屋外広告やデジタルサイネージの未来 ~プランニングとメジャメントの最前線~【VR FORUM 2025】

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メディア
#OOH #VR FORUM #データ活用 #マーケティング #広告
屋外広告やデジタルサイネージの未来 ~プランニングとメジャメントの最前線~【VR FORUM 2025】

[登壇者](右から)
株式会社 LIVE BOARD
取締役 ストラテジー部 ディレクター 宮川 聡 氏

株式会社東急エージェンシー
事業共創本部 東急OOHメディア事業局 局次長 兼 事業戦略部
部長 星野 一道 氏

株式会社ジェイアール東日本企画
メディアソリューション本部 MASTRUM推進センター 業務推進部
担当部長 大和田 貴普 氏

株式会社ビデオリサーチ
ビジネスデザインユニット
新規ビジネス開発グループマネージャー 藤森 省吾

屋外広告や交通広告、デジタルサイネージなどの「OOH」はコロナ禍で世界的に市場は低迷しましたが、欧米などOOHのメジャメント(客観的な価値を測定する共通指標)導入国ではすでにV字回復を遂げています。一方、日本はコロナ禍前の水準には戻っていません。日本のOOH市場を再び成長させるためにはどのような施策を打てば良いのでしょうか。OOHの代表的な3社の担当者を迎えて語り合いました。

個へのアピールを最大化するOOHとは?ジェイアール東日本企画の取り組み

まず、藤森からOOH広告の市場規模の推移とOOH広告が生活者にとって自然に接触されやすく、広告として押しつけ感がないことなどが示されました。そのうえで、各社の取り組みについて語ってもらいました。

最初に、大和田氏から「MASTRUM(マストラム)」というプラットフォームについて紹介がありました。特徴は、従来のOOH広告のように場所=面を起点とした広告取引ではなく、人=個を起点とした設計にしていること。「外出時や移動時に新鮮な発見や驚き、楽しく快適な情報に出合いたい」という生活者のニーズを叶えることを念頭に置いていると説明がありました。

「MASTRUM」で新たに実現するのは、大きく4つであり、1つめに、プランニングレポートが作成できること。2つめに、詳細な配信設定ができること。3つめに、効率的にインプレッション型配信設定ができること。そして4つめに、他の電鉄会社を含めたOOHの統合プランニングが可能なことを挙げました。

また、KDDIが保有する多彩なデータを活用した「ターゲティング配信」は、高精度なターゲティング広告を実現。性別、年代、オフィスワーカー/在宅者のほか、多彩な趣味嗜好のセグメントでターゲットを分析し、効果的な場所×時間の枠を割り出すことができます。限られたインプレッションの中で、より多くのターゲットにリーチするため、各面のターゲット層の含有率やリーチ効率もターゲットメディア選定の判断材料にすることが可能です。例えば、昼の時間帯にオフィスワーカーに向けて広告出稿をする場合は、「主要企業の本社周辺エリアに一定期間のGPS滞在履歴を持つユーザー」をセグメントに設定。さらに、該当地域にある面のリーチ効率を横断的に比較したうえで、出稿する面を具体的に特定することが出来ることを紹介しました。

フィジカル×デジタルの融合=フィジタルを目指す!東急エージェンシーの取り組み

東急エージェンシーは総合広告会社であるとともに、「TOKYU OOH」という電車内、駅構内、屋外・バス媒体などのメディア事業と「T-Track」というOOH配信サービスも展開。3つの役割を持っている同社の取り組みについて星野氏から紹介がありました。
「人と場所の両方の視点を持つことが大切です。OOHならではの場所の優位性、体験性、総合的な価値をしっかりデータで示していく必要があります」と語っています。
同社もジェイアール東日本企画と同じく、DPS/SSPを通じてデータに基づいたプランニングとプログラマティック配信が可能なプラットフォーム「T-Track」を運用しています。
その特徴は、渋谷という好立地にある交通・屋外OOHに対し、接触者にイメージや体験が共有できる面への配信が可能であること。これにより、質の高いターゲット層を見込むことができます。また、インプレッション単位での取引により「ターゲットの属性をとらえた配信と、広告効果の可視化が可能になりました」と星野氏。

藤森は、「ここで注目したいのは、ジェイアール東日本企画と東急エージェンシーは異なる取り組みをしているのにも関わらず、両社ともデータを活用したプログラマティック配信に行き着いた」と言及しました。

これに対して星野氏は、「プログラマティック配信に舵を切ったきっかけは、コロナ禍で人流が減少したことでした。苦戦しながらも、『フィジカル(リアル)』を軸としたサービスへのニーズが高まったことに着目。同時に、デジタルの重要性がますます高まり、『フィジカル』の効果をデータでしっかりと示すことこそが、OOH広告の可能性を広げる要因となるはずだと考えました」と説明します。

また、東急エージェンシーは総合広告会社として、フィジカル(リアル)とデジタルが融合した生活空間「Phygital(フィジタル)」をキーワードに体験価値の最適化と総合プログラマティック配信を実現。また、それらを支えるデータ基盤と分析ツールをベースにしたソリューションを構築。ゆくゆくは、各駅、商業施設、スーパーマーケット、映画館など生活接点各所のモバイルIDを取得し、リテールも含めて決済などのデータも取得することを構想。「来訪者ごとの広告配信や購買行動に関する効果検証も推進していきたいと考えています」と、星野氏は語りました。

NTTドコモのビッグデータを活用したLIVE BOARDの取り組み

「これまでの2社は、最初に場所としての『面』があり、そこに独自のデータ分析で『個』へのアプローチに説得力を持たせる『プログラマティック配信』に行きつきました。一方、3社目のLIVE BOARDは会社設立当時から、海外の業界統一ガイドラインに準拠したデータ計測によるDOOH(デジタル屋外広告)を追求している会社です」という藤森からの紹介に続き、宮川氏は同社の取り組みを紹介しました。

LIVE BOARDは、NTTドコモ、電通グループ、博報堂の連合出資により、日本で初めてインプレッションに基づくDOOH広告配信を実現した企業です。2019年の設立以来、30社以上とのパートナーシップを築き、街中、駅構内、電車、空港、各種店舗、タクシーなどあらゆる生活動線と接続。全国の61,000面以上において、月間インプレッション8.30億以上という認知を得る媒体に成長しています

最大の特徴は、1億300万人以上という日本最大規模の会員数を誇るNTTドコモが保有する「個」のマーケティングデータが活用できること。「面」ごとに1時間単位での出し分けが可能なうえ、ターゲット含有率が高い面×時間帯に柔軟に配信することで、リーチ自体を伸ばすこともできます。

「面」と「個」、「プログラマティック配信」に対しては、「OOHの『面』は、テレビにもデジタルにもない面白さがありますし、『個』に関する多彩なデータを活用することも今後ますます重要になっていくと思います。また、プランニングから配信、効果測定までを一貫して自動化することで、データドリブンなPDCAを回すことも可能になります」と宮川氏は説明します。

続けて、NTTドコモの所有する各種データを活用した専門的な調査・分析方法にも言及。スマートフォンの位置情報データをもとにDOOH出稿エリアに滞在していたユーザーにアンケートを行う「アスキング調査」では、広告接触によるユーザーの態度や行動、媒体認識状況の変容を知ることが可能に。また、データクリーンルームでユーザーのプライバシーを保護しながらID単位で広告効果を分析する「ログ検証」では、来店率、サイト来訪率、アプリDL率・起動率、購買率などを詳細に把握することができると説明しました。

(右から)株式会社 LIVE BOARD 取締役 ストラテジー部 ディレクター 宮川 聡 氏 株式会社東急エージェンシー 事業共創本部 東急OOHメディア事業局 局次長 兼 事業戦略部 部長 星野 一道 氏 株式会社ジェイアール東日本企画 メディアソリューション本部 MASTRUM推進センター 業務推進部 担当部長 大和田 貴普 氏 株式会社ビデオリサーチ ビジネスデザインユニット 新規ビジネス開発グループマネージャー 藤森 省吾

OOH市場のメジャメントが進む!データ活用における競争領域と協調領域とは?

各社の取り組みに関して藤森からは「3社とも、『データを活用して最適な配信をする』という点が共通していました。ただ、活用しているデータは、KDDI、NTTドコモなど各社で異なります。共通のデータを活用したほうが、メリットは大きいのではないか?」と、問題提起がありました。

これに対して、大和田氏は「データは、あくまでも一つの指標だと考えています。今後、指標となるデータは統一されるかもしれませんが、一定期間同じデータを指標として継続的に見ていくことが大事」だと回答しました。

星野氏も、「各社共通の基盤を持つ必要性を感じる一方で、プランニングの側面では競争があるべき。共通のデータに加えて、各社独自のデータを活用するという判断もあるのではないでしょうか」と述べました。

また、宮川氏は「各社の協調領域がないと、広告主も困るはずです。LIVE BOARDも設立当時から共通指標の取り組みを業界の皆さまと推進していきたいと考えていました。一方で、協調領域は広げすぎない状態でスタートするのが良いと思います。そこから、各社が切磋琢磨して業界を盛り上げていければ」と語りました。

そのうえで宮川氏は、「TV・デジタル・OOH」のトリプルメディアにおいて、プランニングから効果測定までをリーチベースの共通指標が必要」だとし、電通や博報堂と取り組んでいるメジャメント施策を紹介。「各社が持っているプランニングツールに、まずはこれらのデータを取り込むところから始めるのも良いのではないか」と提案しました。

各社連携による日本OOHメジャメント協会が設立!OOH業界の「Next STANDARD」を模索する

今回登壇した3社とビデオリサーチを含めた13社が参画する「一般社団法人 日本OOHメジャメント協会(JOAA)」が9月18日に設立し、協調領域である「OOH広告の価値」を可視化する業界標準の指標提供が可能となることが報告されました。
その協調領域を整えていく、ということを踏まえ、VR FORUM 2025のテーマである「Next STANDARDをともに。」の、次なるSTANDARDについて4名が抱負を語りました。

大和田氏は、「OOHは今後の可能性を秘めたメディア。この場にいる4社以外の企業とも力を合わせ、OOH業界をどのようにして盛り上げていくのかを考えていきたいと思っています」とコメント。

星野氏は、「JOAAを設立し、OOH業界を束ねるプラットフォームが確立されつつあります。今後、広告プランニングの際には、選択肢に必ずOOHが入るようなNext STANDARDをつくり出したいです」と展望を述べました。

宮川氏は、「協調領域のメジャメントが実現することで、さらに魅力的なOOHがたくさん生まれると思います。業界の発展と共に、広告主のマーケティングやプロモーション活動の精度も上がる。多くの企業を巻き込んでNext STANDARDをつくっていければと考えています」と語りました。

最後に藤森は、「JOAAに参画している全13社が業界統一指標の提供を目指し、OOHという新しく、面白いメディアを一緒に伸ばしていけるよう取り組んでいきたいと思っています」と締めくくりました。

(右から)株式会社 LIVE BOARD 取締役 ストラテジー部 ディレクター 宮川 聡 氏 株式会社東急エージェンシー 事業共創本部 東急OOHメディア事業局 局次長 兼 事業戦略部 部長 星野 一道 氏 株式会社ジェイアール東日本企画 メディアソリューション本部 MASTRUM推進センター 業務推進部 担当部長 大和田 貴普 氏 株式会社ビデオリサーチ ビジネスデザインユニット 新規ビジネス開発グループマネージャー 藤森 省吾

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