです。「万博限定グッズ・お土産のラインナップ」は8位に。夢洲駅では、ミャクミャクが踊りながら「買って!買って!」などと訴える広告が流れて話題になりました。万博会場内の限定グッズや、パビリオンの貴重なグッズに注目が集まりました。
6位は、「スタンプラリー」。会場内に約200箇所のスタンプが設置され、多くのパビリオンを訪れ、スタンプを集めて思い出に残すという楽しみがありました。関西パビリオンに参加した9府県のサテライト会場や、閉幕後にはオフィシャルストアにもスタンプが設置され、スタンプラリーは会場外でも展開されました。
また、「案内所・スタッフの対応」もTOP10入り。呼び込みや来場者への呼びかけがSNSで話題になり「コモンズBのお兄さん」として親しまれた警備員や、警備員が手際よく手荷物検査を行う入場ゲートが注目を集めました。さらに、西ゲートからの退場時に「今日一日万博楽しめた人~」との呼びかけに対し、大勢の来場者が「はーい!」と応える場面もあり、万博にいる最後の時間まで楽しませてくれるスタッフの対応には称賛の声が寄せられ、万博での思い出がより良いものになったという来場者もいました。
続いて、ヘビー来場者の人気を特に集めたパビリオンをみてみます(表9)。
国内パビリオンでヘビー来場者の人気を特に集めたのは、「PASONA NATUREVERSE」。1970年大阪万博の「太陽の塔」の内部展示「生命の樹」のオマージュ作品である「生命進化の樹」、拍動する「iPS心臓」の展示、未来の医療・眠りに関する最先端技術の展示、鉄腕アトムとブラック・ジャックが登場する「NATUREVERSEショー」など、充実したコンテンツを体験できることで、高い人気を集めました。
海外パビリオンで特に人気を集めたのは、「ドイツ パビリオン」。循環経済「サーキュラーエコノミー」を紹介するマスコットの「サーキュラー」は、「サーキュラーちゃん」として人気でした。
「ヨルダン パビリオン」は、映画「スター・ウォーズ」のロケ地にもなった砂漠地帯「ワディ・ラム」の赤い砂22トンが日本に運ばれ、来場者が素足で体験できる展示が高い人気でした。
「シンガポール パビリオン」は、人々の多様な夢を表現した赤い球体の外観が特徴的で、館内では、多様なアートと文化を五感で楽しむ没入体験が話題になりました。
「ポーランド パビリオン」は、1日3回「ショパンコンサート」を開催。少人数限定の特別な空間で、ピアノの演奏を間近で楽しめる貴重な体験が評判でした。
このように、各国の特徴を活かし、没入感のある体験ができるパビリオンは、ヘビー来場者から特に支持されました。
日本での今後の万博開催への期待は?
今回の大阪・関西万博は、日本での登録博(旧・一般博)の開催としては、1970年の大阪万博、2005年の愛・地球博に続き、3回目でした。閉会式では、大阪府の吉村洋文知事が述べた、「またいつの日か、ここ日本で万博をやりましょう」という言葉が反響を呼びました。
では、日本で今後、万博開催を望む声はあるのでしょうか。図10では、万博来場者における年代別のスコアを示しています。
万博来場者全体では、そのうち64.8%の人が「日本でまた万博を開催してほしい」と回答しました。年代別では、20代から60代までの各年代で半数を上回っており、20代から40代では約7割と高水準でした。
さらに、その内訳をみると、「とてもそう思う」人の割合は、20代から40代まででは4割以上と非常に高いスコアでした。今回の万博開催で、若年層を中心に日本での万博開催への強い支持が形成されたことがわかります。
さいごに
本記事では、関東(東京50km圏)・関西の万博来場者を対象に実施した調査結果から、年代別満足度や人気パビリオン、万博ヘビー来場者の魅力ポイント、日本での万博開催への期待をご紹介しました。
「ACR/ex」では、生活行動、メディア接触、タレントイメージなど、20万項目以上の調査結果をデータベース化しており、生活者の実態を多角的かつ客観的に捉えることができます。
ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽に以下よりお問い合わせください。
【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「ACR/ex」
・調査時期:2025年7月調査
・対象地区:関東(東京50km圏)・関西(2府3県の主要地域)
※2府3県...大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県
・調査対象者:対象地区に在住の男女12~69歳
・調査サンプル数
| 関東 | 関西 | 2地区計 (関東+関西) |
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|---|---|---|---|
| 個人全体(男女12~69歳) | 4,843s | 1,422s | 6,265s |
| 万博来場経験者 | 263s | 437s | 700s |
*本記事は、「万博来場経験者」の回答データを使っています。