生活者で振り返る 時代の主役はあなた(生活者)に

VRDigest編集部
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平成がまもなく終わろうとしていますが、皆さんにとってどのような時代だったでしょうか。世を沸かせた出来事やブームなどは他に譲るとして、平成という時代を端的にいうと、ITの飛躍的な発展によりデジタル社会が一般生活者まで浸透し、暮らしが様変わりしたことに異論の余地はないでしょう。

本号では、当社がもつデータを紐解きながら、平成という時代を当社ならではの視点で、その一端を紹介します。平成が残した記録を共有することで、私たちの未来にどう影響していくのか、未来予測のヒントとなれば幸いです。

  記事の中でご紹介しているサービスはこちら  ACR/ex

特集の構成...「生活者」「テレビ番組」「テレビCM出稿」「人気タレント」の視点から平成という時代を捉えます。

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平成の30年を振り返る視点や方法は様ざまありますが、まず最初に生活者の価値観や意識の変化に着目をしてみました。これまでの約5年間にわたる「ひと研究所」の生活者研究の知見と、当社の生活者シングルソースデータ「ACR」「ACR/ex」を中心としたデータを基に「平成」の生活者を解き明かします。

平成を「点」から「線」で捉える

「ACR」「ACR/ex」 ※1を分析するにあたり長期間継続して調査している項目はもちろん、時代の潮流や環境の変化に合わせて新たに調査を開始した項目にも注目しました。
ヒット商品や流行などの影響をダイレクトに受ける消費財の所有率や使用率などと異なり、生活者の価値観や意識は2~3年の短期レンジでは顕著な変化はほとんどありません。

しかし、30年分の点をつなげて線でみることで緩やかなトレンドがあったり、5年・10年単位の塊で捉えることで変化の兆しがみえてきたりします。そして、その背景には生活者を取り巻く環境の変化や出来事の発生が影響を与えることがあります。
本章では、平成の30年間に起きた生活者の価値観や意識の変化を代表する2つの変化について紹介します。

※1 ACR(~2013年)、ACR/ex(2014年~) データは全国7地区平均、個人全体をVR時系列システムにて集計

背景にある環境変化

変化の紹介をする前に、その変化に影響を与えた大きな要因を確認します。それは、「通信」と「映像」という生活者の日常生活に直結した環境の変化といえます。
通信では、平成が開始した当初は固定電話の1回線を家族全員で使用していました。家族の取り次ぎも発生し、恋愛する上で立ちはだかる壁になっていた人も多いのではないでしょうか。

また、当時の携帯電話は富裕層の一部だけが利用する希少品でしたが、1980年後半から低価格化、小型化そして高機能化が進み、一般の生活者に急速に普及しました。そして、2010年には利用率が約70%まで伸長し、現在では老若男女が一人一台スマートフォンを持つほど(普及率85.1%)に浸透しています【図表1】。

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一方、映像では、お茶の間にあるテレビを家族全員で決まった時間に見るというのが映像視聴の基本スタイルでした。その後、ハードディスクレコーダーに録画し、好きな時に再生して視聴するというタイムシフトスタイルへと変わっていきました。そして、現在では、個人のスマートフォンでいつでも、どこでも好きな映像を楽しめる環境となっています。

この「通信」と「映像」の変化の共通点は、使用シーンが、「集団」から「個人」に変わったことです。このシーンの「個人」化は、意識の面においても「集団」ではなく「個人」を中心とする考えへの変化を促しました。
それでは、この生活環境の変化を念頭に置いて、生活者の大きな変化についてお伝えしていきます。

平成の変化その1 購買に関する嗜好の変化

選択基準は「みんな」から「私」へ

ひとつ目の変化は、生活者の購買に関する嗜好の変化です。嗜好という観点から「流行」に着目してみました。「流行のものを選ぶ」という購買意識は2010年までは上昇傾向にありましたが、それ以降は下降傾向に転じています【図表2】。2011年に東日本大震災を経験し、多くの生活者が自分自身を見つめ直すきっかけとなったことも、影響しているように思います。

逆に、流行に流されない意識である「自分なりの考えでものを選ぶ」については、2014年から上昇しており、近年「みんな」と同じものではなく個人の価値観や考えを尊重して判断する志向が高まっていることがわかります。

さらに、嗜好という面において、ブランドに対する意識についてもみていきましょう。ここではグラフを表示していませんが、現在「メーカーやブランドを気にしない」という意識はバブル崩壊のタイミング(1990年)が平成の30年間で最も低い、つまりブランドへのこだわりがあったと推察されます。その後、大きな変動はなく、2016年には1990年よりも5ポイント高い42.4%と過去30年間で最大となりました。

30年かけて、メーカー・ブランドへのこだわりが緩やかに弱くなっていることがわかります。
今後のブランドへの欲求を予測するため、若者のブランドへの嗜好を調べてみました。好きなブランドを尋ねられて10以上あると回答した10代の割合が3.8%となり、40代の24.6%と比較すると極端に小さくなっています。これからも、生活者のさらなるブランド離れが進むことが予測されます。
それでは、低下した流行を追いかける意識やメーカー・ブランドへのこだわりはどのように変化したのでしょうか。研究・分析をしてみると、「モノ」志向から「コト」志向へのシフトがみられました。

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「モノ」から「コト」へのシフトへ

「コト」といえば、何を思い浮かべますか。その代表例として記念日などのパーソナルイベントやライブ・コンサートといった商業イベントなど、形のない出来事への時間の消費があります。
記念日では、「最近1年間にした贈り物」で「誕生日」と「バレンタインデー」は共に、30年間で約10ポイントも増えています【図表3】。2008年のFacebook、2014年のInstagram(どちらも日本語版)のサービス開始以降SNSサイトに投稿することによる「リア充」アピールの一環としても、記念日やイベントの活動が活発化しているように思います。

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他にはライブ・コンサート市場など、ここ数年は非常に好調に拡大をつづけています。その一方、音楽という商品(モノ)である音楽ソフト市場は苦戦しています。2005年にデジタルオーディオプレイヤーが登場して以来、CDなどのパッケージソフトを購入せずに音楽データをダウンロードするというスタイルにシフトしつつありますが、市場全体は大きく縮小しました【図表4・5】。

音楽を聴く行為は、音楽ソフトという「モノ」を購入することから、コンサート・ライブの会場に行ってアーティストの生の声を聴く体験(コト)を重視するようになってきています。
さらに、「定期的に音楽を聴く時間を持つようにしている」という意識は、10年間で約10ポイント上がっています。このことから、音楽を場当たり的に流すのではなく、日々の生活の精神的なゆとりや自分らしい時間を持てるように流すという、「コト」意識の高まりが読みとれます。

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※1 フィーチャーフォンを除くインターネット向け音楽配信市場  ※2 チケット販売額

[引用元] オーディオレコード生産金額:日本レコード協会「日本のレコード産業」/
    音楽配信金額:デジタルコンテンツ協会「デジタルコンテンツ白書」 
    コンサート市場:コンサートプロモーターズ協会「基礎調査 平成29年」

「新たな購買スタイル」へのシフト

新たな購買スタイルも生まれています。それが「シェアリングエコノミー」です。デジタル化の進展により、個人が保有する再活用可能な中古品などをインターネット上のマッチングプラットフォーム(メルカリ、ヤフオク!など)を介して、不特定多数と売買することが簡単にできるようになりました。
その影響もあり、新品の購入意向は若者の方が上の世代よりも低くなっており、中古品購入の抵抗感が薄れています【図表6】。

若者研究のワークショップの場でも「直接肌に身に着ける下着と生活インフラであるスマホ以外は新品でなくても抵抗がない」という声を耳にします。また、「若い人ほどブランド品を購入する際、売るときの価格を考える(日経MJ 2019年2月8日)」という記事も目にしましたが、ここからも中古売買への関与の高さがわかります。

なお、シェアリングエコノミー市場は2015年で285億円でしたが、毎年拡大し2020年には600億円になることが予測され、ますます購買スタイルとして浸透していくようです。

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若者調査2017 (全国、WEB調査、2017年9月)

さらに最近では、月々の定額支払いで洋服やバッグなどを借りたり、動画が見放題になったりする「サブスクリプション」方式のサービスが次々と誕生しています。こちらも、モノを買わない、持たないという新しい購買スタイルへのシフトの兆しといえます。

ここまでみてきたように、購買嗜好やスタイルは30年間で様変わりをしました。ブランド・メーカーの「モノ」ではなく、コンサートやイベントという体験(コト)嗜好に変化し、「新品」をデパートや専門店で購入するのではなく、「中古品」をスマートフォンを通じてマッチングされた見知らぬ個人から購入するなど柔軟な購買スタイルへとシフトしました。

平成の変化その2 生活者と世の中との関係性の変化 

「仕事」に対する意識変化

「集団」から「個人」へのシフトがあり、「流行」ではなく「個人」の判断を大切にする意識へと変化していることをお伝えしてきました。
「集団」と「個人」との関係が問われる活動の一つに「仕事」があります。「仕事」は人生の中で多くの時間を費やす活動であることから、価値観や意識が表れやすい活動でもあります。

そこで、次に「仕事」に対する意識の変化についてみていきます。バブル時代にさかのぼると、当時のヒットCMのコピー「24時間戦えますか」に象徴されるように、「プライベートよりも仕事を優先させるべき」が当たり前とされる仕事へのスタンスでした。それから約20年が経ち、2007年ごろからその意識が一変し、「ワークライフバランス」を尊重すべきだという考えに変わっていきます。さらに、ここ数年で新たに調査し始めた「仕事より余暇を優先して考える」は微増を続けています【図表7】。

関連して、仕事に求めることや、仕事観についてみても「成果主義、能力主義でキャリアアップ」「自己実現のために仕事をする」「スキルアップのために勉強したい」はいずれも低下傾向にあり、会社という「集団」ではなく「個人」を、「仕事」ではなく「プライベート」を尊重する意識が強まっていることがわかります。

1991年のバブル崩壊や2008年のリーマンショックといった経済不況、2011年の東日本大震災やその後の度重なる自然災害を経るたびに、「本当は何を大切にすべきなのか」「何をすべきなのか」など、生活者の自分自身と向き合う時間が増加したことが、仕事意識の変化に影響を与えているように思います。

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「人間らしさ」や「自然体」が大切に

「流行ではなく自分らしさ」、「仕事よりも余暇を大切にする」という変化から、「人間らしさ」や「自然体」というキーワードが浮かび上がります。平成元年当時の世の中に流れる時代感と比較すると、肩肘を張らず、流行に合わせることなく、私らしく生きる、そのようなことを大切にする風潮に確実に変わってきています。
外見でいえば、「若く見せるオシャレを心がけている」は低下傾向にあり、無理をして若ぶるのではなく、今の年齢の自分をそのまま受け入れ、肯定する考え方が増えてきているようです【図表8】。

2009年から「美魔女」という言葉が流行り、「アンチエイジング」が注目されましたが、ここ数年では「アンチエイジング」についての関心が低下傾向にあります。年齢に立ち向かうのではなく、変化を自然に受け入れようという志向になってきています。ちなみに、シニア研究では「気持ちの年齢」は「実年齢」よりもマイナス8才程度の開きがあることがわかり、内面については若返りをしているようです。

シニア研究のインタビューの中でも「白髪を黒く染めるのではなく白髪のままでいるほうが素敵だと思う」という発言を聞くこともありました。また、2014年に日本で大ヒットした映画「アナと雪の女王」の主題歌の中に「ありのままの姿みせるのよ」という歌詞があります。この「自然体」でいることを肯定・応援している歌詞が共感されたことも、ヒットの一端を担っているのかもしれません。

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平成の生活者の変化とこれから

平成30年間の生活者の意識変化は、「モノからコトへ」「新たな購買スタイルの浸透」「私らしく自然体へ」といった変化についてお伝えしました。これらに共通して、影響を与えていることは何でしょうか。
それは、冒頭で説明したスマートフォンの浸透といえます。スマートフォンにより一気に広まったSNSは、マーケティング活動の主役や主導権をメディアや企業から生活者へとシフトさせました。生活者が起点となり情報や画像・動画の受発信などをいつでも、どこでもできる世界です。

しかし、「積極的に情報発信をしたい」意識は、2014年から10ポイント強低下の42.6%となり、「情報収集に熱心だ」も2014年から4ポイント低下の32%となっています。デジタル化した社会や、それに伴う情報関与への疲れや慣れが生じていることが推測されます。だからといって、アナログや人のぬくもりへの回帰が起こっているわけでもなく、「地域のコミュニティ参加意欲」は5年間で微減傾向にあります。

過度なデジタル化により、生活者がデジタル的にも、アナログ的にもコミュニケーションを回避するという個人が孤独になるという意味での「孤」人化が進んでしまうことが危惧されます。
しかし、その一方で新たな兆しもあります。それは、生活者が持っている経験やスキルを必要としている人に提供・販売できるサービスや、成し遂げたいことや夢などを発信して支援者から資金を募る「クラウドファンディングサービス」の活性化です。

これらはいずれも、インターネットを介して見知らぬ者同士がマッチングし、悩み、課題の解決や一人では叶えられない夢の実現などができるサービスとなります。
新元号の時代では、「個人」が「孤人」となるのではなく、「個人」同士が空間的、時間的な制約から解放され、夢の実現や課題解決などを「共創」によって誰でも気軽にできる時代となることを願います。その意味では、「モノ」、「コト」の次にくるのは、私たち「ヒト」自身なのかもしれません。

1972年に調査を開始した「ACR」は、2014年に調査設計を変更し「ACR/ex」となりました。そのため、時系列データを読み解く際には、調査設計変更を考慮し、傾向として指し示しています。なお「ACR/ex」に関する調査概要は当社サイトにて紹介していますのでご参照ください。
本章では誌面の関係で全てのデータを紹介しきれませんでした。それらのデータに関してご興味・ご関心があれば、お問い合わせください。

ソリューション事業局 ひと研究所 亀田 憲
メディア・コミュニケーション事業局 ACR/ex事業推進部 中山 不尽子

  記事の中でご紹介しているサービスはこちら  ACR/ex
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