【25年最新】"新" メディアポジショニングマップを解説~生活シーン×気持ちでメディア利用を深掘り~

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【25年最新】"新" メディアポジショニングマップを解説~生活シーン×気持ちでメディア利用を深掘り~
この記事はこんな方にオススメ!
  • 生活者がどのようにメディア利用をしているのか関心がある方
  • 生活者のメディア利用シーンの特徴や、地区ごとの違いに関心がある方
  • テレビなどのマスメディアが持つ強みを知りたい方

メディアポジショニングマップとは

生活者研究を行うシンクタンクであるビデオリサーチ「ひと研究所」では2019年から毎年、生活者とメディアの関係性を俯瞰して把握するために"メディアポジショニングマップ"を作成しています。テレビのリアルタイム視聴は"食事中の利用"がほかのメディアにない強みであることや、ネット動画視聴がリビング・居間に浸透してきていることなど、メディアごとの利用シーンを可視化してきました。

2023年からはACR/ex(東京50km圏)の15,000項目にも及ぶ調査に組み込むことで、より細かいターゲット像を設定したり、各メディアの利用者像を詳しく分析したりできるようになりました。さらに2024年4-6月調査より、調査エリアを全国7地区に拡げることで、地区ごとの特徴やその違いを把握できるようになりました。

本記事では、2025年の最新の全国7地区の調査結果をもとに、さらにパワーアップした"新"メディアポジショニングマップによる分析事例をご紹介します。

「メディアポジショニングマップ」に関する情報はこちら

2025年"新"メディアポジショニングマップ

メディアポジショニングマップとは、メディアごとの利用シーンを可視化したマップで、それぞれのメディアが「どのような時に」利用されているのか、その全体像を解き明かすことを目的とした分析です。テレビ、SVOD、AVOD、SNS等、メディアの位置づけを俯瞰したり、生活者のメディア利用の最新動向を把握したりすることができます。

2024年には、ACR/exの全国7地区版のデータをもとに分析を行いましたが、今回は2025年の最新データをもとに、より詳細に分析した結果のマップを作成しました。

今回の分析にあたって新たに、マッピング上のメディア間の距離の近さをもとに、メディアを6つに分類しました。加えて、同時に調査している「メディアを利用するときの気持ち」のデータを用いて、各グループに求められるニーズについて解釈を行いました。その結果をまとめたのが図1です。

(図1)全国7地区 男女12-69才 メディアポジショニングマップ

なお、「利用するときの気持ち」の項目は図2の通りです。対象メディアそれぞれの利用者に対し、どのような気持ちのときにそのメディアを利用しているかを聴取しています。

(図2)調査対象 利用時の気持ち

このように、新たなメディアポジショニングマップでは利用シーン×利用時の気持ちのかけ合わせから各メディアのポジションの解釈を行っています。次から具体的に解釈を見ていきたいと思います。

メディア × 生活シーン × 利用時の気持ちで理解を深める

■グループ1.共視聴・共存性(右上)

テレビ(リアルタイム視聴、録画視聴)や新聞(紙)が含まれるこのグループは、利用シーンとして「朝食事をしながら」「夜食事をしながら」「朝の身支度中」との関連が高くなっています。メディアの特性上、食事をしながら利用することが習慣になっているなど、結果として家族と共視聴したり、家族がいる生活シーンで利用しやすいことが特徴となっています。

利用時の気持ちのデータをみると「家族と一緒にコンテンツを利用したい」のスコアが高いことに加えて、「ためになる情報やコンテンツを利用したい」「信頼できる情報やコンテンツを利用したい」といったニーズでも高いスコアを示しました。家族と共にいる時間・空間だからこそ、安心して接することができる情報が期待されていることが読み取れます。

■グループ2:エンタメ性(左上)

このグループにはDVD・ブルーレイ、各種動画配信サービス、雑誌(紙)、漫画(紙)、ゲーム(ゲーム機/PC)などが含まれています。利用シーンでは「自宅のリビング・居間で家族とくつろいでいるとき」「自宅のリビング・居間で一人でくつろいでいるとき」が近くに位置しており、くつろいでいる時間にじっくり楽しまれる傾向があることが読み取れます。

利用時の気持ち・ニーズのデータをみると「自分に合ったコンテンツを利用したい」「感動したい・心を揺さぶられたい・心にぐっときたい」「スカッとしたい・爽快感があるものを見聞きしたい」といった項目でスコアが高くなっています。まとまった時間で、感情的な満足感や、刺激的なコンテンツを求めるときに選ばれるのがこのグループの特徴といえます。

■グループ3:全方位・可変性(中央)

このグループには、YouTubeやTikTok、ライブ配信サービス(ツイキャス、Twitch、SHOWROOMなど)と多様なコンテンツに接触できるUGC(ユーザー生成コンテンツ)メディアが集まっています。マッピング結果では全体の中心に位置しており、"全方位"的にどのような生活シーンにも入り込みやすい"可変性"があるメディアと解釈できます。

利用時の気持ちに着目すると、「笑いたい」「暇つぶしをしたい」といったニーズが特徴として見られました。感情を揺さぶるコンテンツよりは、気軽に楽しめることが求められている傾向が読み取れます。

■グループ4:暇つぶし性(左側)

このグループは電子書籍、紙の書籍、電子コミック、スマホゲームなど、ひとりで没頭できるメディアが多く含まれます。利用シーンは「自室でのくつろぎ時間」「就寝前」といった、パーソナルな時間・場所との関連が強いことが読み取れます。

利用時の気持ちをみると、「暇つぶしをしたい」が最も高く、「一息つきたい・気分転換したい」「現実逃避したい」といったニーズがほかのグループより相対的に高いスコアを示しています。今の気分や状況から一時的に離れ、頭や心をリセットしたいときや就寝前などに選ばれることが多いのではないでしょうか。

■グループ5:情報性(中央下)

ここにはSNS(Instagram、X、Facebook、LINE)やニュースサイト、新聞(デジタル版)など、短時間で多様な情報に接触できるメディアが含まれます。利用シーンは「入浴中」「起床後」「トイレ」「休憩時間」といったすきま時間との関連性が高いことが特徴です。

利用時の気持ちのデータでは、「自分の知らない情報やコンテンツを利用したい」
「ためになる情報やコンテンツを利用したい」「鮮度の良い情報やコンテンツを利用したい」が高いスコアを示しており、即時性や効率性を重視して情報収集したいときにニーズがあるグループといえます。

■グループ6:リラックス性(右下)

このグループには、音楽配信、ラジオ、ポッドキャスト、音声配信、オーディオブックなど、耳で楽しめるメディアが中心となっています。マッピングでは、「仕事中・授業中・勉強中」「通勤通学・移動中」など、何かをしながら楽しまれている傾向が見られます。

利用時の気持ちに関するデータでは、「一息つきたい」「リラックスしたい」「時間を有効に使いたい」といったニーズが高いのが特徴です。他の行動と並行しながらも自分の意識や気持ちを整える役割が期待されていることがわかります。

このように、パワーアップしたメディアポジショニングマップでは、メディアと生活シーンの関係性だけでなく、生活者の気持ちやニーズも踏まえて分析を行うことで、より深い解釈が可能になりました。

マッピングから特定ターゲットの特徴を把握する

メディアポジショニングマップは、代表性の高い「ACR/ex」パネルを用いて調査を実施しており、15,000項目に及ぶ生活者データと連携することで、細かなターゲット分析が可能です。

今回は、新しいメディアポジショニングの形式を用いて、一例としてF1層(女性20~34歳)を対象の分析を実施しました(図3)。

(図3)全国7地区 F1(女性20-34才) メディアポジショニングマップ

さらに各メディアのマッピングを個人全体の位置と比較し、距離が離れているメディアのうち、特徴がみられるメディアを抜粋して取り上げることで、ターゲットに特有のメディア行動を分析していきます(図4)。

(図4)全国7地区 個人全体(ALL)-F1比較【距離が離れているメディア抜粋】

まず新聞(紙)に着目すると、個人全体よりも"エンタメ性"のマッピングに近い位置にあることが特徴です。位置は「朝食事をしながら」から離れて、「自宅のリビング、居間で家族とくつろいでいるとき」と近い位置になっています。

筆者自身(F1層)としても、社会・報道に関する情報を電子新聞やニュースサイトで収集する一方で、家族が購読している新聞がリビングでふと目に留まり、トレンド・カルチャーの記事を興味深く読むことがあります。ネットでの情報収集に慣れているF1層にとって、普段とは異なる視点の記事に出会えることが、紙の新聞の一つの魅力かもしれません。

エンタメ性グループでは、NHKプラス・DAZNがより共視聴・共存性の方向に近い位置になっていることが特徴的です。これらの利用時の気持ちのスコアをみると、エンタメ性グループの特徴の一つであった「自分に合った情報を楽しみたい」という項目のスコアが低く、家族と一緒に楽しむというスコアが特に高く出ていることがわかりました。F1にとってこれらは動画プラットフォームの中でもより家族と楽しむ特性が強いことが読み取れます。

このグループの中では他にも、「民放見逃し配信サービス」が有料・無料ともに、全方位・可変性グループの近くに位置していることが見られ、居間やリビングといった共有空間ではなく、パーソナルな空間との関連性が高くなっていることが特徴としてみられました。民放コンテンツが集約されているTVerではなく、あえて各局の民放見逃し配信サービスに接触するF1層は、より自分好み・ニッチなコンテンツを求めている可能性があり、そうしたコンテンツは、パーソナルな時間・空間に集中して楽しまれる傾向があると考察できます。同じエンタメ性に分類される動画配信プラットフォームの中でも、家族と一緒にみたいもの・個人でじっくり楽しみたいもの、といった棲み分けがみられました。

可変性メディアの中では、「その他の配信サービス(ミクチャ、17LIVE、SHOWROOMなど)」が「家事や育児、身の回りのことをしながら」といった利用シーンに近い位置となっており、"ながら"で楽しまれる傾向が見られます。利用時の気持ちのスコアが個人全体より高いものとして「自分に合ったコンテンツ」「笑いたい」「ほっこりしたい」が挙げられており、忙しい中でも癒しになるようなライブ配信コンテンツを楽しみたいという意識が読み取れます。

最後にリラックス性に分類されるメディアを見ると「Amazon Music」「YouTube Music」が「通勤通学、移動中」により近づいていることが分かります。F1層は忙しいライフスタイルの中で外出や移動が多く、音楽を聴く時間も電車などの移動中が中心になっていると考えられます。カセット、MD、mp3(iPodなど)とポータブルオーディオプレイヤーが担ってきた役割を、現在ではスマートフォンとサブスク配信が担っていると考えると理解しやすいと思います。

このように、個人全体とF1の比較を行い、ターゲットがどのように各メディアをすみ分けて活用しているのか具体的に明らかにすることがメディアポジショニングマップを用いた分析では可能になります。

"新"メディアポジショニングマップで生活者のメディア利用を把握

今回、全国7地区版のパワーアップした"新"メディアポジショニングマップをご紹介しました。
同じ対象者に調査をしている「ACR/ex」のデータと組み合わせることで、性年代に留まらず詳細なターゲットを設定してメディア利用の特徴を把握することができます。ぜひ、「ACR/ex」による全国7地区版"新"メディアポジショニングマップを、生活者や特定ターゲットのメディア利用を俯瞰的に把握するのにご活用ください。

また、本マップはダウンロードしてお手元でご活用いただくこともできます。
ご興味お持ちいただいた方は、以下をご覧ください。

【本記事で紹介したサービス】
<メディアポジショニングマップ>
・サービスページ:https://www.videor.co.jp/service/media-data/mediapositioningmap.html

<ACR/ex>
・サービスページ:https://www.videor.co.jp/service/media-data/acrex.html
・調査時期:2025年 4-6月
・対象地区:全国7地区(東京50㎞圏、関西、名古屋、北部九州、札幌、仙台、広島)
・対象者抽出方法:エリア・ランダム・サンプリング(無作為抽出)
・調査手法:訪問による調査対象者説得、電子調査票による調査(回答専用タブレット端末を貸与)
・対象年齢:男女12-69才の個人
※マッピングで分析したデータは各メディア3か月以内利用者
※調査対象メディアと生活シーンは以下の末尾資料参照

調査対象メディア(55メディア)

調査対象生活シーン(16シーン)

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