「チコちゃんに叱られる!」はどうして話題になっているの? -視聴者代表(5才)

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「チコちゃんに叱られる!」はどうして話題になっているの? -視聴者代表(5才)

この4月からNHK総合でレギュラー放送が始まった「チコちゃんに叱られる!」の好調ぶりが話題になっているのは皆さんもご存知ではないでしょうか。インターネットや週刊誌などで、「チコちゃん」特集記事を目にすることが多く、ギャラクシー賞の7月度月間賞や、ATP賞テレビグランプリ優秀賞を受賞するほどの人気です。

この好調ぶりや話題性の高さについて
「視聴率はどのくらいなの?」
「再放送の方が視聴率が高いって本当?」
「誰がどんなふうに見ているの?」
このような素朴な(?)疑問に、視聴率という側面から当社がお答えしましょう。

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【視聴率】 【タイムシフト視聴率】

NHKっぽくない教養バラエティ

「チコちゃんに叱られる!」(以下「チコちゃん」)は金曜19:57から本放送、翌日の土曜8:15から再放送されています。チコちゃんは、巨大なおかっぱ頭が特徴の5才の女の子です。声はお笑い芸人の木村祐一が担当しています。チコちゃんの疑問にメインMCの岡村隆史とゲストが答えるクイズ形式の教養バラエティです。岡村隆史は、この番組がNHKでの初めてのレギュラー出演で、それはそれで話題性があります。

チコちゃんの疑問は、「かつおのタタキはなぜタタキ?」「女性の電話はなぜ声が高くなる?」など、素朴なのに大人も答えられない難問です。チコちゃんの疑問に大人が答えられないと、チコちゃんの頭は突然ふくらみ、顔を真っ赤にして、「ボーっと生きてんじゃねえよ!」という決めゼリフで大人が叱られてしまいます。チコちゃんの頭部は最新のCG技術が使われており、このシーンではチコちゃんの昭和っぽい見た目とのギャップに驚きます。また、チコちゃんの生意気な物言いや鋭いツッコミにタジタジになってしまうゲストの様子も見どころのひとつです。チコちゃんが大人を叱った後には、専門家による解説VTRもきちんと用意されているので、疑問に対する答えをキチンと知ることができます。また、番組内にはユニークな決まりがあって、それは視聴者からのお便りは、視聴者が何才であっても名前のわきに「5才」と書くこと。あくまで5才の疑問に答えるというスタイルを貫いています。

インターネットや週刊誌の記事では、金曜日の本放送よりも土曜日の再放送の視聴率が高いことがたびたび話題になっています。その内容については後で触れますが、NHK総合の土曜日朝8時台にバラエティ番組を放送すること自体、NHKにとっては挑戦とも言える4月の改編だったと思われます。3月までは2011年から7年間「週刊ニュース深読み」、それ以前も1999年から12年間「NHK週刊ニュース」を放送していました。どちらの番組も題名通り、1週間のニュースを振り返るというNHKらしい内容でした。合計19年間報道番組を放送し続けてきた枠に、5才児が大人を叱りつけるNHKらしからぬバラエティ番組を置いたことは、NHKにとってある種の革命であったに違いありません。

本放送・再放送とも右肩上がりの視聴率

では早速、「チコちゃん」の視聴率を確認してみましょう。
【図表1】では、本放送・再放送それぞれの月別平均視聴率を、前クールの同じ時間帯の「歴史秘話ヒストリア」(金曜20時台)、「週刊ニュース深読み」(土曜8時台)と比較しました。本放送・再放送ともに、番組開始1、2ヶ月目には前クールの番組視聴率を上回り、その後も順調に上昇が続いています。本放送の視聴率が8月に大きく跳ね上がっているのは夏の拡大版スペシャルの影響がありますが、9月の平均視聴率は本放送では10%台、再放送では15%台にまで到達しています。
図表には載っていませんが、本放送の月別平均タイムシフト視聴率をみると、スタートした4月は0.6%だったのが5月からは1%台になり、8月以降は2%台と、タイムシフト視聴率も上昇が続いています。

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番組開始当初と最近では、「チコちゃん」の見られ方に変化はあるのでしょうか。番組開始からの放送6回(前半6回)と、直近放送6回(後半6回)の比較をします【図表2】。
まず、1分以上視聴割合(少しでも見た世帯)は、本放送で14.5%から18.7%に上昇、再放送で21.7%から26.5%に上昇しています。番組当初に比べて最近は「チコちゃん」にチャンネルを合わせる世帯が増えたことがわかります。
次に、視聴分数の比較をしてみます。本放送・再放送ともに番組の2/3以上視聴する割合(大半を見た人)が増加し、よりしっかりと見られるようになったことがわかります。
最後に平均視聴回数の比較をすると、本放送・再放送ともに平均視聴回数が増加しており、リピーターが増えていることもわかります。「チコちゃん」はチャンネルを合わせると、そのまま見続けてしまい、来週もまた見たくなるという、クセになる番組であるといえるでしょう。

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本放送を上回る再放送の視聴率

本放送より再放送の方が常に視聴率が高いという逆転現象が話題になっている「チコちゃん」。その逆転現象を詳しく確認してみます。
まずは、【図表1】を見ると、開始当初の4月から再放送が本放送の視聴率を上回り続け、しかも5ポイント以上差がある月もあり、再放送の視聴率の高さがわかります。次に、【図表2】で本放送と再放送の比較をしてみると、前半6回ですでに、1分以上視聴割合、2/3以上視聴割合、平均視聴回数において、再放送が本放送を上回っています。さらに、後半6回の伸び率も再放送の方が高く、再放送の方が少しでも見た世帯も、視聴時間も、リピート率も上回ることが確認できました。

では、本放送と再放送は別々の世帯が見ているのでしょうか。先程と同様に前半6回、後半6回にわけて、本放送と再放送の視聴重複状況を【図表3】で確認してみます。視聴条件を本放送・再放送各6回の中で1回でも1/3以上視聴しているとカウントした場合、本放送と再放送どちらも視聴している割合が増加しており、同じ放送内容でも曜日を変えて2度視聴したり、都合に合わせて視聴する曜日を選択したりする世帯が増えたことがわかります。金曜の夜の本放送と土曜の朝の再放送は、見逃しの無いよう視聴の補完ができる、視聴者にとって都合の良い放送形態であることがわかります。

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土曜朝8時台の枠環境にマッチした「チコちゃん」

土曜日の再放送の方が様ざまな指標で金曜日の本放送を上回ることが確認できました。この理由として一番に考えられることは、枠環境の違いです。関東地区では、金曜日の本放送は首都圏向け情報番組の後に放送されていますが、土曜日の再放送は朝ドラという視聴習慣性が非常に高い番組の直後の枠になっています。しかも朝ドラから番宣を挟まない絶好の条件で放送が始まることが、再放送の視聴率を押し上げる要因のひとつと考えられます。

しかし、朝ドラの恩恵を受けやすいというのは、3月まで放送されていた「週刊ニュース深読み」も同じだったはずです。そこで、2つの番組の見られ方を比較してみました。
【図表4】では、「チコちゃん」再放送と「週刊ニュース深読み」について、4月以降の「チコちゃん」の放送回数と同じ22回分の視聴回数分布を比較しました(「週刊ニュース深読み」は最終回から22回分さかのぼりました)。22回のうち10回以上という全放送回数の約半分を見ている割合が、「チコちゃん」再放送では11.3%、「週刊ニュース深読み」では6.5%となっています。4回以上をまとめると、さらに差は開き、「チコちゃん」の方がリピーターが多いということがわかりました。

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次に、両番組について、世帯の中で誰が見ているのかを確かめるために、視聴者の組み合わせを比較しました(「チコちゃん」は直近放送6回分、「週刊ニュース深読み」は最終回から6回分さかのぼりました)【図表5】。複数人で見ている世帯の割合は、「週刊ニュース深読み」は3割を切っていましたが、「チコちゃん」は3割を超えています。複数人で見ている中の組み合わせでみると、「チコちゃん」は「親子」や「若・中年夫婦」の割合が、「週刊ニュース深読み」よりも多くなっています。特に、「親子」視聴が多いのは特徴といえるでしょう。

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複数人で番組を見ているということは、自分が放送を忘れていても誰かがチャンネルを合わせることによって見逃しを防ぐことができますし、家族の話題にものぼりやすいことから、視聴が習慣化しやすいといえます。視聴の習慣化は、視聴者をファンとして定着させ、視聴率の低下を防ぐことができます。

「チコちゃん」の視聴状況をまとめると

・本放送・再放送とも右肩上がりの視聴率(9月の平均視聴率は本放送10%台、再放送15%台)
・タイムシフト視聴率も上昇が続く
・番組当初に比べて最近では、少しでも見た世帯も、視聴時間も、リピート率も増えている

本放送と再放送の比較では
・再放送が本放送の視聴率を4月から上回り、5ポイント以上差がある月もある
・再放送の方が、少しでも見た世帯も、視聴時間も、リピート率も本放送を上回る

土曜朝8時台の前クール「週刊ニュース深読み」と比べると
・「チコちゃん」はリピーターが多い
・「チコちゃん」は複数人で視聴する世帯 が多い(特に「親子」視聴)

あらためて、「チコちゃん」の魅力

これまで述べてきた「チコちゃん」の好調要因は、やはり番組内容によるところが大きいといえます。「チコちゃん」で扱う素朴な疑問は、子供が見ても難しくなく、大人が見ても知的好奇心をくすぐられる、ちょうどいい難易度に設定されています。また、生活の中の身近な事柄を扱うので、誰でも興味を持ちやすく番組に引き込むことに成功しています。そして、チコちゃんが疑問に答えられない大人を叱った後には、しっかりと専門家の解説が用意されているため、知的好奇心を満たすことができます。その上、チコちゃんとMCやゲストとの笑えるやりとりや気楽に見られる視聴感は、家族がリラックスしてリビングに集まる土曜の朝の気分にフィットしているといえるでしょう。
土曜日の再放送では、他局を抑えて同時間帯トップになることも珍しくない「チコちゃん」の快進撃はどこまで続くのでしょうか。「ボーっとしていた」土曜日の朝、チコちゃんに叱られながら、テレビの前で家族と笑って週末をスタートする家族が今後も増えていくかもしれません。

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