KDDIが考えるメディアプランニングの理想と現在地~ROIを高める「量×質」のメディア戦略~【VR FORUM 2025】
[登壇者](右から)
・REVISIO株式会社
代表取締役社長 郡谷 康士 氏
・KDDI株式会社
ブランド・コミュニケーション本部 コミュニケーションデザイン部
メディア企画グループ グループリーダー 後舎 満 氏
・株式会社ビデオリサーチ
ソリューションユニット ビジネスソリューショングループ マネージャー 小泉 健二
広告投資の最適化とROI向上が求められる今、広告主自身がデータを駆使し、戦略的なメディアプランニングを行う動きが加速しています。本セッションでは、KDDIの後舎氏、REVISIOの郡谷氏とともに、「量と質」の観点からメディアプランニングのポイントを紐解きます。
メディアプランニングに、なぜ今「量」と「質」が重要なのか
2025年6月にビデオリサーチと資本業務提携し、共に広告ビジネスの発展に取り組むREVISIO。今回のセッションでは、両社の"融合"を象徴するように、REVISIOの郡谷氏とビデオリサーチの小泉が揃いの法被とTシャツで登壇しました。ゲストに迎えたのは、両社がメディア戦略を支援するKDDIの後舎氏です。
最初の話題は、「生活者のメディア接触状況の変化」について。生活者の1日のメディア接触時間は、コロナ禍を契機にテレビ放送が減少する一方、インターネットの接触時間が大きく増加。また、メディアや視聴デバイスも多様化しており、小泉は「1つのメディアだけでは生活者に届けることが難しくなっている」と現状を整理しました。
さらに、「広告への意識変化」にも言及。広告を注目して見る人はここ10年で減少。特に、ネット動画広告にストレスを感じる人が増えているとのデータが示されました。
こうした状況を受け小泉は、メディアプランニング上の課題を2点挙げました。1つは接触メディアの分散化でリーチが届きにくい今、いかにして生活者に「十分な量」を届けるか。 2つ目は、広告への関心が低下する中、いかに1リーチあたりの「効果の質」を高められるかという点です。小泉は、この「量」と「質」の両面からメディアプランニングを考える重要性を指摘しました。
KDDIが挑む、ROIを最大化するメディア戦略
お客様起点で取り組む、KDDIのコミュニケーション活動
続いてKDDIの後舎氏から、同社のコミュニケーション活動における方針が説明されました。
KDDIは現在、『サテライトグロース戦略』と呼ばれる事業戦略のもと、生成AI等を活用しながら、通信事業を核に金融やエネルギー、さらにはモビリティやヘルスケア、宇宙といった領域への事業拡大を推進しています。後舎氏は「『誰もが思いを実現できる社会をつくる。』というビジョン実現に向けて、未来を見据えたコミュニケーション活動を行っている」と語りました。
コミュニケーション活動の基本方針は「お客様起点」。後舎氏は「常にお客様を中心に考え、ブランドに共感してもらえる活動を目指している」と述べた上で、最上位のKPIとして「ブランド好意度」、中間KPIに「広告想起」を設定していると説明しました。この2つのKPIにおいて、ビデオリサーチと連携しながら、広告想起がどれだけブランド好意に結びついたのかなど、常にデータ分析を通じてROIを最大化する取り組みを行っていると述べました。
メディアプランニングについても、「お客様を起点としたメディアニュートラルな設計を意識している」と、後舎氏。生活者の情報接触の実態を踏まえて、どのメディア、デバイス、フォーマットの組み合わせが最適かを考えてプランニングしていると説明しました。
「A-UR」を活用した、「量」と「質」を高めるプランニング事例
続けて、KDDIのメディアプランニング事例の紹介へ。実際は「量」と「質」を分けて考えてはいないものの今回はそれぞれの観点で整理するという前置きのもと、後舎氏より説明がありました。
「質」的観点については、2019年から、テレビ広告における新たな指標として「視聴の質」を測るREVISIO独自の指標「A-UR(Attention Unique Reach)」を採用したと話します。
REVISIOの郡谷氏によると、同社は独自の人体認識技術を開発し、その技術を搭載したセンサーを視聴者の家庭のテレビに設置。テレビ画面への注視を1秒単位で判定し、「A-UR」を測定していると言います。
後舎氏は、2018年まで評価指標としてGRP(視聴率)で量を評価していた際、「実際にテレビをしっかり視聴しているかを把握することが難しく、PDCAが回しづらい」という課題があったと言います。A-UR導入により、「よく見られている時間帯や番組を分析し、CMが見られやすいテレビ枠のバイイングに活用するなど、量に加えて質を重視したプランニングが可能になった」と、その効果を強調しました。
「量」的観点については、「地上波+CTV」を統合したPDCAで効率的にリーチ拡大につなげられていると説明。「テレビ地上波はどうしてもMF3層に偏りがち。MF1など若年層へのリーチ拡大を目指し、CTVを併用する戦略を採っている」と述べました。
ポイントは地上波とCTVを「A-UR という共通指標で評価すること」と、後舎氏。テレビは視聴率、CTVはインプレッション数と別々の指標で管理されることが多いですが、指標を統一することでプランニングの精度向上やリーチ拡大につながったと言います。
キーワードは「統合」。KDDIが掲げるメディアプランニングの理想と現在地
メディアプランニング全体においても「今後はあらゆるメディアを横断する共通指標を持ち、統合的なプランニングでPDCAを回す環境をつくりたい」と、後舎氏。
そのために現在は、マーケティングミックスモデリング(MMM)を活用して各施策がKGIにどれだけ寄与しているのかを可視化したり、REVISIOと連携してテレビとデジタルの最適な予算配分をシミュレーションするモデルを構築したりと、全体最適化に向けた取り組みを進めていると説明しました。
後舎氏の話を受けて郡谷氏も、「キーワードは"統合"」と強調。量と質の統合や、テレビとデジタルの統合が考えられるとしたうえでアプローチとして「『テレビ広告の取引指標であるビデオリサーチの量的データ』と『REVISIOが保有するアテンション(注視)データ』を組み合わせることで、『量×質』指標をアップデートする、よりよいソリューションを提供していきたい」と、統合的なプランニングを後押しする姿勢を示しました。
「質」の指標は、各ブランドに応じた設計が重要
次なる議論は、「プランニング指標として、質は『アテンション』だけ考えれば十分なのか」。
後舎氏は、アテンションは重要であるものの、そのほかに視聴者が広告を抵抗感なく受け入れられるかを示す「広告に対する受容性」も重要な観点だと指摘。同じ広告を認知するのに、ある動画メディアと比較してテレビの地上波の方が1.4倍効果が高かったというKDDIの独自調査を例に挙げ、広告の受容性が高いことも地上波の魅力と述べました。
これに対し小泉も、「テレビはCMが流れる前提があるからこそ、デジタルメディアに比べて受容性が高い。違和感なく広告を受け入れられる点がテレビの強みだ」と補足しました。
郡谷氏は、「アテンションを段階的に捉える」ことを提案。REVISIOの調査実績を踏まえて、注視はしていなくてもテレビの前にいる状態、つまり「ながら見」しているだけでも広告の効果があること、さらにアテンションが伴えばより効果が高まることを紹介し、「段階ごとの価値がある」と説明しました。
後舎氏は、「音声は映像以上に記憶に残りやすい。テレビも音声の工夫次第で『ながら視聴』でも視聴価値を高められるはずだ」と可能性を示しました。
加えて郡谷氏は、「フェーズやKPIが異なれば、捉えるべき『質』はブランドによって千差万別」としながら、様々なKPIにつながっているアテンションデータを基礎固めのデータとして使いながら、ブランドごとに応用的な指標を設計することを推奨しました。
デジタル広告の効果最大化に向けた、KDDIの実践アプローチ
「広告受容性」が話題に上がるなか、KDDIからデジタルメディアにおける取り組みも紹介されました。
後舎氏は、「広告もブランド体験の一つ」と説明。信頼できる情報として受け入れてもらえるよう、3つの点を重視して有効リーチを拡大していると話しました。
1つは、「ブランドセーフティ対策の徹底」。不適切なサイトへの広告掲載を避けることなどを心掛けていると言います。次に、「メディアに最適化したクリエイティブ」の活用です。スマートフォンなら縦型の動画素材を用意する、音楽系メディアで音を活かした表現を意識するなど、メディア特性に合わせたクリエイティブを実践していると話します。最後に挙げたのは、「コンテキストに沿ったメッセージ」を発信すること。ユーザーが閲覧しているコンテンツと関連性の高い広告を発信することが重要だと述べました。
加えて、「デジタル広告のアテンション計測にも着手している」と、後舎氏。アテンションを高めると広告想起が高まる好循環も確認できたと報告しました。
この事例を受け、小泉が「広告好意度は『アテンション運用なし』のほうが高いケースもあるが、どう捉えるか」と質問。後舎氏は、「広告が好意的に受け止められるかどうかは、アテンションとは別の評価軸。しかし、前述の3点を踏まえ、クリエイティブもセットで考えるメディアプランニングの視点が必要だ」と強調しました。
続いて郡谷氏は、クリエイティブの注視にフォーカスした独自の指標「クリエイティブスコア」において、クリエイティブのアテンションと好感度には相関があると言及。この研究はポテンシャルのある分野であると述べました。
議論を経て、小泉は広告コミュニケーションにおけるアテンションの重要性を前提とした上で、快適な広告体験や最適化されたクリエイティブの要素が合わさって初めて生活者に好意的に受け入れられるリーチが積み上がっていくと振り返りました。
ROIを高める、メディアプランニングの3大要件
セッション終盤は、小泉がここまでの議論を総括し「広告が届きにくい今こそ、量と質を掛け合わせた視点で効果をとらえ、PDCAを回すことがROI改善のカギになる」と改めて強調。そのうえで、理想的なメディアプランニング要件として3つのポイントをまとめました。
①メディア横断で「量×質」を統合する指標の開発
②質は「アテンション+広告受容性」など、多面的に評価
③上位目標に応じて質指標の重みづけを最適化
これらを踏まえ小泉は、今後の展望として「ビデオリサーチとREVISIOのアセットを掛け合わせながら理想の実現を目指す」とコメント。加えて「メディア横断で、個社ごとに最適な『量×質』指標の設計をし、ROIの高いPDCAの伴走支援に取り組んでいきたい」と意気込みを語りました。続いて、郡谷氏は「『A-UR』や視聴率などのデータを統合し組み合わせることで運用効果も高まる。メディアの新しい価値を示せるソリューションが見えてくるはずだ」と期待を述べました。
2人の発言を受けて後舎氏は、「両社の連携によって新たなソリューションが1日でも早く形になることを期待している」とメッセージを寄せ、セッションを締めくくりました。
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