拡がるBSメディア【VR FORUM 2022 レポート】

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拡がるBSメディア【VR FORUM 2022 レポート】

[登壇者](右から)
BS松竹東急株式会社 代表取締役社長 橋本 元 氏
株式会社BS朝日 代表取締役社長 浜島 聡 氏
株式会社ビデオリサーチ 企画推進ユニット エグゼクティブフェロー 石松 俊之

2022年12月1日、開局23年目を迎えたBSデジタル放送。しかし、「BS」「デジタル」「放送」と聞き馴染みのあるワードのため、「知っているつもり」になって認識が更新されにくかったりするかもしれません。BS放送では複数のビジネスモデルが共存している中、本セッションでは「無料広告BSデジタル放送」にフォーカス。2000年のBSデジタルのサービス開始とともに開局したBS朝日の浜島氏、そして、2022年3月に開局したBS松竹東急の橋本氏をお迎えして、「知っているつもり」のBSデジタル放送に新たな発見を探りました。

■ シニア層をメインに、アナログ時代も含めて30年かけてつくりあげたブランド・コミュニティ

セッションでは、まずBSデジタルの現状について、ビデオリサーチの石松から説明をしました。現在、BSデジタルの世帯普及率は75%。普及初期から、地上デジタルの開始で3波共用チューナー搭載が主流になる頃までを含めて、外付けのチューナーやテレビ本体の価格が高かったため、富裕層や、その傾向をもつ、年代が高めの層から普及していきました。その結果、「BSは、『落ち着いてじっくり見られる、シニア層によりフィットした媒体』というメディアイメージが醸成されているようだ」と石松。これに対し、BS朝日の浜島氏も、一番のターゲットがシニア層であるイメージを肯定。野球中継、ゆったりとして見ることのできる紀行番組、演歌歌手が名曲を披露する音楽番組、通販番組、じっくり掘り下げる報道などが視聴者から期待されているとし、「視聴者と一緒につくりあげてきた大事な"BSらしさ"」と語りました。BS松竹東急の橋本氏もこれに同意。アナログ放送の時代からの変遷を含め、「30年かけて、一つのブランドやビジネスのコミュニティができていると思う」と認識を示しました。

BS朝日は、そのような想定ターゲットに対し、深く良質な番組を提供することを目指しています。具体的には、「ファンタイム」という、コアなファンにマニアックな情報をお届けする番組枠を設けるなどして、BSらしさを大事にしながらFAN・FUNの趣味嗜好に応える番組を揃えています。

BS松竹東急も、今のBSブランドに沿ったうえでさらに"自分たちらしさ"を出す方針。良質の映画、舞台、バラエティなどを放送しています。また、放送局として番組作りを大事にしたいと考えており、成り立ちからしても劇場文化や映画の軸からドラマは作る場、流れとして自然な取り組みであるとし、新規開局でありながらも週2本のドラマを制作・放送しています。
また、BSでの「ドラマ」の位置づけは、BS朝日の浜島氏も重視しており、「ドラマは、BSに対する視聴者からの大きな要望の一つ」と語り、実例として2022年夏に松本清張のドラマを集中的に編成したところ、非常に好評だったことを明かしました。

■ "BSらしさ"という付加価値を加えられる、稀有な広告メディア

このようなBSの特徴を踏まえた上で、セッションでは各社の「広告メディア」としての取り組みについて話題が展開しました。浜島氏は、「ゆったりゆっくり見られるという"BSらしさ"に、アドバタイザーのメッセージを加え、それらのコンテンツを結びつける番組編成や、メディアを意識している」と語ります。たとえば、一社提供番組の『草野仁の名医が寄り添う!カラダ若返りTV』は、「シニア層が多いBSメディアの特性」「医療番組のコンテンツ制作の実績があるBS朝日の強み」「アドバタイザー(太陽生命保険様)が伝えたい『人生100年時代』というメッセージ」の三位一体となった番組です。見てもらうことの先にある、"いかに響くか"という、コンテンツの深さや質を、番組づくりの上で重視する姿勢が示されました。

このほか、登山がテーマの番組『そこに山があるから』は、番組内でアドバタイザーであるコロンビアスポーツ様のアイテムを使用するプレイスメントが実施されています。これは、番組企画にアドバタイザーが賛同して、今の形になったとのこと。「アドバタイザーが持つ"パーパス、世界観"と合致するコンテンツが提供できる」と浜島氏は語ります。

このような良質な番組は、「長く見てもらえて、ファンがついてコミュニティが生まれる」と浜島氏。それは、アドバタイザーが自社の商品やサービスに望むことと一致しているとの見解を示しました。

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BS朝日 代表取締役社長 浜島氏

鍵となる番組の質。そのニーズに応える番組開発のため、どのようにアンテナを張っているかについて、石松が問うと、浜島氏は「視聴者の趣味や嗜好に応え、視聴者の生活を豊かにしていく企画に特化していく」方針とのこと。また橋本氏は、BSを一つの街にたとえ、「これまで培われてきた"ゆったり"といった空気感やトンマナを生かし、特別編成をまとめてしっかり提供できるのがBSの強み」という考え。実際の取り組みとして、特定のテーマで映画を1週間放送する特集や、『滝沢歌舞伎』の舞台映画の特集で、関連のドキュメンタリーなども紐付けて放送した例などが紹介されました。

これらを受け石松は、「生番組で、"今、何が起こっているのか"を『リアルタイム』で伝えるのが地上波だとすると、テーマや特集を設け、それらを『面』で伝えられるのがBSだと感じた」と所見を述べました。

■ 安心感・信頼感をベースに育む、多様なファンコミュニティは期待大

セッションでは、BSデジタルによって生まれるコミュニティについて、地上波やSNSなど、他のメディアで作成されるものとの違いについても言及されました。橋本氏は、BSのベースにあるのは、コンテンツに対する安心感や信頼感だと考えています。玉石混交の情報に溢れた今の時代において、「放送としての一つの集まりが、全体として安心して視聴でき、心が開ける場であることが大事」とのこと。そのような安心感・信頼感の連鎖したところに、人が集まり、ビジネスが生まれるという考えを示しました。浜島氏もこれに同意し、「信頼できるメディア」が大前提にあり、また全国1波の無料広告メディアであるという観点から、「ニッチで専門性があるものを、偶然的に視聴できる。最初は関心のなかった視聴者にも、見たら「おもしろかったね」と思ってもらえて、そこに拡がりを持たせられる」と示唆。"ファンコミュニティ"を構成できるメディアだと提言しました。

■ 配信への取り組み、BS独自の取り組み、事業展開とは?

浜島氏はBS朝日の配信の目的として、「①見逃し配信としての役割」と普段見ていない層、趣味嗜好はあるが番組の存在を知らない層に向けた「②広報的な配信」の2つを挙げました。具体的には、TVer内でサウナ特集をした際に「サウナを愛でたい」を一挙配信してコミュニティを拡げ、またアメTubeを通じてYouTubeユーザーをBSに取り込んでいるなどの事例を紹介されました。
BS松竹東急は、2022年3月の新規開局ということもあり、配信は「認知拡大」のために実施しGyaOやひかりTVなどでも配信を行っており、色々な場所で接点を持ってもらうことで知ってもらい、テレビの入り口にすることを大事に考えていると橋本氏は話しました。

また、配信だけでなく、BSを起点に他の事業との展開について浜島氏からは、BSとその番組の配信に加え、コンテンツを中心に、テレビ朝日グループの中で360度展開する視点への言及もありました。「認知されていない番組もあるので、配信も使いながらもっと拡げ、ファンづくりもコミュニティももっと拡げたい。それをグループにも拡げて、還元していく」と展望を語ります。このほか、BS朝日を開局当時から支えていたのは通販番組だとし、「免許事業だからこその安心感、信頼感から通販会社様の長年のパートナーになれた。今後もグループの通販事業とつなげて、拡げ推進していきたい」と意向を示しました。

橋本氏は、「新たなものを生むのは、コラボレーションから」と考え、コンテンツパートナー、テクノロジーなどあらゆる方面からの組み合わせにトライしていく方針。「貪欲にさまざまな人とつながる中で、信頼の持てるコミュニティをつくっていきたい」と語ります。それを受けた石松が、東急グループの一員として、街との地域連携についても意見を求めると、「リアルとの連携はものすごくあり、実際に起こっている」と橋本氏。東急グループの手掛ける渋谷の街のBunkamuraや東銀座の歌舞伎座をはじめ、世界に文化を発信している。そこでリアルに文化芸術に触れ、BSデジタルでも視聴するという流れがあるためです。「リアルとの連携を大事に考えているし、今後も深めていく」と語りました。

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BS松竹東急 代表取締役社長 橋本氏

浜島氏、橋本氏の話を受け石松は、シニア層がメインの視聴者とはいうものの、テーマ設定によっては性別や年齢を超越したコミュニティもつくれるかもしれないと、その可能性について言及。「そのコミュニティを軸に番組を編成すれば、視聴者層やBSの価値が変わるかもしれない」と所見を述べました。また、世帯普及率75%の全国一波のメディアであるため、パイが小さめのトピックスでも効果的にスケールできる可能性がある点にも価値を見出しました。このほか、ブランドセーフティという当然過ぎて見過ごされがちな媒体価値も、広告媒体として見直されるべきではないかと提言しました。

BSは、VRFORUM 2022 のテーマ「生活者とメディアのダイバーシティを見つめる。」に照らすと、地上波的なマス性とは違う形で、多様性を育める可能性があるメディアです。BSの今とこれからについて改めて考える、貴重なセッションとなりました。

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